『PSO2』の特徴的なサウンド表現が実例で説明されたセッションの模様をリポート【CEDEC 2015】

ゲーム開発者会議・CEDEC 2015の8月27日にて行われた“それからのPSO2BGM:プロシージャルを利用したオーダーメイドな場面表現・サウンドツールとプログラムの連携による簡略化”セッションでは、『ファンタシースターオンライン2』におけるサウンドシステムが、どのように生まれ、進化してきたかが実例とともに説明ていった。

●『PSO2』ならではのサウンドを実現する“Sympathy”システム

 2015年8月26日~28日の3日間、パシフィコ横浜にて開催された日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2015。8月27日にて行われた“それからのPSO2BGM:プロシージャルを利用したオーダーメイドな場面表現・サウンドツールとプログラムの連携による簡略化”セッションでは、『ファンタシースターオンライン2』(以下、『PSO2』)におけるサウンドシステムが、どのように生まれ、進化してきたかが実例とともに説明されていった。

▲講師は、セガゲームス第二CS研究開発部サウンドデザイナーの小林秀聡氏と、オンライン研究開発部プログラマーの増田 亮氏。ともに“Sympathy”システムを含む『PSO2』のサウンドを作り上げてきた立役者だ。

 『PSO2』プレイヤーならご存じだろうが、同作のBGMは“Sympathy”という独自のシステムによって、“聞くたびに楽曲構成が変わるBGM”が実現されている。これは、クリップと呼ばれる数秒程度のフレーズを大量に用意し、ゲーム内のシーンや盛り上がりに応じて組み合わせて再生するという仕組み。“Sympathy”があることで、移動中戦闘中のBGMが切れ目なくスムーズに切り替わるなど、シーンや状況に応じた、多彩なサウンド演出が可能となっている。

▲“Sympathy”システムの概要。独自のシステムが生み出すサウンド体験が高く評価をされ、アンケートでは19パーセントのユーザーがサウンド・BGMを支持していると明らかにされた。

 2012年7月の『PSO2』稼動より約3年が経過したいまでは“Sympathy”システムはさらなる改良がなされ、より細やかな演出への対応や、視覚的にわかるデバッグ機能、エディタそのものの強化などが行われ、より(開発スタッフが)使いやすく、幅広いサウンド演出が可能となったという。

▲“Sympathy”システムの仕組み。複数の音源が開発者が定めたルールに乗っ取り、変化し続けるBGMを生成していく。

▲作成した楽曲を“Music Editor”というツールを使って、ゲーム中で鳴らすためのデータへと落としこんでいく。セッションでは実際にツールを動作させての実演が披露され、状況ごとに切れ目なく変化していくサウンドを鳴り響かせた。

▲開発・運営が続く『PSO2』にあわせて“Sympathy”システムもバージョンアップしている。

●“Sympathy”でどのような演出が可能か?

 後半は、現在の“Sympathy”でどのような演出が行えるかの表現例が、実演や映像によって披露されていった。セッションでは実際に使われた動画をお借りすることができたので、論より証拠としてそのサウンド演出の妙を、その目でご確認いただきたい。

1.フォールドBGM編(1)

 “究極のランダム&盛り上がり”を目指して考えられた仕組み。本来ならばメロディーと対になるコード進行を複数用意し、毎回変化させることでさまざまなバリエーションを生み出すというものだ。詳しい手順はスライド画像を確認してほしいが、一度作曲したものに別のコード進行を考え、また複数のアレンジが簡単に作れるような効率化を行うなど、従来よりもう一歩踏み込んだツールの使いかたがされている。

▲コード進行そのものを毎回違ったものにするという、くり返し遊ぶゲームならではのサウンド演出を実現。手順としては、楽曲を作成→別のコード進行を制作→曲の中で使いまわせるフレーズを制作→同じ和音を間引いて抽出・出力と、通常より多くの手間をかけて作られている。

2.フォールドBGM編(2)

 エピソード3より登場した新エリア“白の領域”での演出。このフィールドでは新たに、屋根に登れる仕組みが導入された。BGMもそれにあわせて「登りたいという気持ちを持たせるように」(小林氏)したという。具体的には、メロディーラインは同じままに、階層ごとに異なるアレンジとなるように楽曲を制作。あらかじめ2種類の伴奏を用意しておき、ゲーム中のキャラクターの高さをキーに、変化をさせるようにしたとのことだ。

▲フィールドの“高低”によってBGMの伴奏が切り替わる仕組み。ゲームの仕様にあわせて、さまざまなサウンド演出が考案されていく。

地形に合わせた演出

3.ボスBGM編

 “Sympathy”を使った以外にも、興味深いサウンド演出も行われている。ブリュー・リンガーダというボス戦では、ボスが投擲する巨大なリングにBGMの一部が割り付けられており、リングがプレイヤーに接近するほどにストリングス(弦楽器)の音が高まり、それによってバトルの緊張感がさらに高まっている。

SEとBGMの連動

4.ミニゲーム編

 こちらもエピソード3より実装された、カジノゲーム“メセタンシューター”での実例。“Sympathy”の新機能であるパート指定機能を使うことで、ゲームの盛り上がりに合わせてBGMのテンポを(楽曲のフレーズはそのままに)変えることが可能となったそうだ。

パート切り替えによるテンポの変化

5.クエスト編

 2015年初頭に開催された限定クエスト“混沌に戸惑う白き都”のボス戦では、当初はプレイヤーと共闘してくれるNPC・クーナの歌声をそのまま再生する予定であった。だが、より共闘感を出すために、クーナがいないときはカラオケ(オフボーカル)状態に、クーナが来てくれたときにはボーカルが入るように変更。しかも、いかに自然にボーカルが入る(抜ける)かを模索した結果、小節単位ではなく“歌のフレーズ”で区切ることで実現をしたという。

6.マイルーム編

 最後の実例紹介は、マイルームに置かれた楽器でセッションができる機能について。用意された13種類の楽器を自由に選び、最大12名でのセッションができるのだが、(楽器の音を)ストリーム再生ができるのは、仕様上4チャンネルまで。圧倒的に足りない音数をどう補ったかというと、あらかじめ複数の楽器をミックスした音源トラックを用意しておき、その組み合わせを変えるという、ある意味力技で13種類の楽器の再生を実現しているとのことだ。

▲マイルールでのセッションをどのように実現したかを説明するスライト。4チャンネルしかないストリーム再生だが、あらかじめ複数の楽器どうしをミックスした音源を鳴らすことで擬似的なマルチチャンネルを実現している。

▲男性ボーカルを入れようと思い立った小林氏。急遽セガの誇るサラリーマン・ボーカリスト光吉猛修氏に歌ってもらうことで、さらなるバラエティー感を生み出したのだとか。

 こうしてさまざまに進化を遂げている『PSO2』のサウンド。今後の展望としては、より演出面も大事にしていきたいとし、ゲームだからできる音楽にて「感動体験を与えること」(小林氏)を続けたいと結び、セッションは終了した。

※ご提供元のご事情により、一部動画を削除させていただきました(2015年9月10日午後5時30分)