急がずゆっくり進めるのが『パペッティア』の楽しみかた
2013年9月5日にソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアより発売されたアクションゲーム『パペッティア』。この極上の人形劇アクションゲームを作り上げた、SCEジャパンスタジオのクリエイターに直撃インタビュー! 『パペッティア』を開発するにあたって、こだわったポイントや見どころなどについて語っていただいた。開発にまつわる、意外なエピソードも!?(※本記事は週刊ファミ通8月29日発売号に掲載されたものです)
コアゲーマーも楽しめる『パペッティア』の魅力
――改めまして、開発のきっかけについて、聞かせてください。
佐藤一信氏(以下、佐藤) 『パペッティア』は、子どもと遊べるゲームを作りたい、リビングで遊んでもらいたいという想いからスタートしました。そこはずっと変わらないですね。
――おふたりとも『SIREN(サイレン)』シリーズを手掛けてきたのに、今回『パペッティア』というとてもかわいいゲームを作り上げたので、ちょっと不思議な感じがしています(笑)。
ギャビン・ムーア氏(以下、ギャビン) 私はSCEヨ-ロッパで、『ゲッタウェイ(The Getaway)』というリアルでバイオレントなゲームを作りました。その後2003年に日本に来て、佐藤一信さんたちと『SIREN(サイレン)』シリーズというリアルホラーゲームを作りました。それが終わった後に、バイオレントやホラーのつぎは、もっとファンンタスティックなゲームを作りたいと思ったのです。
――なるほど(笑)。
佐藤 とはいえ、これは最近気がついたんですけれども、ヘッドが100種類あって、それにまつわるエピソード……アーカイブ的な作り込みという意味では、『SIREN(サイレン)』シリーズと共通する部分もあるんですね。あとはセリフの言い回しとか。CEROは全年齢対象にはしましたが、トンガりかたなどには、やっぱり共通するものがあったと思います。
――まったく新しい作品が完成したという手応えのほうは、いかがでしょうか?
ギャビン 自信があります。『パペッティア』は、本当におもしろい。一見、子ども向けのゲームかと思うかもしれません。でも、私たちはコアゲーマ-なので、ゲーマーが遊んでも楽しめるものになっています。物語には、ダークなところやモンティ・パイソン風でユニークな要素もあり、大人でも楽しめるはずです。
――懇切丁寧な作りでライトユーザーが楽しめるゲームなのですけが、実際に遊んでみると、意外にもコアゲーマーこそが喜ぶような、凝った作りになっていますよね。
佐藤 そうですね。特別にコアゲーマーに向けてネタを仕込もうというつもりはなかったんですけれども、単純に僕らがそういうのが好きなので、結果としてコアゲーマーにも満足していただけるゲームになったと思います。ギャビン コアゲーマーの好きなものが、いっぱい入っています。秘密の場所とか隠しボーナスステージとか。ヘッド集めや、トロフィーをコンプリートするのは難しいですよ。
チームが一丸となってこだわりのゲームを作成
――こだわりや作り込みがすごい作品ですが、その具合が尋常じゃないですよね?
佐藤 そこはよく言っていただけるんですけれど、本人たちにはその自覚がないんですよ。
ギャビン 私はアニメーター出身なので、アニメーションやグラフィックのチェックがきびしい。でも、『パペッティア』チームは、ハイクオリティーアニメーションや背景を仕上げてくれました。シェーダーやライティングシステムもすばらしい。ゲームはひとりでは作れません。『パペッティア』は私だけのゲームではなく、チーム全員のゲームなんです。「いいアイデアがあればゲームに入れてください」、「好きに作ってください」と言いました。それで、私たちがテストプレイしたときに、おもしろくて笑えば、もうキープ。OK!(笑)
――なるほど(笑)。多くのスタッフのこだわりがたくさん詰まった結果、ここまでクオリティーの高い作品ができ上がったんですね。
佐藤 そうですね。2Pプレイの仕様にもこだわりましたし、難易度の調整にも時間をかけました。手に取ってもらった人には、絶対にクリアーしていただきたいですね。ほかのプラットフォームのアクションゲームと比べ、難しくてあきらめてしまうことがないようにバランスを調整したつもりです。
大根が登場することになったそのいきさつとは……!?
――最初は全編和風な感じだったのですか?
ギャビン 私は日本文化が好きだから、日本のいろいろなイメージをゲームの中に入れたかった。だから、最初のコンセプトは和風。それでPVを作ったのですが、ヨーロッパやアメリカで見せたら、「うーん、これは世界では売れないよ……」と言われてしまって(苦笑)。
佐藤 ただ、つぎつぎと場面が変わるアクションに関しては、評価がよかったですね。
ギャビン 開発中のおもしろい話としては、2章で夫婦杉という巨木を登るのですが、しめ縄から出ている紙……何て言うのかな?
――ねじってある紙、紙垂(しで)ですね。
ギャビン そうそう。最初はそれを切って進むように考えていたのですが、それは絶対にやってはいけないことだと後でわかりました。
――文化的な理由でNG事項なんですね。
ギャビン そう。最後にボスバトルに入るときも、太いしめ縄を切って上に行く予定でしたが、それもNG。それで、しめ縄の代わりをどうしようかと考えて、大根になりました。
――大根ですか!?
ギャビン なぜなら、大根には日本のイメージがあると思ったからです。日本の野菜です。
佐藤 わからないよ、それは(笑)。
ギャビン そう? よく神社に行くと、誰かが大根をプレゼントしていますよ。神社へのプレゼントは、日本語で何て言うの?
佐藤 お供え物ですね。
ギャビン そう、お供え物。大根がよくお供えしてありますよ。だから、大根!
佐藤 (笑)。ギャビンのそういうちょっと変なところが、ゲームになったときには、むしろおもしろいんです。大歓迎なんですよ。
――では最後に、読者にメッセージをお願いいします。
ギャビン 日本でプレコミュイベント(注1)を行ったときに、皆さんはいろいろなギミックを探しながら、ゆっくりとゲームを進めていました。それは、『パペッティア』の正しい遊びかただと思います。あと、少し進んだら立ち止まってボイスを聞いてください。すごくおもしろいセリフがいっぱいあります。先を急がず、スローダウンして楽しんでください。
佐藤 このインタビューが載るタイミングだと、体験版(注2)がリリースされていて、“エアカット”というチョキチョキを体験していただけると思います。でも、チョキチョキだけしていれば先へ進めるゲームなのかというと、そうではありません。製品版では、カリバス自身がパワーアップして、長く、強く切れる“ブーストカット”も使えます。細かいところはエアカットでチョキチョキして、ここぞという場面ではブーストカットでビシュビシュビシュッと爽快に進めます。使い分けができますので、楽しみにしていてください。これは子ども向けのゲームだとは思わずに、とにかく体験版を触っていただきたいです。