第1回の講師は遠藤雅伸氏
2015年6月24日、東京・渋谷のディー・エヌ・エー本社にて、若手ゲームプランナー(学生・社会人問わず)を対象とするセミナー“座・芸夢 若手ゲームプランナー育成塾 ~未来を担う人に伝えたいこと~”が開催。『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』などを手掛けたことで知られる、東京工芸大学 芸術学部ゲーム学科教授の遠藤雅伸氏が講師として登壇し、講演・演習を行った。
本セミナーは、ディー・エヌ・エーでゲーム作りと採用の両方を担当している馬場保仁氏が発案した新しい試み。当初、参加人数は40人を想定していたが、160人ほどの応募があったとのことで、結果、抽選で選ばれた70人ほどの若きプランナーたちが参加した。
馬場氏がこのセミナーを企画したのは、“いまは若手プランナーにとって受難の時代である”と考えたため。近年、ゲームのプロジェクトは大規模になっており、全体を把握することが困難。また、シリーズものの開発が多いため、未知のものを作る機会も減っている。結果的に、若手プランナーが成長できる場が減っている、と馬場氏。
その傾向はコンシューマーゲームにおいて顕著だったが、スマホゲームにも“大規模化”、“シリーズ化”の波はやってきている。ゲーム業界全体で、若手が育ちにくい環境が生まれている……座・芸夢は、そんな状況を打破すべく、これからのゲーム業界の未来を担う若者に、ゲームプランニング、デザインの基礎を体系的に教えることを目的として生まれた。また、プロ・アマ問わず、同世代のゲームプランナーが交流できる場を作り、互いに切磋琢磨できる環境を生み出すこともねらいのひとつだ。
この座・芸夢は1回で終わるものではなく、毎月開催される予定。遠藤氏に続いて、2回目は簗瀬洋平氏(Unity Technologies Japan)、3回目は中村隆之氏(神奈川工科大学 情報メディア学科 特任准教授)が講師を務めることが決定している。
若者たちは、座・芸夢を通じてどんなことを学ぶのか。ディー・エヌ・エーの新たなチャレンジの模様を、さっそくリポートしていこう。
ゲームとは何か? それは……
第1部では、遠藤氏が“ゲームとは何か?”をテーマに講演を行った。
ゲームとというもののありかたは、時代の流れとともに変化してきた。そして、ゲームにコンピュータが利用されるようになって、“パラダイムシフト”が起こった、と遠藤氏。
コンピュータの登場により、プレイヤーの代わりをする“ゲームAI”が生まれ、ゲームはひとりでも遊べるものになった。さらに、コンピュータは、面倒な計算を肩代わりしてくれる。現実ではありえない法則を組み込むことで、ゲームならではのプレイフィールドも生まれた。いわゆる“デジタルゲーム”の誕生だ。
デジタルゲームが普及したいま、人はゲームのどんなところを“おもしろい”と感じるのか。遠藤氏は、そのゲームの価値観の中で競う“競争”、イメージ通りに実行することで達成感を得る“トレース”、記憶に残る高揚感と充実感を得られる“非日常”の3つを挙げた。
続いて、遠藤氏は“ゲームをプレイするモチベーション”について解説。ここで挙げられたのは、課題を達成することで快感を得る“自己満足”、パフォーマンスとしてプレイする“自己表現”、コンテンツへの愛から、そのコンテンツのことを知り尽くそうとする“探究”の3つ。ゲームクリエイターのなすべきことは、これらのモチベーションを満たすゲームを作ることであるという。
最後に遠藤氏は、よいゲームとは“プレイすることによっておもしろい満足感が得られ、再びプレイしたくなるコンテンツの総称”のことである、と語り、講演を締めくくった。ゲームとは何か……今回の講演は、ゲーム制作の入り口に立った若者たちにとって、自分の考えを整理する機会となったことだろう。
なお、今回の講演は、2014年のSAPPORO CEDECにて行われた講演をもとにしたもの。興味がある人は、SAPPORO CEDECのリポート記事もぜひ読んでみてほしい。
白紙のすごろくを使って“リプレイモチベーション”を考える
第2部では、白紙のすごろくシートを使った演習が行われた。すごろくのマスは空欄になっていて、そのマスに止まったら何をするかは、参加者が記入する。誰かが3周したら、その人が勝ちとなって終了。
参加者たちが突然のお題に戸惑いながら始まった1セット目。空欄を埋めきれずにスタートしたチームも多く、プレイはスムーズに進んだとは言い難かった。
1セット目が終わって、遠藤氏は“マスに書き込む内容は、プラスの方向性にしたほうがいい”とアドバイス。たとえば、“2マス戻る”と書くより、“ほかの人が2マス進む”と書いたほうがいい。そのほうが、参加者が「自分にとってプラスになることが起こるかも」と、ほかのプレイヤーのプレイに注目するようになるとのこと。また、実行するまでに時間がかかりすぎるような指示や、くり返し行うことで興が醒めてしまうような指示(いわゆる一発ネタ)は避けたほうがいい、というアドバイスも贈られた。
遠藤氏の助言を受けて2セット目に挑んだ参加者たち。お互いに打ち解けてきたこともあってか、各チームで白熱の試合が展開した。試合終了後、遠藤氏が送ったアドバイスは“バランスは取らない方がいい”というもの。たとえば、“1位の人が、最下位の人に●●を渡す”といった指示を出すことでバランスを取ると、接戦になる。接戦になると、負けた人はとても悔しい。
ならば、誰かをさっさと勝たせてしまったほうが(このマスに止まったら即勝利、など)、勝った人はうれしいし、負けた人は「あいつは運がよかった、さあ、もう一度やろう」と、あまり悔しい思いをせずに次回に臨めるという。
そして最後の3セット目。“あえてバランスを取らずにやってみよう”と、各チームは奇想天外な指示を書くなど、工夫を凝らして臨み、2セット目以上の盛り上がりを見せた。
今回のすごろく演習で遠藤氏が示したのは、“リプレイモチベーションを前提としたゲームデザイン”。もう一度プレイしたくなるゲームはどんなゲームか。このテーマについては、遠藤氏もまだまだ研究中とのこと。なぜ同じゲームを何度も遊ぼうと思うのか、皆さんも一度胸に手をあてて考えてみてはいかがだろうか。
塾生証はランクアップする!?
2時間ほどのセミナーはあっという間に終了。最後に、参加者たちに座・芸夢の“塾生証”が贈られた。この塾生証、1回参加するごとにスタンプがひとつ押され、スタンプが4つ貯まると進級できるとのこと。
次回の座・芸夢は、2015年7月21日(火)19時半からの開催を予定している。参加資格があるのは、ゲーム系企画職(ディレクター、リードプランナー、プランナー)を目指す学生(※学生は学年不問)、もしくは若手のゲーム系企画職の人(※32歳以下)。詳細はこちらのページに記載されているので、要チェックだ。