●あの噂の真相は!?

 2014年6月10日(現地時間)、E3 2014開幕前の午前にソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオの吉田修平プレジデントに話をうかがう機会を得た。ここでは、吉田氏に昨日のソニー・コンピュータエンタテインメントプレスカンファレンスでお披露目されたタイトル群の手応えについてなどの話を訊いた。

――まずは、今回のSCEカンファレンスの感想をうかがえますか? タイトルラインアップがバラエティーに富んでおり、相当手応えがあったかと思うのですが、吉田さんはすべてを把握されていたのですか?

吉田 ファーストパーティーのタイトルはどんなものを開発していて、何を発表するかといったことは把握していましたので期待感はありました。ですが、サードパーティーさんのタイトルに関しては、リハーサルで初めて見るタイトルも多いんです。おっしゃるとおり、バラエティーに富んだ印象を受けました。また、去年はPS4発売前だったので、どちらかと言うとPS3のハードを想定して作ったタイトルが多く、そのアップデート版をPS4でも出すというアプローチが多かったと思うのですが、今回は、新世代機の性能を想定したタイトルが多く、各社さんの開発チームの狙い、目線の高さを感じました。

――新世代機……、海外ではもう現行機といっていいほど普及してきていますが、昨年は話題となったPS4レベルのソフトが、今回のE3では当たり前に。世代交代の早さを感じたカンファレンスでした。

吉田 日本でもそうですが、ゲームはビジネスでもあります。開発チームは新しい技術を使いたいと思うでしょうが、投資のリターンを考え、ときには自制しながら、といった部分もあるかと思います。ですが、PS4、そしてXbox Oneもそうですが、立ち上げに成功して、パブリッシャーさんも力を入れていいんだ、という確かな手応えを感じてくださっていることが、今回発表されているソフトのクオリティーに表れているんだと思います。

――カンファレンスのトップは『Destiny』でした。

吉田 私は、ディスカッションには参加しますが、最終的にカンファレンスでどういった順番でお披露目していくか、という決定には関わらないのです。『Destiny』はスケールが大きく、この世代に向けて長く開発されてきたタイトルです。実績のあるチームが、新世代機の登場を待っていた。バンジーさんとアクティビジョンさんとは幸いなことにアグリーメントができて、βテストの先行や特別なコンテンツを用意してもらったりといろいろな形で協力していただけているので、カンファレンスのオープニングを飾ることにになり、私としてもうれしかったですね。プレイステーションユーザーは過去にバンジーさんのタイトルに触れる機会はなかったわけですから、より強く紹介したいと私も思っていました。

――今年もインディーがフィーチャーされていましたが、インディーとして特別に扱いをすることなく、カンファレンスの一連の流れで紹介されていたのが印象的でした。

吉田 鋭いご指摘ですね(笑)。欧米においては、インディーと大手メーカーのソフトとの垣根はなくなってきているんですね。昨年は、ソフトの幅広さを印象付けるためにインディーという言葉を使って紹介しましたが、タイトルも増えてきてこれからは個々のタイトルでピックアップします。もはや大手と並びラインアップを見せる段階にきたと思っています。象徴的なのは『No MAN'S SKY』。インディーであれほどの作品が出てくるなんて驚きです。もう、大規模開発のソフトと遜色ないですよね。

――新発表されたフロム・ソフトウェア開発の『Bloodborne』、小島監督の『メタルギア ソリッド V ファントム・ペイン』、グラスホッパー・マニファクチュアの『LET IT DIE』など、国産タイトルも注目を集めていましたね。

吉田 我々としてもうれしいですよね。『メタルギア ソリッド V ファントム・ペイン』のPVは何度も見て、流れている音楽もiTunesで買ってしまいました(笑)。あの映像は『グラウンド・ゼロズ』をプレイしているとたまらないですよね。日本のクリエイターの方が海外でもっと勝負できるように、PS4でチャレンジできるように、我々としても、もっと環境をよくして日本市場を盛り上げていかなければいけないと思っています。

――『Bloodborne』では、カンファレンスでも吉田さんみずからが紹介しましたが。

吉田 英語は苦手だから短めで、とお願いしたらあの形になりました(笑)。ですが、『Bloodborne』は私自身も強く関わっていたので、自分で紹介できてよかったです。

――フロム・ソフトウェアの個性が出てるタイトルという印象です。

吉田 あるメディアでも注目すべきトップデベロッパーに選ばれたり、かなり注目度は高いメーカーですよね。PS4の新作をいっしょにできて本当によかったと思います。

――Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)で未来を見せつつ、Naughty Dog開発の『Uncharted 4: A Thief's End』のような、これまで人気だったソフトもしっかりアピールした印象も受けました。

吉田 そこは意識している部分もありますね。PS4の時代というのは、未来も見せ、サービスもからめながら、『Uncharted 4: A Thief's End』のように技術の進化も見せていく。

――そのNaughty Dogが開発した『THE LAST OF US』がリマスター版で発売されます。もともとPS3版もHDでしたけど、昨年発売されたこのタイトルを今年、リマスター版としてリリースする意図は?

吉田 PS3版をプレイした人にもう一度プレイしてもらおうという意図ではなく、PS3版もやってもらってない人にプレイしてもらうためです。と言うのは、ある調査では、現在のPS4ユーザーの約半数がPS3を所有したことがない、というデータが出たんです。ですので、そういったPS3でプレイしてこなかった人のために“ベスト・オブ・プレイステーション3”という意味を込めて、という意図です。

――E3のSCEブースの見どころは?

吉田 カンファレンスではPS Vitaのタイトルをほとんどお見せせず、ユーザーの方からはお叱りを受けたのですが、ブースでPS Vitaも含め、たくさんのタイトルを出していますので、いろいろ発見してもらいたいですね。あとは、Project Morpheus。今回は新しいデモをふたつ用意しています。GDCで公開したデモも改良を加えています。Project Morpheusは、開発会社からも引きが強く、積極的に対応タイトルを作っていただけているよう、手応えを感じています。今朝もPS4向けに医学シミュレーションのタイトルを発表したメーカーさんがあったのですが、私がTwitterでProject Morpheusにも欲しいと冗談半分でツイートしたら、「もうやっている」と(笑)。

――最後の質問のまえに。ネットでは『人喰いの大鷲トリコ』の開発が中止になったという噂が出ているようですが……

吉田 そういう噂がでているようですが、とんでもないですね(笑)。海外の2ちゃんねるのような掲示板のデマをあるメディアが拾って記事にしてしまったために、信憑性のある噂として広まったようですが、『人喰いの大鷲トリコ』は開発中止の噂はデマですのでご安心ください。

――いまワールドワイドスタジオでゲームを作るに当たって尽力していることはありますか?

吉田 ひとつはネットワーク。PS4になって、ネットワークの使いかたがいろいろと増えましたよね。SHAREなどのソーシャル要素もそうですが、シングルプレイの感覚でマルチプレイができたり、『風ノ旅ビト』のようにシングルプレイとマルチプレイがシームレスで、いつの間にかに人とつながっていたりとか。ワールドワイドスタジオでも、ネットワークをどううまく使っていくか、新しいネットワークの使いかたは気にしているところです。『Bloodborne』を手がている宮崎さんは『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズなど、新しいネットワークの使いかたの先駆者ですよね。ワールドワイドスタジオでも、まだ未発表のネットワーク中心のタイトルを開発しています。もうひとつは、Project Morpheus。技術としては、初代プレイステーションで3Dポリゴンを導入したのと同じくのインパクトだと思っていまして、今後、20年は進化していく技術だと思っています。初代プレイステーションのときは3Dをどう活かすか、という命題があり、いまのグラフィック技術につながっています。VRもそれをどう活かし使っていくか。

 今後もユーザーの皆さんが期待するタイトルをさらに成長させつつ、新しいタイトルもお届けしようと思っていますので、ご期待ください。