『GOD EATER 2(ゴッドイーター2)』に新たな動き

『GE2』「“防衛班の帰還”は、『GE』の大きな世界を描いていくための試金石」富澤プロデューサーインタビュー_01

 2013年11月14日の発売以降、ほぼ1ヵ月おきのペースで無料アップデートを実施してきた『GOD EATER 2』。2014年5月26日に公開されたVer.1.40では、新たなミッションカテゴリー“サバイバルミッション”や、仲間キャラクターの成長要素、難易度調整機能などを追加。さらに、プレイステーション Vita版では、インターネットを介したオンラインマルチプレイ(インフラストラクチャーモード)にも対応するなど、非常に大規模なアップデートとなっている。

 そんな矢先、『GOD EATER 2』のまったく新しい展開として“新作アペンドパッケージ「GOD EATER 2 ANOTHER EPISODE 防衛班の帰還」”を発表。2014年6月5日に、PlayStation Storeにて発売されることとなった。今回は、これまでの無料アップデートとはまったく別軸での展開である“アペンドパッケージ”について、『GOD EATER(ゴッドイーター)』シリーズをプロデュースする富澤祐介氏に突撃インタビューを敢行。経緯や狙いについて訊いた。

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この先、シリーズを続けていくうえでの試金石

『GE2』「“防衛班の帰還”は、『GE』の大きな世界を描いていくための試金石」富澤プロデューサーインタビュー_02
▲富澤祐介氏。GOD EATER(ゴッドイーター)シリーズのプロデューサー。

――今回のアペンドパッケージは、これまでの無料アップデートとは別軸での展開になるのでしょうか?
富澤 そうですね。発売以降、無料で続けてきたアップデートの主眼は、『GOD EATER 2』をより楽しく、そしてより快適に遊んでもらうというところにあります。その一方で、コンテンツ全体として『GOD EATER』シリーズを見たとき、今後どう作り続けていくかということも模索してきたのですが、これまでに生み出したキャラクターや世界設定の中から、いろいろな切り出しかたがあるなとプロジェクトでは考えていました。

――なるほど。1作目の『GOD EATER』、続く『GOD EATER BURST(ゴッドイーター バースト)』、最新作の『GOD EATER 2』と、キャラクターの数だけでも相当ですよね。
富澤 とはいえ、全キャラクターを作品に入れ続けるわけにもいきません。『GOD EATER 2』は、前作からの3年後の世界で、ブラッドという新しい組織、新しいキャラクターたち、そして前作から人気の高かったキャラクターも一部参戦という形でパッケージングしました。『GOD EATER 2』を出した後に感じたことなのですが、新しいキャラクターと前作からのキャラクターの両方を描いてみて、ユーザーさんの感じかたが本当に千差万別だということです。「ブラッドたちとの絡みをより厚く!」という声がある一方で、「旧キャラをもっと出してください!」という方もいて。

――バランスは難しいですね。
富澤 どのタイトルから『GOD EATER』シリーズに入ったかにもよりますし、思い入れの深さなど、個人的な部分もあると思うので、いろいろな意見が出てきますね。このことは、シリーズを続けてみて初めてわかったことです。そうした状況下で、『GOD EATER 2』のゲームの部分というよりは、世界のほうを楽しみたいという希望に対して、僕らはどういう形で答えられるのかなあという課題もありました。

――その回答が、今回の“アペンドパッケージ”であると。
富澤 ええ。前作からのコアなユーザーさんたちに向けて、新たなエピソードを持ったNPCとして防衛班を登場させ、アペンドパッケージとしてリリースすることにしました。僕たちからのひとつの提案です。

――PlayStation Storeでの販売価格は1000円[税込]となっていますが、収録されている内容からすると、だいぶ安い感じがしますが……。
富澤 なるべく多くの人に触っていただきたいという思いをもとにしつつ、直感的に手に取っていただきやすい価格設定としました。値段ぶんの価値があったかどうかは、ぜひアンケートで知らせていただきたいです。

――今回、防衛班にスポットを当てることにしたのは、何か決め手のようなものがあったのでしょうか?
富澤 防衛班については、『GOD EATER 2』の発売前、発売後ともに、既存のユーザーさんから「防衛班は出ないんですか?」というご要望や、期待の声をいただいていました。また、シリーズをずっと続けていけば、キャラクターはこの先も増えていくわけですが、物語を地続きでやっていく以上、どのキャラクターも歳を取っていきますよね。その中で、それぞれのキャラクターの魅力というものは、各時代にもあるだろうと。つまり、サーガ的に世界観を構築していきたいと考えているんです。

――作中には登場していないキャラクターにも、描かれるべき活躍があるわけですね。
富澤 そういうことです。『GOD EATER 2』に登場するキャラクターのエピソードだけを続けるのではなく、そもそもいままでどうなっていたのか語られていなかった人たちが、こういう形で出てくるということも含め、大きな流れとしては受け入れてもらえるようにやっていきたいと思います。ただ、この形式にこだわっているわけではなくて、これはあくまで試金石です。どの部分をフィーチャーしても、いろいろ意見は出てくると思いますし、「次にこれをやってほしい」という声があったら、何らかの形で答えていきたいというのは、正直な気持ちとしてはありますね。

――3年後の防衛班を描くうえで、気をつけたことはありますか?
富澤 防衛班は、1作目の『GOD EATER』から登場していますが、もともと固有のデザインがあったわけではなく、キャラクターメイクのバリエーションで作られていました。そこから、2作目の『GOD EATER BURST』でデザインが起こされてキャラが立ったという、ちょっと複雑な出自です。しかも、『GOD EATER BURST』本編でもそれほど出てこないですね。言ってみれば、今回初めて防衛班のストーリーが語られるといってもいいくらいなんです。ユーザーさんの思い入れはあり、バックボーンはあるけれど、大々的には語られていない。。でも、大々的に語られていなかったからこそ、ユーザーさんのあいだでキャラクターが補完されていた側面もあるわけです。そういった、期待してくださっている方に対してきちんと受け入れてもらえるかどうか、そこは気を遣いました。それは、デザインもシナリオも両方です。
 一方で、『GE2』からシリーズに入った方が「自分は楽しめないものだ」と思われないように、内容自体はここから始めても十分彼らの魅力を堪能できるよう気をつけてもいます。ぜひこのタイミングに、防衛班の魅力にも触れてほしいと願っています。

『GE2』「“防衛班の帰還”は、『GE』の大きな世界を描いていくための試金石」富澤プロデューサーインタビュー_03

――今回の“防衛班の帰還”は、ニコニコ生放送での発表の瞬間を見ても、ファンには概ね受け入れられている印象があります。
富澤 そうですね。ネットでのご意見などを見ていて、ちょっと意外に感じたことは、キャラクターファン以外にも訴求できたことです。

――キャラクターファン以外というと?
富澤 前作の『GOD EATER BURST』で、ストーリー中盤になると、一部のメインNPCが使えなくなるタイミングがあるんです。そのとき、代わりに防衛班のNPCを助っ人にできるんですが、“そのときにお世話になった”というゲーム体験のみで防衛班に愛着を持ってくれている人もいるんですよ。アクションゲームとして楽しんでいる人にも、防衛班はいい思い出として残っていたようなんです。これは発表後の意外な反応のひとつでしたね。

――そんな彼らですが、同行させるNPCとして『GOD EATER 2』での性能も気になります。
富澤 防衛班はいわゆる旧型の神機使いなので、ブラッドのようなバランスの取れたキャラクターたちよりは、一見性能的には見劣りするかもしれません。その代わり、ピーキーな特徴が付けられています。たとえば、シュンだったらヴェノム付与の効果を持つロングブレードを持っていたり、ジーナだったら超遠距離からの先制攻撃が可能になっていたり……。NPCとしての性能も、クセのある形に仕上がっていると思います。

――“防衛班の帰還”は、いつごろから制作に入っていたのでしょうか?
富澤 構想は年末から、具体的な制作は2014年に入ってからすぐですね。キャラクターのモデリングからボイスの収録まですべて新規で、防衛班のファンの方には十分楽しんでもらえるクオリティーを目指しました。収録は、春に入ってから急ピッチで進めていきましたね。

――気になるボリュームですが……。
富澤 ストーリーの部分は、ムービーだけでも数十分のボリュームです。ゲーム体験としては、あくまで暫定ですが、10時間くらいはプレイできるはずです。もちろん、無料アップデートVer.1.40で実装した難易度調整機能やキャラクター育成にも対応していますから、楽しめる時間はかなり個人差があると思います。オペレーターも新規でふたり増えていますしね。

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――防衛班のNPCだけでなく、オペレーターも追加されているんですよね。
富澤 ユーザーさんに、「もう一度遊び直したい」と思ってもらえるような要素として収録しました。とくに、男の子のオペレーターの声を聞きながらミッションをやるのは、かなり新鮮に感じるはずです。

――その男の子は、真壁テルオミですか。どこかで見覚えが……(笑)。
富澤 どうもハルオミの関係者のようですね。ハルオミはサブキャラ的な立ち位置ながら、味がある存在でしたが、テルオミのキャラクター性についても、ぜひオペレーターボイスを通して感じてみてください。

――もうひとりのオペレーターの星野ウララは、東北訛りが特徴的ですね。
富澤 ゲームでもアニメでも、東北弁をフィーチャーした例は意外に少ないかもしれませんね(笑)。“防衛班の帰還”をディレクションした渥美(渥美航氏。初代『GE』から開発に関わり、“防衛班の帰還”ではディレクターを務める)は、方言にはこだわりがあるようで、東北訛りが話せる声優さんをわざわざキャスティングしたんですよ。オペレーターなので、ふだんは訛りを出さないように気をつけているけれど、咄嗟に漏れ出してしまうリアリティーを目指したようです。このあたりも楽しんでほしいですね。

――今回のアペンドパッケージですが、ずばり次の展開はあるのでしょうか?
富澤 今回は、僕たちからの提案としてこの形にしてみましたが、これまでにないパッケージングですので、これが最適解なのかはわかりません。ぜひプレイしていただき、公式ホームページの感想フォームに忌憚のない意見をお寄せください。その反応次第で、現状は未定ですがまた新しい展開があるかもしれません。

無料アップデートはひと区切りだが、終わりではない

――無料アップデートはVer.1.40でひと区切りということで、発売から振り返っていかがでしょうか?
富澤 ここまで、長かったという感覚はありませんね。逆に、インフラストラクチャーモードの実装など、お待たせしてしまったという部分も大きいと感じています。『GOD EATER 2』は、前作から大きく変わった部分もあり、発売した段階でのゲームバランスは、ユーザーさんによっては不満も大きかったと思います。そこは真摯に受け止め、できる限りのところまでやろうと、無料アップデートを続けてきました。最低限、お約束したところまではできたかなとは思っています。でも、まだまだ「『GOD EATER』としての完全な姿です」というところまではたどりつけていないという気持ちもあります。

――今後のアップデートについて、気になっているユーザーもいるようですが……。
富澤 いまも毎日のようにありがたいご意見をいただいていて、細かな品質改善など、そうした要望に一切応えないというわけではもちろんありません。ただ、アップデートを無尽蔵に続けていても、次に進めない。その先に進むために、開発のバランスを考える時期に入ってきた、ということですね。アップデートはひと区切りですが、ここまで続けてきて、想像以上に多くの方にプレイいただけた状況があるからこそ、『GOD EATER 2』と『GE』シリーズはこの先も進化し続けられる、という確信を持てています。


 『GE』シリーズは、『GOD EATER BURST』のときも、通常版に加えて、前作からの差分のみを収録して価格を抑えたアペンド版を展開するなど、挑戦的な試みを行っている。今回のアペンドパッケージについても、当初から計画されていたダウンロードコンテンツではなく、ユーザーの声を受けて新規で制作するという、新機軸の展開だ。『GOD EATER 2』からシリーズに入ったという人も、“防衛班の帰還”で『GE』シリーズの大きな世界を体感してみてはいかがだろうか。