ねんどろいどのこだわりは伊達じゃない！
以前の記事でお伝えした、『ゼルダの伝説』シリーズの主人公・リンクのねんどろいど化。“ねんどろいど リンク 風のタクトVer.”という商品名の通り、いわゆる“ネコ目リンク”、“トゥーンリンク”のねんどろいど化となっており、『風のタクト』に登場した“勇者の剣”、“勇者の盾”、“ハートの器”、“風のタクト”といったアイテムパーツが付いてくる。また、『風のタクト』らしく、“笑顔”、“攻撃顔”、“緊張顔”といった表情豊かな顔パーツが同梱されるのも特徴だ。『とびだせ どうぶつの森』のしずえさんや、『スーパーマリオブラザーズ』のルイージなど、任天堂キャラクターのねんどろいど化が続く中、満を持してのリンクの登場！ 『ゼルダの伝説』好きな記者としては、リンクのねんどろいど化の経緯やら、なんでトゥーンリンクになったのかやら、いろいろ興味が湧いてしかたがない！ というわけで、趣味全開……じゃなくって、謎を究明するべく、グッドスマイルカンパニーのご担当者に突撃インタビューをしてきました。ひとつひとつのパーツに至るまで、こだわりまくった“ねんどろいど リンク”の制作秘話、ぜひ最後までお読みください！
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■プロフィール
キョジン氏（写真左）
ねんどろいどの企画担当者。
めすか氏（写真右）
ねんどろいどの制作担当者。
リンク制作秘話から『ゼルダ』の思い出まで全部聞きました！
――今回、リンクがねんどろいど化することになった経緯から教えてください。
キョジン 『とびだせ どうぶつの森』のしずえさんやルイージなど、最近、任天堂さんのキャラクターをねんどろいど化する機会が増えてきまして。そこで、「任天堂さんの代表的なキャラクターと言えば、何だろう？」と考えたときに浮かんだのが、リンクだったんです。リンクと言っても、いろいろなリンクがいますから、どのリンクをねんどろいどにしようか考えたんですが、トゥーンリンクの立体物はあまり聞いたことがないですし、ねんどろいどとの相性もよさそうだと考えて、トゥーンリンクで任天堂さんにお話をさせていただきました。あと、figmaで『スカイウォードソード』版のリンクが発売されていたので、それとの差別化もありましたね。
――グッドスマイルカンパニーさんからお話を持っていったんですね。
キョジン はい。企画していたころに、ちょうど『風のタクト HD』が発売されることを知って、それに合わせて発売しようと思ったんですが、仕様・原型ともにかなりこだわったため、この時期まで延びてしまいました……（苦笑）。ただ、そのぶん、いい物になったと思います。
めすか すみません（苦笑）。
――（笑）。そのへんの苦労話をぜひおうかがいしたいのですが、制作のなかでたいへんだったポイントはどこでしょうか？
めすか リンクは、『ゼルダの伝説』シリーズだけでもいろいろな見た目がありますが、ほかにも『スマッシュブラザーズ』シリーズなど、タイトルごとにちょっとずつ顔の特徴が違うんですね。しかも、リンクが好きな人は、それぞれ自分の中にリンクのイメージを持っていて、今回のねんどろいどでは『風のタクト HD』版のリンクをモチーフにしていますが、『風のタクト HD』に偏ったねんどろいどにしても、「私のリンクはこうじゃない！」という、皆さんのイメージとの齟齬が生まれてしまって。ですので、皆さんの考えるリンクを具現化するという、いいバランスを探す点でとても苦労しました。
――確かに『風のタクト HD』がベースですが、いろいろとアレンジされていますね。
めすか たとえば、髪の毛の造形はオリジナル版らしく、ちょっとポリゴンっぽい雰囲気を残しつつ、最近の『スマブラ』などにいるリンクのように、丸いイメージを出すために何度も修正しましたね。
――『風のタクト HD』をベースにしつつ、みんなのイメージの集合体のような？
めすか そうですね。ですので、シリーズのイラストを片っ端からチェックして、ふつうのリンクとトゥーンリンクの違いや特徴を細かく比べていきました。
――そ、それはたいへんそうな……。ねんどろいどは、どういった手順で制作していくのでしょうか？
キョジン まずは、各キャラクターの版元さんに、「このキャラクターのねんどろいどを作りたいです」というお話をして、許可をいただいてからがスタートになります。企画担当のほうでは、“こういったパーツをつけたい”というアイデアを出して、制作に入る段階から、さらに案を練っていきます。その後は、実際に制作に入って、原型を作り始めるのですが、原型に関してはめすかさん、どうぞ。
めすか （笑）。社内にも原型師はたくさんいるんですが、外注さんで『ゼルダ』を好きな方がいらっしゃったので、今回はその人に依頼しました。ちょうど3Dデータで原型を作られる人だったので、できあがったデータに修正や調整を加えて、3Dプリンターで出力してます。ただ、この段階でも、まだまだ形が合わないとか、想像するイメージと違うといったことがありますので、さらに修正を重ねていって、完成形に近い彩色版を作っていくんです。
――なるほど。顔の表情パーツなどは、キョジンさんからある程度アイデアを出されるのでしょうか？
めすか ある程度というか、キョジンさんが全部決めましたよね？
キョジン そうですね。顔の表情や勇者の剣、風のタクトなど、僕のほうでアイデアを出しました。
――回転斬りのエフェクトなども？
キョジン そうですそうです。剣などは、最初からゲーム中で形になっているのでやりやすいんですが、回転斬りで発生するエフェクトは、どうやってパーツにしようか悩みましたね。制作の初期段階では、もっと大きかったんですよ。
めすか ゲーム中のリンクとエフェクトの比率をそのまま再現しようとすると、かなり大きかったんです。いくらなんでもここまで大きくはできないと思いつつ、3Dプリンターで出力してみたら、案の定、あまりにも大きくて、ねんどろいどの箱に収まらないくらいでした（笑）。ですので、小さくしつつも、なるべくゲームでの回転斬りのエフェクトに見えるようにまとめています。
――箱に入りきらないサイズはすごい（笑）。リンクのアクションはいろいろあると思いますが、なぜ回転斬りを？
キョジン 『ゼルダ』と言えば、やっぱり回転斬りじゃないですか（笑）。
――すごくわかります（笑）。
キョジン ねんどろいどとしては初めてのリンクだったので、『風のタクト』に関わらず、ハートの器や回転斬りといった、なるべく全シリーズに共通するものを入れたかったんですね。それもあって、ちょっと『風のタクト』成分は低くなったかもしれません。
――そう言われると、確かに。
キョジン 個人的には、『風のタクト』ならではとして、空を飛ぶときの葉っぱ（デクの葉）を入れたかったんです。ただ、ねんどろいどには価格帯があって、その中でパーツなどを決める必要があるので、そういう意味でもオーソドックスなものになりました。
――デクの葉！ 空を飛ぶポーズとか、葉っぱを振るポーズとか、いろいろ妄想が広がりますね……。では、アイデアの段階で、こういうものを入れたいというものはあったのでしょうか？
キョジン 最初に、「これを入れたらおもしろくなるんじゃないか」というものをいっぱいリストアップして、そこから絞り込んでいったんです。アイデアレベルでは、弓矢もバクダンもありましたね。あと、トゥーンリンクは表情が豊かなので、もっといろいろな表情も選んでいました。パーツで採用されているものは、そこから厳選されたものです。
――それでも、一般的なねんどろいどと比べるとパーツ数が多いように感じます。
キョジン 表情が4種類あるというのは、あまりないですね。しかも、全部目が開いていますし。
めすか ちょっと内部的なお話をすると、目が開いていると工場での生産に手間がかかるので、ほかのねんどろいどでは、表情パターンの中に目を閉じたものを入れるんです。そういう意味でも、4つとも目が開いているのは珍しいですね。
キョジン その分、ほかのパーツはそこまで多くないんです。
めすか アイテムが印象的なので、そういう風に見えるんだと思います。腕のパーツなどは少ないほうですね。
――この“ねんどろいど リンク”を発表したとき、評判や反応はいかがでしたか？
キョジン 「こっちのリンクが出るんだ！」という反応が多かったですね。『ゼルダの伝説』は海外人気も高いので、トゥーンリンクのほうは海外でどういう反応になるのか楽しみ半分、不安半分という感じだったのですが、ものすごい反響をいただけて、海外でも待ち望まれていると安心しました。
――ねんどろいどは、海外でも販売をされているんですよね。
キョジン 最近は海外展開にも力を入れています。海外販売の比率もだいぶ上がってきていて、専門の事業部もできているくらいです。北米は、任天堂さんの作品の人気が強いですね。
――そうなんですね。『とびだせ どうぶつの森』のしずえさんなどの人気も？
キョジン しずえさんは、国内のほうがダントツで強いです（笑）。ねんどろいどで言えば、ルイージですね。あと、figmaで出たリンクやサムスの人気がすごいです。
――ほかのねんどろいどにない、リンクならではの苦労はありましたか？
めすか じつは、ねんどろいどは顔の形がだいたい共通なんですが、リンクはいつものねんどろいどの形と違っていて、リンクの表情を活かせるような特別な形にしているんです。ねんどろいどはパーツに互換性があって、まったく別のねんどろいどの表情に付け替えたりできるのも特徴なんですが、リンクの顔は耳が長くなっているので、はまらないキャラクターもありますね。
――具体的には、どのように変わっているのでしょうか？
めすか ほかのキャラクターより、リンクの目が大きいので、ねんどろいどに多い美少女キャラクターとは顔の面の角度がぜんぜん違うんです。この顔をゲーム風に似せるために、何度も何度も直しました（苦笑）。
キョジン ふつうのねんどろいどは、キャラクターは変わっても、顔はある程度そのままというか、そこまでいじらないんです。
めすか 表情は違っても、目のあたりはどれも同じものが多いんですが、リンクはそこを調整する必要があって、時間がかかってしまいました。
――任天堂さんの監修はいかがでしたか？
キョジン すごく喜んでいただけました。任天堂さんはこだわりのある監修で、いっしょに作り上げていく感じでしたね。とくにハートの器は、何度かやり取りをさせていただきました。
めすか ハートの赤い部分は、クリア素材で向こう側が見えるようになっていますが、最初は透けない赤い塗料で塗っていたんです。というのも、発色だけ考えると、そのほうが赤の色はキレイに出るんですね。任天堂さんから、「ゲームの設定に合わせて透ける赤にしてください！」と要望があってクリアにしたのですが、結果的に『ゼルダ』ファンの皆さんにとってうれしい感じになったと思います。
――なるほど。確かに、最近の『ゼルダ』はハートの器が透けてるイメージがあります。これから実際に発売されて、皆さんいろいろ遊ばれると思いますが、どういう場所に飾ってほしいとか、どういうところで遊んでほしいといったご希望はありますか？
キョジン 海とかいいんじゃないでしょうか。船に乗せたりして。外へ連れ出したほうが、リンクらしい気がしますね。ダンジョンみたいな場所もいいかもしれません。
――冒険しているイメージで、いろいろと撮れますよね。
キョジン 個人的に、この警戒している表情（下の写真参照）がお気に入りです。
めすか 私も！
キョジン 壁際に置いておくと、覗いている雰囲気が出ます（笑）。
――これは『風のタクト』らしいイメージがあっていいですよね！
めすか でも、こういう表情よりは、通常の顔などのほうが難しかったです。美少女キャラクターやアニメのキャラクターは、目に瞳孔があってハイライトと言って、黒目の中に白い丸で光を表現していくんです。そうすると表情が生き生きするんですが、リンクの目は真っ黒なんですね。こういう真っ黒な目は、ふつうは生気がないようなイメージになるので、表情を活かしながら、この黒い目を活かすのは、とても苦労しました。
――目をよーく見ると、グラデーションがかかっていますね？
めすか そうですね。白目に入っているグレーの影の形などで怖くならないように調整しています。
――あ。いま、気づいたんですが、帽子の先端って回るんですね。
キョジン はい。若干ですが（笑）。帽子の見せかたもこだわった部分ですね。リンクのイメージとして、正面から帽子が見えると思うんですが、それを再現しようとすると頭が大きくなってしまったりして。
――ああ、なるほど。ねんどろいどならではの苦労ですね……。掲げているポーズはいいですよね。アイテムを手に入れたときの、あの音が聞こえてきそうです。
キョジン 本当はもうちょっと手を真上に上げているようにしたかったのですが、難しかったので断念しました。
めすか ねんどろいどは顔が大きいので、腕を真上に上げられないんです。
キョジン ですので、なるべく真上に上げているように見える感じで。あとは、手に取った方が脳内イメージで補正していただければ（笑）。
――ちなみに、おふたりはもともと『ゼルダの伝説』シリーズはご存じでしたか？
キョジン はい。私は、ディスクシステム時代からですね。
――第1作から！ 今回の制作にあたって、『風のタクト』やほかのシリーズ作をプレイされたりしましたか？
キョジン いえ、プレイはしていないです。『風のタクト』は友だちがプレイしていたのをよく覚えていました。アニメーションのようで、見ているだけでも楽しかったですし。あと、今回の企画時点では『風のタクト HD』が発売前で、任天堂さんのホームページに何点か写真がある程度だったので、ゲームキューブ版の攻略本を買ってきて、それを資料にしましたね（笑）。
――めすかさんはいかがですか？
めすか 私は、昔に少し遊んだくらいで、あとは弟がプレイしているのを見るのがほとんどでした。
――では、本当にイチから調べ直されたんですね。
めすか トゥーンリンクも存在は知っていましたが、そこまでじっくり研究するほど見るのは初めてでしたので、あのネコ目というか、独特の雰囲気になかなか慣れませんでした（苦笑）。でも、作っているうちに、不思議とトゥーンリンクがいちばんかわいいと思えるようになってきましたね（笑）。
――子どもをかわいがるような（笑）。続いて、『ゼルダの伝説』シリーズの中でいちばん好きな作品があれば、そちらも教えていただけますか。
キョジン 記憶に残っているのは、ディスクシステムの初代『ゼルダ』や、スーパーファミコンの『ゼルダ』（『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』）なんですが、いちばん好きって言うと……『リンクの冒険』かなあ。
――『リンクの冒険』！ 渋い（笑）。
キョジン あのゲーム、けっこう難しいじゃないですか。盾を上下に操作したり。当時は小学生だったんですが、難しいゲームが好きだったので、あの難易度の高さが好きだったんですよね。『パルテナ』（『光神話 パルテナの鏡』）も好きでした（笑）。
――難しいものばかりですね（笑）。
キョジン いま遊んだら、たぶんできないです（笑）。
――（笑）。めすかさんは、さきほどあまり遊んだことがないとおっしゃていましたが、『ゼルダ』にまつわる思い出などはありますか？
めすか 昔、ちょっと遊んだだけですが、キャラクターだとチンクルが印象に残っています（笑）。
――それは、確かにいろいろな意味で印象に残りますね（笑）。チンクルのねんどろいどが出たら、マニアは喜びそうですが……。
めすか あの面長な顔は、リンク以上に顔の形を変えないといけないと思うので、たいへんそうですね（苦笑）。
――こうやってリンクを作ったりすると、ほかの『ゼルダ』シリーズのキャラクターなども作りたいと思いますか？
キョジン やりたいですねー。トゥーンではない、ふつうのリンクもやってみたいです。とはいえ、本当にただの希望で、実際にやるというわけではないですが（笑）。
――今後ねんどろいど化してみたい任天堂キャラクターをおうかがいできますか？
キョジン ちょっとまだ言えないのですが、いろいろ考えていますので、楽しみにしていてください。
――期待しております！ では最後に、ねんどろいど リンクを楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
めすか トゥーンリンクの立体物が、あるようであまりなかったと思います。ゲームのように動かして、思う存分遊べると思うので、ぜひ手に取って遊んでみてください。
キョジン 表情が豊かなので、自分の気分によってつけ替えたりしてほしいですね。あと、外に持って出かけてもらえると、リンクといっしょに冒険している気分が味わえると思います。
“ねんどろいど リンク”プチギャラリー
というわけで、お送りしてきたインタビュー、いかがだったでしょうか。これで、“ねんどろいど リンク”、そして『ゼルダの伝説』シリーズに興味を持っていただければ幸いです。ちなみに、“ねんどろいど リンク”は各ショッピングサイトなどで現在予約受付中（2014年5月19日現在）。ねんどろいどは早い段階で品切れになってしまうことも多いので、お早めの予約をオススメします。記者ももちろん予約済み！ 警戒している表情で机に飾ります！
Text by 世界三大三代川
