開発機は6月に約200ドルで出荷開始

“オープンソースVR”を標榜するOSVR。ハードウェアハック可能な開発機を被ってきた【CES 2015】_02

 世界最大の家電見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)の開幕初日、Razerは“オープンソースVR"を標榜するOSVRプロジェクトの開発機“OSVR Hacker Dev Kit”を発表した。199ドル99セントで2015年6月頃より出荷開始する予定で、会場ではデモを体験できた。

 OSVRの理念は、(Oculus VRなどの)特定の企業に依らないオープンなVR環境を用意すること。Razerの他にも、Vituix(Omni)、Sixence(STEM)、PrioVRといったVR関連デバイスを開発・販売する企業や、Gearbox Software(『ボーダーランズ』シリーズなど)やTechland(『デッドアイランド』、『Dying Light』など)などのゲームメーカーが賛同している。

 その背景には、VRの可能性の大きさと、新しいがゆえの難しさがある。Oculus VRが手掛けているVRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”の登場で一気に火が着いたこの分野には、まだ正式に市販されているVRヘッドマウントディスプレイやコンテンツが少ないにも関わらず、すでに先に挙げたような関連デバイスが続々と登場している状態。
 一方で、Oculus VRはVR体験を確実に現実のものとして広めるために、安直に市販版を出して失敗するのを避け、慎重にプロトタイプや開発機のバージョンを重ねている、これ自体はいいことだが、長い模索の過程で振り回される企業もあったり、それぞれがOculus Riftを軸にしつつもバラバラに開発されてしまっているという問題があるのも事実。
 例えばゲーム世界を自分の足で歩けるデバイスOmniを開発するVirtuixにしてみれば、Oculus VRが座ってプレイするのを推奨したり、立ってプレイするデモを出してみたりするたびに、一喜一憂しているのはあまり健康的ではないだろう。

 また開発者が新たな体験を生み出すべく、VRヘッドマウントディスプレイに独自に何かを足そうとしても、独自のセンサーとヘッドマウントディスプレイを用意してVRを新たなジャーナリズムに昇華させた『Use of Force』のようにはなかなかいかない。しかし最初からハードウェアハックを想定した設計になっているVRヘッドマウントディスプレイがあれば、特別な仕組みを足したワンオフのアトラクション的なものも作りやすい。

 そういった点を鑑みて、ハードウェアとソフトウェア両面でのオープン性を目指すのがOSVRだ。Oculus Riftに対抗する存在というよりも、VR産業の安定と多様性の維持を目指すものと言えるだろう。今回出展されていた“OSVR Hacker Dev Kit”は、いわばその土台になるモデルとなる。

ポジショントラッキングは付いてないが……。

 “OSVR Hacker Dev Kit”は、5.5インチのディスプレイを内蔵し、解像度は1080x1920ピクセル(401ppi)。60fpsで動作する。視野角は水平90度と垂直90度の100度をカバー。レンズによる周辺部の歪みも少なく、「一般的に30%以上(公式サイトより)」のところ、13%以下に抑えているとのこと。
 Oculus Rift DK2(第2世代開発者キット)とスペック上の数字を比較した場合、解像度と視野角は同等。リフレッシュレートについてはDK2は75ヘルツ動作するので、やや力不足なのだが、ディスプレイ部を交換してしまったり、Gear VRのようにスマートフォンを挿し込んでディスプレイとして使うといったことも出来てしまうのがこのキットならではの部分(スマートフォンを使う場合、リアカメラを使ってAR的な機能を足すこともできるだろう)。

“オープンソースVR”を標榜するOSVR。ハードウェアハック可能な開発機を被ってきた【CES 2015】_01

 またDK2と比較すると、外部カメラによる頭部の位置を測定するポジショントラッキングがないのも特徴的だ。しかし拡張性に優れており、USB3.0ポートを外部に1つ、内部に2つ備えており、ポジショントラッキングのためのトラッカーや、Leap Motionなどのモーションセンサー、外部を撮影するカメラなどを足したり、視線のトラッキングを追加するといったことが想定されている。

“オープンソースVR”を標榜するOSVR。ハードウェアハック可能な開発機を被ってきた【CES 2015】_03
“オープンソースVR”を標榜するOSVR。ハードウェアハック可能な開発機を被ってきた【CES 2015】_04
▲USBポートが側面にあり、追加の機器を接続可能(Oculus Rift DK2もUSB2.0端子を持っている)。デモではLeap Motionを足していた。また、底部のつまみを移動させることで瞳孔間距離や視力に合わせた調節が可能。メガネをかけずに利用できる。

 OSVRのソフトウェアは、Apache 2.0ライセンスで提供され、現状ではWindows、Android、Linuxに対応。Unity向けプラグインはすでに配布中で、今月中にもUnreal Engine 4用のプラグインを配布するとしている(『Star Wars: The Old Republic』などに使われたMMO向けエンジンのHero Engineにも対応予定)。またOculus Riftにもプラグインで対応しており、並行した開発が可能になっている。

“オープンソースVR”を標榜するOSVR。ハードウェアハック可能な開発機を被ってきた【CES 2015】_05

 デモは手の動きを検知するLeap Motionをヘッドマウントディスプレイ前面に追加し、周囲を飛び回るドクロをジェスチャーで火の弾と水の弾を飛ばして倒していくという内容。不安定な部分も多かったのだが、(Oculus Riftの最新プロトタイプである“Crescent Bay”には劣るものの)映像は結構綺麗。
 個人的には先ほど書いたような本機を独自改造したワンオフのアトラクションの登場などを待っているので、まずは今後の広がりに期待といったところだろうか。