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『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの楽曲を演奏するオーケストラコンサート“Final Symphony II - music from FINAL FANTASY V, VIII, IX and XIII”が、2015年9月27日に大阪フェスティバルホールで、2015年10月4日に横浜みなとみらいホールにて行われた。
本記事では、横浜・夜公演の模様をお届けする。
日本での公演に先駆けて、ドイツ・ボンとイギリス・ロンドンで開催され、大成功を収めているFinal Symphony II。このオーケストラコンサートでは、楽曲を1曲ずつ演奏するのではなく、複数の楽曲から成る交響曲を演奏する形式を採用している。ときにオーソドックスに、ときに大胆にアレンジされた交響曲は、各作品の世界を物語る、聴きごたえのある内容となっていた。
■第一部
1.In a Roundabout Way - Fanfare
Music composed by Jonne Valtonen
2.FINAL FANTASY XIII - Utopia in the Sky
構成曲:FINAL FANTASY XIII プレリュード / ヴァニラのテーマ / 歓楽都市ノーチラス / 閃光 ほか
Music composed by Masashi Hamauzu / Arranged by Masashi Hamauzu and Jonne Valtonen
3.FINAL FANTASY IX - For the People of Gaia
構成曲:ハンターチャンス / ビビのテーマ / 空を愁いて / 銀竜戦 ほか
Music composed by Nobuo Uematsu / Arranged by Roger Wanamo
コンサートは、コンポーザー・アレンジャーのヨンネ・ヴァルトネン氏が作曲した「In a Roundabout Way - Fanfare」からスタート。続いて、『FFXIII』の交響曲「Utopia in the Sky」が披露された。
「Utopia in the Sky」は、『FFXIII』の楽曲を手掛けた浜渦正志氏とヨンネ・ヴァルトネン氏が共同で編曲。浜渦氏は、『FFXIII』のストーリーを語ることを意識して、この交響曲を作ったという。また、『FFXIII』、『FFXIII-2』、『ライトニング リターンズ FFXIII』を経てきたからこそ、この交響曲が生まれたと語った(このことについては、後のインタビューでも浜渦氏にうかがっているので、ぜひ読んでほしい)。
つぎに演奏されたのは、『FFIX』の交響曲「For the People of Gaia」。この交響曲では、ピアニストのミッシャ・チュン氏がゲストとして登場。軽やかながら、しっかりと響く音色で、「ハンターチャンス」を始めとする楽曲で構成されたピアノコンチェルトが奏でられた。
■第二部
4.FINAL FANTASY VIII - Mono no aware
構成曲:The Oath / The Landing / Don't be Afraid / Waltz for the Moon ほか
Music composed by Nobuo Uematsu / Arranged by Roger Wanamo
5.FINAL FANTASY V - Library of Ancients
構成曲:ファイナルファンタジーV メインテーマ / レナのテーマ / 大いなる翼を広げ / 覇王エクスデス ほか
Music composed by Nobuo Uematsu / Arranged by Jonne Valtonen
第二部では、『FFVIII』の交響曲「Mono no aware」と、『FFV』の交響曲「Library of Ancients」が披露された。
演奏の前に登壇した植松伸夫氏によれば、「Mono no aware」の編曲を担当したロジャー・ワナモ氏は、『FFVIII』には“もの悲しさ”を感じているという。この交響曲の中では、切ない旋律の「The Oath」のメロディーが印象に残ったが、“もの悲しさ”を意識してのアレンジだったからかもしれない。一方で、明るい旋律の「Waltz for the Moon」もすばらしく、スコールとリノアのダンスシーンが目の前に浮かんでくるようだった。
「Library of Ancients」では、「ムジカ・マキーナ」のメロディーがところどころで使われていたが、これは、“さまざまな世界の戦いにジャンプする”ことをイメージしたものとのこと。いくつもの世界を旅する『FFV』のストーリーを意識した演出だ。ちなみに、『FFV』開発時の植松氏は33歳だったとのこと。その若さで、これだけの名曲を生み出していたなんて……ノビヨ師匠、さすがです。
■アンコール
6.ビッグブリッヂの死闘【FINAL FANTASY V】
7.ファイナルファンタジー【FINAL FANTASY シリーズ】
アンコール楽曲は、『FFV』の大人気曲「ビッグブリッヂの死闘」。……なのだが、楽曲の途中で、なぜか指揮者のエッケハルト・シュティーア氏が、なんだか怒った様子で演奏を止めてしまう。だが、誰かひとりが楽器を鳴らし続けている……。何が起こったのかと不安に思いながら聴き続けていると、聴こえてくる音がだんだんと「チョコボのテーマ」に変化! このことに気付き、驚きと安堵の歓声を上げる観客たち。演奏を再開したオーケストラメンバーは、「チョコボのテーマ」を披露し、再び「ビッグブリッヂの死闘」に戻る……と思ったら、そこに「チョコボのテーマ」のメロディーを混ぜるなど、サプライズに満ちた演奏で会場を沸かせた。
そして締めくくりは『FF』シリーズを象徴する「ファイナルファンタジー」。演奏終了後、観客たちは「ブラボー」と声を上げ、文字通り“全員”で、スタンディングオベーションでオーケストラを称えた。日本のオーケストラコンサートで、全員が立ち上がって拍手をするなんて、本当にめったにないことではないだろうか。その拍手は、奏者の最後のひとりが去るまで鳴り響き、大盛況のうちにFinal Symphony IIは幕を閉じた。
Final Symphony IIキーパーソンにインタビュー
終演後、作曲家の植松伸夫氏、浜渦正志氏、Final Symphony IIディレクター・エグゼクティブプロデューサーのトーマス・ベッカー氏、指揮者のエッケハルト・シュティーア氏、ロンドン交響楽団の首席フルート奏者ガレス・デイヴィス氏にお話をうかがった。
――横浜公演を終えた、いまのお気持ちを教えてください。
デイヴィス Final Symphony IIの楽曲は、難しいんですけれども挑戦し甲斐のある楽曲でした。演奏中、お客様の顔を見るのがとても楽しかったです。
シュティーア 先ほどの公演が、日本での最後の公演となりましたが、お客様からの反応がとても温かく、すばらしいコンサートとなったと思います。
浜渦 このコンサートに参加できたことが、非常に光栄でうれしかったです。トーマスの企画には非常にチャレンジ精神があって、もしかしたらお客様に受け入れられないかもしれないという懸念がありつつも、やりたいことを推し進めていて。その姿勢に以前から共感していて、いっしょに取り組んできました。今回のFinal Symphony IIも、とてもいい経験になったと思っています。
植松 この企画は、ちょっと難解かな、と初めは思ったんですね。Final Symphony IIは、単にメロディーをオーケストラで盛り上げるのではなくて、ゲームに使われた楽曲を、バラバラにして再構成して、ひとつの新しいアートのようなものにしている。3音から始まったゲーム音楽が、そういうところまで来ているのかな、と思います。ゲーム音楽の可能性のひとつとしてね。すべてがこの方向性に行くとは思いませんが、可能性のひとつを提示したと思います。
ベッカー このプロジェクトに携わって12年になりますが、今回のすばらしい演奏が成し遂げられたのは、このドリームチームで取り組めたからだと思います。夢が叶ったような、すばらしい企画になりました。
――今回の公演は、日本のゲーム音楽のコンサートの中でもいちばんの盛り上がりになったのではないかと思いますが、全員がスタンディングオベーションをするという、あの光景をご覧になった感想を教えてください。
植松 アンコールの「ビッグブリッヂの死闘」が「チョコボのテーマ」になるところを、会場のいちばん後ろで、トーマスとうちのスタッフと3人で聴いていたんですけど、みんながスタンディングオベーションしたときに、思わずトーマスと抱き合いましたね。うれしくって。僕も、あんなにたくさんの人がスタンディングオベーションをしたのを見たのは初めてでした。
浜渦 見たことがない光景でしたね。公演が終わった後、会場に来ていた娘に会ったら、すごく喜んでいて。本当によかったですね。
ベッカー これまで、インタビューなどで、よく「西洋のお客様と日本のお客様の違いは?」と聞かれることがあり、日本のお客様は控えめだとお答えしていましたが、今日の公演では、違いはないのではと感じました。
デイヴィス ヨーロッパでは、全員の方が立つことはあまりないんです。日本の皆様は、互いに共感したことで立ってくださったのかなと思います。
シュティーア 日本の方は、演奏中は静かで、演奏に聴き入ってくださいますね。そのぶん、演奏家の方は緊張したと思いますが(笑)。その静けさが、日本の方らしいのだと思います。
――今回の楽曲は難しかったとのことですが、演奏するうえで、意識したことなどを教えてください。
シュティーア 指揮者としては、すべてのことに気を配って演奏に臨みます。お客様のリアクションもそうですが、コンサートホールによって音響がまったく違いますし、リハーサルと本番でも変わりますから。演奏中に直すべき点を見つけたら、つぎの演奏では直すように心がけます。
デイヴィス ひとつの作品を分解して再構築するということに共感しています。演奏しているときは、お客様の姿がよく見えて、今日は曲を聴いて泣いている方の姿も見えました。メロディーが変わると、お客様の顔も変わります。物語をたどりながら聴いていらっしゃる皆様の顔の変化を楽しみながら演奏しました。
――浜渦さんにお聞きします。今回、『FFXIII』の交響曲のアレンジを担当されていましたが、どのようなテーマのもとに編曲されたのですか?
浜渦 『FFXIII』というゲームを振り返って、それをなぞっていくとどうなるか……それを考えたら、おのずとあの曲の構成になりました。「閃光」は、皆さんが聴かれている「閃光」とは違うアレンジになっていたと思いますが、あれは『ライトニング リターンズ』でアレンジしたときのものを活かしています。「閃光」のアレンジの中では、この『ライトニング リターンズ』でのアレンジが総括のようなものだと思っていまして、今回、迷いなくそのアレンジを選びました。
――『FFXIII』だけではなく、『FFXIII』シリーズをまとめるアレンジとなっていたのですね。
浜渦 そうですね。僕が最初に『FFXIII』の曲を書いたのは2006年でしたが、この約10年を振り返って、自然にできたアレンジでしたね。
――植松さんと浜渦さんにうかがいます。ロンドン交響楽団のすばらしさは、どんなところにあるとお考えですか?
植松 そんなの、偉そうに言えないよ(笑)。そうですね、ロンドン公演を見に行かせてもらったとき、リハーサルで「なんだこの譜面!?」って思ったんです。これ、まとまるのかな? と思ったら、つぎの日には本番で弾いていましたからね。しかも、海外のほかの公演から帰ってきた翌日にリハーサルで、さらにその翌日に本番ですから。今回も、日本でクラシックのコンサートをやりながらFinal Symphony IIをやってますからね。よくやれるなあ、って(笑)。音楽に対するバイタリティーを感じますね。
浜渦 すごい“仕事人”だなと思いますね。音の粒がぴちっと揃っている。何をどうすればいいのか、というのをよくわかっていらっしゃる。それから、今日、昼と夜の公演を聴いて思ったのは、「2回目はこうしようかな」と思うところが、皆さんにはあったんじゃないかなと。昼ももちろんよかったんですけれど、夜はより違っているというか。僕のトークも、昼より夜のほうがマシでしたし(笑)。音楽って、そういうものだと思います。
――最後に、トーマスさんにうかがいます。Final Symphonyの今後の目標を教えていただけますか?
ベッカー ひとつ目の目標は、Final Symphony IIのレコーディングを行うことです。ふたつ目は、ほかの国でこのプロジェクトの演奏会を行うことですね。可能であれば、ぜひロンドン交響楽団の皆さんに演奏していただきたいです。
サイン入りパンフレットを抽選で1名に!
植松伸夫氏、浜渦正志氏、トーマス・ベッカー氏、エッケハルト・シュティーア氏、ガレス・デイヴィス氏のサイン入りFinal Symphony IIパンフレットを、抽選で1名にプレゼント。賞品が欲しい方は、応募フォームに必要事項を記入のうえ、送信ボタンを押してください。締め切りは2015年10月27日(火)23時59分。当選者の発表は、発送(2015年11月中旬予定)をもって代えさせていただきます。