ヒリつく緊張感がたまらない対戦FPS!!
日本でも12月10日の発売が決定した、ユービーアイソフトのマルチプレイFPS『レインボーシックス シージ』(プラットフォームはPS4/Xbox One/PC)。対テロ特殊部隊のチーム戦に特化した、突入/迎撃がアツい本作の海外クローズドβテストに参加してきたので、その模様をお伝えする。
帰ってきた“静のFPS”特殊部隊系タクティカルシューター
レインボー!(合言葉っぽく) 『レインボーシックス シージ』は、大作級としては久しぶりの特殊部隊系タクティカルシューターだ。……って、タクティカルシューターとはなんなのか? ジャンルとしての歴史は比較的古く、「自分以外のチームメンバーがおり、仲間に指示を出して戦術的に動く一人称シューティングゲーム」という広義から、1996年に発売された『Terra Nova: Strike Force Centauri』を最古のものとする人などもいる。しかしそこに「テロリストが待ち構える室内に突撃する特殊部隊モノ」というエッセンスを盛り込み、ジャンルのイメージを決定的な物にしたのは、1998年に発売された、ほかでもないレインボーシックスシリーズの元祖『Tom Clancy’s Rainbow Six』だ。
見えない相手を想像しながらプランを練る時の静寂と、意を決してドアを開ける音が異様に大きく聞こえるほどの緊張。そしてしくじって派手な銃撃戦になり、隊員が倒れていく乾いたリアリズム。当時記者は高校生だったが、その登場はまさに衝撃だった。それまでFPSではドンパチ撃ってランボーのようにワンマンプレーで強引にコトを解決していたのに、敵味方とも簡単に死ぬ『Rainbow Six』では、その真逆の臆病なまでの慎重なアプローチをしなければならなかったからだ。
だが、それがカッコ良かった。なんせ現実の特殊部隊は計画と慎重さが肝心。人質がいる場合を考えると、正確に標的を捕捉し、テロリストに気付かれずに目的を遂行できるのがベストで、人質に危険が及びかねない派手な銃撃戦が起こったら半分失敗とも考えられるレベルのプロ達だ。慎重に慎重を重ねるのが正解なのである。
その後、特殊部隊系タクティカルシューターは、それまでアドベンチャーゲームやストラテジーゲームだった『SWAT』シリーズから『SWAT 3』および『SWAT 4』という名作が生まれるなど他社にも波及。『Rainbow Six』シリーズも順調に続き、前世代機では『Rainbow Six Vegas』、『Vegas 2』という名作も生み出したのだが、時代の趨勢が警察系特殊部隊からミリタリー系特殊部隊のFPSなどに移っていったせいか、次第にフェードアウト。「『Vegas 3』があるらしい」といった噂がたまに出る程度になってしまった。
しかし、ようやく発表された近未来モノ『Rainbow 6: Patriots』の続報も途絶えて難しくなったところで入れ替わりにやってきた本作が、まさに原点回帰とも言うべきピュアな特殊部隊系タクティカルシューターだったのは最高すぎる! しかも壁をぶっ壊して道を作れたり、突入前のフェーズが攻撃側が全員でドローンで内部を探るものだったり、今風のヒネりもちゃんと入ってるという内容。んじゃそろそろβのハナシをしよう。
クローズドβでは3種類のモードを公開
レインボー!(しつこく) というわけで海外で行われたクローズドβテストを体験したので、その模様をお伝えしよう。クローズドβテストで公開されていたゲームモードは、“Secure Area”と“Bomb”という2種類の対戦モードと、AIのテロリストをソロまたは協力プレイで倒していく“Terrorist Hunt Classic”モードの3種類。
“Secure Area”はマップ内に1カ所ある化学薬品が置かれた部屋を10秒占拠すれば攻撃側の勝ちで、防衛側はそれを防ぐのが目的。一方“Bomb”はマップ内に2カ所ある爆弾をめぐる戦いで、攻撃側はディフューザー(解除機)を仕掛けて45秒間耐えれば勝ち。防衛側は解除が終わる前にディフューザーを破壊すれば勝利となる。いずれも敵を全員倒すことでも勝利が可能で、実際はそれで決着がつくことも多い。
ふたつのモードは、防衛側がバリケードやトラップの設置、攻撃側がドローンで目標を探るという準備フェーズから始まる。目標がどこにあるのか攻撃側が把握するか把握できないかで大分違うし、場所がバレたとしても防衛側がいかに待ち構えるかは非常に重要。突入前から戦いは始まっているのだ。
筆者が一番好きなのは、準備フェーズが終わって本番が始まり、突入が開始されるまでの静かな時間だ。攻撃側は準備フェーズで得た情報を元に突入方法を考え、防衛側はどこから相手がやってくるのかイメージしながら衝突の時を待ち構える。お互いが裏をかこうと相手の動きを推測し、正解がわかった時には最初の銃声が鳴り、誰かが倒れているというヒリつく感じ。これはまさにタクティカルシューターならではの快感だ。
一方“Terrorist Hunt Classic”は、Vegasシリーズを遊んだことがある人ならおなじみ、マップ内に山ほどいるAIのテロリストキャラクターたちを全員排除するという、いわゆる“テロハン”モード。敵を倒すと爆発音や銃声におびき寄せられてどんどんテロリストがやってくるので、ソロプレイも可能ではあるが、友達と協力してプレイするのをオススメしたい(ソロプレイは正直、3段階の難度で一番低いノーマルでも慣れるまでは難しい。ソロだと大抵自爆犯を倒し切れずに自爆されて死ぬ)。
公平性を保つためのふたつのシステム
“Secure Area”と“Bomb”は5対5の対戦で、専用アビリティー(装備)を持ったオペレーターを使ってプレイするのだが、面白かったのがチームの別のメンバーが取ったオペレーターは同一ラウンド中に選択できないこと。
これがもし同キャラ可能だったら、専用アビリティーによってバランスが崩れてしまう。例えば防衛側オペレーターのひとり“PULSE”は、壁の向こうでも敵の心拍を検出できる心拍センサーという強力な装備を持っている。しかし、もし5人全員がPULSEになれたら、片っ端からセンサーを向けて待ち構えることが出来てしまうので正直微妙。だから役割が分かれるこの仕様で正解だと思う。
もうひとつ、死亡後もカメラを通じてメンバーを支援できるというシステムも唸らされた。FPSやTPSでは、対戦モードで死亡するとボイスチャットが生存者から隔離されるという設計になっていることがある。殺された人間が撃った相手の位置を仲間に伝えるのを防ぐためだ。しかし、インゲーム(ゲーム内の)チャットではなくSkypeなどで別途ボイスチャットしているケースでは、この仕様は意味がない。結果としてインゲームチャットを使うチームと外部チャットを使うチームで不公平に働いていたと思う。
本作では死亡したプレイヤーに対して、一律に突入チームを支援するエージェントの役割を与えることでこの点を解消している。攻撃側は準備フェーズで残してきたドローン、防衛側はセキュリティカメラを通じて、その前を通った敵チームのメンバーの報告が可能(カメラ/ドローン以外に他FPSのように生存しているプレイヤーの画面も見られる)。覗き見されたくなければドローンやセキュリティカメラを壊していけばいいし、マーキングされた時は告知が出るので相応に警戒して対応すればオーケー(このため、あえてマーキングせずに口頭で報告するチームもいる)。使えるものをフルに使って冷静に行動する者こそプロなのだ。
壁ぶち破ったり床抜いたり、ラペリングしたり。三次元の突入が楽しい
本作ではブリーチング(爆破)で薄い壁や床を破壊して、侵入ルートを作り出すことができる。さらにラペリングロープを使った侵入もほとんどの壁で実行可能。
逆に防衛側も、壁を補強してブリーチングできないようにしたり、電子ジャマーで敵のドローンやエクソサーミックチャージ(金属シャッターなどもブリーチできる)を妨害したり、敢えて壁に小さな穴を開けて覗き穴を作ったりといった対抗策を取れる。
この破壊要素があることで、どこから突入してどう目標に向かうかのバリエーションが増えて、コンパクトなマップでもちゃんと読み合いが生まれるようになっているのがいい感じ。もちろん目標の場所に応じてある程度定石は生まれてくるが、攻撃側ならブリーチングしておいてそこからは入らないとか、防衛側なら敢えて目標とは別の階に控えて攻撃側チームの背後を狙いに行くとか、定石のさらにその裏をかくことが可能。油断をしたら一瞬でやられるバランスの本作だからこそ、奇策がハマった時は一気に崩すことができる。
オペレーター選びは何をしたいかが重要
プレイヤーが使うオペレーターは攻撃側用と防衛側用に分かれていて、攻撃時に防衛用オペレーターを使うとか、またその逆に防衛時に攻撃側オペレーターを使うことはできない。そして既に説明したように、仲間がすでに確保しているオペレーターは重複して選べない。選択肢がない場合は、各国部隊の“リクルート”(新兵)というキャラクターの中から選ぶことになる。
専用オペレーターは戦闘中の活躍によって手に入る“Renown”を使ってアンロックしていく形で、同じ特殊部隊の隊員を選ぶと価格が上がっていく。例えば最初にSASの攻撃側用オペレーターSLEDGEをアンロックした時は500ポイントで、次に同じSASの防衛側用オペレーターのMUTEををアンロックすると1000ポイントといった感じ。
なので最初はまず、リクルートの中で好みの装備のオペレーターを見つけるのがいい。クローズドβテストではチュートリアルビデオを見ることで最初のオペレーターを買うのに十分なRenownが手に入ったのだが、他人と被った時のことを考えると、どっちみちリクルートのチョイスを決めておくのは必要。
オペレーターを選ぶ際は、自分がどんなプレイをしたいかを考えながら選ぶのがいいだろう。筆者の場合はとにかく至近距離での戦いに負けたくないので、リクルートではバリスティックシールドかショットガンを持てるオペレーターを選んでいた(中距離戦になることはあまりないので、シールド持ちは基本的に強い)。
そして次に決めるのが、攻撃側と防衛側のどちらを最初に買うか。コレという選択肢が決まっているのでなければ、攻撃側用オペレーターを最初に買うのがいいと思う。防衛側用のオペレーターの専用アビリティは設置系のものが多く、使いドコロをうまく見極めなければ役に立たないので、マップ構造と攻撃側の一般的なルート取りが分かってからの方がいい。
個人的にオススメしたい攻撃側用オペレーターはFUZE。専用アビリティの“クラスターチャージ”は、設置すると薄い壁やバリケードの向こうに小型爆弾をばら撒くというアイテムで、敵が待ち構えている部屋に対して使用すると絶大な威力を発揮する。さらにFUZEはメイン装備としてバリスティックシールドを装備可能。シールドを構えて進めば移動は遅くなるが、正面からの撃ち合いで即死ということはなくなる。ガジェットにブリーチチャージ(薄い壁を破壊)を選べば、両者を設置し、クラスターを撃ちこんでから別の方角よりブリーチで侵入するという一人時間差攻撃も可能だ。
そのほかには、壁を一気に破れるブリーチングハンマーを持っていて、メイン武器にショットガン、サブ武器にサブマシンガンと、ダメージと連射力を両立できるSLEDGEなんかもいい。
防衛側用オペレーターでは、PULSEが筆者のファーストチョイス。心拍センサーで敵の位置を把握して、侵入してきたところをショットガンでブチ抜いたり、C4爆弾を爆破したり、落ち着いて待ちプレイができれば、ファーストコンタクトでやられるということは減る。まずは長くプレイできるようにして、セオリーなどを把握していくのがいいんじゃないだろうか。
仲間を集めて遊ぶとマジで最高!
レインボー!(忘れた頃に) とまぁそんな感じに、破壊要素や、近年流行の専用アビリティ付きのキャラクター制なども導入して、マルチプレイ全振りという思い切った仕様で帰ってきた本作。シングルプレイのキャンペーンモードがないのはちょっと残念だが、その代わりに絞り込んだ分、一個の建物を舞台に突入/迎撃するという対戦の駆け引きの面白さは格別。特殊部隊系タクティカルシューター完全復活と言っていい感じになっていると思う(もちろんβテスト版はあくまでβなので、製品版までにマップやオペレーターのバランスやシステム調整がもっと進むという仮定。特に人数差がある状態でもラウンドが始まってしまうのは辛い)。
最後におまけとして、本作で特に注意すべき点を5つお伝えしよう。仲間とともに華々しい成果を収めることを期待している。それじゃあレインボー!
1.コミュニケーション最強。ボイスチャットはすべき
ボイスチャットでコミュニケーションを取るチームと、そうでないチームでは、チームとしての連携も、ひとりのプレイヤーが手に入れられる情報量も格段に違う。オペレーター選びや準備フェーズの段階ですでに、「DOC(回復能力アリ)使うから撃たれたら無理せず下がって」とか、「俺は地下を見に行くから誰か2階見てきて」とか、「ガレージのシャッターにジャマー仕掛けてくれ」といった方針の決定と意思統一が可能だし、ボイスチャットがなければ突入のタイミングを合わせることすらできない。
理想は5人の仲間でスクワッドを組んでプレイすること。足りない人はSNSなんかを活用してメンバーを募るのもいいと思う。とにかく、ボイスチャット出来たほうが絶対に楽しいし、勝てる。ボイスチャットが少数派のグループに入ってしまった時でも、できれば勇気を出してボイスチャットで報告して欲しいし、海外勢とプレイする時も、彼らが伝えようとしている内容に耳を傾けて欲しい。
2.できればヘッドフォンやヘッドセットで注意深く音を聞く
ヘッドフォンをして足音や敵チームのキャラクターが発する声を注意深く聞くだけで、どの辺に相手がいるのかを推測することができる。慣れてくればバリケードを破ろうとした敵を内側からいきなり撃ち抜いたりすることもできるので、これは大きなアドバンテージになる。
というか本作のオペレーターたちの足音が大きかったり、アクションをするたびに結構な大声で報告をするのは、要するに「それを聞け」という開発からのメッセージだ。用意された要素を活用しないのはもったいない。
3.仲間の射線に立たない。爆発物を扱う時は気をつける
FPSのマルチプレイに慣れたプレイヤーなら当然のことかもしれないが、狭い所に固まりがちな本作では特に、ブリーチング後などに一斉に突入しようとして仲間のプレイヤーの射線に入ってしまったり、C4やグレネードの爆発に巻き込みかけることが多い。
1チーム5人でラウンド中復活なしのゲームなので、ひとりをフレンドリーキル(仲間を射殺してしまうこと)で失うのは結構な損害。前に立つプレイヤーはシールドを構えつつしゃがむとか、グレネードを投げる時はひと声かける、C4を起爆する時は仲間の位置に気をつけるといった配慮が必要だ。
4.困ったら無茶な行動に出る前にカメラやドローンのことを思い出す
ついドローンは準備フェーズだけのもの、セキュリティカメラは死亡時だけのものと思ってしまいがちだが、実はいずれも本番中にチェック可能(破壊されてない限り)。敵の場所がわからずに困ったら、無闇矢鱈に動き出す前に、攻撃側の場合は残されたドローンを、防衛側の場合はセキュリティカメラをチェックしてみよう。もしかすると敵が映っているかもしれない。もちろん見ている間は無防備になるので、比較的安全な場所で起動するのを忘れずに。
5.無理して死ぬよりは生きていた方がいい
プロは引き際が肝心。撃ち漏らした敵を無理に追おうとして無駄に深追いしたり、身をさらけ出して撃っている時にリロードが入ってしまっては、格好の餌食になるだけだ。その他にも、自分の武器で倒せない距離にいる敵を無駄に撃つよりは、仲間に報告する方がいい結果に繋がることもあるし、気付かれていないならば静かに接近するという手もある。どんな超人プレイヤーでも、死角から撃たれれば簡単に死ぬのがこのゲーム。生きていればこそ、逆転の目はある。