新しい発想のタイトルが続々
2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。自主的……インディペンデントの名の通り、みずからが主となって制作された“インディーゲーム”たちを一望できる、ゲームファンにとっては、それはそれは胸踊るかのようなイベントとなった。
いままでインディーゲームの大規模なイベントは、おもに関西圏での開催が多かっただけに、こうして東京でインディーゲームシーンの最新の熱気を感じられるイベントが催されるのは、なんともうれしいかぎり。
ここでは、そんな会場にひしめいていた独創的なゲームのなかから、とくに“新しさ”を感じさせられてやまなかった作品を厳選してご紹介。
“作りたいゲームを作りたいように作る”、そんな純粋なる行為が放つ、独自の輝きをとくとご覧あれ!
インディーだからこそ実現できた? 新たな発想のRPG
『ROLLERS of the REALM』(PHANTOM COMPASS)
まずご紹介するのは、カナダのPHANTOM COMPASS社が開発したRPG『ROLLERS of the REALM』だ。
こちらの作品だが、じつは国内ではアークシステムワークスより、PS4・PS Vita用ソフト『ローラーズ オブ ザ レルム ~呪われし三戦士と戦乱の王国~』として近日配信予定。ちなみに海外では、硬派なRPG作品でも知られる、あのアトラスが配信を担当している、インディーの本格ファンタジーRPG作品となっている。
物語は、とある人助けから事件に巻き込まれてしまった、ひとりぼっちだが勇敢なる盗賊の少女となって、世界の命運を左右する陰謀に立ち向かう冒険譚が描かれることに。
ちなみに、こちらが配信間近の本作をひっさげてTIFにやってきたTony Walsh社長と、メインビジュアルのタペストリー。

観察眼の鋭い読者の皆様ならば……お気づきになられただろうか。本作はそんじょそこらのRPG作品ではなく、タペストリーの上部に記されているように、なんと“ピンボールRPG”!?
ピンボールをプレイしながら、ワクワクするような大冒険ができてしまうのが、ピンボールRPG『ROLLERS of the REALM』なのである。
RPGの醍醐味のひとつに、新しいマップを冒険していく楽しみがあるが、本作では、そんな物語で旅するフィールドは……そのまま丸ごと特製のピンボール台になったかのように表現される(ちなみに、大量に登場するフィールド群は、すべてひとつづつこだわり抜かれて製作されているという贅沢さだ)。

RPGにつきもののバトルも、もちろんピンボールのルールに則って展開。ボールを打ち出し、まるで役物のように台(というかフィールド)に配置された敵兵士に当てていくことでダメージを与えられる。逆に、敵からは、ピンボール台のバンパーめがけて攻撃が行われるので、ぼーっとはしていられない。
本作は、バンパーを激しく操作してボールを落とさないようにするという、いわゆるピンボールの遊びに夢中になることが、そのままRPGの激しいバトルになっている。
注目は、主人公となる10人のパーティメンバーは、(イラストはあるものの)ゲーム中ではすべて“ボール”として登場するというパンチの効いたシステム。主役の盗賊の少女を始め、これらのボールにはそれぞれキャラクターに見合った能力(騎士は落下を防ぐ盾を出せるなど)が備わっており、さらに成長要素もちゃんと存在。RPGの醍醐味をきちんと“ピンボール”で味わえるようになっている。
ピンボール+RPGといえば、古いゲームファンの方ならきっと、かつてジャレコより発売されていた、ピンボールとRPGが融合した遊びが楽しめたファミコンソフト、『ピンボールクエスト』を思い出された方もいらっしゃるかもしれない。
それもそのはず。ブースにいたPHANTOM COMPASS社の社長にお話を伺ったところ、じつのところ、本作の制作動機はこの『ピンボールクエスト』がルーツであり、いまの時代のセンスと技術でこの遊びを作ってみたかったのだという。また、昔からゲームセンターでピンボールや『パックマン』、『スペースインベーダー』などのアーケードゲームに親しんできたことも大きかったという。
また、なんと本作はカナダ連邦政府が取り組む、インディーゲームメーカー支援の一環として、数年間の資金提供のサポートを受けて開発された作品でもある。社長もその支援があったからこそ、こうした「ピンボールとRPGを組み合わせる」という奇想に満ちた作品を作り続けて完成までこぎつけられた、と笑顔で語った。
今回TIF会場に出展されていた『ROLLERS of the REALM』からは、こうした支援の意味と力を感じさせられる。それは見事にピンボールRPGという遊びを新生させた。そして、それだけではなく、本作は海外のアワードGDC Play 2014のBast in Play賞までも受賞してみせたほどの、実力を備えた作品として完成することとなった。
ちなみに、本国には実際のピンボール台でプレイできるアーケード版もあるそうだが……それはさすがに重くて、日本には持ってこられなかったそうだ。
『RPGOLF』(ArticNet)
さて、ピンボールとRPGが合体したものだけでなく、TIF会場にはRPGとゴルフまでもが合体を遂げた、その名も『RPGOLF』というゲームまでもが、ArticNet社から出展されていた!

見下ろし型のフィールドで、ゴルフクラブでボールを打ち、少ない打数でカップに入れるというゴルフゲームなのだが、ボールを打つたびに自分で打ったボールの落ちた場所まで移動していく……その道程が“アクションRPG”になっているのだ。
ボールを目指して進む途中にモンスターが現れ、襲いかかってくる。それをゴルフクラブをロングソードさながらに振りかざしてガンガン攻撃する。
もちろんRPGなので、成長要素も存在する(予定)だけでなく、モンスターの攻撃を受けてHPが減ることでショットの飛距離が落ちたり、魔法(?)を使ってMPが減ることで、ショットを打つ際の正確さに影響が出るようになっているなど、ガチでアクションRPG要素とゴルフの要素が密接に絡み合っている点が、もうインディーの発想でしかありえないと思えるほどの奇想っぷりだ。

いったいどうして、このような発想が浮かんだのか作者の方に聞いてみたところ、実際にゴルフが好きでゴルフゲームをよくプレイしていたが……ショットの後に“キャラクターが一瞬で次のショット地点にワープしている”ことにどうしても納得がいかない気持ちを抱いており、そこをゲームにできないだろうか、という考えがアイデアの原点だったという。
現在は、資金をすり減らしながらも、完成に向けてアイデアも盛り込みながら鋭意制作中だとのこと。身を削りながらも、インディーメーカーとしてこんなにも独創的なゲームを制作している……そこにある、真の意味での新感覚RPGには、度肝を抜かされるばかり!