GDC開催4日目にはユージン・ジャーヴィス氏による講演“Classic Game Postmortem Robotron: 2084”が実施された。本講演は、1982年に発売されたアーケード用シューティング『ロボトロン2084』の開発顛末を語る……という内容。

●ユージン・ジャーヴィス氏大いに語る

 2014年3月17日~21日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のセッション、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2014が開催。開催4日目にはユージン・ジャーヴィス氏による講演“Classic Game Postmortem Robotron: 2084”が実施された。本講演は、1982年に発売されたアーケード用シューティング『ロボトロン2084』の開発顛末を語る……という内容。人類に反旗を翻したロボットを相手に、遺伝子操作実験から超能力戦士となった主人公が“人類最後の希望”として戦うというストーリーの『ロボトロン2084』。同作は、海外での評価が極めて高く、ユージン・ジャーヴィス氏は本作を開発した功績が評価されて、2005年にGDCアワードで“生涯功労賞”を受賞しているほどだ。

▲GDCアワードで“生涯功労賞”を受賞している“レジェンド”ユージン・ジャーヴィス氏。自身を象徴する『ロボトロン2084』の筐体とともに登場。

 38年間ゲーム業界にいるというジャーヴィス氏は、「ゲーム開発は、スーツを着ている人のせいでうまくいかないことも多いけど、『ロボトロン2084』は魔法のようなプロジェクトだった。6ヶ月で作ったんだけど、何もかもうまくいったよ」と当時を振り返る。それまで『Defender』と『Stargete』という横スクロールシューティングを1.5年かけて作っていたというジャーヴィス氏は、「それはそれで楽しかったけど、ぜんぜん違うことがしたくなって、『ロボトロン2084』のプロジェクトを立ち上げたという。「なにしろ、ロボットはクールだしね!」。

 1982年に稼働した本作だが、とにかく開発環境がいまとは大違い。「高級言語はなく、ミドルウェアもAPIもなかった。その手のプログラマーにとっては楽園だった!」とジャーヴィス氏。当然開発環境に限らず、いろいろなものが違う。ジャーヴィス氏は、“ゲームデザインの哲学”として、80年代といまを比較してみせる。

▲こちらが当時の開発環境。とにかく作り手のフリーハンドに任されていたようだ。

■ゲーム性
<最近のゲーム>
・現在は、すばらしいクリエイティブが発揮できる。
・ほとんど映画に近いクオリティー

<かつてのアーケードゲーム>
・とにかくゲームプレイ
・いま人は長時間の“ヒーロープレイ”ができる

■作りかた
<ハリウッド式トップダウン>
・数カ月かけて計画を進める
・実装を何年もかける
・デキが悪かったら、「残念でした(企画書ではおもしろかったんだけどね)」

<ボトムアップ>
・ゲームジャム的なインタラクティブなアプローチだった

 とにかく、当時の開発はプログラマーが中心。リソースが限られていたので、勢いプログラマーアートになったというのだ。キャラクターの挙動もアルゴリズムとスクリプト中心だったという。アルゴリズムにすることで、豊かなゲームプレイが可能だったというのだ。まさに、プログラマー中心だからこそ、なせる技と言えるだろう。

▲技術の詳細も説明された。
▲当時の開発環境を振り返りつつ……。

 というわけで、プロトタイプの制作。プロトタイプは、以下の感じで出来上がっていったという。

▲当時の制作チーム。若かりし日のジャーヴィス氏。

■第一プロトタイプ

・接触と死ぬ。それをくり返すだけのシンプルなものを作成
・続いて一番個性のない敵キャラ“Grunts”を作成
  ※最低限の知能として、“キャラを探す”、“徐々にスピードアップする”を与える
・そして思い至ったのは、受け身なのにアグレッシブだ→攻撃できない!

■第二プロトタイプ
・操作をダブルスティック
 →画面上に4発しか打てないことで、正確な射撃がプラスに機能するようにした
・もっと敵を増やそうということで、“Grunts”を128体出した

 第二プロトタイプの制作まで3日間(!)。できあがったものは超おもしろくなったけれど、もっと多様性を持たせたいと思ったという(つまり、深みが足りなかった)。そこで……「性格や行動パターンなどでキャラクターそれぞれに個性をもたせよう」ということになったのだという。

・守るべき人間を足した
 ・誰だって友だちが必要
 ・殺すだけなんてつまらない
 ・助けるという新しいゲームプレイの目的ができた(ひとり4000点のボーナスになる)
 ・リスクと報酬のバランスがとれた

・新敵キャラ:Hulk
 ・無敵
 ・移動パターンはランダム
 ・打つと、少し足止めができる
 ・Hulkを足すことで、「追い詰められた」と思っても受け流せる

・新敵キャラ:Enforcer
 ・アニメーションを付けるのが面倒くさくなったから浮かせた
 ・このころになると色鉛筆で手書きしてアニメーションつけるのが嫌になってきたので、Enforcerはアニメーションしないようにした
 ・出現タイミングを決めることで、バランスを調整した
 ・巣を壊さないといけないので、ゲームプレイに優先目標が割り込んでくる
 ・着弾までの時間が、遠くからでも近くからでも同じ=遠くから撃つと速い。これでスリルを足すことができた

・新敵キャラ:Brains
 ・これまでの敵はすごくバカだったので、賢い(ように見える)キャラにした
 ・だから脳みそ(Brains)。まあ、実際のところ弱点を晒しているだけだけど……
 ・巡航ミサイルを撃ってくる
 ・家族を狙ってくる
 ・それをうまく利用すると高得点が狙える、でも一発でもしくじると終わるという楽しいゲームプレイができた

 足りないところを足していくという開発手法は、まさにゲームジャム的で、いかにおもしろさが付与されていったかのプロセスがわかって興味深い。それにしても、「アニメーションをつけるのが面倒くさかった」といった、率直な話ぶりは、ジャーヴィス氏の人柄を彷彿とさせる。名作の誕生秘話がこれでいいのか?(笑)という感じだが、これも時代だったということだろうか。といった点も踏まえて、当時の開発状況がうかがえる興味深い『ロボトロン2084』のポストモーテムだった。

▲講演後、聴講者からの質問に気さくに答えるジャーヴィス氏。

(取材・文/編集部F)