スマホタイトルなのにPCゲーマー向けとは? 新作MMORPG『ZEEO -ジオ-』が目指す、ハイブリットな楽しみかたを責任者に訊く

「スマホで遊べるMMORPG」と聞けばさほど目新しいものでもないが、スマホ向けでありながら「PCのMMORPGプレイヤー向け」と語るその意図は? PCゲーマーとしても要注目のスマートフォン用MMORPG『ZEEO -ジオ-』について、2015年10月4日の配信開始に先駆け、同作の責任者にその気になる仕様について話をうかがった。

●スマホで本格ハクスラ……だと!?

 2015年10月4日よりハンビットユビキタスエンターテインメントから配信開始予定の、iOS/Android向けタイトル『ZEEO -ジオ-』。ダークヒーローたる主人公たちが重厚なファンタジー世界を舞台に活躍する本格派MMORPGだ。

 海外で10年間人気を博してきた携帯アプリゲーム『Heroed Lore』シリーズの日本初上陸作品だが、ふつうの海外タイトルの展開とは大きく異なり、日本向けにビジュアル、ゲームバランス、課金モデルのすべてを再構築して配信されるという。

 パーティプレイについては、MORPGのようにダンジョンごとのランダムマッチングが可能。最大4名のパーティを組み、クォータービュー視点の画面で、ほぼタップとフリックのみの操作で移動や攻撃ができるようになっている。ダンジョンでの報酬などで手に入る装備にはさまざまな特殊能力が付くことがあり、これらを集めてキャラクターを特化させていく、ハック&スラッシュの楽しさが味わえるのだ。

「スマホタイトルもここまで来たのか」と思わされる美麗なグラフィック。遅延などがまったくなく派手に動き回る爽快なバトル。そしてそれらを彩るキャラクターボイスは、森川智之さん(ファイター役)、朴璐美さん(ソーサレス役)、緑川光さん(シャーマン役)、田中敦子さん(ガンナー役)、南條愛乃さん(アサシン役)と非常に豪華な声優陣が担当しているなど、本作の注目ポイントはさまざまだ。

 何より『ZEEO -ジオ-』はスマートフォン向けタイトルでありながら、「PCのMMORPGプレイヤーに向けて開発している」とのこと。これはいったいどういうことなのか。その意図について、まずは責任者・運営プロデューサーにインタビューで話をうかがったので、その内容をお伝えしていく。後日、プレイしてみてのインプレッションもお届けする予定だ。

▲本作の開発監修を務める中尾圭吾氏(写真左)と運営プロデューサーの上原弘靖氏(写真右)からお話をうかがった。

●PCゲーマー向け、その具体的な意図と仕様は?

──まずは、この『ZEEO -ジオ-』をPCゲーマー向けに制作したという、その意図について教えてください。

中尾圭吾氏(以下、中尾) もうだいぶ時間が経ちましたが、「スマートフォン(でゲーム)をやろう」とプロジェクトを立ち上げたとき、PCゲームを作ってきたスタッフが多かったこともあり、そんな状態でふつうにゲームを作っても、ほかの作品に負けてしまうと思ったんですね。それなら、我々ならではの「PCのMMORPGのような、ほかにはないコアなゲームを作ればいい」ということになったんです。このコンセプトは日本のスタッフともともとの『Heroes Lore』開発側とで一貫していまして、『ZEEO -ジオ-』はそのコンセプトどおりの作品になったと思っています。

──開発当初から、あくまでPCゲーマー視点だったと。

中尾 当初は、「スマートフォンのタイトルを遊んできたが、こうしたタイプのゲームを初めて遊ぶ」という方への配慮も考えていたのですが、先に触れたとおりのスタッフ陣なので、“スマートフォンで初めてオンラインゲームを遊ぶ人の気持ち”をすでにPCでさんざん遊んだ自分たちが思い起こすことが難しく、とても若い一部のスタッフにしかわからない状態だったんですよ。ですので、初めて遊ぶ感覚については該当スタッフの意見は参考にしながらも、主軸は「PCゲーマー寄りの我々がプレイしてもおもしろいものを作る」という点に注力しました。

──PCゲーマーとしてはじつに心強いコンセプトなのですが、スマートフォンのタイトルである以上、ターゲットなどを考えたときに、懸念される部分などはありませんでしたか?

中尾 けっこうありますよ(笑)。いまはキャラクターを分身にするタイプも増えてきましたが、当時のスマートフォンだとシンプルなカードゲームが多かったですし、そういう市場にPCでもコアな部類となる、ガチなハック&スラッシュのRPGは無謀という感じでしたよね。「リリースするころにはちょうどよくなるのでは?」と考えたのですが、いまになっても同様の、オプションを組み合わせて遊ぶ本格ハクスラゲームがないので、やはり無謀になってしまうかもしれませんね。

──だいぶ懸念されていますね(笑)。

中尾 課金も、ガチャからはキャラクターのレベル帯に合った装備だけが出るようにしているため、いきなり最強装備は手に入らない。そういう独自の仕様を入れた点などが受け入れられるのか、正直わからないというのが本音です。ぜんぶ課金で解決するというのは心情的にやりたくなかったので、ゲームをプレイしていくうえで「課金は時間の短縮に留める」という形で組み込みました。ですので課金でしか手に入らない要素はゼロですし、課金ポイントと同等の効果のものを、ふつうにゲームプレイでモンスターがドロップしますし、それがどんな反響を呼ぶのか、まだ実践データも何もない状態です。何のデータもないのでリリースしてみないとわかりませんね。だからいまは独自の部分が自信でもあり、最大の不安でもあるという複雑な心理です(笑)。

──課金ポイントをふつうにドロップで手に入れられるというのは、かなり衝撃的だと思います。ゲームをPCゲーマー向けに作るとなると、スマホではかなりの制限もあったかと思うのですが。

中尾 まずグラフィックについては、PCゲーマー向けのMMORPGとするなら、もっと質感などを上げたかったんですが、現段階のスマートフォンで動かすには、かなり限界のラインで、いまの状態ですでにプレイできない人が続出しそうです。ですのでPCゲーマー向けとして『ZEEO -ジオ-』はグラフィックにこだわっていたのは事実ですが、完全に納得というレベルに達さなかった以上、それをいちばんの売りとは考えていません。

──スマートフォンの小さくて解像度の高い画面で見ると、違和感は感じません。

中尾 社内で意見も募り、PCゲーマーにも許してもらえるレベルにはできるように努力は重ねました。PCのMMOならではの、装備によって見た目が変わる要素や、「戦っている」という雰囲気が伝わってくる点は、ある程度目標を達成できたと思っています。とはいえPCゲーム目線で考えると、もうちょっと盛りたくなってしまうんですよね。これはさすがにPC側に寄りすぎた意見だとは思うのですが(笑)。

──プレイさせていただいた際に、のめり込みかたというか、没入感がすごいと感じました。これはいままでのスマートフォンのゲームにはあまりなかった感覚ですね。

中尾 没入感はかなり気を遣った部分のひとつです。たとえばPCのMMORPGだと、ふつうにフィールドを歩いて景色を見ているだけでも楽しいし、世界にひたれますよね。それと同じことをスマートフォンで試したときに、メチャクチャたるかったんですよ。ですので、街やダンジョンで歩く範囲は緻密に計算して、ストレスにならない範囲でうまく盛り込めるように工夫できたと思います。

▲街の中を移動するだけでも、川の水面や橋など、PCのMMOのように凝った街並みが眺められる。スマホで遊んでいることを一瞬忘れる光景だ。

──スマートフォンのゲームは空いた時間にプレイ、というのがいまの主流ですが、これだけ腰を据えてプレイしたくなるタイトルになると、そのあたりの感覚も違ってきそうですね。

中尾 社内のスタッフのあいだですと、スマートフォンのゲームを遊んできた人はテストプレイのとき、新鮮感があるせいかずっと手動でプレイしているんですよね。逆にPCゲーム寄りのスタッフは、なぜかオートでばかりプレイしていたりするんですよ(笑)。

──逆転現象が起きていると(笑)。

中尾 こうした様子を見るに、PCゲーマー向けに開発してはいますが、スマートフォンゲーマーの皆さんにも、いままでにない新しい遊びを体験していただけるのかも? と思ったりしていますが、冒頭で述べたとおり、アバウトな推測です。

──インタビューの前に手動のモードで4人協力プレイを体験させていただきましたが、確かにいままでのスマートフォンのゲームにはあまりない協力プレイが楽しめました。

中尾 プレイしていて「そっちじゃない!」、「そこでスキル!」など、リアルタイム感のある協力プレイになるでしょうね。テストプレイ中もスマートフォン寄りのスタッフがそうして盛り上がっている横で、PCゲーム寄りのスタッフは、冷めた様子なのか、慣れた様子なのか、淡々とプレイしていまして……。「これは意図した“PC向け”ではなく、また違った方向性もあるのではないか」と軸がブレブレになっています(笑)。

●ダークヒーローが彩る、ハイファンタジーの世界観

──続いては『ZEEO -ジオ-』の世界について教えてください。

中尾 異世界を舞台にしたハイファンタジーですね。神が作り、支配している世界で、都合のいい奴隷として生み出された種族“ネベド”が、ある日空から箱舟で舞い降りた“救世主”から魔法を授かり、反乱を起こして神を封印した、という前提です。その世界に最近になって現れた種族“人間”が、ネベドに宣戦布告するわけですが、ほかにもさまざまな点で細かく作り込まれたシリアスな世界設定になっています。

──ネベドと人間という種族の違いは、ゲーム性にも関わってくるのでしょうか?

中尾 大きく関わります。人間はネベドと異なり、魔法が使えないんですよ。それが世界観にも強く反映されていて、人間は数だけは多いのですが何の力もないことに焦っていて、神の力を研究するなどいろいろなことを企みます。

──ちなみに、プレイヤーキャラクターには人間とネベドが混在しているのでしょうか?

中尾 全員が人間です。ただ、ソーサレスは改造された人間で、もうひとりのシャーマンも人間なのですが、いろいろと設定がありまして、純粋な人間ではありません。

──それらのプレイヤーキャラクターは、今回「全員が“ダークヒーロー”」ということですが、これはどういう意味でしょう。

中尾 シリアスな世界で、“いままでふつうに暮らしていた青年が、いきなり派手な技をくり出す”となってもしっくりきませんよね。だからといって本作の趣旨で序盤を地味な戦いにする作りにはできなかったんです。序盤からしっかりとした剣筋や派手な技での戦いをくり出し、そして世界観に根ざした壮大な戦いが序盤から始まるので、ふつうの人間ではまず戦えない戦場なんです。ですので、たとえばファイターなら元は共和国の大隊指揮官だったり、アサシンならいちばん名の売れた暗殺者だったりします。

──最初から強い人々なんですね。

中尾 そうですね。ストーリーで語られるとおり、彼らはそれぞれ“転落者”でして、人間社会から見ると全員完全にはみ出し者です。ですので、全員邪道な戦いかただったり、残酷な戦いをします。中盤からは“人間には魔法が使えない”という設定についても、プレイヤーキャラクターたちは進化し、魔法の力を使えるようになっていきます。

──先ほどファイターを使わせていただきましたが、確かに剣と魔法を組み合わせたり、残忍な技もいくつか持っていましたね。

中尾 ファイターはとくに格段に残酷です。脊髄に剣を刺してグリグリとやって、「根本が壊れる音を聴け」など言い出しますし、それにもストーリー上のいろいろな意味があるんですよ。ダークとはいってもそれぞれに信念があり、そこがブレないのがヒーローたるゆえんとなっています。

──信念というのはたとえば?

中尾 たとえばファイターなら、戦場の英雄として人々から憧れられていましたが、ある事情によって戦いに光などないと考えるように至ります。「残酷に相手を倒すことで戦いを美談にせず、戦いの本質であるむごさを伝えていくことで戦いは減る」と思っているんですね。転落したことで信念が一般の価値観と違うところに落ち着くんです。そうした彼らの信念や物語とは別に、さらに大きなストーリーが展開し、それに彼らが巻き込まれていくのがメインストーリーとなっています。

──そうしたむごい技など、各キャラクターの特徴的な技は、ぐいぐいと寄っていくカメラワークでもしっかり強調されていますね。

中尾 バトル部分は、ほかのプレイヤーのマシンへの負担を気にしなくていいMORPGですから、小さなスマートフォンの画面で観ても迫力のある派手な技が欲しいと。もともとは全員が英雄だった設定も活かし、常人を超えた動きで派手にスキルを放ちます。

▲こちらがファイターの技の一例。敵の頭上から背骨へと剣を深々と刺し、容赦なくえぐる。スキル使用時の掛け声も、容赦のないものばかりだ。

──続いて、そのキャラクターたちのボイスを担当する声優さんの選定基準について伺わせてください。

上原弘靖氏(以下、上原) キャラクターは皆“転落者”。元は英雄だったりした彼らが国に追われるような身分になったいま、やはり何かネジが飛んでしまうんです。一般常識とは異なる価値観になってしまうわけです。そうした濃さに加えて、キャラクターのグラフィックも重厚でリアルですし、明るい雰囲気の作品で活躍されている声優さんですとイメージが合いづらいと思いまして、今回は重さを表現する演技力を最重視してお願いさせていただきました。なお、アサシンだけは産まれながらの戦闘の天才でして、ほかのキャラクターとはコンセプトが大きく異なるので違う基準で選定しています。

──一覧を拝見するだけでも、アニメやゲームだけでなく、洋画の吹き替えなどで活躍されているベテランの方ばかりですね。

上原 最初は依頼を受けていただけるか不安だったのですが、受けていただけたうえに熱演していただき、何よりでした。スマートフォンのゲームですと電車内などでプレイするため、音を消してプレイする方も多いと思いますが、部屋でプレイするときなどには音を出してプレイしたくなるような、そんな狙いも込めたキャスティングになっています。

──そうした名優の方々が、非常にダークなセリフを叫んでいるのも印象的です。

上原 キャラクターの生い立ちやセリフのダークさについては、日本で受け入れられるか不安で、薄めるか濃くするか話し合いましたが、けっきょくは「より濃くしていこう」という結論になりました。ここもやはりほかの作品と被らずにありたい部分でしたし、重厚な世界観やダークヒーローというコンセプトを貫いて勝負していきたいと思いまして。

▲スキル使用時のボイスはキャラクター選択時にも試聴できたが、ファイター(森川 智之さん)の「死臭が肺を満たす……抑えられない……!」、ガンナー(田中敦子さん)の「ブチこむよりブチこまれるほうが感じるんだろ?」など、じつに強烈なセリフばかりだった。

──これだけのセリフとなると、収録もたいへんだったかと思いますが……。

上原 収録は別の明るい雰囲気のタイトルと並行して行なっていたのですが、その明るいタイトルに続いて『ZEEO -ジオ-』の収録に移った途端、がらっと空気が変わるんですよ。ふつうはもうちょっと和気藹々とやるものなんですけど、「もっとエグくお願いします」、「もっと親の仇を睨むような感じで!」なんて指示が飛び交ったりしまして。

中尾 その影響が大きいあまり、最初は先に録音していた明るいほうのタイトルを、収録順で後ろに変更したくらいでした。せめて帰るときには皆さんに明るい気持ちでいていただきたくて(笑)。