テーマは“新世代ゲーム機は成功したのか? ~鍵を握るのはシェアバトル~”

KADOKAWA ファミ通グループ代表の浜村弘一による講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年春季>”が開催_02

 2014年4月18日、KADOKAWA 浜村弘一ファミ通グループ代表(以下、浜村代表)が、業界アナリスト及びマスコミ関係者に向けて行う恒例の講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年春季>”を開催した。本講演は、変化の激しいゲーム業界を半期に一度のペースで切り取り、ファミ通調べのマーケティングデータをもとに、現状分析や今後の展望などを解説する講演。

 今回のテーマは、“新世代ゲーム機は成功したのか? ~鍵を握るのはシェアバトル~”。ついに発売された新世代機プレイステーション4とXbox Oneの販売状況、加えてさまざまなプラットフォームが乱立する激動のゲーム業界で、何が勝ち残るポイントになるのかについて、浜村代表の見解が示された。

 講演ではいつも通り、各ハードの販売状況や今後の展望が詳細なファミ通調べのデータとともに解説。Xbox Oneについては歴代Xboxハード最速のペースで普及が進み、本日4月18日には世界累計出荷台数が500万台を突破したニュースが飛び込んできた。一方のプレイステーション4については、そのXbox Oneを上回るペースで販売台数を伸ばし、2014年4月6日時点で全世界の実売が累計で700万台を突破したことなどが紹介され、両新世代機が世界で好調な滑り出しとなっていることを説明。2014年は本格的に普及していくだろうとの見かたを示した。

あらゆるところにゲームプラットフォームがある時代

 一方、プレイステーション3、Xbox 360は、対応ソフトに新世代機用との世代を超えたマルチタイトルが多く、ソフトの供給が途絶えないことから長寿化の見通し。ニンテンドー3DSは、『ポケットモンスター X・Y』の世界的な大ヒットで普及を拡大させている。復調が期待されるWii Uも2014年には『マリオカート8』や『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』などキラータイトルを揃えて市場を広げてくることが予想される。

 そのほかの動きも活発だ。スマホ普及の拡大でApple、Googleはますます勢いが増し、キャリアではNTTドコモがdゲーム、KDDIがauスマートパスなど独自のサービスを展開。『パズル&ドラゴンズ』のガンホー・オンライン・エンターテイメントのようなコンテンツメーカーも存在感を増し、Facebookはいま話題のバーチャルリアリティシステム“Oculus Rift (オキュラスリフト)”で知られるOculus VR社を買収し、ゲームプラットフォームでの再起を狙う動きもある。デジタル配信プラットフォーム“Steam”の専用機“Steam Machine”の登場は今年後半と言われている。さらにAmazonは2014年4月2日、海外で映画や音楽、さらにはゲームも楽しめるセットトップボックス“Fire TV”を発売。GoogleもGreen Throttle Gamesを買収し、ゲーム産業に参入してくると予想されている。

 インターネットの普及に合わせて、まさに、あらゆるとろこにゲームプラットフォームがある、あらゆるデバイスでゲームが楽しめる時代になったが、それがいま、さらに加速したと言える状況になっている。

口コミがゲーム市場を大きく変えている

 ソフトメーカーは、かつては勝ち馬ハードに乗ることを考えていた。だが、いまやヒットコンテンツはあらゆるプラットフォームに提供して当たり前となっている。また、『パズル&ドラゴンズ』のように、スマホアプリから始まったゲームが家庭用ゲームやアーケードまで拡大し成功を収めており、コンテンツホルダーがすべてのプラットフォームにビジネス展開を狙えることを証明した。「コンテンツ提供者は、知恵を絞れば、自分のIPをどのようにでもビジネスに変える時代になったんです」(浜村)

 そしてネット接続が当たり前の時代では、ダウンロード販売はもちろん、F2P、シーズンパスなどビジネスモデルが変わり、収益も多重構造化へと変化してきた。

 しかし、浜村代表は、ネットが変えたのはそれだけではない、と語る。

 「大きく変えたのはヒットの法則」(浜村)。最近ではベトナムに住む個人開発者が制作した『Flappy Bird』が世界で大ヒットし、話題となった。これまでは、このようなインディータイトルが世界的大ヒットを飛ばすことは考えられなかった。何がヒットの法則を変えたのか。

 「それは口コミです」(浜村)

 いまやLINEやTwitterなどSNSの普及により、個人のゲームの感想などが瞬時に拡散される。そのSNSの口コミがヒットの法則を変えたというわけだ。

 加えて、ゲーム実況動画の存在も大きい。たとえば『マインクラフト』は動画共有サイトで多くの動画が公開されたことが、人気拡大の大きな要因と言われている。PS4ではご存知の通り“SHARE”機能が搭載。Xbox Oneも動画共有サイトに動画をアップできる機能があり、Wii Uとニンテンドー3DSでもゲーム画面をSNSに投稿できる。プラットフォーマーも共有による口コミ効果に大いに注目しているわけだ。

 かつては、口コミの広がりは“待つ”ことしかできなかった。だが、ゲームプラットフォームやゲームソフト自体にも共有できる仕組みが取り入れられる時代になった。「つまり、ヒットの近道を仕込める時代になったのです」(浜村)

 最後に浜村代表は、「時代の勝者とは、動画共有、つながる楽しさ、実況動画などコンテンツの楽しさをシェアできる仕組みを持ったもの。ヒットのキーワードは“共有=シェアバトル”なのではないでしょうか」と講演をまとめた。

 本講演では、ファミ通調べによる詳細なデータによる国内のゲーム市場の動向はもちろん、欧米や発展が期待できる中国、ラテンアメリカのゲーム市場の状況、さらにはフィンランドのモバイル企業がヒット作を連発するのはなぜか、など多岐にわたって浜村代表の考察が示された。後日、講演の詳細リポートを公開する。

KADOKAWA ファミ通グループ代表の浜村弘一による講演“ゲーム産業の現状と展望<2014年春季>”が開催_01