メガドライブを代表するアクションシューティングがついに3D復刻!
セガ往年の名作ゲームを、2Dゲームとしての見た目や、ゲームのプレイ感覚は忠実に再現しつつ、3D立体視にも対応させてリメイクしたニンテンドー3DS向けの人気シリーズ“セガ3D復刻プロジェクト”。そのシリーズ最新作として『3D ガンスターヒーローズ』が、2015年6月24日に配信開始となる。そこで今回は、同プロジェクトのプロデューサーを務めるセガゲームスの奥成洋輔氏と、開発を担当するエムツーの代表・堀井直樹氏に再度ご登場いただき、本作の見どころをたっぷりと語っていただく、ロングインタビューをお届けする。
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※遠回りしたから実現できた! 『3D ベア・ナックルII』リリース直前の“セガ 3D復刻プロジェクト”のキーマンに聞くこれからの展開
■奥成洋輔氏(左)
セガゲームス
コンシューマ・オンラインカンパニー
セガ3D復刻プロジェクトシリーズプロデューサー
■堀井直樹氏(右)
エムツー
代表取締役
本編に入る前に本作の移植元となる『ガンスターヒーローズ』について、簡単に説明をしておこう。メガドライブ用ソフトとしてセガより発売されたのは、1993年9月10日。基本は横スクロールのアクションシューティングゲームなれど、つぎからつぎへとめまぐるしく展開するシーンや、多彩な攻撃でド派手に攻めてくるボスなど“なんでもあり”という表現がピッタリなバラエティー豊かなゲーム内容、そしてがんばればアクション初心者でもクリアーできる絶妙の難易度が評価され、いまでもメガドライブを代表するタイトルとして語り継がれている一作だ。
開発を担当したのは、大手メーカーから独立したスタッフたちによって設立されたばかりの新進気鋭ゲームメーカー・トレジャー。その後に『ガーディアンヒーローズ』や『斑鳩』といった名作を生み出すことになる同社の設立第一弾タイトルでもある。
そんな、おもちゃ箱をひっくり返したようなタイトルに、今回の3D復刻ではどのような手が加えられていったのか。やや専門的な話もでてくるが、たいへん興味深い内容となっているので、インタビュー本編をじっくりとお楽しみいただきたい。
※セガゲームスサイト内名作アルバム『ガンスターヒーローズ』はこちら
究極のギガドライブ用タイトルを目指して
――お約束ですが、『3D ガンスターヒーローズ』がリリースされることになった経緯をご説明願います。
奥成 はい。セガ3D復刻プロジェクトが第2期シリーズを世界展開するにあたって、追加で発表させていただいた3タイトル『3D ベア・ナックルII』、『3D ガンスターヒーローズ』、『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』のうちの、2本目になります。4月に発売した『3D ベア・ナックルII』から約2ヵ月でのリリースとなりますね。
――4月上旬にお話を伺ったときには『3D ガンスターヒーローズ』の開発度は60パーセントくらいの完成度とお聞きしました。
奥成 そうですね。マスターアップはかなり締め切りギリギリで、何とか予定したスケジュールに間に合う状態でした。これまでは『3D ギャラクシーフォースII』のように単純に元のハード性能の高いものの移植や、『3D アウトラン』のように30→60フレーム化するといったように、ハード性能の高いアーケードタイトルをいかに最適に移植するかがコンセプトのものが目玉でした。当初最終作として作った『3Dサンダーブレード』ではステージや新モードの追加などできる限りの追加要素を加えました。
今回の3タイトルは、第1期で構築したメガドライブの3D移植エンジン、我々は“ギガドライブ”と呼称していますが、そこに乗せたソフトを時間の限り作りこんでいくというスタンスでしたので、アーケードのタイトルの移植のスタンスとはちょっと異なり、ギガドライブをいかに使いこなしていくかという方向で開発しました。同じメガドライブの移植作でも、初期に作った『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ』や『3D 獣王記』と比べると、『3D ベア・ナックル』や『3D ザ・スーパー忍II』では、少しずつ進化を遂げているのがわかると思います。
最新作である前作の『3D ベア・ナックルII』は『3D ベア・ナックル』の進化系になっていますが、その流れでいうと、今回の『3D ガンスターヒーローズ』は『3D ザ・スーパー忍II』の進化系になります。横スクロールのアクションであり、元々カキワリだった背景にどれだけの立体視情報を与えていくか、立体的に見せていくかがという『ザ・スーパー忍II』のテーマを、さらに大きく押し上げた位置づけですね。そもそも今回の、『ガンスターヒーローズ』も『ベア・ナックルII』と同じく、3D化のプロジェクト当初から候補には上がっていたけど諦めていたタイトルなんです。
堀井 はい(力強く)。
奥成 『ガンスターヒーローズ』は新しい敵、新しい背景など、ゲームが進むにつれて新たな展開、ギミックがつぎつぎとやってくるゲームです。それはつまり、3D化するのに使い回しのできないものがどんどんやってくるということなんです。全ステージがまったく違うデザインだったり、ときにはシューティングステージになったり。その“なんでもあり”が『ガンスターヒーローズ』のおもしろさなんですけど、それが3D復刻となると、その大量の要素を全部3Dで手付けしていくことになる。また、それがギガドライブの性能で本当に再現し切れるのかが、いちばんのポイントであり、いちばんの難関でもあったわけです。
今回は3D化をどれだけ進められるのかというのがキモになりました。単純な期間でいうと、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のほうが基礎研究にかかっているんですが、実質の作業量だと恐らく『ガンスターヒーローズ』が、アーケードを含めた全タイトルで最大じゃないかと思っています。ぶっちゃけて開発費用で言うと、初代『3D ベア・ナックル』を1とすると、『3D ベア・ナックルII』はその2.5倍、『3D ガンスターヒーローズ』は3倍以上かけているんです。
堀井 ちなみに立体視を付けるだけで、専任のプログラマーがみっちり14ヵ月をかけています。“セガ3D復刻プロジェクト”の場合は、立体視をどうつけるかをアドバイズするスタッフもいますが、今回はひとりです。
奥成 とにかく手数なんですよね。……ところで私からツッコミを入れたいんですけど、ひとりで専任で14ヵ月だと、開発をスタートした時期と計算が合わないよ(笑)。
堀井 そう!(力強く) 合わないかもしれないけど、そう。セガさんが『3D ガンスターヒーローズ』をやろうと持ちかけてくれるのと関係なく14ヵ月!
――またしても、“セガ3D復刻プロジェクト”ではおなじみの“婚前交渉”ですか(笑)。
奥成 シリーズが『3D サンダーブレード』で終わっていたり、もし「この開発費は飲めない」っていったら丸損じゃないですか。
――エムツーさんのライブラリ内に、どれだけの未知のゲームが眠っているのかが、たいへん気になるところです(笑)。話を戻すと、オリジナルは、縦横の多重スクロールやラスタースクロールなど、変態的な技術を駆使して作られているタイトルです。それをギガドライブ化するにあたっては、たいへんだったのでは?
堀井 これはたぶんオリジナル版のエネミーのプログラムを担当したトレジャーのNAMIさんの仕業だと思うんですけど、メガドライブでどんな表現ができるかを試すように、たとえば飛行機を傾けるとかエンディングで星が回るとか、おもちゃ箱をつついてみたようなコードがいっぱい書いてあるので、立体にするとニンテンドー3DSでは処理落ちすることがけっこうあって、マスターアップギリギリまであがいていましたね。
奥成 ですので、申し訳ないのですが2Pで遊ぶと実機と同じくらいには処理落ちします。
堀井 処理落ちレスモードはいつも付けたいと思うんですが、実機と同じ速度を出すので精一杯なので、いつまでたっても付けられない(苦笑)。というのも、ギガドライブというのはメガドライブに3D機能を付けた仮想ハードですが、ちゃんと実機のアーキテクチャに則って設計されていて、作ろうと思えば現物を作れるんです。プロジェクトの進行とともに少しづつ機能を拡張していったのですが、『3D ザ・スーパー忍II』を開発中に、このゲームに合わせるとこういうモードが必要だと“矩形(くけい)転送モード”という、64KBのビットマップ面を1枚追加したんです。これは、一度メガドライブ本来のBG面に描いたグラフィックスを好きな大きさの四角形に自由に切り出して、新たに用意したビットマップ面に転送してから再描画するという機能なんです。そのおかげで矩形単位であればどんな背景であろうが自由に切り出して視差情報を加えることができるようになったので、いままでのように背景単位とかキャラ単位とかセル(スプライト)単位とかではない、かなりフレキシブルに立体視を付けられるようになりました。
ですので、矩形転送モードができるまでは、奥成さんに「移植は無理だ」といっていたんですね(笑)。とくに無理だと思っていたのは、4面の最初の背景で、斜めにパースのついた足場があるんですよ。そこがやはり矩形で切って描けるものなのかがわからなくて。いざ試してみたらキチンと立体視に見えたので、そこで開発のGOサインを正式に出しました。