ビデオゲームは直接関係ないっすね、ハイ。

 先週、アメリカのネバダ州ラスベガスで開催された、世界最大の家電見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。ベンチャー企業の斬新なアイデアが市場を作り出し、数年後には大手が参入する一大領域になっていた……なんていうことはよくある。

 例えばGoProが切り拓いたアクションカメラ。ヘルメットや自転車のハンドル上など、さまざまな所に設置できる小型のビデオカメラは、今年のCESではソニーがトニー・ホークを使ってプロモーションしたり、ポラロイドなどのブースでも見ることができた。
 Oculus VRが躍進するVRヘッドマウントディスプレイの分野もそうだ。今年もクルマやカメラメーカーなどさまざまなブースでプロモーションに利用されていたほか、オープンソースVRを標榜するプロジェクトのプロトタイプも出展されていたほど。

 勢いのあるこのふたつの分野は、(個人的な)体験の共有という点で親和性が高く、GoProを組み合わせて360度撮影可能にする360Herosというサードパーティ製アタッチメントもあるぐらい。そもそもVRコンテンツとして360度撮影可能なビデオカメラへのニーズはあるし、最初から360度対応なアクションカメラがあってもいいんじゃないだろうか? もちろんCESにはそんな製品がある。

ピンポン玉サイズの球体カメラ“360fly”

VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_03

 360fly, Inc.のカメラ“360fly”は、ピンポン玉より少し大きいぐらいの球体をした(直径61ミリ)小型のカメラ。138グラムと軽量で防水。全天球で真下を除く240度をカバーし、1504×1504ピクセル/30フレームで動画も撮影できる。
 ヘルメット用、自転車用、サーフボードやクルマなどに貼り付ける吸盤型などさまざまなマウントアダプターが用意されており、撮影はスマートフォンアプリから実行可能。撮影した映像もスマートフォンやタブレットでスワイプしながら視聴可能だ。
 完全な全天球360度でこそないが、CES会場ではドライバーズシートから撮影したレース映像をOculus Riftで見るデモも披露しており、VR使用も想定。映像は映りが微妙な部分もあるもののそれなりにいい感じで、後述する別のカメラのデモと比較すると酔いもあまり感じられなかった。出荷は今春を予定しており、公式サイトで499ドルで予約受付中だ。

VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_02
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_01
▲撮影した映像はスマートフォンやVRヘッドマウントディスプレイで楽しめる。

デモ用の映像が悪かったのか? 少し期待はずれだった360cam

 Giropticの360camは、「世界初の真の360度HDカメラ」を謳うガジェット。静止画は4K、動画も2048×1024ピクセル/30フレーム動画を撮影でき、マイクも3基あるので360度サラウンドに対応。アタッチメントを利用してビデオをストリーミングさせたり、電球口に繋いで使うといったユニークな使い方もできる。もちろん撮影したものをスマートフォンやタブレットで鑑賞することも可能だ。価格は499ドルで出荷は今期中を予定。

 と、スペック上では夢のデバイスに思えるのだが、残念ながらプロトタイプで撮影した動画を使ったVRデモは、かなり酔うもの。360fly同様の30フレームあるとはとても思えないクオリティだった。最初は再生に使っているPCが酷くてフレームレートが出ていないのかと思ったが、最下端に表示された製品ロゴの部分だけは滑らかに表示されていたので、元ソースの映像の問題だろう。
 もしかすると360flyのデモ映像は車載とはいえ固定したもので、360camのデモ映像は手持ちで撮っていたのがいけなかったのかもしれないが、そうであるとすればそんな映像をVRデモにチョイスした事自体、どうなんだろうか?
 タブレットなどで閲覧する分には気にならないし、Googleが開発を進めているという360度版Youtubeに公式対応を表明しているといった面白さもあるのだが、VR使用という点では疑問が残るデモだった。

VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_06
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_05
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_04
▲Giropticの360cam。電球口に挿しこんだりLAN経由の360度Webカメラに出来るのはいいのだが、Oculus Riftを使ったデモはフレームレートがひどく、あっという間に酔うレベルだった。秒間30フレームで撮影できるとのことだが、そこまでも出ていなかったような……。ただ歩きながら手持ち撮影したり、ジェットコースターに乗った映像のデモだったので、手ブレ要素が大きかったのかも。

360度写真ならこんなガジェットも

 とはいえ、昨年末にお届けしたGear VRの体験リポートでも書いた通り、VRでは360度写真もアイデア次第で十分にコンテンツになる。

 例えばリコーのTHETAは、360度写真を一気に手軽にした定評があり、すでに発売されていて入手しやすく、価格も安い。動画は15フレーム(最長3分)しか撮れないが、360度コンテンツを撮ってみようという人には最適のデバイスと言えるだろう。
 CESでは、独Panonoのカメラ“Panono”も面白かった。これは36台のカメラを球状に配置したソフトボールより少し大きいぐらいのサイズ(直径11センチ)のガジェットで、センサーが入っており、上に放り投げると最高到達点で自動的にシャッターを切る。ドローンすら使わずに空撮で360度写真が撮れるというわけだ。フェス会場などで球をぶん投げている人がいたらこれかも? 価格は549ドルで、公式サイトで予約受付中。

VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_08
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_07
▲リコーのTHETAは動画も撮れるようになったが15fpsしかない。一方で写真は非常に撮りやすい機材。VRHMDを使ったデモもあった。
Erai-Yacchax2!! in Tokushima - Spherical Image - RICOH THETA
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_10
VRが来るなら、撮影もしたい! 全天球360度を撮れるカメラを求めて【CES 2015】_09
▲完全に球体型のPanono。放り投げて空中で撮ったり、面白い写真が撮れるが、現状では動画は未対応。