名曲の陰にはレッドツェッペリンがあり!? 岩垂徳行氏に聞く『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』の作曲秘話

エクストリームから発売予定のニンテンドー3DS用ソフト『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』の音楽を担当している岩垂徳行氏にインタビューを敢行。

●岩垂徳行氏はいかにして『ラングリッサー』の楽曲をいまに蘇らせたか?

 2015年7月23日にエクストリームから発売予定のニンテンドー3DS用ソフト『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』。その音楽を担当しているのは、『グランディア』や『逆転裁判』シリーズなど、数々の人気タイトルの楽曲を手がけた岩垂徳行氏。初代『ラングリッサー』からシリーズに携わっている氏に、『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』の音楽の話を中心に、ゲーム音楽の作曲スタイルの変化、シリーズ黎明期の思い出など、幅広く語ってもらった。

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■『ラングリッサー』の音楽を蘇らせる喜び

――『ラングリッサー』シリーズが『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』として復活するわけですが、最初に今回のお話を聞いたときの感想を教えてください。
岩垂 ついに復活するのかと、嬉々乱舞というか、すごく喜びました。とにかくうれしかったですね。正式に発表された後でツイッターなどを見ても、復活が意外に支持されていて、すごくうれしいですね。

――作品のオファーがきたときは、どんな心境だったのですか?
岩垂 「マジか!」ですかね(笑)。それからはたいへんでしたね。

――“たいへん”とおっしゃいましたけど、実際の作業はどんなふうに進めていったのですか?
岩垂 新しい曲はもちろん作るつもりだったのですが、古い曲も入れようと思ったんです。そこで頭に浮かんだのが、PC-FX版の『ラングリッサーFX』でした。

――それはまたなつかしいですね!
岩垂 そのときに作ったデータを使えれば使いたいなと思って。で、そのころは98ノートで曲を作っていまして。で、当時使っていた98 ノートを押入れから 引っ張りだしたらバッテリーの液漏れがすごいことになっていて起ち上がらない状態で。そんなわけで、まずは「動く状態の98ノートを 買う」という作業から 始まりました(笑)。で、動く98ノートを購入して、データを見て、それをMacにコンバーターして……、今回の作業に使いました。

――なぜ、『ラングリッサーFX』のデータを使おうと思ったのですか?
岩垂 シリーズの中でも『ラングリッサーII』の音楽がいちばん 人気がありましてこれも本作品に取り入れたいと。ただ『ラングリッサーII』はメガドライブのゲームなので、8音しか鳴っていないわけですよ。そこで思い出し たのがPC- FXの『ラングリッサーFX』で、これは『ラングリッサーII』とほぼ同じゲーム内容ですし同じ曲なんです。PC-FXのソフト はCD-ROMなおかげで 音数の制約もないですし、たとえばピアノを両手で弾いている音がちゃんと入ったり(笑)。だから、そのデータを使いたいなと思ったん です。けっきょくはいろいろ手直 しはしたんですけどね。

――ファンの方に対するサービスというか、おもてなし的な感じですね。
岩垂 はい、そうです。新曲だけでなく、昔のユーザーにも盛り上がってほしいというところですね。

――そもそも岩垂さんは、『ラングリッサー』シリーズの音楽をどういうイメージで作ってきて、今回はどのような音楽にしようと思われたのですか?
岩垂 これは記事として書けるかわからないんですけど、もともとメガドライブで最初に『ラングリッサー I』の音楽を作ったときって、ちょうど『ジノーグ』と並行してやっていたんですよ。『ジノーグ』は僕がすべての楽曲を作ってましたのでしっかりと時間を掛けていましたが、『ラングリッサー』は3人の作曲者で、パパッと2週間ぐらいで作りました(笑)。僕は味方の曲を作ったのかな。曲に対する注文も……あんまり 何も言われなかった気がするなぁ(笑)。当時メサイヤは六本木にあって、週に2回くらいか「こんなのできました」ってデータを作っては持って行った思い出があります。途中の喫茶店で飲んだアイスコーヒーがまた格別においしくて(笑)。そうそう、先に曲をくれとも言われましたね(笑)。

――ふつうは逆じゃないですか(笑)。
岩垂 で、「それは難しいですね」って言ったら「開発を急かさないといけないので、そのために」って(笑)。でもいざリリースされると、曲の受け自体はすごくよくて、その流れで『II』もやりましょう、という話になったんです。『II』は、僕ひとりですべての曲を手掛けることになりました。初代『ラングリッサー』のときもそうなんですけど、『ラングリッサー』の音楽は全体的にロックなイメージで、まずレッドツェッペリンを聴いてから、曲を作り出すんですよ、『ラングリッサー』の場合。まず、自分の体をロックに持っていくんです。「さあいくぞ!」って。まあ出てくるものには意外とロックっぽくないものもあるんですけど。ロックっぽい気持ちを持って作っていますね。それで『II』を作って、(『III』は別の人が作って)、『IV』、『V』、『グローランサー』って続いて。やはり同じような気持ちで作ってきました。

――レッドツェッペリンを聴いたのは、やはり岩垂さんの中に、「ロックといえばレッドツェッペリンだろう」という思いが?
岩垂 そうですね、この作品に合うのが僕の中ではツェッペリ ンでしたね。

――ちなみに、『ラングリッサー』シリーズの音楽がロックっていうのは、最初から方向性として定まっていた感じですか?
岩垂 プロデューサーたちとの話し合いの中で「曲はどんな感じにしましょうか?」、「ロックですよね!」ってなった気がするんですよね。後は、メガドライブで音楽を作るときにロックっぽいほうが楽チンだったというのもあります(笑)。当時のゲームミュージックはなるべくデータ量を少なくするということも命題のひとつでしたからね。少ない音数で音圧を稼ぐにはロック系でドラムもドンドンドンドン……ってしっかり音を出せればいけるなと。で、僕が『ラングリッサー』をやる前に『アフターバーナーII』を移植していたんですよ。そこでギターの音をいっぱい作っていたので、「これが使える」というのもありまして(笑)。でも『ラングリッサー』の画面にはロック、というイメージが強かったのがいちばん大きいです。

――昔はギターの音を作っていたということですが、そのまま生で演奏するよりやはり手間がかかるものでしょうか?

岩垂 昔はギターに限らず、複数の音をどうやって入れるのかがたいへんだったんです。ベースの音を入れ、メロディを入れて……ってやっていくと、和音で音を入れることが難しくなってくる。単音だとギターのパワーコードは出しづらい。だからFM音源だから可能だったということもありますが、ひとつの音の中に和音を作って、それをいろいろ組み合わせてチェンジしながら音の厚みを出していました。もちろんギターを実際に弾けば“本物の”音がしますし、弾くための努力はありますけど、絶対にいまのほうが楽、というか、いい音が出せる。やりたいことがやれますね。

――メガドライブの8音すら当時としては多いほうですよね。
岩垂 ファミコンだと4音ですね。4音だと何もできなかったですね。でも4音ならではの音楽の作りかたもあった。それはそれでおもしろかったんですけど。

――ハードが進化するとクリエイターさんも大変ですよね……。
岩垂 辛いですよ。逆に(笑)。すごくたいへんです(笑)。ゲーム音楽に関わっている人なら、誰もが感じていることだと思うんですけど。制約がなくなってしまったので。(音作りの)制約はないんだけど、ゲームとしての制約はありますしね。作業量は昔の5倍ぐらいになってますね。単純に。

――『II』の音楽がいちばん人気があるということですが、『I』のころも含めて、どのような反響があったのですか?
岩垂 RolandのSC55などのGM(General MIDI)音源というどのメーカーの楽器を使っても音色の並びがいっしょ、という便利な規格ができて、それを使って自分で打ち込んで曲を作ろうというのが流行っていまして。 で、「『ラングリッサー』の曲を打ち込んでみました」、「自分でアレンジしてみました」という人たちが僕のところにCDに焼いて送ってきたりとか。男性だけでなく女性からも送られて来て「時代は変化したなぁ」と感心しました。

――当時としてはめちゃめちゃ珍しいことですよね?
岩垂 そうですよね。まだそのころは手紙、ファンレターでしたからね。そこにいきなり音源が届く。「こんなの作ったから聴いてください!」と来るんですから、「マジですか!?」ってなりますよね。『ラングリッサー』って熱狂的なファンが多いんですよ。海外でも人気があって「ギター弾きました!」みたいな音源が届いたり。でも海外のファンは基本的に男たちなんですよね。女性が興味を持ってくれるのは。うるし原さんの絵の影響ですかね。僕も大好きで す。それと、作っているときに、『ラングリッサー』は“一生遊べるゲーム”を目指したんです。将棋やチェスみたいに駒(自軍)をどう配置するかによって違った展開になる。そういうおもしろさがずっとファンの心を捉えているんじゃないのかなぁ、と思います

――昔の曲のアレンジと新曲だと、当時と時代も違えば作法も違うので、曲も変わってくると思うのですが、いまの岩垂さんの気持ちでアレンジしたのか、当時を思い出して曲をあわせたのか、どちらに?
岩垂 いまにしました。やっぱりいま出るゲームですからね、いまのサウンドに合わせました。懐かしいけど新しい感じになっているんじゃないかな。

――いま風にアレンジするという点で苦労されたことはありますか?
岩垂 メガドライブ版は最大で8音しか鳴らせなかったんですけど、その当時は自分としては入れたい音があって も「8音しかないからなあ……」と諦めてい たんです。今回はそういう制約はまったくなくなり、生楽器もぜんぜんオーケーになって、やりたい放題な状態です。ギターも生で入れていますし、自分でできる楽器、トロンボーンとか管楽器は自分で演奏しています。最新の音源も使って、やっと“自分が当時、出したかった音”を再現することができました。

――当時の作曲は最初にフルでやって8音に落とし込むといったようなやりかたなんですか?
岩垂 いや、そんなことはしないですよ。当時できなかったことを……というか、当時は主要な部分だけやっているので、そこを埋めていく作業をとにかくやりました。アレンジの肉づけのようなことですね。伝わりにくいとは思うんですけど(笑)。

――今回のように昔作った曲をアレンジし直すという経験はけっこうあったりするんですか?
岩垂 いやあ、あんまりないです。だからすごく楽しいですよ。昔の作品を蘇らせてくれるのは本当にうれしいですし、当時のジレンマをなんとかさせてもらえるっていうのはすごくうれしいですね。