土田晃之&ふなっしーも「ぜひ体験して」と太鼓判

 2015年9月11日(金)より、神奈川・横浜に3DCGホログラフィック専用劇場“DMM VR THEATER”がオープン。オープンに先駆けて、本日9月1日(火)にはオープニング記者発表会が開催され、コンテンツの一部などが公開された。

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▲施設定員は385名。ロッカーやドリンクカウンターなども完備している。

 “DMM VR THEATER”は、Zeppホールネットワーク、相鉄エージェンシー、DMM.futureworks、ローソンHMVエンタテイメントの4社からなる“シアターVR有限責任事業組合”が設立した、常設の劇場型施設。古くから演劇などに活用されているペッパーズ・ゴースト(視覚トリック)と最先端の技術によって、キャラクターや人物があたかも“そこにいる”かのようなVR(バーチャルリアリティー、仮想現実)体験を共有できる。

 本劇場のこけら落とし公演は、9月11日(火)から上演が始まる“hide crystal project presents RADIOSITY -prologue-”(公式サイトはこちら)。生誕50周年を迎えるX JAPANのhideにフィーチャーしたもので、最新のサイネージ技術を駆使したホログラフィック演出により、音楽シーンに多大なる影響を与えたhideのライブパフォーマンスが初めて実現することとなる。今回の記者発表会では、公演の一部であり、いままで観客の前で披露されたことのなかった名曲『ピンク スパイダー』が初お披露目。その模様も併せてお届けしよう。

「“DMM VR THEATER”に比類するものは世界各国どこにもない」

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▲黒田貴泰氏

 発表会ではまず、DMM.futureworks CEO 代表取締役でTHEATER VR事業総合プロデューサーを務める黒田貴泰氏が、劇場の機能や特徴に関する解説を行った。その内容はもちろんのこと、まるでSFアニメのような演出にも注目していただきたい。音楽ライブや演劇など、生身の人間が登場しない公演が想定されている“DMM VR THEATER”だが、このように生身の人間とCGが融合したかのような演出も可能。企業のプレゼンテーションやイベントなどの用途にも活用できるだろう。

 “VR”といえば、近年ではOculus RiftやProject Morpheusなど密閉型(没入型)のウェアラブルヘッドマウンティングディスプレイが認知され始めているが、これは映画の3D視差で見せるような表現に近く、2枚の異なる映像を重ねあわせることで立体映像を楽しめる。一方でこの劇場のステージはGoogle Glassのような透過型VRデバイスに近く、それらと同様の仕掛けをステージ上に設置することで、“開かれた空間の中に存在しないはずのキャラクターや人物が登場する”という視覚体験が実現する。

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 そして“ないはずのものがあるように見える”ために導入されている原理が、“ペッパーズ・ゴースト”だ。これは1800年代からおもにヨーロッパの舞台演劇などで幾度となく援用されているもので、テクノロジーというよりは「自然現象に近い」(黒田氏)原理。ステージ下の隠し部屋にいる人の姿をガラスなどの反射を利用して投影し、“ステージ上の人がいるかのように見える”という錯覚を導き出すテクニックだが、“DMM VR THEATER”では、床面に敷かれたLED映像を透明なフィルムに投影することによってこの原理を活用している。“ペッパーズ・ゴースト”の援用について黒田氏は「最新の技術だけに頼るのではなく、原理としては使い古された安定性のあるものを使用していかなければ、エンターテインメント施設として成立するのが非常に難しい」と語り、ただ“新しいだけ”ではないエンターテインメント性を追求したことを明らかにした。

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▲ペッパーズ・ゴーストを活用した古来の舞台演劇。これと同じ原理で、客席からは見えないフィルムが舞台上にある。

 では床面に敷かれているLEDとはどういったものか。これは“世界最狭クラスの1.9mmピッチLED”で、黒田氏いわく「詳しい方からすると、かなりムチャな使いかたをしていると思われるかもしれません」。非常に高精細で解像度も高く、光量も強いLEDを利用しているというのが大きなポイントで、ペッパーズ・ゴーストを活用した舞台演出は数あれど、「この規模でこの完成度、この明るさ・クオリティー、すべての要素を兼ね備えて投影されている劇場は、“DMM VR THEATER”に比類するものは世界各国どこを見てもありません」と黒田氏が断言するほどのものだ。ちなみにステージ上では、LEDを反射するフィルムと背面に設置されたビジョン、前後2層の映像レイヤーで奥行きが表現される。

 このように最先端のテクノロジーが結集されている本劇場だが、黒田氏は、劇場施設という“ハード”面だけが重要なのではなく、どんなコンテンツを制作するかという“ソフト”面を非常に重要視するという。先述のようにこけら落とし公演は“hide crystal project presents RADIOSITY -prologue-”となるが、「CGに詳しい方からすると驚かれるようなレベルの作り込み」(黒田氏)がなされている。ここでステージに投影されるhideをアップにした画像が登場(下図)。写真にしか見えないがこれはCGで、毛穴や髪の1本1本、瞳の光彩まで再現できるように作られているという。黒田氏によるとこの作り込みこそがポイントで、「客席から見ると、“表情の細かいニュアンスはわからない”というのが一般的な通念。ところが、表情を作り込んでいるかいないかによって立体感やリアリティーは変わる」と、その重要性を熱弁。ハード面のみならず、「ステージ上に投影される像自体も、規格外のCGを作っている」(黒田氏)と、ソフト面においても大きな自信を覗かせた。

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 ここで黒田氏は、人間らしさの追求に付随する“不気味の谷”現象に言及。これは、映像のリアリティーが増すほどに実在感も上昇するが、ある地点に到達すると一気に実在感が激減し、“気持ち悪い”と感じてしまう――つまり、“人間に近づきすぎると人間に見えず、嫌悪感を覚える”というもの。下図で言うと“B”にあたる部分が“不気味の谷”に相当するが、従来のホログラフィックやCG表現では、なかなか“B”を超えるものが生まれてこなかった。黒田氏が目指すのは「ハードウェア的にもソフトウェア的にも、“不気味の谷”を越えて、より人間に近い“C”の領域をさらに超えたもの」。そのうえで重要になるのが、ただ“人間っぽい”だけではない、その先のエンターテインメント性。人間らしさの追求も最低限重要ではあるが、黒田氏は「たとえばhideさんの公演でお客様が観たいのは、決して“人間っぽい”人のパフォーマンスではなく、やはりhideさん自身。人間っぽく見えるものの先をいかに突き詰めて、お客様により満足していただける公演を作っていくかが重要」と、あくまで観客ありきでコンテンツを制作する方針を語った。

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 もちろん劇場においては、ハード・ソフト面以外の演出も大切な要素。とくに照明では劇場そのものとCG上の照明が連動するように作られており、これらを整合させる仕組みが用意されている。また「音響がよくなるほど映像の立体感も上がる」(黒田氏)とのことで、9.1サラウンドの音響設備も完備。これら最新技術やそれを引き立てる演出が融合し、思わず声を上げてしまうほどリアルな映像体験が実現するのだ。

 “DMM VR THEATER”運用の目的は、そのハイクオリティーな映像体験だけにとどまらない。データでステージを完結させることが可能のため、映画のように同様の劇場を副次的に作っていくことで、映画のようにデータを送信するだけで舞台公演が可能となる。これに関して黒田氏は、「この横浜1館だけで事業モデルを構築しようと考えているわけではありません。ハードウェアをたくさん作ることによって公演コンテンツを世界的にネットワークし、より広い商圏に向けてビジネスを展開することを最終的な目標としています」と、今後の事業方針を明らかにした。

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▲生身の人間とCGが融合する画はどこかSFアニメのような、不思議な印象。
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▲ステージを注視すると、手前からステージ奥にかけてフィルムが貼られていることがわかる。