マークIII版『ファンタジーゾーン』出現。しかもFM音源サウンドが!?
セガの80年代の名作タイトルを3D立体視化して現代に蘇らせた“セガ3D復刻プロジェクト”。そのパッケージ版第2弾である『セガ3D復刻アーカイブス2』の発売日となる2015年12月23日を心待ちにしているファンは多いかと思うが、ここに来て驚くべきニュースが飛び込んできた。なんと、前作を持っていると追加タイトルとしてマークIII『ファンタジーゾーン』が遊べるというのだ。
さっそく事の真相を確かめるべく、我々はセガゲームスへの取材を行った。するとそこには、すでに3DS上で動作しているマークIII版『ファンタジーゾーン』があり、しかもオリジナルには存在していないFM音源サウンドが鳴り響いていたのだ!(ババーン!) この不可思議な事実は、いったいどういうことなのか。そこで我々は急遽、プロジェクトではおなじみのシリーズプロデューサー奥成洋輔氏と、新たにリードプロデューサーとして加わった下村一誠氏にお話を伺った(エムツー堀井氏はマスター作業が熾烈を極めているため欠席)。
マークIII版『ファンタジーゾーン』とは
エムツーの執念が結実したマークIII版『ファンタジーゾーン』
セガゲームス
『セガ3D復刻アーカイブス2』
シリーズプロデューサー
奥成洋輔氏(左)
リードプロデューサー
下村一誠氏(右)
――マークIII版『ファンタジーゾーン』が3Dでプレイできるとは驚きました! 完全な隠し玉ですね。
奥成 前作『セガ3D復刻アーカイブス』を持っている方が続編の『2』を購入することでプレイできる10本目の収録タイトルですね。
下村 東京ゲームショウ2015のころに、営業サイドから「せっかく『2』を出すんだから、前作もさわってもらいたいよね」という相談があったんです。そして出てきたアイデアが『セガ3D復刻アーカイブス1&2 ダブルパック』だったんです。ただ、単純に『1&2』パックだけではこれまで応援してくださったファンの方へのサービスが足りない。さらになにかないかなと考えたときに、『1』と『2』の連動で出現するタイトルを用意して、さらなる楽しさを引き出しましょうということになりました。
――マークIII版『ファンタジーゾーン』が選ばれた理由というのは?
奥成 じつは前作のときから、エムツーさんは入れたがっていたんですよ。前作にもボーナス収録として『スペースハリアー3D』、『アウトラン3D』が収録されていますが、途中から「『ファンタジーゾーン』もやりたい!」と言い出したんですね。でもオリジナルは2Dだから無理だろうといったんですけど、「いやっ、3Dにできる方法があるんだ!」と力説されたんです。
――誰かが必ず無茶を言い出す、この“セガ3D復刻プロジェクト”ではおなじみのパターンですね(笑)。
奥成 でも、どう考えてもスケジュール的に間に合わないんですよ(笑)。ただでさえきびしい日程なのに、さらに作業を増やしたら発売日に間に合わなくなる恐れがあるから、それにはストップをかけました。まあ案の定、それでもマスター納品がひと月近く遅れたわけなんですが。
で、『アーカイブス2』を作るにあたって、好評だったオマケはまたやろうということになり、当然その話が再燃したんですけど、今回のメイン収録作品は初代ではなくリメイク版の『ファンタジーゾーンIIダブル』なんですよね。1と2が比較できないかたちで収録されるのはちぐはぐだし、『ダブル』をリリースした当時にオリジナル版も遊びたいという声もありましたので、僕からは「どうせやるならオマケもマークIII版の『ファンタジーゾーンII』にしよう。後は前作でやりたかった『メイズウォーカー』も加えて」というのが、ここまでのあらましです。
下村 本来はそれでまとまっていたんですね。
奥成 ただきっとここにいないあの人は内心「ギギギギギ……」と悔しがっていたはずなんですよ(笑)。そこに何かサービスはないかと探っていた下村の話が舞い込んで、「しめしめ」とばかりに開発が始まりました。間に合うのかどうかという問題はさて置いて(笑)。
――新規で『パワードリフト』と『ぷよぷよ通』があって、さらに追加となるとかなりの作業量ですよね。
奥成 そうなんですよ。すでに『パワードリフト』、『ぷよぷよ通』、『メイズウォーカー』、『ファンタジーゾーンII』の移植+3D化の作業が必要な中で、さらにもう1タイトル。僕は「ホントにできるの?」と心配したんですが、下村は「もう決まったから」と。
下村 僕はスケジュールを切ったらそれを守らせるだけですから。堀井さん、げっそり痩せているかもしれませんね。
奥成 むしろさらに太るんじゃないかな(笑)。でも、僕がひとりでプロデューサーをやっていたら、このボリュームは実現しなかったと思います。リミットを設けて、なにかをはずしていました。
下村 プロデューサーとしての仕事のスタイルの違いもあるかと思うんですよ。奥成はそれぞれの作品を深く知って、愛しているから、ひとつのタイトルに対するリクエストが大きくて深い。僕は、プロジェクト全体を俯瞰して、開発期間の中でできる最大限のことはなにかをきちんと押さえていく。
奥成 最初に『パワードリフト』を収録すると聞いたときには「マジすか、間に合うんですか!?」と思わず心配してしまいましたから(笑)。
下村 僕はファンの皆様と社内スタッフの熱意をエムツーさんに託すわけです。でも、奥成からも当然「ここまではやらないとね!」という愛情が入ってくるので、エムツーさんに対しては2倍の負荷がかかっているはずです。
――どおりで堀井さんがいらっしゃらないはずです(笑)。それは冗談として、完成したものをさわってみていかがでした?
奥成 さっきプレイした馬波さんも驚いていたように「え、FM音源が鳴っている!?」状態でした。開発途中のバージョンではオリジナルどおりにPSG音声のみだったんですけど、メニュー画面が『ファンタジーゾーンII』とまったく同じで、FMサウンドユニットの切り替えボタンがあっていたんですね。流用したままなんだなと思って、念のため「このボタン、取らなくていいの?」とメールしたらノーリアクションだったのですが……いま考えると、その時点でコソコソ仕込んでいたんでしょうね。
――オリジナルにはないデータですから、当然新たに作ったということですよね。歴史上存在しないデータが、またしても時空の歪みで発生したというか(笑)。
奥成 エムツーさんに新戦力として入社されたサウンドスタッフが作っていて、実際にマークIIIのサウンドの仕様に則っています。理論上は実機で動かせますし、FM音源の処理がある分だけゲームスピードが処理落ちをしています。さらにギガドライブの延長戦上で前線基地を表示するレーダーが追加されているんです。もはや全然「オマケ」じゃない作り込みになっちゃってます。
下村 まとめると、マークIII版『ファンタジーゾーン』の収録は、『1』と『2』の両方を買っていただいたお客様へのサプライズであり、ファンの皆様への感謝の気持ちを表したものです。『2』にご興味を持って頂いていて、『1』をお持ちでない方には、お得な『1&2ダブルパック』をぜひともオススメしたいです。最後だけ宣伝っぽくなってしまってスミマセン……。
――わかりました。次回は堀井さんも交えて、パッケージの内容についてこってりお聞きしたいと思います!
サウンドディレクターからのコメントが到着!
今回のマークIII版『ファンタジーゾーン』の発表にあわせて、エムツーのサウンドディレクター並木 学氏と、春日達彦氏からのコメントが到着したので、合わせてお届けしよう。
■並木 学氏(エムツー サウンドディレクター)
“セガ3D復刻プロジェクト”ファンの皆さん、こんにちは。サウンドディレクターの並木です。
今作収録のセガマークIII/マスターシステム版『ファンタジーゾーン』のFMサウンドユニット対応版につきまして、当初ディレクターの松岡からはストリーム再生による実装を打診されまして、いろいろ考えた末にサウンド側から提案したのが
「FMサウンドユニット対応ソフト『ファンタジーゾーンII オパオパの涙』のサウンドプログラムを『ファンタジーゾーン』へ移植して、それ専用に新規でサウンドデータを作りなおす!」
という方針でした(…ここ、たぶん笑うとこ!)。
その実現のためには皆さんご想像のとおり、かなりの力技を要しますが……。
「問題ない、我々には秘密兵器があるッ…!」
というわけでエムツーサウンド部門の期待の若き新戦力・春日くんに担当してもらいました!わぁ~いパチパチ!よくやったわが弟子よ……ウム、上出来であるッ! というわけで、ぱっと聴いた感じOPLLで鳴っているとはとても信じがたいクオリティで『ファンタジーゾーン』FMサウンドユニット対応の野望は達成されたのでした。
それでは皆さま、『セガ3D復刻アーカイブス2』のソフト上でお耳にかかりましょう!ぜひぜひご期待くださいませ!!
■春日達彦氏(エムツー サウンドエンジニア)
こんにちは。今回セガ・マークIII、マスターシステム版ファンタジーゾーンのOPLL化部分を担当したエムツーサウンドエンジニアの春日です。
2015年8月初旬から開発を始めて、終えたのが9月の終わりですね。丁度ミンミンゼミの声が聞こえ始めてから、鳴き止むくらいのあいだでした。サウンドの実装には、マスターシステムのハードウェア仕様を調べることから始めました。次いでマスターシステム版『ファンタジーゾーンII』のサウンドドライバの解析、サウンドドライバの『ファンタジーゾーン』への移植、サウンドデータの作成、そしてマスターシステム実機による検証をひたすらくり返しました。
アーケード版とマスターシステム版のサウンドの最大の違いは、OPMが自由に音色を作成してそれを自由に鳴らすことができるのに対して、OPLLも音色を作ることはできるんですが、作った音色を同時に一種類までしか鳴らせないことです。あとは元々入っているプリセット音色を使うことになります。用意された音色を、アーケード版になるべく近くなるようにさまざまな工夫をして演奏させるわけですが、音の厚みや音量バランスなど、試行錯誤の連続でした。OPLL版ならではの味わい、FMユニットの新たな切り口として楽しんでいただければと思います。少し詳しい人なら、どこでユーザ音色を使っているかなども聞きながら考えてみるとおもしろいと思います。
入社して間もないのですが、程なくしてディレクターの松岡から「OPLL好きかい?」みたいなことを聞かれまして、反射的に飛びついたらこのようなことに(笑)。入社当時はとにかく右も左も分からない状態で初歩的な質問をしたりしてたので、自分でも調べないといかんなーと思いました。あとは習うより慣れろというか、エムツーにはそれこそ生き字引のような先輩方が大勢いまして、入ってすぐに実践的な事から学ばせていただき、非常に充実した時間を過ごすことができました。
本作では、新たに追加されたOPLLサウンドに注目してほしいです。ゲーム本編はもちろんですが、じつはメニュー画面で流れる曲も、“おまけ”を選んだ時にOPLL版に切り替わっているんですが、これはマスターシステム実機で録音したものを使用しています。それ以外にも、各収録タイトルのサウンドもそれぞれバージョンアップしていますので楽しみにしていてくださいね。