●『アサシン クリード』は生まれ変わる

 2014年6月10日〜12日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2014で発表された『Assassin's Creed Unity』のライブプレイデモと開発者インタビューをお届けする。

>

 18世紀のフランス・パリを舞台に、フレンドと協力プレイで敵を暗殺していく『Assassin's Creed Unity』。ユービーアイソフトの看板タイトルである『アサシン クリード』シリーズは、いよいよ新世代機基準で開発されることになり、さまざまな要素が大きな進化を遂げている。ユービーアイソフトのブースで体験したライブプレイデモの様子と、開発者へのインタビューから、『Assassin's Creed Unity』の魅力に迫る。興味深い新事実が数多く明らかになったので、シリーズのファンもそうでない人にも、ぜひ最後まで読んでほしい。……今度の『アサシン クリード』はひと味違う!

 まずはライブプレイデモの内容を紹介。実機をプレイしながら解説してくれたのは、本作のリードゲームデザイナー(プランナー)のBenjamin Plich氏。

リードゲームデザイナー
Benjamin Plich氏

 『Assassin's Creed Unity』の舞台はパリ。今回のライブデモは、世界的に有名なノートルダム寺院からスタートする。建築物のサイズは、本物と同じ大きさで再現されており、外観だけではなく内部も精巧に作られているため、このノートルダム寺院を作る作業だけでデザイナーが半年間を費やしたという。建物の中も外も読み込みなしでシームレスに行き来できるのだとか。また、下に見えている大量の群衆に注目。新世代機のスペックを活かし、最大5000人まで表示できるという。

 今回はフリーランニングが大きく変化した。ボタンを押しながらスティックを入力するという簡単な操作で段差を直感的に上り下りできる。

 これまでのシリーズ作品と比べると、衛兵の強さが劇的にアップ。操作に慣れた開発者でも「3人を相手にするのがやっと」とのこと。過去作品のように、大勢の敵を相手に斬った張ったの立ち回りを演じるのが難しくなっている。バトルの手応えをアップさせ、戦うか逃げるかの選択肢をプレイヤーに迫る狙いなのだとか。協力プレイで4人集まったとき、ようやく敵集団と戦力が均衡するようなバランスを目指しているらしい。少ない人数で多くの衛兵を相手にするときは、戦力差を埋めるために多彩な戦略が必要となる。

 街を歩いていると、強盗やスリ、殺人事件といったさまざまなランダムイベントが発生。犯人を捕まえれば報酬がもらえるが、あまりに目立つ行為をすると衛兵に見つかってしまう恐れがある。リスクを考えつつ行動する必要がある。

 Murder Mystery(マーダーミステリー)と呼ばれるサブクエスト。殺人事件の手掛かりを追って、一連のミッションをクリアーし、真犯人を突き止める。名探偵Arnoが活躍!?

 バトルのバランスが大きく変化。これまで相手の攻撃に対して反撃を行うカウンターキルが非常に強力だったが、本作ではカウンターキルの性能が見直されており、ワンパターンな戦いかたでは敵を倒すのが難しくなっている。敵の攻撃をギリギリで回避して隙を突いたり、相手の体勢を崩すなど、多彩なアクションを駆使して攻める必要があるようだ。

 特定のボタンを押すと“ステルスモード”に移行。Arnoがしゃがんで歩き、足跡を消しすことが可能。敵に見つかりたくないときに活用する。

 屋上では、マップ上の施設の位置がアイコンで表示される。これにより、わざわざマップ画面に切り換えなくても直感的に行動できる。「暗殺者の居場所は路上ではなく屋上である」というシリーズの原点に立ち返るため、こうした要素が盛り込まれたそうだ。

 タカの眼を使えば、画面が反転し、ターゲットの位置がわかる。なお、本作では“スキル”のシステムが導入されており、スキルポイントと引き替えにスキルを強化していくことができる。たとえば、タカの眼の能力を伸ばせば探索しやすくなるし、戦闘で役立つスキルを伸ばせば、衛兵との戦いでもある程度持ちこたえられるようになる。協力プレイでは、それぞれのプレイヤーが違う役割をもって任務に臨むことができ、それこそが本作の醍醐味とも言える。この場面では、暗殺ターゲットが多くの衛兵にガードされているので、高いところから回り込むことに。

 暗殺ターゲットはギロチンで市民を処刑しようとしており、孤立した状態だ。屋根を伝って相手に近づき、高所からエア・アサシンで暗殺。暗殺後は、衛兵に囲まれると危険なので、急いで逃走する必要がある。

 続いて、ミッション・ディレクターのBruno St. Andre氏とクリエイティブディレクターのAlexandre Amancio氏へのインタビューを掲載。『Assassin's Creed Unity』のミッションの構造、そして新たなサイクルに入ったシリーズについて、お話をうかがった。

ミッション・ディレクター
Bruno St. Andre氏

——Brunoさんの担当パートを教えてください。

Bruno St. Andre氏(以下、Bruno) ミッション・ディレクターとして、シングル、協力プレイ両方のミッションとそのストーリー全体を管理・統括しています。

——『アサシン クリード』は、シリーズ2作目でゲームシステムが確立し、その後は作品ごとに少しずつ洗練されてきた印象ですが、今回は協力プレイが導入され、さらに戦闘バランスも大幅に変更になりましたが、その狙いは?

Bruno まずはファンからのリクエストがもっとも多かったこと、また自分たちとしてもやりたいことだったので、2作目が提供してくれたゲームプレイを大きく変化させました。協力プレイでは、オープンワールドでデザイナーがやりたかったことだけでなく、プレイヤーが自由にやりたいことを実現できるようにしました。すべてのゲームプレイにおいて、複数のやりかたやチャンスを提供しています。この複数のミッション解決方法は協力プレイに合っているので、よりクリエイティブなプレイができるようになりました。

——シングル・ミッションと協力プレイ・ミッションはどのように切り分けられているのでしょうか?

Bruno ミッションは基本的に主人公Arnoのストーリーを追って行きますが、1〜
4人でプレイできるミッションがあります。また、ひとりでしか遊べないものもあります。『ブラザーフッド』ではアサシンの弟子を各地に派遣していましたが、今回は自分がフレンドとたちといっしょにプレイするような感覚です。ひとりで全部のミッションをプレイすることもできますが、クリアーするのはかなり難しいです。

——協力プレイのミッションの内容を教えてください。

Bruno 暗殺ターゲットが多くの衛兵に守られていたり、複数の暗殺ターゲットがいたり、暗殺ターゲットを追いながら誰かを守らなくてはいけなかったりという状況があり、つねにプレイヤーどうしの連携が求められます。

——4人のアサシンが動き回るので、レベルデザインでは、4人向けのルートを考えたりする工夫が必要だったのでは?

Bruno 4人のアサシンがステージのどこにでも行けるようにしたので、技術的な面で難しいところがありました。また、地形もひとりではなく4人のアサシンが行動する点をつねに頭に入れてデザインしています。

——舞台がヨーロッパに戻りましたが、前と変わった点はありますか?

Bruno フランス・パリは、これまでに我々が作ったものの中で最も密度の高い都市です。建物の外部だけでなく内部もきっちり作られています。また、パリにはランドマークがたくさんあってリッチな環境なので、ゲームにマッチしていると思います。たとえば、ノートルダム寺院にある内部のステンドグラス部分や上部にある鐘の部分にも行くことができます。ランドマークは網羅しており、現在はない建物も当時の文献を読んで再現しています。

——Brunoさんの好きなランドマークは?

Bruno サント・シャベルです。ノートルダム寺院より小規模ではありますが、内部がとても美しいと思います。ぜひゲーム中で確認してみてほしいですね。

クリエイティブディレクター
Alexandre Amancio氏

——Alexandreさんは2011年に発売された『アサシン クリード リベレーション』でもクリエイティブディレクターを担当していましたが、同作の開発後は何をしていましたか?

Alexandre 『リベレーション』を開発してから半年間休暇をもらいまして、その後すぐに『Assassin's Creed Unity』の開発に取りかかりました。現在までの開発期間は約3年ほどです。

——ゲームの舞台をフランスにした理由は?

Alexandre 『Assassin's Creed Unity』は完全に新世代機向けなので、一度シリーズの基本に戻って作りたかったのです。ゲームの雰囲気に合うオープンな大都市をいろいろ検討しましたが、パリは世界でもっとも観光客の多い場所なので、このゲームにもぴったりだと思いました。

——本作では協力プレイが導入され、戦闘バランスも変更になるなど、システムが劇的に進化しています、その意図は?

Alexandre ここ最近のプレイヤーの傾向として、プレイヤーはゲームの体験を楽しむだけでなく、誰かとそれを共有したいと思っているように感じます。ですので、ソーシャルの要素を盛り込むために協力プレイを導入しました。それに伴い、自然とゲームのコアとなる部分を新世代向けに構築し直すことになったのです。戦闘はさらに歯応えがあり、奥深いものになり、パルクールは流れがスムーズかつ自由になり、ステルスモードも採用しました。

——協力プレイによって、『アサシン クリード』はどのように変わりましたか?

Alexandre これまでひとりでやらなくてはならなかったことを4人で分担できるようになりました。各人のスキルや装備をカスタマイズ可能なので、お互いの長所短所を補い合い協力してミッションをこなせるのです。

——新世代機でのゲーム作りはいかがですか?

Alexandre 前とは違う意味でとてもたいへんです。これまでは技術的な制約を受けていましたが、新世代機はマシンパワーがすごいので、際限なくディテールにこだわることができるからです。どこまで作り込んで、どこで作業を切り上げるか、このバランスがとても難しいです。

——なるほど。お話を聞くとたいへんそうですね。本作にかけた予算、スタッフの人数は過去最大ですか?

Alexandre はい。具体的な人数は言えませんが、モントリオールスタジオと世界中の9つのスタジオが連携して開発を進めています。

——Alexandreさんが手掛けた『リベレーション』と本作の開発において、大きな違いはありましたか?

Alexandre 『リベレーション』では、チームの三分の二のメンバーが『アサシン クリード』シリーズの開発に初めて携わる者で、しかも1年以内で完成させなければならないのが大きなチャレンジでした。本作では多くの時間を与えられ、さらにベテランのスタッフが揃っていますが、新生代の『アサシン クリード』にふさわしい作品を作るように、目標が高いところに設定されていることがチャレンジですね。

——『Assassin's Creed Unity』には、ナンバリングがついていませんが、今後はこの流れを継承していくのでしょうか。

Alexandre ええ。今回は、初の新世代タイトルなので、新しい出発と言えます。ストーリーが重要な部分を占めるゲームは、作品を重ねるとともに複雑になってくるので、それまでプレイしたことのない人には入りづらくなると思います。今回から新しいサイクルをスタートするためにナンバーは外しました。

——タイトルの『Unity』に込められた意味を教えてください。

Alexandre シングルとマルチプレイというふたつのゲームがひとつに融合(unite)していること、そしてフランス革命の過程でフランス人がひとつにまとまっていくという、ふたつの意味があります。

——今年の新作ゲームを見回すと、ゲームメーカー各社が協力プレイを全面に押し出した作品を発表していますが、『Assassin's Creed Unity』ではそれがゲームのコアの部分になっています。これは偶然なのでしょうか?

Alexandre 本作の協力プレイは3年前から計画していたことです。まず新しい世代のプレイヤーはソーシャルな世代であり、協力プレイの経験をシェアしたいと思っています。ファンからのリクエストが多かったのもあり、ふたつの要素ががうまく噛み合った感じですね。

——シリーズの定番とも言える対戦モードはありますか?

Alexandre 今回はPvP(対戦)は入っていません。これまでもPvPは同じテーマでありながら別のモードとして独立していました。今回はプレイヤーのゲーム体験を統一したかったので、協力プレイにフォーカスしています。

——先ほど「新しいサイクルへ」とおっしゃってましたが、これまでのテンプル騎士団とアサシン教団の戦いはどうなりますか?

Alexandre プレイヤーの皆さんにサプライズを残しておきたいので多くは語れません。ただ、いま言えることは、新しいサイクルが始まり、このゲームではテンプルとアサシンとは何か、またその違いが明らかにされます。それぞれがフランス革命とどのように反応していくかを楽しんでください。それと、このゲームには大きく3つのテーマがあります。ひとつ目は“自分がやってしまったことへの償い”、ふたつ目は“愛と義務のどちらを取るかという不可能な選択”、3つ目は“狂信と熱狂の危険性”です。あまりに相反し合うものは、結果的に同じになっていきます。

——深いですね。本作の主人公、Arnoはどんな人物ですか?

Alexandre ダークでストイックではなく、鋭いユーモアのセンスを持っています。罪悪感があり、その償いをしたいという気持ちや、自分の持つ傷をユーモアで隠しているのです。鋭い頭脳を備え、効率よく戦いを進めていきます。

——ユービーアイソフトはパリに本社を置いていますが、だからこそフランスを舞台にした『アサシン クリード』の制作には気合いが入ると思います。作品作りの意気込みを教えてください。

Alexandre 本作は、カナダにあるモントリオール・スタジオが主導して開発していますが、おっしゃる通り本社はパリにあるので、間違ったことはできません。いまのところ、本社からの反応はすこぶるいい感じで、手厚いサポートを受けています。今回もゲームの中でフランス革命、そしてパリの様子をきちんと正確に表現するよう努力しています。ご期待ください。