百花繚乱の時代にヒットを仕込むポイントは!? ファミ通グループ代表の浜村弘一による講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年春季>”詳報

今回のテーマは、“新世代ゲーム機は成功したのか? ~鍵を握るのはシェアバトル~”。ついに発売された新世代機プレイステーション4とXbox Oneの販売状況、加えてさまざまなプラットフォームが乱立する激動のゲーム業界で、何が勝ち残るポイントになるのかについて、浜村代表の見解が示された。

●ヒットのキーワードは“共有=シェアバトル”

 2014年4月18日、KADOKAWA 浜村弘一ファミ通グループ代表(以下、浜村代表)が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年春季>”を開催した。本講演は、変化の激しいゲーム業界を半期に一度のペースで切り取り、ファミ通調べのマーケティングデータをもとに、現状分析や今後の展望などを解説する講演。

 今回のテーマは、“新世代ゲーム機は成功したのか? ~鍵を握るのはシェアバトル~”。ついに発売された新世代機プレイステーション4とXbox Oneの販売状況、加えてさまざまなプラットフォームが乱立する激動のゲーム業界で、何が勝ち残るポイントになるのかについて、浜村代表の見解が示された。

 本講演の概要は、[こちらの記事]でリポートしたが、本稿では、紹介されたデータと合わせ、さらに詳しく見てこう。

■PS4、Xbox Oneの立ち上げは大成功

 まずは、ついに発売された新世代機PS4とXbox Oneについて。

 PS4とXbox Oneの両機種とも、海外では2013年11月に発売。ローンチイベントも華々しく開催され、大いに盛り上がった。PS4は世界に先駆けて発売された米国およびカナダで、発売後24時間で100万台以上の実売を達成。その後も順調に販売台数を伸ばし、2014年4月6日時点の累計販売台数は700万台を突破した。世界的な品薄状態が続いており、一部報道では、ソニー・コンピュータエンターテインメントの代表取締役 社長 兼 グループCEO アンドリュー・ハウス氏が品薄状態は夏まで続くと予測していることなどが報じられた。

 一方のXbox Oneも順調で、2013年末の段階での累計販売台数が300万台を突破するなど、初代XboxやXbox 360をしのぐハイペースで販売台数を伸ばし、2014年4月18日には世界累計出荷台数が500万台を突破というニュースも飛び込んできた。

 「PS4、Xbox Oneともに滑り出しは大成功と言えるでしょう」(浜村代表)

 ただ、PS4とXbox Oneを比較すると世界的にPS4が優勢で、いままでXboxが強かった米国でさえ、PS4の勢いが勝る状況となっている。対応ソフトにPS4とXbox Oneのマルチタイトルが多く、いまのところエクスクルーシブ(独占)タイトルの強さにもさほど差がない、“互角の状況”。差がついた大きな要因について浜村代表は、価格の差(米国のPS4は399ドル、Xbox Oneは499ドル)だと分析。「ローンチに購入するコア層はコントローラで遊びたい層が多い。そこでXbox Oneより100ドル価格が安いPS4にコアユーザーが流れたことが、いまの状況を作り出したのではないでしょうか」(浜村代表)。

■国内のPS4販売も難しい局面を乗り切り、好調なスタート

 ニンテンドー3DSを筆頭に、携帯ゲーム機が大きなシェアを占める日本でのPS4の状況はどうか。PS3に次ぐ高額商品、発売が年末商戦期ではない、下位互換がない、『龍が如く 維新!』などPS3との世代を超えたマルチタイトルが多く、PS4をすぐに購入しないとプレイできないという状況ではなかったなど、いままでのローンチと勝手が違う状況があったものの、発売初週は32.2万台と好調な滑り出しとなったPS4。その後も価格的には有利な携帯ゲーム機であるPS VitaやPSPとほぼ同じ販売推移を辿っていることから、「難しい局面をしのぎ、健闘していると言えるでしょう」(浜村代表)。先行して発売された海外の大ヒットの様子をCMに使って、購入意欲を煽るなどのプロモーション戦略も奏功したのでは、と分析した。

▲PS3やPS Vita所有者のPS4購入意欲はかなり高くなることが紹介。ちなみに、もっとも注目されている機能は、やはりグラフィック。SHARE機能は、まだピンときていない、といったところか。

■PS4、Xbox Oneの今後の成長予測

 新世代機の盛り上がりを支えている要素のひとつがUstreamやTwitchなどを利用した動画共有。海外では、多くの動画が投稿され、それによってメガヒットタイトルに成長した『マインクラフト』などの成功例により、もはや“ヒットに動画共有は欠かせない”という認識が広がっている。PS4のSHAREでは、これまでに1億3500万回以上ものゲーム画面やゲームプレイの動画が共有されたほか、Ustream およびTwitchを通じたゲームプレイの生中継は490万回以上、これらゲームプレイの生中継は世界中のPS4ユーザーにおよそ9000万回以上観戦(いずれも3月31日までの数字)というデータが発表されている。いまや動画共有は新世代機にとっても欠かせない大きなムーブメントになっていると言って過言ではない。

 PS4、Xbox Oneの成功を受けて、大手メーカーが新世代機向けの開発ラインを増やす動きもあるという。だが、ハードの世代が上がるごとにソフトの制作費も上がるため、制作はヒットが見込める大型タイトルに絞り込まれ、タイトル数自体は減ってきている。そこでプラットフォーマーが熱視線を注ぐのがインディー開発タイトル。ソニー・コンピュータエンターテインメントやマイクロソフトはインディーデベロッパーをサポートする施策を打ち出している。さらに、Unreal EngineやCryENGINEといったゲームエンジンが月額料金で利用可能になるなど、インディーデベロッパーにとって開発しやすい環境が整ってきており、今後はますますインディーゲームが活発化することは間違いないだろう。

 動画共有のムーブメントの拡大、インディー開発の活発化によるタイトル数増加といったことが追い風となることなどを踏まえ、浜村代表は、PS4とXbox Oneの今後については次のように予測する。「2014年はPS4、Xbox Oneは本格的に普及が拡大していくはずです。これからもPS4はPS3を、Xbox OneはXbox 360を大きく上回るペースで普及が進むのではないでしょうか」(浜村代表)

 Xbox Oneの国内発売は9月に決定。PS4から約半年後の発売となるXbox Oneが日本でどんなスタートを切るか注目される。

■PS4、Xbox One以外の家庭用ゲーム機の現状と見通し

 PS4、Xbox One以外のハードの現状と見通しについても簡単に紹介しておこう。

 復調が期待されるWii Uだが、『Wii Party U』や『スーパーマリオ 3Dワールド』など、2013年後半には50万本を超えるヒット作も登場。だが、ヒット作のあいだを埋めるソフトが不足気味で、勢いが加速するには至らず。そこを埋めるソフトとして期待されるのが、Wii U向けのインディータイトル。GDC 2014では、Unity Pro for Wii Uを使用して開発された複数のWii U向けインディータイトルが出展。また、2014年には『マリオカート8』や『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』などキラータイトルの登場も予定されており、市場を広げてくることが予想される。

 プレイステーション3、Xbox 360については、対応ソフトに新世代機との世代を超えたマルチタイトルが多く、ソフトの供給が途絶えないことから長寿化の見通し。

 ニンテンドー3DSは、『ポケットモンスター X・Y』の世界的な大ヒットで普及を拡大させている。国内では『モンスターハンター4G』も秋に登場。特筆すべきは『パズドラZ』。同ソフトの登場で本家であるスマホ版の『パズル&ドラゴンズ』(『パズドラ』)にどのような影響が出るのか注目されたが、『パズドラZ』以降も『パズドラ』のダウンロード数に影響は見られず、むしろ伸びている。しかも、『パズドラZ』のユーザーは『パズドラ』をプレイしたことがない若年層も多いというデータも示された。つまり、『パズドラZ』で新たなユーザーの獲得に成功しているのだ。「『パズドラ』はスマホ版で認知度を上げて、コンシューマーで拡大させる、といった展開も可能だということを証明してくれました。これはゲームメーカーにとって勇気づけられる結果だと思います」(浜村代表)

 PS Vitaは国内では好調に推移し、普及はPS3並のペースに。PS4発売以降、販売台数が伸びているというデータも示され、リモートプレイが購入動機のひとつになっているのかもしれない。

■国内外のゲーム市場規模の概況

 国内の家庭用ゲーム市場規模はニンテンドー3DSとPS Vitaが伸長し、PS4も登場したが、それ以外の落ち幅を埋め切れず、2013年のハード・ソフト・オンラインを合わせた市場規模は約4530億円となり、前年比93.0%と縮小。まさに2013年度は世代交代の間(はざま)だったといえる。

 これは海外市場にも言えるが、PS3とXbox 360の落ち幅をPS4とXbox Oneが補う勢いで普及し、世代交代が急速に進んでいる。それだけに、2014年はPS4とXbox Oneとともに、その対応タイトルの飛躍が期待される。

 また、注目すべき市場として浜村代表がピックアップしたのは、中国市場とラテンアメリカ市場。

 2000年に家庭用ゲーム機の輸入が禁止された中国だが、2014年に上海の自由貿易試験区域で生産されたものは中国国内販売が可能となる。海賊版の問題など課題も大きいが、オンラインゲームが人気を獲得している中国は、市場規模の大きさから見ても魅力的な市場。そこでマイクロソフト、ソニー・コンピュータエンターテインメント、任天堂などが上海に進出する動きを見せている。ラテンアメリカもオンラインゲームを中心に成長を続け、同地域に進出するゲーム関連企業も出てきている。

■ネットワークプラットフォームの概況――あらゆるところにゲームプラットフォームがある時代へ

 Apple、Googleはますます勢いが増し、キャリアではNTTドコモがdゲーム、KDDIがauスマートパスなど独自のサービスを展開。『パズル&ドラゴンズ』のガンホー・オンライン・エンターテイメントのようなコンテンツメーカーも存在感を増している。デジタル配信プラットフォーム“Steam”の専用機“Steam Machine”が今年後半に登場予定。Amazonは2014年4月2日、海外で映画や音楽、さらにはゲームも楽しめるセットトップボックス“Fire TV”を発売。GoogleもGreen Throttle Gamesを買収し、ゲーム産業に参入してくると予想されている。インターネットの普及に合わせて、まさに、あらゆるとろこにゲームプラットフォームがある、といった状況が加速している。

▲2012年から2013年は、かつてほどの勢いはなくなったSNSゲームプラットフォームの市場規模。その中でLINEが伸長。2014年4月1日時点で登録ユーザー数は世界で4億人を突破している。

▲フィンランドのモバイルゲーム企業がなぜヒット作を連発する現状も紹介。「フィンランドには世界最大規模の携帯電話端末シェアを誇るNOKIAがあり、優秀な開発者が育つ環境があることが、もっとも大きな要因ではないでしょうか」(浜村打表)

■勝つためのポイントは動画共有による口コミ

 PS4やXbox Oneといった新世代機の登場と、多数のネットワークプラットフォームの台頭。それら、インターネットネット接続が当たり前のプラットフォームの時代では、ダウンロード販売はもちろん、F2P、シーズンパスなどビジネスモデルが変わり、収益も多重構造化。ヒットコンテンツはあらゆるプラットフォームに提供し、収益を上げることが当たり前となった。

 また、『パズル&ドラゴンズ』のように、スマホアプリから始まったゲームが家庭用ゲームやアーケードまで拡大し成功を収めており、「コンテンツ提供者は、知恵を絞れば、自分のIPをどのようにでもビジネスに変えられる時代になったんです」(浜村代表)

 そんな時代に、「ヒットの法則も変化した」と浜村代表は語る。例として挙げられたのはベトナムに住む個人開発者が制作し、世界で大ヒットした『Flappy Bird』。これまでは、このようなインディータイトルが世界規模で大ヒットを飛ばすことは考えられなかった。何がヒットの法則を変えたのか。

 「それは口コミです」(浜村代表)

 いまやLINEやTwitterなどSNSの普及により、個人のゲームの感想などが瞬時に拡散され、話題となると一気に広まる傾向がある。『Flappy Bird』もまさにSNSの効果により、世界に拡散されたタイトルだ。SNSの口コミがヒットの法則を変えたというわけだ。

 かつては、口コミの広がりは“待つ”ことしかできなかった。だが、ゲームプラットフォームやゲームソフト自体にも共有できる仕組みが取り入れられる時代になった。「つまり、ヒットの近道を仕込める時代になったのです」(浜村代表)。しかも共有による広がりはプロモーション費用などは必要としない。家庭用AAAタイトルであってもインディー開発のゲームアプリでも条件はおなじ。いかにシェアで認知度を上げられるかがポイントとなる。

▲ソニーコンピュータエンタテインメントでは、SHAREを有効活用できるようなアプリを提供し、SHAREの魅力を訴求。

 最後に浜村代表は、「時代の勝者とは、動画共有、つながる楽しさ、実況動画などコンテンツの楽しさをシェアできる仕組みを持ったもの。ヒットのキーワードは“共有=シェアバトル”です。シェアできる仕組みを持ったPS4とXbox Oneが家庭用ゲーム市場を拡大させ、オンラインプラットフォームのコンテンツもシェアで広がり、ゲーム市場全体で見ると、今後も右肩上がりになっていくのではないでしょうか」と述べ、講演をまとめた。