フォース・エシュロンの要、グリムを演じる難しさとは

 ユービーアイソフトから2013年9月5日に発売されたWii U/プレイステーション3/Xbox 360用ソフト『スプリンターセル ブラックリスト』。ファミ通ドットコムでは、本作に出演している豪華キャストへのインタビューを、3回にわたってお届けする。今回は、主人公サムをサポートする頼れる女性諜報員、グリムことアンナ・グリムスドッティアを演じている田中敦子さんへのインタビューをお届け。

※キャストインタビューその1(玄田哲章さん)は→こちら

『スプリンターセル ブラックリスト』キャストインタビューその2 アンナ・グリムスドッティア役 田中敦子_02
■田中敦子さん プロフィール
11月14日生まれ、群馬県出身。代表作は『攻殻機動隊』草薙素子役など。洋画では、ニコール・キッドマンやジュリア・ロバーツ、サンドラ・ブロックの吹き替えを行っている。

――これまでのシリーズ作に引き続き、グリムことアンナ・グリムスドッティアを演じられていますが、田中さんから見たグリムとは、どのようなキャラクターなのでしょうか。
田中 いつも冷静沈着な指示が出せる人です。精神的に強い、頼りがいのある女性ですね。

――『スプリンターセル ブラックリスト』でも、グリムは始終、冷静でしたか?
田中 はい、冷静で、的確な指示を出していました。セリフの中には、“!”と書かれているものもあり、ついつい興奮した調子で演じてしまいそうになるのですが、そこは気をつけました。指示をする立場であるグリムが興奮してしまうと、現場に出ている人が動揺してしまいますから、そうならないように演じました。

――つねに冷静でいるグリムを演じるのは、難しかったですか?
田中 はい。なぜなら、彼女はみずから現場に行くことはなく、つねに基地にいる人だからです。現地の様子はわかっているけれど、いっしょに行っているわけではない。冷静に、全体を俯瞰で見ていなければなりません。巻き込まれているけれど、巻き込まれていない。そういう状態を演じる難しさがありました。

――では、冷静なグリムにとっての、『スプリンターセル ブラックリスト』の見せ場はどのようなシーンでしょうか?
田中 グリムたちが乗っている飛行機が、攻撃を受けるシーンがあるのですが、そこがグリムにとっていちばんの危機的状況であり、見せ場ですね。その状況で彼女がどう立ち向かうのかを、見ていただければと思います。

――そんなピンチな状況でも、グリムは冷静でいられるのか、気になります。
田中 詳細はゲームをプレイして確認していただければと思いますが、やはり、冷静です。そんなグリムの冷静さが、仲間たちを支えていると思います。グリムには、これからも戦いには出ず、みんなの扇の要のような存在でいてほしいです。

――ちなみに、田中さんはピンチに陥ったときは、どうしますか?
田中 グリムと違って、とっちらかってしまいますね(笑)。それでも、最近は「冷静になれ!」と、自分を落ち着かせることから始めようと思っています。

――声優の仕事をする中でのピンチとは、たとえば……?
田中 よく“ハマる”と言いますけれど、言いにくいセリフを、何回言ってもうまく言えないときですね。今回の収録でも、山ほどピンチがありました(笑)。

――グリムは状況を把握して説明しなければならない役目ですから、難解な用語が多そうですね。
田中 指示をする立場であるためか、“~させる”、“~られる”という言葉が続いて、言いづらくなるときがありました。グリムたちは任務で世界各国を回るので、耳慣れない土地の人名や地名が出てくることも多かったですね。それから、ゲームの収録ですと、共演者と会話をせず、自分のセリフだけを言っていくので、感情を動かしづらいときもありました。

――ときには玄田さんを始めとする、ほかの皆さんのセリフを想像しながら、演じる必要がありますよね。
田中 玄田さんとは、私が演技の仕事を始めたころから、共演させていただくことが多かったんです。それも、恋愛の物語というより、相棒となって戦う物語が多かったので、玄田さんがお相手だと思うと、精神的に頼っちゃいます。

――『スプリンターセル ブラックリスト』の物語をひと言で表現するとしたら、どのような言葉になりますか?
田中 本や映画のタイトルのような言葉ですが、“いま、ここにある危機”です。現実とゲームの世界が紙一重のように感じました。

――それだけ、リアリティーのある物語なのですね。
田中 いまの世の中で起こりうること、すでに起こっているとも言えることが、つぎつぎと発生します。怖いことだな、と思いますね。それから、ささやかなセリフですが、印象に残っているのは、「3年前まで銀行があり、にぎわっていた場所が、いまはゴキブリとネズミしかない」というセリフ。メチャクチャになってる世の中でも、ゴキブリとネズミはしぶとく生き残っているんだ……ということに、リアリティーを感じてしまいました。

――最後に、ゲームファンにメッセージをお願いします。
田中 長く続いている『スプリンターセル』シリーズ、今回は前作よりもさらにパワーアップした内容をお楽しみいただけると思います。海外で作られたゲームを吹き替えで演じさせていただくというのは、私にとってすごく楽しいことです。玄田さんを始め、立木文彦さん、若本規夫さん(コステ役)、榊原良子さん(パトリシア役)など、私がデビューしたころからお仕事させていただいている、頼れるメンバーが出演されています。吹き替えられているセリフを味わいつつ、プレイしていただけるとうれしいです。

『スプリンターセル ブラックリスト』キャストインタビューその2 アンナ・グリムスドッティア役 田中敦子_01