『World of Warships』あの船この船の貴重な図面、お見せします! 軍艦スペシャルトークステージ【TGS2015】

2015年9月18日、東京ゲームショウ2015のウォーゲーミングジャパンブースにて、9月17日より正式稼動が開始された『World of Warships』のトークショーが行われた。同タイトルの精緻な艦船のグラフィック、その礎となる資料と制作作業行程の秘密に迫る。

●艦船作成に必要な情報量はケタ違い

 2015年9月20日まで千葉・幕張メッセにて開催中の、東京ゲームショウ2015(以下、TGS2015)。ビジネスデイ2日目となる9月18日、ウォーゲーミングジャパンのブースにて“『World of Warships』(以下『WoWs』)軍艦スペシャルトーク”ステージが開催された。

 こちらのトークステージのスペシャルゲストは、戦史・兵器研究家の小高正稔氏。このステージの前に行なわれた『World of Tanks』トークステージから引き続き、ウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザー宮永忠将氏も登壇した。

▲小高氏(左写真)は数多くの戦史研究本に携わり、これらの本の奥付を見れば、ほぼその名前が書かれているというほどの人物。宮永氏(右写真)ともども、稀に見るスペシャリストふたりが揃ったのだ。

 ステージではまず『WoWs』のPVを上映し、ウォーゲーミングならではのリアル志向で作り上げられた戦艦や巡洋艦のCGモデルの数々を再確認。宮永氏いわく、「『World of Tanks』でもっとも重いクラスの戦車は100tだが、『WoWs』ではその戦車1台ですら船の砲塔ひとつぶんに満たず、そのモデル作成に必要な情報量もケタ違いになる」という。

 今回のステージでは『WoWs』開発最初期から、艦船の再現に協力しているという小高氏が持参した貴重な艦船の図面とともに、これらの艦船のモデルが完成するまでのさまざまな過程が解説された。その貴重な図面を順を追って紹介しつつ、解説の模様をお伝えしていこう。

●貴重な資料が続々!

 まず紹介されたのは、有名な艦船でありながら公式の図面がほとんど残っておらず、戦時下ではまともな艦影の写真さえ残らなかったという正規空母・翔鶴。『WoWs』ではすでに再現されているが、その図面を同じ正規空母・赤城のものと比較してみると、いかに情報が残っていないかが素人目にも理解できた。

 そもそも艦船の図面は、板1枚のみのための図面など、船体以外にも細部にわたり、1隻で何千、何万枚もの図面を有する艦船もあるとのこと。その図面が日本艦船の場合は圧倒的に残っている枚数が少なく、翔鶴のモデルもほかの艦船などを参考に、図面がない部分は推測や検証を重ねて作り上げられているという。

 たとえば装甲空母・大鳳の飛行甲板については、ラテックス装甲張りと板張りの二説があるが、図面や資料に確かなものはない。だが改大鳳型の空母・白龍の甲板は板張りであったこと、艦載機の発着のために甲板にさまざまな機構を搭載しなくてはならないことなどから考えると、板張りであったと結論付けたとのことだ。

▲実際のゲームでのモデルと、翔鶴の図面を比べてみると、いかにパーツの情報が少ないかがわかる。

▲こちらが正規空母・赤城の図面。この細かに書き込まれた情報量は、翔鶴の図面とは比べ物にならない。

▲こちらは翔鶴の艦首、艦尾の機銃配置図。配管1本でさえ精密に再現できる『WoWs』では、どこに何が配置されていたかを示す、こうした資料は非常に貴重となる。

 続いて紹介されたのは、『WoWs』で実際の艦船モデルを製作する過程。まず全長などの枠組みが決まり、そこに平面図を重ねるようにして情報を蓄積し、船体や艦橋に肉付けがされていく。

 さらに砲塔や魚雷発射管などの各パーツは、別の数十のチームが並行して作成。ウォーゲーミングの開発部では、新人は一週間“アカデミー”と呼ばれるきびしい試験過程を経てその適性を試され、最適なチームへと配属されていくとのことだ。

▲実際の艦船は、船体から艦橋へ、下から上へと作り上げられていくのが一般的だったが、大和は環境を別の場所で作るなど、ウォーゲーミングの作りかたに少し通じるものがあったようだ。

 さらに、巡洋艦・青葉と戦艦・大和の図面が紹介された。こちらは翔鶴や大鳳などといった、図面や資料が残っていない艦船と比べ、かなりの資料が残されている。このように艦船ごとに残存資料の量にムラがある点も、開発陣からすると悩ましい点らしい。

 なお、この青葉の図面も小高氏から提供されたものだが、入手経路は古書店で、顔なじみの店の方から「入荷した」との連絡をもらって駆けつけたそうだ。

▲青葉の図面と異なり、大和の図面は煙突と煙突基部という変わり種が紹介された。煙突内に爆弾などが素通りしないように細い装甲板が渡されているなど、細かな工夫も記載されている。

 ついで紹介されたのは、巡洋艦・妙高の図面。魚雷発射管の部分に旋回範囲が記されており、さらに断面図により平面図では不明だった船体のカーブや、装甲の配置がわかったという。『WoWs』でよくバイタルパートを抜かれる弱点についても、こうした資料や検証からしっかり導き出された位置のようなので、納得すべし。

 このように図面によっては細かな情報が書かれてはいるが、小高氏いわく、「当時はこうした図面どおりの建造が行なわれていたわけではなく、現地の判断で「階段はこちらにあったほうが便利」などと、図面からの変更がされていたことも多々あったらしい。

▲日本艦船の図面は圧倒的に足りないものの、図面さえ揃えばいいというわけでもない。『WoWs』の艦船再現がいかにたいへんな作業か痛感できる逸話だ。

 時間ギリギリとなってもステージでは、駆逐艦・長月や巡洋艦・能代、実際には建造されなかった戦艦・妙義、さらにはラバウルの海図と、小高氏が所有するじつにおもしろい図面の数々が紹介された。

▲長月の図面資料は、なんと断面図しか残されていないとのこと。

▲こちらは能代の後部艦橋の図面。どこが前で後ろなのか、どこがどうつながるのか、ジグソーパズルのような状態だ。

▲ゲーム内ではその勇姿がすでに見られる妙義。総トン数に収まるように各積載物の重量を調整したと見られるメモがあり、第一人者ともなればこのメモからだけも艦船の再現に近付けるという。

▲こちらのラバウルの海図も、小高氏所有の資料。ステージ作成の際に防衛施設などをどこに配置するかなど、さまざまな点で実際の海図を参考にしたくて借り受けたとのこと。

 こうして閉幕となったステージだったが、宮永氏が最後に、『WoWs』開発開始段階のころからあらゆる艦船の再現において縁の下の力持ちとなってくれている小高氏を、「我々の秘密兵器」と称したのがとくに印象に残った。

 資料収集と検証を重ね、細かな部分の再現にまでこだわり、1隻のモデルが完成するのには6ヵ月、開発陣の希望としては9ヵ月が費やされるという。ぜひプレイヤーの皆さんには、新たな艦船の追加に期待しつつも、そのたいへんな作業に関わる皆さん、そして我々の目には触れない場所で尽力している“秘密兵器”の皆さんを応援していただきたい。

▲艦船の図面は一般の人でも、呉の大和ミュージアムに併設された無料の資料室のほか、平賀譲デジタルアーカイブのように、Web上でも見られるとのこと。興味を持った人はぜひ閲覧してみてほしい。