●プロジェクトを支える3社のキーマンを直撃

 アーケードで好評先行稼動中の対戦格闘ゲーム『ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-』。既報の通り、早くもプレイステーション4・3への家庭用移植も発表された人気作だ。今回は、アーケード版を担当するエクサム、家庭用を発売するマーベラス、原作のニトロプラス、それぞれの担当者を交えてインタビューを敢行。プロジェクトの立ち上げからアーケード版の展開、そして家庭用移植までを語っていただいた。

エクサム
アーケード版プロデューサー
林 和磨氏(右)

マーベラス
家庭用版プロデューサー
原田真幸氏(左)

■インタビュー出席者
エクサム
アーケード版デイレクター
林 和磨氏

マーベラス
家庭用版プロデューサー
原田真幸氏

ニトロプラス
PCゲーム『ニトロ+ロワイヤル』ディレクター
おがみけいち氏

――『ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-』(以下、『ニトブラ』)プロジェクトの立ち上げの経緯をお聞かせいただけますか?

おがみけいち氏(以下、おがみ) もともと、ニトロプラスの設立10周年を記念して立ち上げたプロジェクトがいくつかあったんです。そのひとつに、以前に弊社から発売した『ニトロ+ロワイヤル -ヒロインズデュエル-』(以下、『ニトロワ』)をアーケード化するという企画がありました。当初、エクサムさんとは違うところでその企画が動いていたんですが、いろいろな理由で進行が滞ってしまいしばらくそのままになっていたんです。そこをエクサムさんに制作をお願いした形になります。

林 和磨氏(以下、林) ニトロプラスさんに別件でうかがった際に、「アーケード化の企画をやっていましたよね? あれはいまどんな状況ですか?」と、雑談混じりに聞いたんです。そうしたら先程の話のような状況であることをお聞きし、「エクサムさん、この企画やりませんか?」とニトロプラスさんにお話をいただきまして、「それならぜひ」と、プロジェクトが開始いたしました。

おがみ たまたまその打ち合わせから生まれたんですよね。

――エクサムさんが「やります!」からのニトロプラスさんが「どうぞ!」みたいにすんなり決定したんですね。

おがみ そうですね。最終的には自分も含めて『ニトロワ』に深く関わった社内のスタッフが企画の相談を受けて、「ぜひやりましょう」と決まった感じです。10周年企画がつぎつぎと達成していくなか、アーケード格闘ゲーム化だけがずっと残っていて心残りだったんですよ。でも本作が無事アーケード化され、ついに10周年企画すべてを達成することができたんです。

※ニトロプラス10周年企画プロジェクト

――以前、エクサムさんのエイプリルフール(2012年4月1日)のネタで『アルカナハート』にすーぱーそに子が参戦! といったものがありましたが、そのときからすでにプロジェクトが動いていたのでしょうか?

 いえ、全然動いていないです(笑)。プロジェクトが動き出したのは2年ほど前になりますね。「あのエイプリルフールのネタはこうなるといいね」という感じでしたね。

エイプリルフールのネタ画像がこちら。すーぱーそに子もドットで丁寧に打ち込まれている。

――本作はさきほど話にもありました『ニトロワ』をベースに制作をしたのでしょうか?

おがみ 弊社はアドベンチャーゲームに関しては実績が多くありますが、格闘ゲームの制作については未経験者ばかりだったんです。『ニトロワ』も本格的な格闘ゲームというよりは、イベントを盛り上げるミニゲームという内容で……。それもあり、『ニトブラ』の制作では、「参考にせず、必殺技とかも変更していいですよ」と言ったのですが、できたものを見るとかなり忠実に再現されていました。

 『ニトロワ』が発売したとき、弊社にも購入したスタッフがいたんですよ。それでいざプレイしてみたら、ゲーム内容からニトロプラスさんの“格ゲーが好き”という想いがにじみ出ていまして、これは相当好きなんだろうと感じていました。『ニトロワ』は、ニトロプラスのキャラクターが格闘ゲームで動くとしたらこう動くであろうと制作されていると思いますので、そういった部分はできるだけ尊重しつつやっていきたいなと。それで、そのあたりを踏襲しつつもシステム面やバランス面については、弊社の決めた形でやらせていただきたいとニトロプラスさんに伝えました。

――本作におけるプレイアブル、パートナーキャラクターの選出はどのように決定したのでしょうか?

 キャラクターに関してはほぼニトロプラスさんに決めてもらいました。パートナーシステムを採用して、たくさんのキャラクターを登場させたいということは最初から決まっていました。そのなかで誰を出していくかとなり、「『ニトロワ』にいたキャラクターは全部出すのか?」といった部分を相談しながら決めた形です。

おがみ 『ニトロワ』は13キャラクターだったのですが、その時点のすべての作品がカバーできていました。ですが、発売からいまに至るまででかなり作品が増えていまして、そのメインヒロインだけでもかなり増えています。さらに、アニメなどのコンテンツにも関わっておりますので、それらのキャラクターを全部出そうと思うとかなりの数になってしまうんですね。ですので、登場ヒロインの特性などを考慮して動かしていて楽しそう、絵になりそうとか、全体的に見た時の動きの方向性やキャラの大きさのバランスなどを考慮して選ばせていただきました。ただ、弊社内の目標は全ヒロインのプレイアブル化なので、そこは林さんと相談しつつという感じになりますね(笑)。

――キャラクターを制作するにあたって格闘ゲームに落とし込むことが難しかったキャラクターはいますか?

おがみ 弊社側としましてはふたり。ひとりは三世村正です。村正は原作では、『ニトブラ』に登場する人間の見た目よりも甲冑の姿のほうが多いんです。ですので、人間の女性の形態で動くことがあまりなく、そういった部分が想定できていなかったので、「村正だったらどういう動きをするだろう?」とか「蜘蛛だから糸を出すんじゃない?」と話し合いながら、最終的にエクサムさんにどういうアクションにするか提案していただきました。

 拳法を使う、糸を出すなどのいくつかのキーワードをいただいて、あとはこちらで膨らませて制作しました。最終的に完成した村正を“なまにくATK”さん(『装甲悪鬼村正』の原画家)に見ていただいて、動きがカッコいいと言ってもらえたのでよかったです。

おがみ もうひとりは、牙野原エチカです(6月現在アーケード版未実装)。『ニトブラ』のプロジェクトが動き出したときから「新作からエチカは出したいね」と言っていたのですが、エチカが登場する作品の『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』もいままさに制作している段階で、まだどんな動きをするか決まっていない部分があるんです。ですから、エクサムさんのほうから「こういった動きはどうでしょう?」と提案をしていただいたり、こちらから「こういうシナリオがあります!」といったことを共有しつつ制作しています。

 最初はキャラクターデザインも仮の物でしたしね(笑)。

おがみ 『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』のシナリオが完成してきたときに、「この技をフィニッシュで追加してもらえませんか?」とお願いしたら、すでにリーサルブレイズの動きができている段階で……ということもありました(笑)。

――開発側としてはたいへんですね(笑)。エクサムさんのスタッフでも元々ニトロプラスさんのゲームが好きな方も多いのでしょうか?

 もちろんたくさんいます。でも、こだわりがあるとなかなか制作が進行しないので、たいへんだったりするんですが(笑)。

――続いてバトルシステムについて伺わせてください。どういったコンセプトのもとでシステムを構築したのでしょうか?

 第一にキャラクターをたくさん出したいというものがあったので、パートナーブリッツ(※)は当初から実装が決まっており、“パートナーをふたり選べる”ことも決まっていました。ニトロプラスさんの要望として、コアな格闘ゲーマーにも満足してもらいたいというのがあり、私としてはさらに操作していて気持ちいいという部分も重視したかったので、“2段ジャンプ”や“空中ダッシュ”といった自由度の高い基本システムを取り入れました。

※パートナーブリッツ:パートナーが援護行動を行うシステム

――代表的なシステムとして、ボタン連打でコンボが決められる“ヴァリアブルラッシュ”、超強力な大技“リーサルブレイズ”があります。こちらはどういった意図で実装したのでしょうか?

 ヴァリアブルラッシュは逆転要素のひとつとして実装いたしました。ボタン同時押しで出る無敵技なので、コマンドが難しくありません。たとえば、起き上がり時などどちら向きにコマンドを入力していいのかわかりにくい場面でも簡単に出せるうえ、ヒット時にはボタン連打のみでコンボが成立するので、逆転要素としてはもってこいの攻撃だと思います。それに、格闘ゲームに慣れていない人は混戦になるとどうしていいかわからなくなってしまうと思いますが、そんなときにとりあえずヴァリアブルラッシュを出せば当たって逆転できるかもしれない。そんな初心者救済のシステムでもあります。一方、3ゲージ消費するリーサルブレイズは、弊社の『アルカナハート』や『アクアパッツァ』でもおなじみの大技で、そのキャラクターでいちばん強い必殺技です。アニメーションが挿入される特別な演出も見どころです。原作ファンもプレイすることを考えて、リーサルブレイズはかなり当てやすくなっており、さらに観ていてもおもしろいにぎやかな試合になることを意識して調整しました。また、マニアックな要素として、インフィニットブラスト(※)やパートナーブリッツを駆使することで、より強力なコンボを決められるようになります。コアな格闘ゲームファンは、このあたりの要素を使って研究してほしいですね。

※インフィニットブラスト:発動中はパワーゲージや体力が自動回復するシステム。

大技のリーサルブレイズを決めると、本作用に描き下ろされたアニメーションが挿入される。

――コアな格闘ゲームユーザー向けの要素を入れつつ、ライト層がプレイしやすい要素も入れたんですね。

 そうですね。そんなに格闘ゲームがうまくない人どうしでも、同じくらいのレベルであればワイワイやりつつも激しい対戦を楽しめると思います。また、パワーゲージやインフィニットブラストなどをラウンド持ち越しなしにしたんですが、これもライト層向けの要素になります。一般的な格闘ゲームでは「このラウンドはゲージを溜める」だとか「このラウンドは溜めたゲージを温存する」といった戦略がありましたが、本作ではそういうのはもういいじゃん、みたいな(笑)。ゲージが溜まったらドンドン使っていきましょうと。

おがみ それでも最初は使い忘れも多かったりするんですよね(笑)。

 ゲージもかなり溜まりやすい仕様になっているので、溜まるたびに使っても問題ないと思いますよ。パートナーも、従来作の場合はせっかく呼び出しても相手に潰されて何も起きずに終わってしまうこともあったんですが、初心者にやさしくないと思いましたので、発動したら絶対に行動を起こしてくれるようにしてあります。防御システムの“バニシングガード(※)”はわりとマニアックな要素に見えますが、ボタンを押すだけで出せますし、何かゲージを消費するわけでもないので、初心者の方でも使いやすい仕様になっています。また、システムを並べてみるとわりと数が多いと感じるかもしれませんが、実際にプレイしてみるとそこまで煩雑でもなくすんなりと遊べると思います。

※バニシングガード:あらゆる攻撃と弾をかき消す強力なガード

――現在アーケード版は先行稼動という形で、今後実装予定のプレイアブルキャラクターがいます。今後のアップデートの予定を言える範囲で構いませんので、教えていただけないでしょうか?

 時期は未定ですが、随時といった形になります。先日パートナーキャラクターの追加などのアップデートを実施いたしましたが、2015年7月19日開催のエクサムカップ本戦までにもう一度アップデートしたいと考えています。ただ、これはキャラクターバランスの調整ではなく、キャラクターの追加や不具合の修正がメインになります。エクサムカップ後は、状況を見てキャラクターバランスの調整を入れるかもしれません。もしかしたらシステムに手を加える可能性もありますが、パートナーがやられるようになるなどのコンセプトを曲げるような変更は加えませんのでご安心ください。

――なるほど、それでは大会後も定期的にアップデートが実施されるんですね。

 定期的に何かしらアップデートがあるという感じですね。家庭用もありますので、長い目で見ていただけるとうれしいです。

※取材後に、7月2日のアップデートでセイバーやアンジェラ、丈槍由紀が使用可能に!という発表が行われた通り、今後も定期的にアップデートが行われていくようだ。