記者が時間を忘れて遊んだタイトルが、こちらです
国内外の気鋭のインディーゲームが一堂に会するBitSummit。ここ2年ほどインディーゲーム関連の話題を積極的に追いかけてきた記者として、まだ多くの人に知られていない“ダイヤの原石“を探し当てたい……とか、うまいこと総括して事情通ぶりたい……という助平心が、取材中、ムクムクともたげたのは、事実です。しかし、もとよりジャーナリズム精神に欠ける身。結局のところ、「目の前にあって遊べるゲームの、どこがおもしろいのか?」にしか関心が向きませんでした。
そのようなわけで、今回の記事では、記者がブースにふら~っと吸い寄せられ、気がついたらえらく長いあいだプレイしていた5タイトルを紹介します。「これこそ、ザ・インディーゲーム!」と自信をもっておススメできるかというと、少々あやしいですが、いずれも、一般の市販タイトルでは味わえないたぐいのセンス・オブ・ワンダーが詰まっていることだけは、確かです!
■BROFORCE(Free Lives Games)
(正式版が出たら)派手に出迎えてやろうぜ!
ワールドワイドに活動するインディーゲーム団体“Indie MEGABOOTH”のエリアの中で、個人的にひときわ輝いて見えたタイトル。最大4人同時プレイが可能な、横画面スクロールアクションゲームで、1980~90年代の同タイプのアクションゲームへのリスペクトが感じられる、ド派手でハチャメチャなノリを楽しめます。アルファ版の初出は2013年と、かなり以前から公開されている海外メーカー作品ですが、現在も正式リリースに向け、随時アップデートが行われているとのことです。
粗いドット風のグラフィックをいいこと(!?)に、けっこうエグい描写が満載。マッチョでやたら攻撃力が高いプレイヤーキャラが、敵軍隊のど真ん中を突っ切っていく……という舞台シチュエーションも、ゲームに能天気だった時代の空気を存分に感じさせてくれます。そうした表面的なノスタルジー要素に加えて本作の大きな特徴となっているのが、地形をどんどんぶっ壊せる、フリーダムなゲームデザイン。爆発系の障害物を攻撃するとその周囲が崩れる……といったレベルではなく、行く手を阻む山のような地形や、「それ壊したら向こう岸に渡れないじゃん」というような橋さえも、プレイヤーキャラの通常攻撃で、粉々にできるのです! いきおいマルチプレイは、よほど連携を取らない限り、仲間の足場を崩しあう“殺意なきデスマッチ状態”となりやすいのですが、ステージのあちこちに仲間を復帰させるポイントが設けられているため、あっさりリカバリーできます。アクションゲーム上級者は自由な発想で攻略でき、初心者はみんなとワイワイ楽しめる、そんなステキなゲームとして完成する気がしました。
■MATRIX -CODE-(TPM.COM SOFTWORKS)
30年前のPC用BASICプログラム作品でも、おもしろいものはおもしろい!
1985年から活動している、老舗ゲーム制作サークルの最新作。スタート地点からゴール地点まで、あらかじめ決められたルートでたどり着ければステージクリアー……というシンプル極まりない内容です。「トライ&エラーをひたすらくり返して、たったひとつの正解を探すことの、どこがおもしろいの?」と思うかもしれませんが、実際にプレイすると、ステージごとに投影された“法則”が徐々に浮かび上がってくるような感覚と、無機質ながらテンポよく響く効果音がクセになり、「あと1回だけ!」と、プレイ回数を重ねたくなる、不思議な魅力があります。
本作の開発者・東郷氏は、ゲーム制作用のプログラム言語をいろいろ体験した結果、初代MSX規格パソコン用のBASIC言語“MSX-BASIC”がもっとも理想的だったため、現在も実機で動作するゲームを作り続けているとのこと(もちろん、『MATRIX –CODE-』もそのひとつです)。もっと便利で高性能なゲーム開発環境がたくさんあるいま、なぜあえて30年以上前のハードの制約下でゲームを作っているのでしょうか? とたずねたところ、「いまだからです」と、東郷氏。たしかに、MSXが現役ハードだった当時は、PCの機種ごとにユーザー間で独自の文化・価値観が形成されがちでしたが、ネット動画やエミュレーターなど、伝播手段がいくらでもある現在のほうが、制作したゲームをフラットかつ、より多くの人に遊んでもらえる機会に恵まれています。『MATRIX –CODE-』のゲームデザイン自体、「いまの時世、常識的に考えたらそんなふうにはしない」という要素だらけで構成されているにもかかわらず、ゲームとしてしっかりおもしろい。ここに、インディーゲームが担う、ひとつの大きな意味があるように思いました。
ちなみに本作は、ステージエディット機能を搭載。専用モードで、ひと筆書きの要領で作った解答は、メインのプログラムリストに直接組み込む形式のデータとして出力されます。こうしたオープンソース思想……というか開けっぴろげぶりは、かつてゲームプログラム投稿雑誌を愛読していた層には、たまらないものがあるでしょう。
■ヒーラーは二度死ぬ(Pon Pon Games)
献身的かつ独善的なヒーラーライフを満喫!
PlayStation Mobile(以下、PSM)を中心に作品を公開してきたゲーム制作サークル・Pon Pon Gamesの最新作。プレイヤーは、モンスターひしめく廃墟を探索する冒険者パーティーのプリースト(僧侶)となって、前線で戦う騎士のサポート役に徹するという、ちょっと……いえ、すごく変わったタイプの、ひとり用ゲームです。
ゲーム進行はリアルタイム。放ったらかしにしておくと、オート操作の騎士が敵の大群に押し切られて、あっという間に戦闘不能(ゲームオーバー)になってしまいます。騎士の体の各部位のダメージをチェックしては回復魔法をかけ、入手した素材を合成して戦闘に役立つアイテムを生成し、使いどころ次第では絶大な効果を得られる支援魔法を行使することで局地戦に勝利し、遺跡の奥へ奥へと進んでいきます。戦闘中、敵小隊を一気に全滅させられるアイテムが出現するのですが、これに頼り切ってしまうとパーティーが成長できず、遅かれ早かれ“詰む”ことになります。ゲームとしてのとっつきはもうひとつですが、“パーティーの回復役”としてやるべきことが見えてくると、刻一刻と変化していく状況にすばやく対応することに、マゾ的な快感を覚えます!
開発者に、なぜこのようなゲームを思いついたのかと尋ねたところ、「MMOをヒーラー(回復役)でプレイするのが好きなのですが、その楽しさを満喫できるオフラインゲームがなかったので、自分で作りました」と、じつにまっとう(?)な理由でした。本作のオリジナリティーの高さと緻密なゲーム性は、インディーゲーム関係者からの評価も高かったようで、“カテゴリにとらわれず、誰もが惹きつけられる出展タイトル”に贈られるBitSummit Awardを受賞しました。PSMで配信されていた本作は、PSM自体のコンテンツ配信終了によって、新規の入手が困難になってしまいましたが、今年の夏にはPC版の配信・頒布を予定しているとのこと。アワード受賞を機に、より多くの人がプレイできる環境が、整ってほしいものです。
■ドットマトリクスヒーロー(Dot Warrior Games)
ゲームを作ることそのものが、おもしろいゲームである!!
インディーゲーム開発者をテーマにした、セルフパロディ的なゲーム。ゲーム開発者の日常行動を選択してクリエイティビティを高める“育成パート”と、1990年代のアクションゲーム風に表現されたデバッグ作業を行って、ゲームの完成度を上げる“アクションRPGパート”を交互にくり返して、開発中のゲームを完成に導く……という内容です。
懐かしさとポップさが混在するドットグラフィックや、日常からデジタル世界にダイブする際の映像演出は、一見の価値アリ。開発状況は「まだまだこれから」とのことですが、完成が楽しみな作品です!
■FD(Sagar Patel)
好きな音楽を“疾走”せよ!
カナダのモントリオール出身で京都在住のプログラマー・Sagar Patel氏がひとりで制作中の、PC用ゲーム。タイトルは“Frequency Domain”の頭文字です。再生する音楽の波形データをもとにリアルタイム生成される、ワイヤーフレーム状の地形をハイスピードで滑空できる、インタラクティブソフト的な内容です。プレイヤーは、加速/減速や左右移動、ローリングなどの操作が可能。また、ほかのユーザーのアシスト操作によって、地形をチューブ状に生成するなどの特殊効果を得られます。
ブースでは、通常のPC版とともに、OculusのVRヘッドセット版もプレイアブル展示されていました。3D酔いに耐性がある私は、喜びいさんでVR版をプレイ! とてつもないスピード感に酔いしれつつ、あちこちをキョロキョロして非現実感を満喫いまいた。これはお気に入りの4つ打ちサウンドで、じっくり体験してみたいですね。Sagar氏によれば、本作は、今年7月中にSteamでアーリーアクセス版が公開されるとのこと。