関係者の思いが詰まった『ミステリート』
2015年3月1日に開催された“5pb.祭り2015”のステージで行われたXbox One用ソフト『ミステリートF ~探偵たちのカーテンコール~』のスペシャルイベントと、同じくXbox One用ソフト『PSYCHO-PASS サイコパス 選択なき幸福』のサプライズイベントを合わせてリポート!
『ミステリートF ~探偵たちのカーテンコール~』のスペシャルステージには、八十神かおる役の緒方恵美さん、東西役の川田紳司さん、同作のプロデューサー・浅田誠氏(5pb.)が登壇した。
『ミステリート』とは、数多くの名作アドベンチャーゲームを世に送り出したゲーム開発者・菅野ひろゆき氏の代表作のひとつで、2004年に発売されたPC向けの本格推理アドベンチャーゲーム。『ミステリートF ~探偵たちのカーテンコール~』は、初代と言われる『ミステリート ~八十神かおるの挑戦!~』のリメイク版と、菅野氏の急逝により未完だった完結編『ミステリート2~フェアウェル・エンカウンター~』をセットにしたタイトルとなっている。
緒方さんと川田さんは、2006年に発売されたPS2への移植作でボイスを担当。ふたりとも、これだけ年月が経ち、また菅野さんが亡くなった現在、こうして再びかおるや東の声を担当する機会があるとは思わなかったと話す。浅田氏も移植やリメイクに際しては、想像以上にたいへんだったといい、その作業は現在進行形で続いているそうだ(※その経緯を語ったインタビューはこちら)。
緒方さんは、今回の音声収録で初代も収録し直しているとのこと。すでに30日以上は収録にかかっていて(※通常ゲームの音声収録は長くても数日)、さらに2作分ということで、じつに40000ワードという膨大な量を収録! 浅田氏によると、ふつうのアドベンチャーゲームでは、全キャラクター合わせて20000ワードくらいだそうで、ギネスに申請する予定なのだとか(笑)。緒方さんは、MAGES.のスタジオに昨年の10月から週に3回ペースで通っているほどで、先日初代の収録がほぼ終わり、やっと完結版の収録に足を掛けた状態だそうだ。一方、川田さんは初代の音声は当時のものを使用するため、完結版の収録のみ。先日収録に1日行って、もう一回くらいで終わりそうだという川田さんに、緒方さんは驚愕していた。しかし、初代で楽しめた、かおると東のやり取りは完結版でも健在とのことなので楽しみ。
また、緒方さんは収録だけにとどまらず、MAGES.での会議にも出席しているという。完結版は菅野さんの残したプロットをベースに制作しているのだが、スタッフで意見のすり合わせをするミーティングが行われていて、それに緒方さんも参加。初代を演じ直したからこそ感じる“違和感”を伝えるなど、開発の深部に関わっているのだ。そうして丁寧に作られているということもあり、開発には少し時間がかかっていると浅田氏は語った。
●最新キャラクターイラストも公開
ここからは、それぞれが演じたキャラクターについてのトーク。スクリーンには、完結版で新たに描き起こされたCARNELIAN氏のイラストが表示され、川田さん演じる東のイラストは、なんと今回のステージが初公開。かなり洗練されたデザインになった東を見て緒方さんは、ネクタイの柄がバラではなくなったことや、イメージが志倉千代丸氏に似ていると指摘(笑)。また、変装(女装)したかおるに手を出そうとする東に対し、川田さんは、その原因は完璧すぎるほどのかおるの女装だからしかたがない、と力説。しかし東には好感を持っていて、とても印象に残っているキャラクターだと話した。
続いては『ミステリート』にちなんだキーワードトークのコーナー。まずは、演じたキャラクターの魅力について、緒方さんはかおるについて、以前は“童貞臭”が漂っていたが、やはりそれはおかしいなということになり、シナリオを作っているピークスの若林(健)さんと修正点を話しながら収録を行っているそうだ。それで、キャラクターとしての深みが出てきて、魅力的な探偵になってきたと、2作に渡ってのかおるの印象を語った。川田さんの東評は、お調子者であり、かおるにちょっかいを出したりもするが、思いはまっすぐ。かおるとは違う視点で物事を見て、アドバイスしている点が魅力だと語る。さらに緒方さんは、かおるは深みが出てきたが、まだまだ“中二病”的な部分は残っていると、完結編でのかおる像を評した。浅田氏も、完結編ではかおるの成長している姿が見られると言い、緒方さんやスタッフとともに、相談しながらキャラクターを作っているそうだ。
“ミステリーな体験・出来事について”というトークテーマでは、緒方さんが怖い体験以外の例として、5人も探偵役を担当していることを挙げた。ちなみにその5人とは、八十神かおる以外、究(『探偵学園Q』)、苗木(『ダンガンロンパ』)、左近(『人形草紙あやつり左近』)、そして『名探偵エヴァンゲリオン』のシンジ(笑)。緒方さんいわく、探偵の主人公を5人もやるのは珍しいのではないかといい、それがミステリーに感じるとのこと。
すると浅田氏から、MAGES.の某スタジオで猫の鳴き声がするというエピソードが。戸棚のほうから猫の鳴き声が聞こえるが、戸棚を開けても何もいなかったというもので、緒方さんも聞いており、かなり有名なエピソードらしい。
浅田さんには、「実際に作品を担当してみて」という質問。緒方さんはじめ、演者の方々といっしょに作り上げているという本作、最後までしっかりやりたいと言い、開発状況については、リメイク版が終わったので50%と語ってくれた。
ステージの最後は、キャストからの熱いコメント! 記者には、緒方さんが感極まっているように感じたが……。
緒方さんは、いろいろな作品のリメイクに携わることがあるが、今回の『ミステリートF』についての思い入れはひとしおで、亡くなった菅野さんの思いを作品として完成させようとするスタッフの熱意に敬意を表した。40000ワードという膨大な分量や、未完の大作を完成させるという、さまざまな意味でゲーム史に残るような作品に関われることに感謝していた。川田さんも、収録したら終わりというゲームの音声収録が多い中、こうしたイベントで、多くの人と思いを共有できたことに喜んでいた。