128人による壮絶な闘い。『ウルIV』世界大会出場の切符を手にいれるのは誰だ?
2015年10月17日、東京の東京ビッグサイト TFTホール(ホール1000)にてカプコンの人気対戦格闘ゲーム『ウルトラストリートファイターIV』(以下、『ウルIV』)の賞金制公式大会“超百鬼秋杯”(ウルトラひゃっきしゅうはい)が開催された。
このイベントはタイトーが主催するアーケード版『ウルIV』の全国大会。
昨年開催された“一秋千撃杯”に引き続き、優勝者の100万円を筆頭に上位入賞者に賞金が提供されるアーケード版『ウルIV』最大規模のイベントとなっている。またカプコンプロツアー認定のプレミア大会にもなっており、優勝者には2015年12月に開催される世界大会“カプコンカップ ファイナルズ”の出場権も授与される。
このようなビッグなイベントとあって出場者も『ウルIV』界のトップクラスのプレイヤーが軒並みエントリー。事前申し込みによって選ばれた128人のプレイヤーが世界への挑戦権を目指して熱い闘いをくり広げた。
この大会はダブルイリミネーション形式によるシングル戦で競われた。ダブルイリミネーションでは、一度負けても敗者復活トーナメント(ルーザーズ)でふたたび闘いに挑める。最終的には、勝利者側トーナメント(ウィナーズ)と決勝戦(グランドファイナル)を行い、ここで勝った者が優勝者となる。この形式は試合の機会が多いだけに、運に左右されることがなく真の実力が表れやすいと言われている。先日、9月に東京ゲームショウ2015の会場で開催された“ウルトラストリートファイターIV 日本大会”でもこのルールで競われたように、とくに『ウルIV』ファンのあいだではおなじみとなりつつある。なお、本大会では両トーナメントともにベスト8までは2勝、以降は3勝先取の勝ち抜けとなっている。
ウィナーズトーナメントは絶好調のボンちゃんが勝利
16セットの筐体によって競われたトーナメントは順調に進行。ウィナーズ側のベスト4はろっくん選手(セス)、TTL|SHINBA選手(アベル)、ボンちゃん選手(サガット)、北千住DJ選手(ディージェイ)という関東と関東の選手が半々という顔ぶれに。
そして、ウィナーズ決勝ではボンちゃん選手とろっくん選手の対決となった。今夏、レッドブルと契約を結びプロゲーマーとなったボンちゃん選手は、セスを相手に一方的に攻めの闘いを展開して2連勝。対するろっくん選手は全国規模大会の優勝経験こそないものの、関西では近年名を上げている若手のプレイヤー。後がない3戦目はボンちゃんの強気の攻めに対抗するかのように、開幕から積極的に接近戦に持ち込み1勝を奪う。しかし、続く試合ではボンちゃんが貫禄の勝利。昨年の一秋千撃杯につづき決勝戦(=グランドファイナル)に駒を進めた。
ルーザーズトーナメントはタフな闘いが連発
いっぽうのルーザーズ側。こちらの準決勝では昨年のカプコンカップ覇者のEG.ももち選手を破ってルーザーズトーナメントを勝ち上がったネモ選手(ロレント)と、ウィナーズトーナメントでボンちゃん選手に負けたばかりの北千住DJ選手の闘いとなった。両者はこの日、ウィナーズ側で一度対決しており、ネモ選手にとってはリベンジの機会となる。
序盤は、一度敗戦していることもあってか、ネモ選手がいつも以上に執拗なスティンガーの応酬で北千住DJ選手のディージェイを寄らせない慎重な立ち回りを見せていたが、やがてスイッチが入ったように自ら近寄りにいく大胆な戦術に移り、これが鮮やかに攻撃が決まっていく。終わってみれば、ネモ選手が3タテで北千住DJ選手を撃破!
続く、ルーザーズの決勝で、ネモ選手はろっくん選手との対戦に。ロレントとセスの対決とあって、両者ともに隙あらばセットプレーで確実にダメージを与えていく、極めてスピードの早い(かつ激しい打ち合いの)試合となった。自分の“ターン”でいかに確実に相手のライフを減らしていくか……という様相となるが。ネモ選手は大胆ななかにも、微妙に対応を切り替えるクレバーな闘いを披露。ときにはパトリオットサークルで確実にケズりのダメージを与えていくといった立ち回りも見せた。ろっくん選手もやがてネモ選手の動き見えてきたか、相手の技をかわす場面が多々増えてきた。試合は、2勝2敗さらに両者ともに1ラウンドを奪取というギリギリの展開に。ネモ選手はセスのウルトラコンボ、丹田ストリームを喰らい絶体絶命だったが、ここで奇跡の粘りを見せてネモ選手が逆転勝利。会場が大きく沸いた瞬間だった。
グランドファイナルはベテランどうしによる対決
そして、ついに迎えたグランドファイナル。優勝の条件は、ウィナーズ側のボンちゃん選手は3勝。ルーザーズ側のネモ選手は3勝で勝負がリセット、さらにもう一度同じ組み合わせで対戦してここで3勝しなければならないというもの。ハードな闘いが続いたネモ選手にとっては、このハンデによる壁はかなり高いはず。しかし、この日の勢いはそのハンデを忘れさせるに十分なものだった。
対戦前に壇上に上がったふたりは「今日は調子がよくてウィナーズでここまで来ました。この勢いで優勝したい」(ボンちゃん選手)、「今日は苦手なEG.ももち選手を克服できました。同じく苦手なボンちゃん選手も克服したいですね」(ネモ選手)と語り、両者とも気合いはバッチリといったところ。
試合は、両者とも一定の間合いを保ち牽制をしあうといった、意外にも地味な(?)展開から始まった。ふだんからよく対戦してお互いの手の内を知っているからこその、我慢比べ。静かな試合に会場全体に緊迫した空気が張り詰める。
両者交互に勝ち星を獲得する均衡する闘いに変化が起きたのは、ネモ選手がリセットへリーチとなった4試合目。これまでの試合のような変幻自在の動きで猛プッシュするネモ選手と、リセットを意地でも阻止したいボンちゃん選手。壮絶な接近戦とウルコンの出しあいという派手な闘いにボンちゃん選手が勝ち残った。これで2勝2敗。続く5戦目は両者ともにめまぐるしく動きコンボをくり出し合う展開となり、もはや心の強さのみで闘うといった感じに。1ラウンドをともに取り、お互い体力ゲージも残りわずかという状況でボンちゃん選手が劇的な勝利をもぎ取った。
ボンちゃん選手は先週アメリカで開催された“SoCal Regionals 2015”に続き、プロになって2連勝。ここですでにカプコンカップファイナルズへの出場権を獲得しているので、本大会に割り当てられた出場枠はネモ選手に与えられることになった。試合後「レッドブルのアスリートとなって調子がいい。もうシルバーコレクター(準優勝ばかりの選手)とは言わせない」と語った。
ボンちゃん選手、ネモ選手ともに、世界の『ウルIV』プレイヤーが一目置く“スペシャリスト”的な存在。強豪ひしめきあう日本で培った技術と経験でどこまで活躍できるか? 両者のカプコンカップファイナルズでの活躍に期待したい!