マイクラ風の見た目にディープな毒を秘めた意欲作
今年前半にボストンで行われたゲームイベント“PAX EAST 2015”。インディーパブリッシャーのDevolver Digitalは、当時発売を間近に控えた血まみれの傑作『Hotline Miami 2』を筆頭に、赤外線映像風の見下ろし画面で戦う2Dサバイバルシューター『Noct』、そして日本の俊英moppinによる縦スクロールアクション『Downwell』など、トップインディーパブリッシャーとしての充実したラインアップを誇っていた。
そんな中で今年のPAX EASTに合わせて発表されたのが、Calvin French氏によるKitty Lambda GamesのアクションRPG『Paradise Never』だ。『マインクラフト』風のボクセルスタイルのファンシーなグラフィックからカジュアルな子供向けの内容を想像するかもしれないが、実態はまさにDevoverが契約するのにふさわしい、大人向けのディープな意欲作だった!
『Paradise Never』は、2027年、フランスの植民地である、とある小さな島国が舞台。プレイヤーは地元民による自治を求めた革命を起こすのだが、3日後に鎮圧され、死亡する。革命は失敗だ。しかし、そこに女神が現れ、革命が始まった日の朝へと時間を戻し、プレイヤーを送り返す。そう、本作は失敗した革命の3日間を繰り返し、なんとかして革命の成功と時のループからの脱出を目指す、政治的な問題をはらんだ近未来SFなのだ!
本作ではプレイヤーが死亡するか、革命に失敗するか、あるいは敵味方含めて人が死にすぎることで(女神が嫌がるらしい)、時間が革命運動が始まった初日へと巻き戻される。ループ物のお決まり通り、プレイヤーの武器となるのは記憶だ。失敗した身だからこそ知る知識を利用して、より効率的に、初見では不可能な方法で問題に対処できる。携帯電話に記録されたものは維持されるというのもポイント。入手した記録や仮想通貨、連絡先などを次の3日間に活用するのだ。
しかし、女神の気まぐれなのかなんなのか、世界は巻き戻される以前と同一ではない。島国の地形は自動生成で違った形に変貌し、またメインキャラクター以外のNPCたちの役割も変わってしまう。一方でリセット前に女神からスペシャルアイテムを買うことができたり、新たな選択肢を作り出したりもできるのだが、場合によっては逆効果になることもあるらしいのが悩みどころ。女神よ、あんたどうしたいんだ!
Calvin French氏本人に解説してもらいながらちょっとプレイしたのだが、ちょっとしたクエストでも、会話の選択肢をうまく選んだり、何気なく置かれたアイテムを使って、アドベンチャーゲーム的にトリッキーにクリアーできたのが面白いところ。実際、タイムループを活かした内容にするために、解法をいろいろ用意していたり、キャラクターのセリフをシチュエーションに応じて細かく分岐させるといった工夫をしているという。
そんなわけで、発売されたらちょっと腰を落ち着けてじっくりプレイしてみたい本作。開発開始からは2年ほどが経過しており、まずはPC/Mac/Linuxでのリリースを目指して開発進行中。ニッチな内容なのでローカライズは望み薄かもしれないが、発売の際には改めてチェックしてみたい。