あのヤギゲーが家庭用ゲーム機で遊べる!
昨年(2014年)、PCゲーム界隈で話題をかっさらったヤギシミュレーションゲーム『Goat Simulator』が、満を持してXbox Oneに登場。開発陣が「同じ10ドル払うならレンガを買うほうがマシ」と豪語するほどのゲームをついに家庭用機で楽しめるうえに、なんと、まさかの日本語化。元々、言語の違いはほとんど関係ないゲームではあるが、やはり日常的に海外のゲームを遊んでいるヘビーゲーマー以外には、“日本語で遊べる”ということの安心感は強いだろう。
聞いたことのない角度で突き刺さる斬新な倒置法が、まだ見ぬ新体験を予感させる。「チッ、機械翻訳かよ」と舌打ちしているアナタは甘い。機械翻訳でもこんなことにはならない。そもそも発売前に1回でもタイトル画面を見たら、開発に携わった人が誰か気付くだろう。
ゲームを開始すると「ゴートシミュレーターは物理ゲーです。ゲーム空間内で詰まって動けなくなることがあります。そうなった場合は、ポーズしてリスタートかリスポーンを押して、プレイを続行してください。」とあるように、PC版のころから、あえてバグを残してあるゲーム。これまでのオープンワールドゲームによく見られたバグや、物理演算による変な挙動をパロディーにしている。ふつうのゲームなら“調整不足”、“バグ多数”と酷評されるところだが、それ自体を味にしているわけだ。
つまりこの怪しい日本語は、海外ゲームの日本語化によくある“変な日本語”すらも再現した、高度なローカライズなのだ。
その証拠に、つぎの写真を見てほしい。より長い滞空時間に挑むクエストのタイトルなのだが……。
「あ゛のヤギ」である。わざとやらないと、こんなふうに翻訳されるわけがない。「けっこう飛ぶ」って、そもそもヤギは飛ぶものじゃないし……。
さらに長い滞空時間に挑むクエストの難易度・ハードをクリアーしたところ。さっきは“あ゛のヤギ”呼ばわりだったのに、けっこう飛んだことによる敬意の表れなのか、“ヤギさん”と、さん付けにランクアップ。
ちなみにこれは、店のショーウィンドウに激突しまくっていたら、なぜかイナバウアー的な体勢で首から先だけがウィンドウ内にめりこんで固定されてしまったところ。もちろんふつうのゲームならわりと致命的なバグの一種だが、『Goat Simulator』なら日常茶飯事。この状態は滞空時間として換算されるようなので、意外すぎる攻略法といえよう。デカデカと表示される“滞空時間(ハード)”の文字とヤギの状態がジワジワくる。たしかにハード。
一方こちらは、遊園地的な場所で高速回転する乗り物で滞空時間を稼ごうとして失敗しているところ。アームの部分に首が挟まって遠心力で大変なことになっているシーンなのだが、このゲームのヤギは不死身なので安心だ。
クエストをこなしながら、この狂った世界に慣れよう
まずはローカライズ具合とともにクエストの一部を紹介したが、このゲームには“クリアー”という概念がなく、主目的は存在しないことでも有名。ヤギができることは、ステージを探索すること以外は基本的に破壊行動しかない。破壊するとなぜかスコアが加算されていくので、強いて言えば、人々に頭突きをかまし、物を破壊し、町を混乱に陥れることが目的といえるだろう。
しかし適当に触っているだけだと、ヤギがどんなことができるのかを把握しきれないまま、30分しないうちに電源を切ってしまう恐れがある。そこで、多少なりとも補助的な役割をするのがクエストだ。前述の滞空時間チャレンジのほか、ハイスコアを狙うものや、物を吹き飛ばす距離、前足だけで立って歩く距離、町のあちこちに隠されたヤギトロフィーをすべて見つけるなど、多岐にわたる。
RPGなどでは、本編を進めていくと寄り道要素としてこういったサブクエストが開放されていくことが多いが、本作の場合、クエストをしていくことで「ああ、このゲームってこんなこともできるんだ」と“本編”が理解できるようになっている。
基本的な操作は“ジャンプ”、“頭突き”、“ナメナメ”の3つ。助走をつけて人や物に頭突きするだけでおもしろいように吹っ飛んでいくので、これだけでもそこそこストレス解消にはなるのだが、オススメは爆発物への頭突き。町の各所には爆発物が点在しており、これに頭突きすることでヤギを空の旅へとご案内することができる。クルマも頭突きで爆発するが、オススメはガソリンスタンド。
とある場所では、闘鶏場ならぬ闘ヤギ場もあるので、頭突きに自信がついてきたら挑んでみるのもいい。
ここで勝ち抜いていくと、ヤギにさまざまな変化を与える“ミューテーター”のひとつ、“ムキムキヤギ”を取得することができる。
頭突きチャンピオンとなり、「俺もヤギの頂点を極めてきたな……」と感じたら、ナメナメも活用しよう。
ヤギから伸びている赤いものは首綱などではなく、ヤギの舌。すさまじい粘着力で、何かひとつをペットのように引きずりまわすことができる。ただし、重すぎるものは不可能だ。
これで人を連れて、対向車に思いっきり突っ込むのも楽しいのだが、自分が引きずり回されることにも使える。延々と同じ場所をドリフトしながらグルグル回っている車があるのだが、これをタイミング良くナメナメすることで、西部劇も真っ青の引きずられ&振り回しを体験できる。
鎖鎌の要領で周囲のギャラリーをなぎ倒したり、時折、ヤギが車体に激突することもあるため、ポツポツとスコアが加算される。ふと、「このまま一晩放置したらスコア稼げるのでは?」と思って試してみたところ……。
スコアがえらく増えているのが分かるだろうか。期せずしてスコア稼ぎの自動化に成功してしまったが、ぶっちゃけふつうにゲームをやったほうが遥かに稼げるので、あまりオススメはしない。クエスト項目には“イージー”、“ノーマル”、“ハード”の3段階あるのだが、“トータルスコア”のノーマルすら解除できていなかったため、もっとケタ違いのスコアが必要と思われる。
これは発見と工夫のゲームだ!
先程のドリフト車ナメナメもそうだが、このゲームはプレイヤーが能動的に探索することによる発見と創意工夫によって、俄然、輝きを増す。たとえば、破壊活動の一環で吹っ飛ばすオブジェクトのひとつだろうと見過ごしがちだが、ヤギは自転車にも乗れる。
自転車の操作は相当難しい。右スティックで視点変更した方向へ曲がるため、左スティックで倒れないように調整しながら、右スティックで向いた正面方向に移動するという、ふつうのゲームではまず見ない複雑怪奇な操作。しかし、それも仕方ないだろう。なんせ、ヤギが自転車に乗ろうとしているのだから……。
それでもなんとか慣れてきた頃、「やった! 乗れたよ!」と小学生のころに初めて自転車に乗れるようになった感動を回想していると、そこへ無慈悲なトラックが……。
まるでドラマのワンシーンのようだが、このゲームにはなぜかスローモーションにするためのボタンがあるので、ぶつかる瞬間にこれを押せば、スローモーションでドラマティックにヤギが事故るところを堪能できる。この機能、何なんだホントに。
なお、先述のナメナメにも別の使いかたがある。言い換えると、あれは物を運べる能力。あるものをあるところへ持っていき、あることをすると……。
ヤギ、宇宙(そら)へ。しばらく放っておくと地上へ戻るので、宇宙の藻屑になる心配はない。
Xboxユーザーにはおなじみの“実績”も多数用意されているのだが、これもふつうのゲームとは違い、プレイヤーが意識的にあれこれ試してみないと解除できないようになっている。ひととおり破壊活動を堪能した後でも、30ある実績の内、6つしか解除されていなかった。
実績は基本的に自己満足のものだが、報酬として新たな“ミューテーター”を獲得できることも。ジェットパックを背負ったり、落下速度がゆっくりになったりとイロイロなものがあるのだが、“スピーディーヤギ”というのをいつの間にか獲得していたので、使ってみると……。
もはや「ゴート……シミュレーター……?」という気がしてくるが、この世界では多少カタチが変わって足が速くなっただけのヤギなのだろう。
あと、“ノッポヤギ”というものも獲得していたので、使ってみると……。
動物園で見かけたような気もするが、ノッポのヤギなのだろう。カメラアングルの関係で頭が見切れることが多いほどの高身長で、ちょっと高所にある隠しアイテムを見つけるのに役立った。
"goat"はヤギを意味するが、海外ではバカ・愚か者といった意味合いもある。と同時に、"Greatest Of All Time"の頭文字をとって、GOAT(最高!)という意味もある。バカで最高なこのゲームには、見事なタイトルだ。
実績関連のwikiや個人ブログなどを検索すれば、実績やミューテーターの解除条件は解答はカンタンに見つかると思うが、発見と工夫こそが、このゲームの醍醐味。できれば自力で試行錯誤してみてほしい。アナタはヤギのように家畜でもなく、またバカでも愚か者でもなく、賢い人間なのだから……。
■筆者紹介
夢崎
ファミ通Xbox 360の“海外ゲームマニアックス”、“実績解除愛好会”コーナーなどや、二次元ドリームマガジン(キルタイムコミュニケーション刊)にて変なゲームの記事を書いたりしているフリーライター。本文ではあんなこと書いたけど、あまりにも分からないので、もうバカでもいいから実績Wikiを解禁しようとしている。