2013年11月2日、サンフランシスコのナイトクラブThe Public Works SFで、Double Fine主催のイベント“Day of the Devs”が行われた。
Double Fineは、地元サンフランシスコの独立系のゲームスタジオ。近年ではクラウドファンディングサイトのKickStarterでアドベンチャーゲームの制作を発表し、300万ドル以上を集めて業界の話題となったことや、日本でもセガからPS3版とWii U版が配信されたアドベンチャーゲーム『運命の洞窟 THE CAVE』をリリースしたことなどが記憶に新しい。
会場には、Double Fineと縁のあるインディーデベロッパーによる新作の試遊台が多数設置され、開発者本人によるプレゼンテーションなども実施。入場料無料ということもあって、多くのゲーマーが駆けつけた。
さて、そのビデオゲームでのKickStarterブームの火付け役となったアドベンチャーゲーム、正式タイトル『Broken Age』は、イベントの冒頭でDouble Fineを率いるティム・シェーファー氏によってプレゼンが行われたほか、試遊台で遊ぶこともできた。
『Broken Age』は、宇宙船に住む孤独な男の子と、村の掟で怪物に捧げられようとしている女の子のふたりが主人公の、所謂ポイント・アンド・クリック型のアドベンチャーゲーム(気になる場所や行きたい所をクリックして進める)。
アーティスティックなタッチで描かれ、細かく動き続ける世界やキャラクターは美しく、フルボイスのセリフと合わさることで、プレイヤーを飽きさせない。ちなみにボイスは、ヘビメタゲーム『ブルータルレジェンド』で主人公を演じたハリウッド俳優ジャック・ブラックほか、新旧Double Fineの作品に出た声優陣が参加しており、ファンのおかげで成立した本作だけに、ファンの期待に応えるようなキャスティングとなっている。
……まぁひとつ残念なのは、ユーモアなセリフや設定のおかしみが、英語だとほとんどわからなかったことだろうか。『The Cave』のようにどこかローカライズして頂けないでしょうか……。なお対応プラットフォームは、PC/Mac/Linux/iOS/Android/Ouyaで、部分的に遊べる早期アクセスを来年1月に開始する模様。フルバージョンのリリースは来夏を予定している。
これまでエレクトロニック・アーツ、THQ、マイクロソフト、ワーナー、セガなど、大手パブリッシャーと契約してタイトルをリリースしてきたDouble Fineだが、近年はKickStarterの成功もあってか、ファンと直接結びついたセルフパブリッシングの方向に進んでおり、『Broken Age』以外にも、タクティカルRPG『Massive Chalice』でKickStarterを使い、こちらも120万ドル以上の出資獲得に成功している。
『Broken Age』とは別に出展されていたDouble Fineの宇宙基地運営シミュレーションゲーム『Spacebase DF-9』もユニークで、これは元々、ファンに候補アイデアに投票してもらって、トップ5をプロトタイプとして作ってみる企画で勝ち抜いたものがベース(その他のタイトルを同梱した“Amnesia Fortnight 2012”として販売されている)。
あらゆる要素を強化した新バージョンは、Steamのアーリーアクセス(早期購入)を使って、α版で追加資金を得るアルファファンディングを採用して販売されるとのこと。
スタジオがファンを大事にしていることはイベントの雰囲気からもよく伝わってきたのだが、そう簡単に真似ができるスタイルではないとはいえ、北米市場の大きさをベースに、これほど大きなスタジオが、ファンとともに作りたいゲームを作る方向へ邁進しているというのは、感慨深いものがあった(もちろん、パブリッシャーと契約して水面下で進めているプロジェクトもあるのだろうが)。
それでは、それ以外の出展タイトルから気になったものを紹介していこう。
『Bastion』のSupergiant Gamesによる新作アクションRPG『Transistor』
『Transistor』(開発:Supergiant Games、プラットフォーム:PS4/PC、リリース:2014年初頭)
『Transistor』は、アクションRPG『Bastion』で知られるSupergiant Gamesの第2作。独特な角度がついた見下ろし型の視点や、省略を多用して少ない要素で背景を構成し、アーティスティックに世界を演出する点などは、スタジオの処女作ながら高い評価を受けた『Bastion』同様だ。ファンタジーテイストだった『Bastion』から打って変わって本作はSFテイストとなっているが、幾何学的なステージ構成とアナログ的な温かみを感じる塗りの融合が美しく印象的。
ゲームプレイの点で捻りがきいているのが、リアルタイムのアクションに、時間を一時停止させて戦闘プランを練る戦術性を組み合わせているところ。
E3デモの映像を見るとわかりやすいのだが、一時停止をすると、“どこに移動し、何のスキルを出すか”というプランを組み立てられ、発動させると超人的なスピードで正確にプランを実行する。一発のスキルで複数の敵を巻き込むようにセットしたり、強力な敵にスキルを何発も一気に叩き込んだりしてピンチを切り抜けると、実に気持ちイイ。
もちろんプランは乱発できないので、スキルの出し終わりに遮蔽物に隠れるようにセットしたり、プランが再使用可能になるまで逃げ回りつつ戦ったり、リアルタイム戦闘とプランの両者を活かすバランスが重要。デモのプレイ後、この先どんなステージやスキルが用意されているのか、早くも続きが遊びたくなった。
持ち時間は60秒、ヒーローを出しまくって切り抜けろ! 『Super Time Force』
『Super Time Force』(開発:Capybara Games、プラットフォーム:Xbox 360、リリース:近日)
Superbrothersとの共同開発作品『スキタイのムスメ』などで知られるCapy(Capybara Games)の新作は、ピクセルアートの2Dプラットフォームシューター。
……と、これだけ聞くとフツーな感じに思うかもしれないが、本作の特徴はその名の通り、時間を操って戦うこと(トレイラーでは2D+時間の3Dと称している)。
プレイヤーは制限時間内(デモでは60秒)にマップを進んで目標クリアーしなければいけないのだが、敵の攻撃は分厚く、堅い敵もいて、しかもプレイヤーキャラクターは1ヒットでほぼ即死。途中に時間を増やすアイテムも落ちているとはいえ、とてもそんな時間じゃ走破は困難だ。
そこでタイムフォースは時間を使う。プレイヤーキャラクターがやられたり、どうにもドン詰まりになったら時間を巻き戻し、タイムフォースの新たなメンバーを呼び出してゲームを再開させると、入力してあるところまでさっきの動きをトレースする前のキャラクターと、新たに自分が操作する新キャラクターが同時に存在できるのだ。
巻き戻して分岐させられる回数は決まっているのだが(デモでは30回)、ミスった所のリカバリーだけでなく、あるキャラクターに下に行かせるのと同時に新たなキャラクターを上に行かせたり、同じ場所で何回も巻き戻して何人も呼び出し、ボス級の敵に同時一斉攻撃を仕掛けて、単独ではとても時間内に倒せない防御をブチ破ったりといったことも可能。
プレイヤーは単独でありながら、何人ものメンバーを“同時に”操る四次元殺法で不可能を可能にする達成感がたまらなそうだ。
カクテルパーティーに溶け込むスパイとスナイパーの騙し合い『Spy Party』
『Spy Party』(開発:Chris Hecker、プラットフォーム:PCほか、リリース:早期アクセスβテスト中)
Chris Hecker氏の『Spy Party』のブースは結構人が集まっていたが、何の説明も受けずに動画だけ見ると、「なんでこれが?」と思うかもしれない。狭いエリアをキャラクターが動きまわっているだけで、UIやアート周りは超シンプルで、90年代のPCゲームといった感じ(先月、もうちょっと今風な感じのアートスタイルが発表されたけど、まだ一部ステージのみの適用)。
『Spy Party』は、カクテルパーティーを舞台に、目標を達成しようとするスパイと、どれがスパイなのかを見抜いて射殺するスナイパー(標的以外を射殺したら負け)に分かれてプレイする1対1の対戦ゲームである。
スパイ役はスナイパーに自分をNPCと思わせるためにムダな動きを織り交ぜ撹乱しつつ目標達成を狙い、スナイパーは窓際にボーっと立ってみたり、会話の輪に加わったり離れたりするパーティーの出席者から、その中に確実にいるスパイを見つけ出す。目標の最短距離を進むゲームとは異なる、静かな心理戦がユニークだ。
現在はPC版のβテストが行われており、公式サイトで15ドル以上を支払うことで製品版の権利とともにテストに参加できる。正式リリースに向けて製品のブラッシュアップを行っている段階だが、将来的にはマルチプラットフォーム展開も予定しているとのこと。
画面分割の4人プレイにも対応! メタスラ風アクション『Mercenary Kings』
『Mercenary Kings』(開発:Tribute Games、プラットフォーム:PS4/PC、リリース:早期購入可能)
カナダのTribute Gamesの『Mercenary Kings』は、一見すればわかる通り、『メタルスラッグ』からの多大な影響を感じるアクションシューティング。プレイステーション4でもリリース予定だが、PC版で一足先にSteamでのアーリーアクセス(早期購入)がスタートしており、現在は15%オフの15ドルで購入可能(ちなみに、本作もKickStarterでの出資募集に成功したタイトル)。
もちろんただのメタスラフォロワーというだけに終わらず、システムとしてアクティブリロード(『ギアーズ オブ ウォー』とかにある、リロード時にタイミング良くボタンを押すアレ)が組み込まれていたり、弾丸で敵の首が吹き飛んで盛大に血しぶきが上がるバイオレンス描写があったり、オフラインでの画面分割4人プレイなどにも対応。海外メディアの「メタルスラッグとボーダーランズのブレンド」という評も割と納得。
『Rock Band』のHarmonixによる新作『Fantasia: Music Evolved』なども
その他にも、ゲスト的に『Rock Band』を開発したHarmonixによる新作Kinectゲーム『Fantasia: Music Evolved』のデモが披露されたり、SCEサンタモニカスタジオがパブリッシングを担当し、プレイステーションプラットフォームでマルチ展開される『Hohokum』がデモ出展されていたりと、幅広いゲームをチェックできる刺激的なイベントだった。(取材・文・編集:ミル☆吉村)