“インディーゲーム開発者のパーティー”は誰がために? INDIE STREAM FES2015リポート【TGS2015】

2015年9月17日から9月20日まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2015。その開催期間に併せて19日に行われた、インディーゲーム開発者向けパーティー“INDIE STREAM FES 2015”の模様を、2年前よりインディゲームの動向を追ってきたライターの視点で、リポート。

●ある意味カオスなINDIE STREAM FES2015の模様をリポート

 2015年9月17日から9月20日まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2015。その開催期間に併せて19日に行われた、インディーゲーム開発者向けパーティー“INDIE STREAM FES 2015”の模様を、2年前よりインディゲームの動向を追ってきたライターの視点で、リポート。


●世界中のインディーゲーム開発者が注目する一大交流イベント

 飛び出す絵本風アドベンチャーゲーム『Tengami』をリリースしたNyamyam・東江亮氏、2D遺跡探険をテーマにしたアクションゲーム『LA-MULANA2』を開発中のNIGORO・楢村匠氏が発起人となって始まった、”INDIE STREAM”。日ごろ孤独な環境で開発に没頭するインディーゲーム開発者たちが、気軽なスタイルで交流できる場がほしい……との思いから、2013年より、東京ゲームショウ開催のタイミングにあわせて都内近郊で開催されてきたパーティーも、今年で3回目となりました。会場となった幕張メッセ近郊のフランス料理店“グラン・サウスオーシャンズ海浜幕張”は、前回(幕張メッセ国際会議場ホール)、前々回(SSJ品川ビル内社員食堂)に比べると定員数がやや少なめですが、そこには、スポンサー企業の大がかりなバックアップがなくても、自分たちの手で無理なくフェスを続けていける規模を模索した上での判断があったとのこと。とはいえ定員約250人の会場内にはつねに人の動きが生まれ、シーン特有の活気に満ちていました。

▲パーティーは、高機能ゲーム開発エンジン”Unreal Engine”を提供するエピック・ゲームズ・ジャパンが提供した樽酒の鏡割りからスタート(写真は、左から東江氏、エピック・ゲームズ・ジャパン河崎高之氏、楢村氏)。

▲バイキング形式の料理とフリードリンクを楽しみながら、思い思いに歓談する参加者たち。ホール外の通路は展示スペースとして、企業ブースやインディーゲームの試遊機が並んでいました。

▲インディータイトルのパブリッシングも積極的に行っていくというデジカ。企業ブースでは、Steamを運営する米ゲームメーカー・VALVE社の、日本版オンラインストアで取り扱い予定の公式グッズが、先行販売されていました。

▲オニオンゲームス代表の木村祥朗氏がメインパーソナリティを務めるネット番組「ポリポリ☆クラブ」が、去年に続き、会場での生放送を敢行。レギュラーゲストのZUN氏はじめ、会場にいるインディーゲームクリエイターや業界著名人が、かわるがわる出演したようです。

●INDIE STREAM AWARD──”ライバル”も思わず唸る珠玉のインディータイトルを表彰

 新しい時代を切り開くゲームコンテンツの創出を目指し、前回(INDIE STREAM FES2014)より始まった、INDIE STREAM AWARD。インディーゲーム開発者みずからが審査員となって、同志でありライバルでもあるクリエイターの作品を選出するアワードということで、メディア選出とは異なる“重み”があるアワードといえます。

 アワードは、パーティー開始早々にノミネートされた10作品が紹介され、そのまま各アワード受賞作が発表されました。『Thumper』の三冠受賞に、会場は大いに盛り上がりました。

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▲大賞“BEST OF INDIE STREAM”をはじめ、“BEST OF SOUND”、“BEST OF TECHNICAL ARTS”の3つのアワードを獲得した『Thumper』の開発者、ブライアン氏(右からふたり目)。昨年のINDIE STREAM AWARDでは『メゾン・ド・魔王』で3冠を達成し、今年は運営側にまわったプチデポットの川勝氏(右端)も、バトンを渡すような面持ちでプレゼンターを務めていました。

▲“BEST OF ART”ならびに“BEST OF GAME DESIGN”のアワードを受賞した『Dreeps:アラームプレイングゲーム』の開発者、平岡氏(左)と渡辺氏(右)。昨年のINDIE STREAM FESのライトニングトークで紹介した作品で受賞できたことに、感慨深げでした。

▲“BEST OF NARRATIVE”を受賞した『RETSNOW』の開発者Somi氏は、韓国の個人インディーゲーム開発者。「最近は、子供の世話を楽しみに過ごしていたので、こういった華やかな場に出られるのが不思議な気分です」(Somi氏)。

●ライトニングトーク──作品・活動をアピールしたいやつみんな来い!!

 事前登録したインディーゲーム開発者および関係者が、自身の作品や活動について、2分間の制限時間内で自由に発表できる、ライトニングトークコーナー。参加者の要望を反映する形で、去年の10組から一気に倍増の20組が、登壇しました。スピーカーのキャラクター性やトークの巧みさで注目を集める者、多くを語らず作品のムービー自体の魅力で勝負する者……などなど、アピールのしかたは千差万別。パーティーに華を添えるとともに、新たな交流のきっかけとなっていました。昨年に続いてライトニングトークコーナーに参加したある開発者は、「参加して劇的に何かが変わるわけではないですが……」と言いつつも、作品をアピールできる場の重要性を感じているようでした。

▲じつは記者も、制作中のインディーゲームを紹介するスピーカーのひとりとして、登壇(写真は、順番をつぎに控えている場所からの一人称視点)。スピーチのペース配分を誤り、最後のスライドまでたどり着けなかったものの、内容的にはキリがよかったので、まあよし。

■ライトニングトーク・ダイジェスト【作品編】

▲17世紀の実在科学者となって名声を高めるシミュレーションゲーム『PRINCIPIA PERFECTUS(プリンキピア・ペルフェクトゥス)』(tomeapp)。第4回アスキーエンタテインメントソフトウエアコンテスト(2000年開催)準グランプリ受賞作『PRINCIPIA』の完全版として、2015年12月リリースを目指しているとのこと。

▲兄弟で異なるジャンルのゲームを開発するピコリンネソフトは、東京ゲームショウ2015のインディーゲームコーナーに出展した縦スクロールシューティング『Battle Crust』とともに、育成RPG『ディスクリーチャーズ』を動画で紹介。

▲『AGARTHA』(神奈川電子技術研究所)は、フィールドに環境シミュレーション要素を導入したアクションゲーム。現在は基礎部分が完成し、これからゲームの方向性を決めていく段階とのこと。

▲スマートフォン用ローグライクRPG『ドラゴンファング』(トイディア)が、ニンテンドー3DS用ソフトとしてリリース決定との電撃発表も!

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■ライトニングトーク・ダイジェスト【スピーカー編】

▲VRとボードゲームを組み合わせた新しい遊びを紹介する、ギフトインダストリ。プレイ中に使用する簡易ゴーグルを用いながらゲーム内容を説明するものの、惜しくも途中で時間切れ……。

▲パズルゲームを中心に、数々のフリーゲームをひとりで手がけてきた、㊥Maruchu氏。今回は新作紹介ではなく、氏がゲーム開発時に考える「いいパズルについて」の考察が、勢いよく発表されました。

▲パブリッシャーがデジカに決定した3Dポリゴンアドベンチャーゲーム『Back in 1995』の最新PVを紹介する、Throw the warped code outの一條氏。この後、シンラ・テクノロジー・ジャパンのスポンサーPRでも登壇。

▲開発中の2Dアクションパズル『JumpGun!』を紹介する、チームヒロポン。海外からの来場者を意識してか、英語での掛け合いに、果敢に挑戦していました。

●スポンサー・ゲストセッション──インディー開発者の気になる話題いろいろ

 前回は大々的に時間枠を割いていたスポンサー・ゲストセッションですが、今回はふたつと少なめに。その内容も、企業アピールや速報性の高い発表というよりは、インディーゲーム開発者が関心を寄せる部分に的を絞ったものでした。フェスに先がけて公式サイトで発表された、楢村氏のコメントの一節「スポンサーには「壇上に立たせないけど金とネタを出せ」という態度で臨む」を有言実行した形となりましたが、その背景には、スポンサー企業側の、日本インディーゲーム・シーンの“温度感”に対する根本の理解があってこそ……との印象も受けました。

■日本マイクロソフト

 日本マイクロソフトが推進する、独立系ディベロッパー支援プログラム“ID@Xbox”。その国内リリース第1弾ソフト『EARTH WARS』(XboxOne/プレイステーション4)の紹介と、開発したワンオアエイトによる、ID@Xboxを利用したゲーム開発の感想スピーチが、日本マイクロソフトの村山功氏の進行によって行われました。

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 ワンオアエイトの取締役・黒木崇氏は、「私たちのような小規模のディベロッパーが、開発機を2台無償で提供されたのは、とても助かりました」とコメント。また、ストア配信時の手続きが、海外マーケット向けの手続きも合わせて一度で済ませられる点も評価しました。

■龍プロダクション

 海外インディーゲームの中国マーケット導入と、中国製インディーゲームの海外展開援助、および独自タイトルの開発を行う龍プロダクション。同CEO劉博文氏は、2009年にIGF(Independent Games Festival)が中国に導入されて以降、活動が表面化した中国インディーゲームシーンの将来性を高く評価。みずからの活動が「日中ゲーム業界の架け橋」となること高らかにを宣言しました。

▲日本生まれ日本育ちの中国人、劉氏は、日本および中国のゲーム文化への理解と、中国ゲーム業界への太いパイプを強みに、日中友好を促進するとのことです。

■エピック・ゲームズ・ジャパン

 エピック・ゲームズ・ジャパンのセッションでは、 『Bloodstained Ritual of the Night』のディレクター・プロデューサーを務めるArtPlayの五十嵐孝司氏と、同タイトルの開発を手がけるインティ・クリエイツの代表取締役・會津卓也氏が登壇。河崎氏の進行のもと、開発エンジンにUnreal Engine4を選んだ理由と、実際に使用してみての感想を語りあいました。

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▲制作中のゲームをイメージしてか、ムチを手に語る五十嵐氏(左)と、インティ・クリエイツの會津氏(右)。

 『Mighty No.9』などの開発にもUnreal Engine4を使ってきたというインティ・クリエイツの會津氏。「Windows PCベースで開発することで、他のプラットフォームへのコーディングがしやすく、コスト削減につながる」と、選択の理由を語りました。また、五十嵐氏が「Unreal Engineは“まず形にすること”に優れたミドルウェア」と指摘すると、Kickstarterによる過去2回のクラウドファンディング経験から、モックアップ(完成版をイメージした試作バージョン)の制作のしやすさも評価しました。「自分たちが作っているものがすぐに遊べる状態になると、開発のモチベーションが上がります。Unreal Engineだと、それが少人数チームでも実現できるんです」(會津氏)。

■アン・フェレロ氏

 アン氏は、日本のカルチャーを海外に紹介するテレビ番組制作に携わる、フランス人映像作家。クリエイターへの取材映像を中心に、日本のインディーゲーム・シーンの“いま”を描くドキュメンタリー映画『Branching Paths : A journey in Japan’s independent game scene』(ASSEMBLAGEとの共同制作)の公式ティザーを紹介しました。

 オニオンソフトの木村氏のアドバイスがきっかけで、2年前から日本のインディーゲーム界を追い続けてきたというアン氏。「フランス人のゲームファンは、日本が生み出す奇抜なゲームが大好きです。しかし現在では、それらは大きい企業では作られなくなってしまいました。そうした意味でも、(何か新しい作品が飛び出す可能性がある)日本インディゲーム・シーンには、注目が集まってます」と、映像を撮り続ける理由について語りました。完成は2016年1月の予定です。

▲日本インディーゲーム・シーンへの愛ある眼差しが伝わる、1分半の美しい映像に、会場はイベント中一番の歓声に包まれました。

おわりに──
 前々回、前回とメディア関係者として参加したINDIE STREAM FES。今回、ライトニングトーク登壇者としても参加しての率直な感想は、「ゲームを作ることしか考えていないクレイジーな“純粋インディー”が主役にならなければならない」という本イベントのコンセプトに、より忠実な形になってきたなぁ、というものでした。過去2回は、インディーゲーム・シーンそのものの認知度を高めるという主催側の使命感が強く出る形で、“メジャー・シーンとの接点”、“ステージの上昇”を印象づけられるセッションが多かったのですが、今回はそうしたテーマの表出がなりを潜め、INDIE STREAM FESという空間独自の魅力が、会場内や進行面で重視されていたように思います。イベントとしての盛大さが後退したこと、“ビジネスのにおい”が薄らいだことで離れていく人がいる一方、インディーゲーム開発者が本当に打ち解けたい人と出会える場としての成熟があれば、それは大きな“前進”といえるのではないでしょうか。私自身、取材(仕事)などの大義名分でもない限り他者と積極的にコミュニケーションを図れない自意識過剰ライターですが、今回、制作中のゲームを発表する機会を得たことで、フェス参加者にその場で話しかけられ、温かい感想をいただくという経験ができました。ふだんであればこちらが取材する側として接する著名ゲームメーカーの方々と、“自作のインディーゲーム”という話題のみでつながれたことが衝撃であり、これも参加者どうしの物理的・心的距離の近さがあってこそ……と実感しました。

 回を重ねるごとの試行錯誤によって、その理想形を模索し続けるINDIE STREAM FES。来年、どのような形で開催されるのか、いまから楽しみです。