『WoT』で洗練されたシステムを踏襲
精緻な資料や考察に基づいたリアルさと、15対15という多人数ならではの協力や戦術が魅力のオンライン戦車アクションゲーム、『World of Tanks』(以下、『WoT』)。この『WoT』を開発・運営しているWargaming.netが “陸”ではなく舞台を“海”に変え、話題を集め続けてきたオンライン海戦ストラテジーが『World of Warships』(以下、『WoWs』)だ。長らく開発中だった本作が、いよいよクローズドβテスト開催を迎え、本稼働に向けて準備が整い始めた。
これまでもクローズドテストや東京ゲームショウでのプレイアブル出展などで、触れられる機会はあったものの、筆者としてはじっくり思うさま遊び尽くせる機会はこれが初めて。『WoT』をずっとプレイしつつ待ち望んでいたこの好機に、大いにプレイさせていただいた。
まずゲーム全体の流れとしては、基本的な部分は『WoT』の段階で洗練され、完成したシステムを踏襲している。
対戦をくり返すことで、新艦艇や各艦の装備を購入するための通貨“クレジット”と、各艦の装備を研究し購入可能にするために必要な“経験値”を集め、それにより艦を強化。研究がある程度済むと、1~10まである艦のランクカテゴリー“Tier”が上がり、その艦より1段階高い艦艇の研究と購入が可能になる。
さらに各艦には“アップグレード”というカスタマイズ枠が、艦ごとに決まった数だけ用意されている。クレジットを消費して、この枠に射撃精度の向上やダメージコントロール能力など、好きな強化効果を搭載できるのだ。
さらに対戦をくり返しスキルポイントを得ることで、各艦に乗っている艦長も、砲弾の装填速度の向上や、敵に発見されたことを感知する能力など、さまざまなスキルを選んで獲得できるようになる。アップグレードとスキルの組み合わせで、同じ艦でもプレイヤーそれぞれでかなり性能の違いが出せるというわけだ。
このシステムも『WoT』ではおなじみだが、アップグレード枠ひとつごとに選べる強化の種類は3つで固定され、搭乗員は艦長ひとりのみ、と枠ごとに使えるアップグレードの種類制限がないため選択肢がかなり多く、また搭乗員が複数人いてそれぞれにスキルを習得させていく『WoT』と比べ、かなりわかりやすくなっていた。
こうして自分好みの開発とカスタマイズを済ませたら、いざ対戦開始。今回のテスト中に選べたゲームモードは、CPUのみの敵艦隊にほかのプレイヤーと協力して挑む“Co-op戦”と、12対12でチームを組む対人戦“ランダム戦”の2種類。マッチングは、選んだ艦のTierに従い、そのランク近辺のTierの艦を選んだプレイヤーと行われる。
難しい操作もいっさいナシ
ここからは、実際に艦を操作していくわけだが、操作方法も『WoT』譲りの非常にわかりやすいものとなっていた。
まず移動だが、キーボードのWキーで前進速度の上昇、Sキーで前進速度減少ならびに後退、Aキーで取舵(左への方向転換)、Dキーで面舵(右への方向転換)。QキーとEキーによるより細かな舵の調整もあるが、基本的にはW、S、A、Dの4つのキーだけで移動操作は可能だ。
敵艦を砲撃するための照準操作も、マウス操作で視界と画面中央にある照準を動かすと、使用可能な砲すべてがそちらの方向へと旋回し、照準を合わせてくれる。砲の発射は左クリックボタンで、普通にクリックしていくか押し続けることで各砲を順番に発射。ダブルクリックでは全門一斉発射。つまり左クリックひとつで、複数ある砲塔群を簡単に制御できてしまうわけだ。
ただし、砲撃は10kmくらい先を狙って放物線を描いて放たれるものなので、照準で狙った場所に到達するまでには距離に応じたタイムラグが発生する。そのあいだに狙った敵艦が移動した場合、砲弾は、もちろんその敵艦が通過済みの海面を虚しく叩くだけだ。
これを加味して、砲撃のときには相手の速度と移動先を予測し、敵艦が到達するであろう進路上の少し先の地点を狙うのが、本作で基本中の基本となるテクニックとなる。最初に一発撃ってみて、どの程度ズレるかを確認してから、残りの砲で狙い撃とう。
あとは
・1キーでHE弾(敵艦の火災を引き起こしやすく、装甲が薄い艦に有効な榴弾)
・2キーでAP弾(装甲を貫通しやすい徹甲弾)と、つぎに砲へと込める弾の種類を選択できること
(2回押すことで即座に装填を開始するが時間がかかる)
・魚雷発射管がある艦は3キーで発射準備に入れること
・Mキーで全体マップを拡大表示できること
などを覚えておけば、基本的にはゲームを支障なくプレイできる。この操作方法の概要だけでも、海戦という難しそうなイメージに反してかなり手軽に遊べるゲームであるとわかっていただけるかと思う。
そして今回のβテストでは、これまで公開されていた駆逐艦、巡洋艦、戦艦という砲撃をメインとする艦種とまったく異なる“航空母艦”が使用可能となっているが、こちらも複雑そうに見えてその操作は非常にわかりやすく、そしておもしろいものに仕上がっていた。
航空母艦は砲撃ではなく、搭載している“艦載機”を飛ばして攻撃を行う。『WoT』で言うところの、指定した地点に着弾まで時間がかかる強力な砲撃を行う自走砲のようなイメージか……と筆者は最初思っていたが、その使用感はまったく異なった。
まずは数字キーで、砲弾選択のように発艦させる艦載機部隊を選択。その後、全体マップで敵艦を左クリックすると、選択した部隊がその艦めがけて自動で発進し、あとはとくに操作せずとも追尾と攻撃を行ってくれる。また、マップの地点を指定すれば、その地点の上空を旋回して留まってくれる。艦自体の移動も、1キーを押した後に全体マップをクリックすれば、その地点へと自動で可能だ。
艦載機には駆逐艦など小型の艦に大打撃を与えやすい“急降下爆撃機”、戦艦などの大型艦に有効な魚雷を有する“雷撃機”、味方の目となり視界外の敵の位置を知らせてくれる“偵察機”、そしてこれらの艦載機を迎撃することに長けた“戦闘機”の4種類があり、これを使い分けていく。
爆撃や雷撃による攻撃に加え、爆撃機などが撃ち落とされないように戦闘機を援護のため同行させるか、あるいは自分や味方が敵艦載機に狙われることを考えて迎撃のために残しておくかなど、運用の戦略性が高く非常におもしろいのだが、それを展開するときもまた数字キーとマウスクリックのみという、非常に簡単な操作で可能なため、操作に労力割かずにこれらの戦略をじっくり考える余裕があるのがじつにうれしい。
ただし、“一定距離飛行する”、“敵の迎撃を受けて機体数が著しく減る”、“爆弾などを落として武器が尽きる”などの状態になった艦載機部隊は、一度艦に戻って補給を受けないと再攻撃できない(数字キーで選択後、Fキーで自動帰還、自動着艦)。
しかし艦に甲板はひとつしかないため、一度に着艦・発艦できる艦載機は1部隊のみ、しかも甲板の準備にそれぞれ一定の時間が必要となる。やみくもに艦載機を発艦させても、着艦と補給の順番待ちで大きなタイムロスとなってしまうという点には充分注意したいところだ。
また、敵の艦載機に自分の艦が狙われた場合、手動で迎撃はできない。艦に搭載されている対空兵器による自動迎撃のみが頼りとなるのだ。対空性能が低い艦は、近くにいる艦と対空砲火を合わせるか、味方の戦闘機に守ってもらえないと、敵爆撃機に到達されたとき、高確率で大ダメージをもらうことになってしまうだろう。
このように、航空母艦を絡めた戦略や読み合いをかなりおもしろく感じた。『WoT』で着弾点のズレや敵の動きに四苦八苦しながら自走砲を操作していた身としては、そのおもしろさが、航空母艦を使ううえでは数字キーによる選択とクリック、そしてFキーの操作のみで味わえるという点に感動すら覚えた。
もともと障害物などが少ない海が舞台ということや、巨大な船体ではとっさのバックなどは不可能なことなどから、茂みや丘陵に身を隠すといった細かな動きがつねに必要だった『WoT』に比べ、『WoWs』の操作は非常にゆったりとしており、『WoT』どころか、WASDキーでの移動を行うPCゲームを一度もプレイしていない人にも落ち着いて遊べるものと太鼓判を押したい。さらに前述の航空母艦の操作からもわかるとおり、全体を通して使うキーが少なく、自動操作でフォローしてくれる要素も多いため、複雑な操作がいっさい不要な点も、ストラテジーゲーム初心者に安心して触れてもらえる要素だろう。