『デジモンストーリー サイバースルゥース』プロデューサー&ディレクターへのインタビュー全文掲載

プレイステーション Vita用ソフト『デジモンストーリー サイバースルゥース』のプロデューサー・羽生和正氏(バンダイナムコゲームス)と開発ディレクター・大窪哲也氏(メディア・ビジョン)へのインタビューを全文掲載。

●作品愛がアツすぎるプロデューサーと開発ディレクターがデジモンストーリーの新作を語り尽くす!

 週刊ファミ通2015年1月29日号(2015年1月15日発売)にて掲載された、プレイステーション Vita用ソフト『デジモンストーリー サイバースルゥース』の記事。その中で、プロデューサーの羽生和正氏(バンダイナムコゲームス)と開発ディレクターの大窪哲也氏(メディア・ビジョン)のインタビューを掲載し、作品の見どころなどを語ってもらったのだが、誌面の都合で掲載できなかったインタビューを、ファミ通.comにて全文掲載する。『デジモン』シリーズのファンはもちろん、RPGが好きなゲームユーザーもぜひチェックしてほしい。

■プロデューサー
羽生和正氏(文中は羽生。写真左)
『デジモンワールド リ:デジタイズ』や『デジモンアドベンチャー』を手掛ける、本作のプロデューサー。

■開発ディレクター
大窪哲也氏(文中は大窪。写真右)
メディア・ビジョン開発部部長。『ワイルドアームズ』シリーズなど、数々のRPGを手掛けている。

■現実世界にやってくるデジモンを描く

――『デジモンストーリー』シリーズ1作目の発売から、もう9年経ちますね。
羽生 初代から9年。前作の『デジモンストーリー 超クロスウォーズ ブルー / レッド』から数えると約4年ですね。ひさびさの『デジモンストーリー』シリーズの復活となります。

──本作は、これまでの作品から大幅に雰囲気が変わりました。その理由は?
羽生 『デジモン』は、アニメ、玩具、ゲーム、どれも小学生を中心にしたブームを作り、コンテンツが成長してきました。現在、当時小学生だった多くの方々は20歳前後になっており、すでに『デジモン』を卒業してしまっているんですよね。そんな子どものころ『デジモン』が好きだった方々に、再びゲームで遊んでもらいたいという想いが、きっかけになっています。また、いままで『デジモン』を知らなかった人にも、本作に興味を持っていただけるように、アニメシリーズのような魅力的な世界観を作りたかったんです。アニメでは、現実世界の少年たちがデジタルワールドに飛び込んでデジモンといっしょに冒険する話が主軸になっていますが、現実世界もしっかり描写していることが『デジモン』作品ならではの特徴のひとつだと私は思っています。本作の大きなポイントは、“現実世界”という人が暮らす世界に、“デジタルワールド”からデジモンが迷い込んできてしまう点です。デジモンという異質なものと人が接触して、どんな反応をし、世界がどう変わるのか?そこが『デジモン』の持つおもしろさのひとつだと思うんです。それをプレイヤーの体験として遊べるものにしたかったんです。

――そうすると、当時『デジモン』で盛り上がったユーザーさんたちに、再び『デジモン』で遊んでもらいたいという想いが、今回の大幅なリニューアルにつながっているんですね。
羽生 そうなります。『デジモンワールド リ:デジタイズ』という作品を2012年にPSPで発売させていただいたのですが、その際に大人のファンを意識して制作したところ、多くのユーザーさんから反響をいただきました。結果として、いまの『デジモン』のメインターゲットは子どもではなくて大人なんだという認識が社内でも広がったんです。そこで今回は、思いっ切り大人向けに振った『デジモン』というコンセプトで制作をしています。『デジモンワールド リ:デジタイズ』の成功がなければ、ここには結びついていなかったと思います。

――『デジモンワールド』のときもそうですが、作品のイメージを大きく変えるということで葛藤というか、反発みたいなものはなかったのでしょうか?
羽生 まず、“今後『デジモン』をどうしていくのか?”という課題が社内で渦巻いている中、販売数やユーザーアンケートを見ると、年齢層が年々上がってきていると感じていました。そこでやはりターゲットの年齢層を上げるべきではないかと決断をしました。当然、“本当に受け入れられるのか?”という不安はありましたが、このまま同じように続けていても未来がないと感じていましたし、『デジモン』のゲームコンテンツ自体が終わってしまう危機感が非常に強かったので、『デジモン』のゲームシリーズがこれから続いていくためにどうしていくのかを吟味して、その結果、いまの形となっています。大きく変えたと言っても、従来のファンの方たちが楽しんでくれているゲームシステムや、基本設定といったところは、きちんと『デジモン』らしく作っています。ただ、『デジモン』自体、長いシリーズ作品ですので、作品ごとに設定やキャラクターの役割が変わっているんですよね。そのすべてをフォローするのはなかなか難しいので、新しいシリーズとして楽しんでいただければと思っています。根本の軸はズラさず、新しい要素を取り入れた新シリーズを目指しています。

──コンセプトを固めていく中で、メディア・ビジョンが開発を手掛けるに至った経緯は?
羽生 しっかりしたRPGだと感じていただけるクオリティーにしたい、と思ったからです。メディア・ビジョン様はしっかりしたRPGを制作するノウハウをお持ちでしたので、ぜひご協力をお願いしたいとお話をさせていただきました。
大窪 僕自身、じつは『デジモン』という作品をあまり知らなくて、“黄色い怪獣”が出るぐらいの知識だったんです(笑)。でも、キャラクターもののRPG、しかもビッグタイトルですから、ぜひやりたいなと。弊社に求められているのは“RPGをしっかり作る”という部分と“グラフィック”だと思っているので、ユーザーに注目していただけるようなものを作ろうと考えていました。

──確かにヤスダスズヒトさんのイラストが、フル3Dで動いていて驚きました。
大窪 本来でしたら、ヤスダさんの絵をそのまま表示するほうがうれしいと思いますが、それだとゲームとして若干古いというか、もう飽きられていると感じたんです。口パクやイラストを差し替えるだけだとキツいので、動きをつけたかった。そこでフル3Dにしました。
羽生 3Dモデルで作るうえで非常に苦労したのが、ヤスダさんが描くキャラクターの体系をどう魅力的に見せるか、ということでした。というのも、手足が細くてスマートなので忠実に再現するとゲーム画面での表示サイズで動かしたときに、手足が本当に細くなってしまって見えなくなってしまうんです。そこでメディア・ビジョンさんにデフォルメをしてもらって、ヤスダさんのテイストを崩さずに見栄えするように3Dモデルを作ってもらいました。
大窪 ほかにも、ヤスダさんのイラストを忠実に再現するために特殊なシェーダーを作ったりしています。ヤスダさんの描く、やわらかい質感というところを特殊なシェーダーで表現しているので、ぜひじっくり見てもらいたいです。あとは、デジモンですよね。
羽生 ふつうのRPGですと、数十体のモンスターを作って色変えなどで数を増やすことが多いのですが、デジモンは体の構造がワンオフなので使い回しがきかない。今回は230体登場してますけど、そのほとんどがワンオフです。
大窪 モンスターの制作にこんなに作業量を割くのは、いままでゲームを作ってきて初めてでしたね。ただ、ラッキーだったのは、今回の作品を立ち上げるときに、弊社のスタッフに「興味がある人、いる?」と聞いたら、若いスタッフを中心に「やりたい! 『デジモン』好きです!」と言ってくる人間が多かったんですよ。だから、デジモンの“動き”も、スタッフのあいだで「こいつはこうだよな!」とイメージがしっかりあって助かりました。

――制作スタッフの中にも『デジモン』ファンがいらっしゃるのであれば、ファンならではのこだわりだったり、作品へのアツい想いが作品に反映されそうですね。
大窪 そうですね。
羽生 『デジモン』を制作するときに毎回苦労するのが、『デジモン』を知っている開発会社さんがあまりないということなんですよね。大窪さんもさきほど仰られていましたが、“名前は聞いたことがあるけど、よく知らない”というところから始まるので、じつはそこがいちばん苦労するんです。ただ、最近になって初期の『デジモン』ファンの方々が社会人になって、だんだんゲーム開発の現場などに関わるようになってきたことで、今回のように『デジモン』を好きだという方とともに仕事ができるようになったんです。それは我々としては非常にうれしいことですよね。やっと『デジモン』を作りやすい土壌になってきたと感じています。『デジモン』を好きだという若い世代のクリエイターさんとともに、今後もいろいろな形の『デジモン』のゲームを作れたらと思っています。

――なるほど、それは楽しみですね。
羽生 この作品が売れたらの話ですけど(笑)。
一同 (笑)。

■『デジモン』を知らない人に改めて『デジモン』の世界を伝える作品に

──そんな本作の見どころは?
大窪 もちろんグラフィックやシステムなど、全体的にパワーアップしていますが、僕が長いあいだRPGを作ってきた中でもトップクラスのテキスト量の作品になっていることですね。メインのイベントからサブイベントまで、ガッツリとしたシナリオのあるRPGとして、RPGファンの方にも楽しんでいただけると思います。
羽生 『デジモンワールド』シリーズはデジモンを育成することが中心のシステムになっているのですが、『デジモンストーリー』シリーズは王道的なRPGのゲームシステムですので、物語も存分に楽しんでもらえる作品になっているんです。世界設定もかなりアニメ作品を意識した作りにさせていただいています。今回は『デジモン』をあまり知らない方が遊んでいただいても、楽しめるものにしたいと思っていたので。ある意味『デジモン』をイチから知ってもらうという感覚で世界観を作っています。

――ゲームのシステム的に進化した点は?
羽生 個人的にはバトルシーンがすごくいいものになったと思っています。これまでは、「テンポが悪い」などの意見をユーザーさんからいただいていたのですが、今回はバトルをしていて、かなり気持ちいい。
大窪 そうですね。テンポ感はすごく重視しています。
羽生 あとは、バトルでデジモンが活き活きと動くんですよ。だから、遊んでいておもしろい、飽きないものになっています。逆に、“バトル演出を見たいから、もっとデジモンを集めたい”と思える内容になっていると思います。
大窪 『デジモン』を知らない人が見ても「こんなにカッコいいんだ」と感じてもらえるようなアクションを目指しました。また、ゲームを進めていくとデジモンがどんどん仲間になっていくので、管理がたいへんになってくるんですよね。そこがより快適になるようにユーザーインターフェース(以下、UI)を作り込んでいます。見た目のかっこよさ+気持ちいい操作感というところを目指していますので、UIも注目してもらえるとうれしいですね。
羽生 UIは遊びやすさの根本につながるところですからね。大窪さん自身、もともとデザイナーをされていたこともあって、かなり気を使って作っていただいています。

――サイバーパンクな世界設定というのも、新鮮ですよね。
羽生 じつはそうでもないんです。そもそも最初の玩具のときには、“コンピューターウイルスプログラムにワイヤーフレームとテクスチャーを貼り付けて生み出されたのがデジモンである”という設定があるんです。もともとベースの世界観はかなりサイバーパンクなんですよね。今回は、そういった設定を活かした物語に注目してほしいです。電脳世界でハッキングする際に、特定のデジモンを持っているとセキュリティーを突破できるとか、シリーズの世界観設定をゲームに落とし込んでいるので、ぜひ注目してください!

――なるほど。むしろ、もともとあった設定を、改めてもう1度やっている感覚なんですね。
大窪 『デジモン』は設定がしっかりしているので、そこをしっかりストーリーに落とし込むことに注力しました。あとは舞台ですよね。“現代の東京”をしっかり作り込んで、違和感のないようにしています。
羽生 今回、現実世界をかなりリアルに作らせていただいているんですよね。自分たちが見慣れた風景にモンスターが現れるというおもしろさを楽しんでいただきたいです。そういったイメージは『デジモンアドベンチャー』のころからアニメで演出されていて、ゲームでもぜひやってみたいと思っており、今回実現することができました。また、主人公が電脳探偵になるという設定は、2000年に放送された『デジモンアドベンチャー02』が発想のヒントになっています。『デジモンアドベンチャー02』では、放課後みんなでPC教室みたいなところに集まってデジタルワールドにアクセスし、デジタルワールドと現実世界で起こる事件を解決していくというシュチュエーションがあったんです。それがとても魅力的で、本作で探偵事務所に仲間たちが集まって「ああでもない、こうでもない」と言いながら事件に挑んでいく様子はそういったイメージを参考にしています。また、PSPで『デジモンアドベンチャー』を作っていたときに、アニメ版『デジモンアドベンチャー』シリーズの角銅監督と、『デジモン』についてお話をさせていただいたことがあって。角銅監督が、「デジモンって、じつはコンピューターが発達する前から存在する、妖怪や幽霊、精霊に近しい存在なのかもしれない。そういった霊的なものがコンピューターを介することで人間にはプログラムのデジモンとして認識されているのかも……」というお話をしてくれたんです。それがすごくおもしろくて。だから、本作でデジモンが現実世界で巻き起こす事件は怪談っぽく描かれているのですが、もとはそういったところから、ヒントを得ています。

――ここまでお話を聞いて、こんなに作品を愛しているプロデューサーは、なかなかいないんじゃないかと(笑)。
一同 (笑)。

――そんな羽生さんから、制作中に「しつこいな!」と思うぐらい何度も言われたことって、大窪さんは何かありますか?
大窪 あのー……(苦笑)。
羽生 いいですよ。僕のことは気にしなくて(笑)。
一同 (笑)。
大窪 あのですねー……、羽生さんというのは正しいんですよ。面倒くさいんですけどね(笑)。ただ、本当に正しいんです。もちろん、とんでもないことを言いだして現場の反感を買うこともありますが、それでも「とりあえずやってみよう」とみんな納得できるんです。しかも、たぶん間違いがないんですよね。それってなぜかと言うと、制作しているメンバーの中で羽生さんがいちばんの『デジモン』ファンなんです。だから、きっとプレイしてくれるであろう皆さんにとってもいいものなんだろうなと思えるんですよね。
羽生 僕がいちばんだなんて、恐れ多いです……。ただ、僕としても『デジモン』ファンの方たちのこだわりがすごく強いことは理解していますので、やはり本当にいいものを作って届けなければいけないという使命感はあります。いろいろな“しがらみ”がある中で、ベストなものを作らなくちゃいけないという想いが毎回あります。開発会社の方々には、本当にがんばっていただいていて、たぶん120%以上の力を発揮してお付き合いいただいていると思うんですね。そういう意味では、今回の作品でも力を出し切って作っていただいているので、ぜひ新しい『デジモンストーリー』を楽しんでいただけたらと思います。今回は、育成の進化の分岐や、バランス調整というところも、これまでのシリーズよりもだいぶ自由度を高くして制作していますので、育成ファンの方たちにも満足いただけるような内容になっているかなと。『デジモンストーリー』とは言っていますが、ある意味、いままでの『デジモン』ゲームの集大成だと思って期待していただければ。

――ありがとうございました。インタビューは以上になりますが、何か言い足りないことはありませんか?
羽生 僕はまだ、2、3時間はぜんぜん話せますよ(笑)。
大窪 デバッグがまだ山ほど残っているので、そろそろ帰らせてください(笑)。


デジモンストーリー サイバースルゥース
メーカー バンダイナムコゲームス
対応機種 PSVPlayStation Vita
発売日 2015年3月12日発売予定
価格 6640円[税抜](7172円[税込])
ジャンル RPG
備考 プロデューサー:羽生和正、ディレクター:大窪哲也(メディア・ビジョン)、キャラクターデザイン:ヤスダスズヒト、新クリーチャーデザイン:大暮維人、音楽:高田雅史、CGムービー:神風動画、開発:メディア・ビジョン

(C)本郷あきよし・東映アニメーション・テレビ朝日・電通 (C)BANDAI NAMCO Games Inc. ※画面は開発中のものです。