今年も多くのファンを集めたトークイベント
2014年9月18日~21日まで、千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2014。スクウェア・エニックスのステージでは、2回目の開催となる“SQUARE ENIX MUSIC コンポーザー トークショウ”が開催された。
このイベントは、元スクウェア・エニックスで、現在も大活躍中の人気コンポーザー、伊藤賢治さん(『サガ』シリーズ、『聖剣伝説』シリーズなど)、光田康典さん(『クロノトリガー』、『ゼノギアス』)、下村陽子さん(『LIVE A LIVE』、『聖剣伝説 Legend of MANA』)の3人を迎え、週刊ファミ通・世界三大三代川が司会を務めた。
昨年のイベントでは、「来年やるならお酒を飲みながらやりたいね」と下村氏が熱望していたが、残念ながらそれはなし。3人ともこのトークショーが開催されるとは思っていなかったそうだが、前日(というか当日の朝まで?)入念なリハーサルと称した飲み会を開催したそうだ。
まずは3人の近況報告から。伊藤氏、光田氏はゲーム関係の仕事はもとより、最近はアニメなどにも活動の幅を広げている。一方の下村氏は、逆にガッツリとゲーム音楽の仕事をしていると言い、直近のタイトルとして『キングダム ハーツ HD 2.5 リミックス』を担当したほか、TGSで公開された『ファイナルファンタジーXV』の新PV用の音楽も担当したとのことだ。また3人とも、豪華なコンポーザーが参加して、3月に開催された“沖縄ゲームタクト”にも参加していた。
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2014年はメモリアルイヤーの狭間!?
2015年、伊藤氏が作曲家活動25周年を迎える。また、2015年は光田さんも同じく20周年という記念の年。また、それぞれがスクウェア時代の楽曲をアレンジしたアルバムを発売しており、そのアルバムコンセプトについてコメントした。まず、伊藤氏の「Re:BirthII -閃- Sa-Ga BATTLE ARRANGE」(2014年2月26日発売)は「コンセプトは、文字通り再生です。いまの自分がアレンジしたらどうなるか。1月の新宿文化センターでのライブも盛り上がりました。約2000人とのコール&レスポンス。若返りますね(笑)」と振り返った。光田氏の「Myth Xenogears Orchestral Akbum」(2011年2月23日発売)は、スクウェア・エニックスにみずから提案し、実現した企画だそうだ。ゲーム版と同じブルガリアの同じスタジオで、約15年ぶりにレコーディングし、当時のことも思い出したという。
一方、2013年にすでに25周年を迎えている下村氏は「memoria! The Very Best of Yoko Shimomura」(2014年3月26日発売)をリリースしたが、「20周年でベストアルバム(「drammatica -The Very Best of Yoko Shimomura-」)を出したので、25年、四半世紀でもなにか出したいと思っていた」と発売の経緯を語ってくれた。
アレンジアルバムのトークが続いたということで、ここで“それぞれにアレンジしてほしい自分の曲は?”という質問が行われた。
<伊藤氏→光田氏>
「ポドールイ」(『ロマンシング サ・ガ3』)
<伊藤氏→下村氏>
「Last Battle-Asellus-」(『サガ・フロンティア』)
ここでおもむろにキーボードでメロディーラインを演奏する伊藤氏に、観客からも歓声が上がる。それを聞いて光田しが「いまのでいいんじゃないですか(笑)。ピアノはイトケンさんに弾いてもらおう」と言えば、下村氏も「これでいいんじゃないですか(笑)。でもやるなら、やはりダイナミックにします」とのこと。
<光田氏→伊藤氏>
「カエルのテーマ」(『クロノ・トリガー』)
<光田氏→下村氏>
「RADICAL DREAMERS~盗めない宝石~」(『クロノ・クロス』)
下村氏は「もとの曲がすばらしい! 私には絶対に超えられない壁があると感じる」と答えた。
<下村氏→伊藤氏>
ギリギリまで迷ったという下村氏は、ニコ生の視聴者にアンケートを取ることにした。そのためにピアノを弾くハメに。「イトケンの後に弾けるわけがないじゃない(笑)」と言いつつも、力強い演奏を披露。さらに「どうしてこの曲はフラットが5つも6つもついているの? 作ったの、誰(笑)」と会場を笑わせた。
「Hand in Hand」(『キングダム ハーツ』)35.7%
「MEGALOMANIA」(『LIVE A LIVE』)64.3%
続いては、逆に“自分がアレンジしてみたいそれぞれの楽曲”についてのアンケート。結果は以下の通り。
<伊藤賢治氏>
光田氏「ホームタウン ドミナ」(『聖剣伝説 LEGEND of MANA』)
下村氏「運命に囚われし者たち」(『クロノ・クロス』)
<光田康典氏>
伊藤氏「下水道」(『ロマンシング サ・ガ』)
下村氏「鳥児在天空飛翔 魚児在河里遊泳」(『LIVE A LIVE』)
<下村陽子氏>
伊藤氏「邪聖の旋律」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)
光田氏「ガルディア王国千年祭」(『クロノ・トリガー』)
ここでも最後の最後まで迷ったという下村氏。「邪聖の旋律」はとにかくカッコイイというと、すかさず伊藤氏はピアノを弾く。なんともズルイほどカッコイイ。一方の「ガルディア王国千年祭」は、スクウェア時代、何かと職場で流れていて「いちばん聞いた(聞こえた)曲かもしれない」ことから選ばれた。
光田氏は「もちろん「下水道」はウケ狙いですよ(笑)。『ロマサガ2』はイトケンさんといっしょにやっていたので、よく聞いていましたし。それからじつは『LIVE A LIVE』の功夫編、掛け声で声優デビューしているんですよ」と教えてくれた。
最後は伊藤氏。「じつはやりたい曲がほかにもあるんだけど、披露しますか?」と、何と光田氏と連弾! 本番直前に急遽打ち合わせで、『クロノ・クロス』の「時の傷痕」を披露した。これもまた、ズルイほどカッコよかったのだ。
司会の世界三大三代川が「こんなコンピレーション・アルバムをぜひ聞いてみたくないですか?」と煽ると、会場からは大きな拍手が上がった。「要望があって、しかるべき部署が動いてくれれば(笑)」と伊藤氏もまんざらではない様子。実現に期待したい!
今年のスペシャルコメントもビッグネームから!
ここで、VTRによるメッセージコーナーへ。昨年は田中弘道氏(現ガンホー・オンライン・エンターテイメント/『ファイナルファンタジーXI』などを)からだったが……今年は3人にとって師匠ともいえる存在の植松伸夫氏! 3人について、「下村とは滅多に仕事では会わないが、ゲーム関係者の飲み会に必ずいる」とか、「光田は最近山に引っ越したそうで、ぜひバーベキュー大会をやりたい」とか、「イトケンは最近ブイブイ言わせているらしいですね。なんかおごってください。もしくは仕事回してください」と、ノビヨ節全開。下村氏は、「確かに参加していない企画の打ち上げにも参加していることが多い。楽しいことの匂いがすると、そっちへ行く」と言い、光田氏は「植松さんのセカンドハウスとすごく近いんですよ。今度誘います」。最後に伊藤氏が「ノーコメントということで(笑)」と煙に巻いた。
また、植松さんとの思い出について、下村氏は「憧れの存在だった。飲み会では、ここでは話せないようなおもしろいエピソードがたくさんあって、当初のイメージは少し崩れた(笑)。きびしいときはきびしいが、ふだんは気さくな方で、すごい方だと思っている」。光田氏は「以前、植松さんの作業ブースの壁際の隣に自分の作業ブースがあった。『FFV』の効果音として飛竜の鳴き声を作っていたとき、植松さんが走ってきて「それ、いい」と言ってくれたのを覚えている」。伊藤氏は「植松さんとの共同作業は、『FFIII 悠久の風伝説』が初めてです。スクウェアに入って2ヵ月くらい、まだ研修期間だったのですが、「伊藤君、レコーディングがあるけど君も来ないか」と誘われました。そこにシンセがあって、一部弾くことになったんです」と秘話を語り、そのワンフレーズを披露してくれた。
と、ここで時間となり、残念ながらイベントは終了。最後に3人からのコメントを掲載して、続きはまた来年!
伊藤氏「2度あることは3度ありますから、また来年もやれたらいいですね。25周年の来年は制作も含めて、ライブをやりたいですね」
光田氏「9月24日にプロデュースしたサラ・オレインさんのセカンドアルバムが発売になります。『黒執事』のアニメのサントラも9月24日に発売されます。また、9月24日の午後10時から、NHKのBSプレミアムでNHK宇都宮放送局70周年記念・栃木発地域ドラマ『ライド ライド ライド』の音楽をやらせていただきましたので、ぜひ見ていただければと思います」
下村氏「ソフトの発売はまだですが、『キングダム ハーツ HD 2.5 リミックス』のサントラ、ほぼ全部録り直しましたが、そちらも発売される予定です。それから、『ワイルドアームズ』などを手掛けたなるけみちこさんと、“音女(おとめ)”という謎のユニットを組むことにしました。何をやるかはまったくの未定です。夢はワールドツアーです」