青沼氏のプロデュース術にも迫る!

『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』は、新要素を加えたディレクターズカット! 新要素からN64版開発秘話までを聞く、青沼英二プロデューサーインタビュー_02

 2015年春に発売を予定している、ニンテンドー3DS用ソフト『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』。本作は、2000年にニンテンドウ 64で発売された『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』のリメイク作で、グラフィックのリファインだけでなく、ゲームバランスの調整や新要素の追加など、さまざまな部分に手が加えられた作品になっている。今回、『ムジュラの仮面』でディレクターを務め、『ムジュラの仮面 3D』でプロデューサーを務める、任天堂・青沼英二氏にインタビューをする機会を得た。約14年越しのリメイクはどのように進んでいったのか。開発の経緯や新要素の内容に加え、ニンテンドウ 64版『ムジュラの仮面』の開発秘話、そして2014年のE3(アメリカ最大のゲーム見本市)で発表された、Wii U『ゼルダの伝説 最新作(仮称)』の開発状況についてもうかがった。『ムジュラの仮面』から青沼英二氏のプロデュース術まで、10000字以上のボリューム満点のインタビュー。『ゼルダ』ファンならずとも、最後までじっくりお読みいただきたい。

『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』は、新要素を加えたディレクターズカット! 新要素からN64版開発秘話までを聞く、青沼英二プロデューサーインタビュー_03
▲プロデューサー青沼英二氏(文中は青沼)。

隠しメッセージを出していた『ムジュラの仮面』リメイク

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――まず、『ムジュラの仮面』をリメイクすることになった経緯からお聞きできますか?
青沼 ニンテンドー3DSで『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』を発売しましたが、その後、つぎの展開を考えたときに、宮本(宮本茂氏。『マリオ』や『ゼルダの伝説』の生みの親)から、「『ムジュラの仮面』を携帯機に移植すれば、いつでもスリープできて、オリジナル版よりもサクサク遊べるんじゃない?」という話が出たんです。ただ、僕としては、『ムジュラの仮面』は開発がすごくたいへんだった思い出があって、もしリメイクするとしても、変える部分が大量にありそうだったので、最初は「イヤだ」って断ったんです(苦笑)。

――触れたくないと(笑)。
青沼 ただ、リメイクを真剣に考えるうえで、一度オリジナル版を遊び直してみて、こう変えれば、もっと遊びやすくなった『ムジュラの仮面』になるという形が見えてきたので、『時のオカリナ 3D』を開発してくれたグレッゾさんに話をして、本格始動しました。『時のオカリナ 3D』のときは、3DS本体の発売時期からなるべく遅くならずに出すという目標があったのでかなり急いで開発をしたのですが、今回は僕ら開発スタッフが、「これなら生まれ変わった『ムジュラの仮面』として適切だ」と思えるものになるまでじっくり時間をかけて作り込みました。

――『ムジュラの仮面』は、リメイクの要望がたくさんあったように感じます。
青沼 『ムジュラの仮面』へのリメイク要望が僕の耳によく届くようになったのは、本作の開発が始まってからだったんですよね。だから作ってはいたものの、なかなか発表できなかったので、「待っていてね」と心の中でくり返していました。ただ、皆さんに『ムジュラの仮面』を忘れてほしくない気持ちもあったので、『神々のトライフォース2』の中にムジュラの仮面を出したり、夏に出した暑中見舞いの絵柄を、ムジュラの仮面型のお面をつけたリンクにしたりと、「言えないけど、じつは作っているんですよ!」という想いを込めた隠しメッセージを出していました(笑)。

――ああ、やっぱりあれは、そういうメッセージだったんですね。
青沼 僕、最近Miiverseでよくコメントを投稿していますが、たとえば、「『ゼルダ無双』出ましたよ!」といったコメントを投稿すると、ユーザーさんから毎回のように「『ムジュラ』は?」というコメントをいただいていた時期があって。言いたいんだけど、言えないという状況だったので、やっと発表できたという思いでいっぱいです(笑)。

――それだけ、待っていたということですよね。
青沼 本当にありがたいですね。ファンの方が、『ムジュラの仮面』のHDムービーを作ってくださったりとか、いまの人たちはすごいなと驚くばかりです。今回は、予測があったわけではないですが、ちょうど皆さんの要望も高まってくれているのはうれしいかぎりですね。

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▲『神々のトライフォース2』のリンクの部屋にかけられていた、ムジュラの仮面。壁画リンクになることで、仮面を装着したような見た目に。
▲ニンテンドーネットワークID登録者向けの暑中見舞いを兼ねた壁紙。ムジュラのお面はもちろん、大人リンクの浴衣姿も見逃せない!

より遊びやすく親切に。新要素は、釣り堀!?

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――今回のリメイクで変わったポイント、変えようと思ったポイントを教えてください。
青沼 オリジナル版を開発した当時、『時のオカリナ』を開発した直後、1年の期限で『ムジュラの仮面』を作っていたのですが、けっこう過酷な状況だったんですね(苦笑)。その環境の影響か、『時のオカリナ』はおもてなしの心で作っていたのに、『ムジュラの仮面』は、「『時のオカリナ』を遊んだ人なら、これくらいできるだろう」という挑戦状を叩きつけるようなバランスで作ってしまったところがあって。そもそも、『時のオカリナ』を遊んでいることを前提にした作りにもなっていたのですが、3DS版では初めて『ゼルダの伝説』を遊ぶ人でも楽しめるようにしています。具体的には、お約束として何も説明していなかった部分を変えたり、何度もくり返す中で気づくような仕掛けをもっとわかりやすくしたりして、深い遊びはそのままに導入の構造などを変えています。

――3日間をくり返すシステムや、人の行動を追ううちに、ほかの人の行動が見えるといった基本部分は変わっていないのでしょうか?
青沼 変わっていませんし、ゲームが簡単になったわけでもありません。「何をすればいいのかわからない」と投げ出されないように、ヒントではないのですが、いろいろと仕掛けに気づいてもらえるシステムを入れています。まだ具体的には言えないのですが……。あと、ボス戦も変わっています。リメイクをするにあたって、ひさしぶりにオリジナル版のボス戦を遊んでみたら、「これどうやって倒すの?」という内容で(笑)。

――いやいやいや(笑)。当時、楽しんで遊ばせていただきましたよ。
青沼 楽しめるとは思うんですが、攻略のポイントが良くわからなくて、がむしゃらにやっているうちに、いつの間にか倒していた……という感じで(笑)。ですので、ボスも弱点などは変えずに、「ここを狙えばいいんだな」と視覚的にわかるようにして、その狙いかたなどを悩んでもらうように置き換えています。

――それは、『時のオカリナ』のようにわかりやすいというイメージでしょうか?
青沼 いや、ひょっとしたら『時のオカリナ』よりもわかりやすいかもしれません。今回はたっぷり時間をかけて開発しているので、初めて遊んでもらう人にも入りやすいものになったと思っています。

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――では、たとえば当時遊んだものの、謎解きを忘れてしまった人も、すぐに思い出せると。
青沼 そうですね。当時遊んだ人の中には、街のイベントなど、すべてを発見できずにクリアーしてしまった人もいたと思うんです。でも、もう一度やり直すほどの気力はなくてモヤモヤしていたという人は、今回の『ムジュラの仮面 3D』をぜひプレイしてほしいですね。もちろん初めて遊ぶ人にもプレイしていただきたいんですが、一度遊んだ人の場合でも、「こんな要素があったんだ!」と驚いてもらえると思います。

――グラフィックをキレイにしたり、ジャイロ機能の対応といった要素は?
青沼 グラフィックはもちろんですし、『時のオカリナ 3D』をベースにしているので、『時のオカリナ 3D』にあったジャイロ機能なども踏襲しています。さらに、『神々のトライフォース2』の開発でノウハウを得た、タッチ操作の快適さなども加わりました。

――Newニンテンドー3DSへの対応などは?
青沼 3DSで遊ぶ人も、Newニンテンドー3DSで遊ぶ人もグラフィックなどに変化はありません。New3DSで遊ぶとどう変わるかについては、機会を改めてお知らせしますので、お待ちください。

――そのほかに、現時点で言える内容で、新要素の追加などはありますか?
青沼 釣りができます! 『ムジュラの仮面』の世界で、釣りをしている暇があるのか……という話ですが(笑)、釣り堀が加わっているんです。しかも、2ヵ所。とんでもないものが釣れるかもしれないので、楽しみにしてください。

――月が迫る中、釣りをすると(笑)。
青沼 そうなんです。「世界が終わると、わかっている中で釣りをする俺、すげー!」みたいな、そういう感覚が味わえます(笑)。