『3D ベア・ナックルII』セガ 3D復刻プロジェクト注目作の顛末をオリジナル開発者と移植スタッフとが語らう【特別企画】

『3D ベア・ナックルII』のリリースを記念して、オリジナル開発者と移植スタッフによる座談会が実現!

●オリジナルの開発者と3D復刻スタッフとによる魂の交流

 1993年にセガよりリリースされたメガドライブの名作アクション『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌(レクイエム)』。ベルトスクロールアクションでありながら、格闘ゲームもかくやという多彩なアクション、ダンスミュージックをいちはやく取り入れたノリのいいBGMといった魅力的な要素により、高い評価を受けたタイトルだ。しかし、じつは本作を開発したのが、音楽担当でもある古代祐三氏が代表を務めるエインシャントであることが広く知られるようになったのは、発売からかなりの年月が経ってのことである。まだ黎明期であった当時のゲームメディアでは、クリエイターインタビューの事例は少なく、開発した当人たちが表立つことは少なかったためだ。


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 時は移り、2015年4月28日。『3D ベア・ナックルII』として見事に“復刻”を遂げた同作は、当時を懐かしむプレイヤーはもちろん新たに触れたユーザーからも、大きな歓声を持って迎えられた。さらにエインシャント社内から発掘された貴重な資料がネット上に公開されたことも、話題を加速することとなった。その流れを受けて、実現したのが、これからご覧いただくオリジナルのコアスタッフと、開発を担当したエムツースタッフとの対談となる。対談では、セガ3D復刻プロジェクトのプロデューサーである奥成洋輔氏をオブザーバーに、開発当時の様子など貴重なエピソードや、3D復刻をしたことで得られた知見といった内容が飛び交い、最終的には“ゲーム作りとは何か”という話題にまで届きそうなほど、非常に熱量の高い内容となった。そのため、かなりの長文となっているが、ゲームの歴史とそれが形作られていく過程に興味のある皆さんは、ぜひご一読いただきたい。エインシャントのブログに掲載された当時の資料や、古代彩乃氏のインタビューを事前に一読すると、さらに深く読み込めるはずだ。


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 それでは、『ベア・ナックルII』というゲームを媒体に、時空を超えて通じ合う開発者どうしの魂の交流を、たっぷりとお楽しみいただこう。


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◆エインシャント
代表 古代祐三氏(インタビュー中略称は祐三)中央
デザイナー 古代彩乃氏(インタビュー中略称は彩乃)左からふたり目
デザイナー/漫画家 ありがひとし氏 左から3人目

◆セガゲームス
“セガ3D復刻プロジェクト”プロデュース担当 奥成洋輔 右端

◆エムツー
代表 堀井直樹氏 右からふたり目
サウンド担当 並木 学氏 右から3人目
ディレクター 松岡 毅氏。 左端


ベアPH/エインシャントロゴ【横】

エインシャントについて
 雑誌投稿や日本ファルコムでの作曲作業で知名度を上げた古代祐三氏と、その妹でグラフィックデザイナーである古代彩乃氏を中心メンバーとして、1990年に設立されたゲーム制作会社。ゲームギア版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』やメガドライブ『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』、セガサターン『トア ~精霊王紀伝~』といったタイトルの企画・制作を担当。ヘビーなゲーマーである古代兄妹ならではの、ゲーマーのツボを付いたゲーム性を持つタイトルは、現在でも世界的に高い評価を集めている。最新作にニンテンドー3DS用『みんなでまもって騎士 姫のトキメキらぷそでぃ』がある。
※エインシャント公式サイトはこちら


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エムツーについて
 堀井直樹氏が、学生時代のゲーム仲間とともにメガドライブ版『ガントレット』を制作するために1991年に設立したゲーム制作会社。セガ 3D復刻プロジェクトやバーチャルコンソールのセガハードタイトルなどを筆頭に、レトロゲームの移植で知られる同社だが、高い再現度にとどまらず、オリジナル要素の追加などゲーマー心理に裏打ちされた作風はマニアも頷かせるほど。近年はミドルウェアの開発なども行っている。パソコン・ゲーム黎明期から開発を続けるスタッフは強者揃いで、さらに現在では『ハイドライド』シリーズの内藤時浩氏や『斑鳩』の井内ひろし氏といったレジェンドも加わり、さながら“ゲーム業界の梁山泊”といった勢いである。
※エムツー公式サイトはこちら

※セガ3D復刻プロジェクト『3D ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌』紹介ページはこちら
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■どちらもドラマチックな開発スタート時のエピソード

――本日はよろしくお願いします。まずはセガゲームス奥成さんから、今回の対談が実現した経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

奥成 はい。まず、エインシャントのディレクターである和田誠さんから「エインシャント社内で『ベア・ナックルII』開発当時の資料が出てきたのだけど、ブログ上に公開してもいいですか?」という相談をいただいたんです。ちょうど『3D ベア・ナックルII』の発売タイミングでもあったので、こちらとしてはどんどんやってくださいと。

堀井 ベストのタイミングだよね!

奥成 で、掲載されたものを見たら、資料だけでなく(古代)彩乃さんのロングインタビューまで掲載されているという充実ぶりで、僕らも知らなかったことがたくさん掲載されていたんです。当然大いに沸きまして「直接会っていっしょに盛り上がりましょう!」とファミ通さんを巻き込んで、今回の席を設けさせていただきました。

全員 ありがとうございます。

奥成 率直にお伺いしますけど、立体視が加わった『3D ベア・ナックルII』をプレイされていかがでしたか?


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▲エインシャント代表にして『ベア・ナックル』シリーズの名曲を生み出したコンポーザーでもある古代祐三氏。手にした3DSで夢中になって『3D ベア・ナックルII』(やほかの3D復刻タイトル)をプレイする眼差しは、ゲーム少年そのものであった。

祐三 オリジナルは1993年発売の古いゲームだけど、めちゃくちゃ新しさを感じますね。New ニンテンドー3DSの本体とセットで購入しますよ!

彩乃 まず思ったのは「開発中に声を掛けてくれればよかったのに」って(笑)。完成したものはこちらの意図したことをすごく汲んでくださっているのですが、その分きっと苦労をされただろうなって。すごく遊び込んだうえで作っているのがわかったので、ありがとうございますという気持ちです。

ありが クレジットのコントがあるじゃないですか。言っていただければ新規のドット絵を描いたのにって。

(一同笑い)

堀井 ありがたいけどもったいない! クレジットって、開発大詰めでヘロヘロになった状態で、最後の余力が爆発するとああなるんです(笑)。

ありが たぶん、打ち合わせをしてこうしましょうとコンセンサスを取るとああいう熱量は出ないんでしょうね。ライブ感覚ですよね。

堀井 そうそう、そうなんですよ!

ありが さっき新規のドット絵といったのは本音ですけど、きっとそれをやったら熱量が失われてしまう。

彩乃 いまだったらエムツーさんのほうが絶対上手だと思います。向き合っている時間が長いから。

堀井 ありがとうございます。とはいえ、目の前に並べられている当時の資料を見ると圧倒されるんですよね。スケジュール表を見ても、16MBの物量を7、8ヵ月で完成されていますからね。昔の感覚をちょっとでも思い出されたら、勝ち目がないと思いますよ。

奥成 クレジットについては、エムツーさんは最初のころ、「当時のドッターさんじゃないと同じようには描けない!」といって絵の追加はしていなかったのですが、シリーズが進むごとにタガが外れていって『3D スーパーハングオン』で新規のエンディング用に足りないアニメーションパターンの絵を、『3DアフターバーナーII』ではコントに手を出して、いまでは新規アニメーションだらけになっています。


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▲爆笑必至のクレジットを担当したのは、松岡氏のコンパイル時代の同僚で、『ぷよぷよSUN』のオープニングをサタン様の陶酔リサイタルにしてしまった“ろみゅ”こと高橋直樹氏。

堀井 ウケがよかったので好きにやらせてもらえてるんですけど、これが最初からこのテンションだと「やりすぎだよ」ってユーザーさんに怒られていたと思います。

並木 シリーズがかなり進んでいたので、余計なノウハウばかりが溜まっていく(笑)。

堀井 それを言うと、『ベア・ナックルII』というタイトルそのもののスタートからして、休暇を取っていたはずのプログラマーが、休みが明けたらなぜか1面の立体視を作り上げていたところから始まっているんですよ。

松岡 3タイトルの立体視をひとりでずっと担当していたので、「疲れた! 休む!」といって休暇に入ったはずなんですけどね(笑)。

並木 ひとことで言うとぜんぶ悪ノリだよね。

ありが サミーがブレイズのパンチラを隠しまくったり、MR.Xにイタズラをしてサムズアップするのとか最高ですよ(笑)。

彩乃 あのサミーの顔グラフィックは仲井さん(※仲井さとし氏。ステージ5のBGを担当。『ジノーグ』のグラフィック全般や『カルドセプト』のカードグラフィックなどを担当した伝説のドッター)に褒められたんだよね。

ありが 黒人の少年の魂が乗り移ったとしか思えないような顔だ! ってすごい褒められかたをしたね。


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▲レジェンドどうしの集まりなだけに話題は多岐に渡り、ときには脱線気味に。とくに、エインシャントとエムツーの両社がグラフィック作成を依頼している仲井氏の話題は大盛り上がりで、興が乗った堀井氏が『3D ジノーグ』を作ったらいいんだ!」と口を滑らすほどであった。

奥成 制作中にリテイクを出されるといったことはなかったんですか?

祐三 セガの方から大きなリテイクを食らったとかはないんですよ。僕らとしては「基本的にベア・ナックルしてればいいや」くらいで、好き勝手に作っていましたね。

彩乃 うん(笑)。でも、デザイン面だけで言えばアメリカでの子供の流行りは押さえてくれと言われて、セガの方が雑誌などの資料を持ってきてくれたよ。ブレイズの格好は『1』のときとは変えてくれとリクエストがありましたね。営業サイドからの意見だったと思います。アメリカの当時のトレンドを取り入れようと。

奥成 元ネタはジュリアナ東京のボディコン姿ではなかったんですね!

彩乃 そうなんです(笑)。日本よりは海外市場を意識していたようです。サミーのローラーブレードもちょうどアメリカで流行し始めたころだったのですが、日本ではまだそんなに知られていなくて資料集めに苦労しました。

堀井 いまはそうはいかないけど、7ヵ月で作れば世間のブームが去る前に発売できそうな気がする。

彩乃 いまもそうかもしれませんけど、クリスマス商戦じゃないですか(注:『ベア・ナックル2』の北米発売は日本よりも早い1992年12月の発売だった)。そこに間に合わせる必要があったからの7ヵ月なんです。

奥成 せっかくなのでお尋ねしておきたいのですが、シリーズのファンのあいだでは、いまでこそ“ブレイズ=パンチラ”というのが定説になっていますが、初代のブレイズって、じつはパンチラしてなくて、2Pプレイ専用の協力攻撃で飛んでいく時くらいなんです。なのに『2』ではけっこうチラチラしているのは、セガからの指示があったとかなんですか?

彩乃 ない……と思う。私が勝手にじゃないかな。でも私、そんなにパンツのドットを置いていたっけ?

(一同笑い)

彩乃 「ストッキングを履いているからいいや!」くらいの考えだったんだと思う。と言うのも、パンストの光沢を描きたかったんですよ。

奥成 ああ、メガドライブのあの色数で! 色気よりも自然さだったから、いやらしさがなかったのかもしれませんね。

彩乃 男の人がドットを置くと、もしかしたらいやらしさが出たかもしれないですね。

ありが それはどうしてもそうなっちゃうかもね。

奥成 『ベア・ナックルIII』は再度セガでの内作になるのですが、ブレイズはもうちょっと女性の色気を出そうという話があったみたいです。


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▲グラフィックの中心人物であった古代彩乃氏と、開発終盤から助っ人で参戦したありがひとし氏は、そのことが縁となり後に結婚。この日も夫婦で息のあった会話のキャッチボールを見せ、話題の中核を担っていた。