ミュージカルとの親和性は期待以上! 絢爛豪華な大立ち回りで魅せられる
2016年5月予定の本公演に先駆け、2015年10月30日(金)から11月8日(日)まで渋谷AiiA 2.5 Theater Tokyoにて公演が行なわれる、ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演。その公演初日となる10月30日(金)、当日19時からの初回公演に先駆けて、報道陣や関係者に向けてのゲネプロ公演が開催された。
公演の原案にあたる『刀剣乱舞-ONLINE-』(DMMゲームズ/Nitroplus)は、いまやユーザー数も100万人を超えた大人気ブラウザゲーム。名だたる刀剣が戦士の姿となった“刀剣男士”たちを指揮し、時をさかのぼって歴史を改変しようと目論む歴史修正主義者などの勢力から、同じく時をさかのぼり正しい歴史を守り抜くべく戦う育成シミュレーションゲームだ。
『刀剣乱舞-ONLINE-』は、それぞれに名刀の由来が色濃く反映され、実に個性的なさまざまな刀剣男士たちの存在に加え、世界観監修やシナリオに数々の名作ゲームを世に放ってきたNitroplusが携わり、その深い世界観もまた人気を呼んでいる作品だ。それが舞台化ということで、発表当時から内容が一体どんなものになるのかと、注目を集めていた。
こちらの舞台はミュージカルの第一部、ライブの第二部の、二部構成となっている。
第一部のミュージカルでは、三日月宗近、小狐丸、石切丸、岩融、今剣、加州清光の6名の刀剣男士の、“モノ”でありながら心と体を持ったことによる矛盾を抱えながらも、それを乗り越えて歴史修正主義者の陰謀に立ち向かう大活劇がくり広げられた。
第二部ではそれらの戦いを終え、2015年の平和な日本に降り立った6名が、ダンサーも交えて歌と踊りを観客席の主様たちに披露する“らいぶ”が展開。第一部では舞台狭しと大立ち回りをくり広げたが、第二部も客席にまで飛び出したり、豪快な和太鼓のパフォーマンスが入ったりと、観客を飲みこみ一体となる熱いステージとなっていた。
つぎのページからは、その第一部、ミュージカルの内容を劇中写真を交えてリポートしていく。ネタバレはNG!という方はご注意願いたい。
また、トライアル公演に足を運んでくれた観客の皆さんへ向けた、演出家・茅野イサム氏からのメッセージも下記に掲載するので、今回の舞台をより深く理解したい方は目を通していただきたい。こちらにも一部、舞台の内容に触れている部分があるので、ネタバレNG派の人は要注意だ。
演出:茅野イサム氏からのメッセージ
本日は、ミュージカル『刀剣乱舞』に足をお運びいただき、誠にありがとうございます。ご存知の通り、この作品は、空前の日本刀ブームを巻き起こし、社会現象にもなったほどの人気ゲームです。これまで僕は何作もの漫画やアニメ作品の舞台化を手がけていますが、この『刀剣乱舞-ONLINE-』は、従来のやり方では通用しない、大変に手強い題材でした。なにしろ、原作となるゲーム自体が、どこまでやっても終わりがない。むしろ、やり込めばやり込むほどに、知れば知るほどに、その世界は収集のつかないほどに広がっていくのです。まさに、当初の僕は五里霧中に迷い込んだ思いでした。
そもそもの問題として、敵である時間遡行軍とは何者か。歴史修正主義者とは何者か。そして審神者の扱いをどうするか。ゲームのなかでわかった気になっていても、実際に舞台の上に引っ張り出してくるには、僕なりの解釈を持たなければいけない。何より一番考えさせられたのは、彼らは人間の姿をしてはいても、あくまでも「モノ」であるということです。僕が作りたいのは演劇です。戦う姿をどんなにかっこよく見せても、演劇はそれだけでは成立しない。そこにちゃんと感情の動くドラマがなくてはいけないのです。僕は舞台の上に「モノ」と人間のドラマを描きたいと思いました。今回、舞台として選んだのは、日本人であれば誰もが良く知る、義経・弁慶の物語です。どんなに時代が変われど、人が人に焦がれ、慕う気持ちというものは変わらない。そういう人間同士の営みを傍で目にする刀剣男士たちが何を思うのか。そこに人とモノの違いが現れ、彼らの存在する意味であったり、モノであることの儚さや悲しさが見えてきたらいいなと思っています。
今回の公演は、トライアルと銘打ってはおりますがトライしたものをお見せする気持ちはなく、僕なりに完成したミュージカル『刀剣乱舞』の世界を作り上げたつもりです。俳優たちも、役作りの手がかりになる素材が限られているなかで、苦しみながらも必死にそれぞれの持つ個性を掴み、形にしてくれました。また、楽曲に関しては、ユークリッド・エージェンシーさんのご協力で、僕らの想像力をさらに広げてくださる音楽を数多く提供いただいています。この場を借りて、この作品にご尽力いただきました皆様にお礼を申し上げます。
『刀剣乱舞-ONLINE-』は、様々な環境の中で戦っている人に「また明日も頑張ろう」と思える何かを届けたい、そんな願いの込められた作品だと思います。過酷な状況の中で懸命に戦う刀剣男士たちの姿に、私自身、何度も勇気づけられました。
このミュージカルもまた、日々を懸命に生きる皆様の癒しとなり、明日がよりハッピーに感じられるものになればと思っております。