3Dモデル、音楽、ユーザーインターフェース制作を聞く

 ウォーゲーミングは、PC用オンライン海戦ストラテジー『World of Warships』のオープンベータテストを2015年7月2日より開始した。それに先駆けて、開発スタジオがあるロシア・サンクトペテルブルクにてメディアツアーを開催。そこで本作の開発に関わるキーパーソン総勢7人にゲームの見どころやこだわりについて、話をうかがった。

 最終回となる第3弾は、3Dアーティスト、サウンドディレクター、UIデザイナーの3人へのインタビューを掲載。

▼そのほかのインタビューはこちら
オープンベータテスト開幕! 『World of Warships』開発のキーマンに聞く from サンクトペテルブルク【その1
オープンベータテスト開幕! 『World of Warships』開発のキーマンに聞く from サンクトペテルブルク【その2

シニアテクニカル3Dアーティスト
Aleksandr Zotikov氏

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艦船などのモデル制作を手掛けるほか、専用ツール・モデラー開発を行うエンジニアとしての顔も持つ。
■好きなゲーム:SimCity 2000
■好きな艦船:セントルイス
■好きな動物:キリン

――艦船のモデルはどのようにして作られているのでしょうか?

Aleksandr Zotikov氏(以下、Aleksandr) 実際に見ていただくほうがわかりやすいと思いますので、モデル製作のプロセスをお見せします。

モデル製作のソフトは『Maya』を使用しています。まずは“サイズボックス”を作ります。名前の通り、船の全長や高さなどを示しているもので、これをもとにしてモデルを製作していきます。

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つぎに、青写真(設計図面)をサイズボックスに合わせます。このようにいくつかのフレームに青写真を合わせていき、上から下まで船の全体像を形作っていきます。

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この後に、排気管や、救命艇、防火剤など、細部のディテールを製作して配置します。また写真や資料と照らし合わせながら、実在のものを忠実に再現する作業がたいへんですね。テクスチャに関しても、リベットの数をできるだけ実物と合わせるようにするなど、こだわっています。

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また、各部の大きさや比率がすべて再現されていないと不都合が生じるため、実際にはゲーム内に出てこない乗組員のモデル(人形)を置いて、サイズの比較を行い、間違いがないか確認します。

私の部署では、艦船のモデルだけではなく、マップ上の建物や戦車などのオブジェクトも製作しています。これらのパーツはただマップに配置するだけではなく、艦船との大きさの対比を行うことにも使用します。

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最終的に、こうして製作したMayaのデータを、ゲーム内に組み込んでいきます。私の手元には、ゲームエンジンと同じ動作を行うテスト用ソフトがあり、実際のゲーム内でどのような見えかたになるのか、確認することができます。またこのテスト用ソフトを使うことで、細部のパーツを動かすことができ、射撃を行うことも可能です。これで問題がなければ、データをゲームデザイナーに渡してゲームに反映させます。

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オープンベータテスト開幕! 『World of Warships』開発のキーマンに聞く from サンクトペテルブルク【その3】_13

――基本的な艦船1隻を完成させるのに、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

Aleksandr 船の大きさにもよりますが、1~2ヵ月を要しますね。だいたい2ヵ月に1隻のペースで製作しています。非常に大きな船ともなれば、半年間かかるものもあります。特殊なケースですが、“ニューメキシコ”は製作に長い時間がかかりました。ニューメキシコは改修されて見た目がガラリと変わった船で、船体が3種あります。流用できる部分はありましたが、実質3隻ぶんを作ることになりました。

――緻密なグラフィックですので、PCスペックも高いものが要求されそうですね。

Aleksandr 比較的低いスペックのPCでもプレイできるように、ローポリゴンのデータも用意しています。ただ、私たちクリエイターとしては、最高品質のものを披露したい思いがありますので、ゲーム制作上「ポリゴンを減らしてほしい」と言われると、葛藤がありますね。

また、船の設計図や資料を深く読み込む必要があるため、私たちのチームでは分業をせずに、1隻の船に対してひとりのクリエイターが、モデルやテクスチャーを含め、すべてを担当します。そのため、製作したモデルは自分の子どものように感じられ、思い入れも強くなります。

――並々ならぬ熱意が感じられます。ぜひ「ここを見てほしい」といった部分はありますか?

Aleksandr 船ごとに見どころが異なりますので一概に言うのは難しいですね(笑)。ゲーム内の港では、船の各所をクリックすることでズームイン表示できますので、皆さんなりの“見どころ”を探していただけると、私たちとしても非常にうれしいです。