イラスト募集もお忘れなく……
スクウェア・エニックスから2013年12月19日発売予定のプレイステーション3用ソフト『ドラッグ オン ドラグーン3』。ここでは、週刊ファミ通2013年9月5日号(8月22日発売)で掲載したキャラクターデザイン担当の藤坂公彦氏と柴貴正プロデューサーへのインタビューでスペースの都合上、入りきらなかった内容も追記してお届けしよう。
デザインしたキャラクターがあんな設定で世に出るとは!
――まずは、『DoD3』のキャラクターデザインはどんな段階を踏んで構築されたのか教えてください。
柴 『DoD』シリーズの場合、最初に大まかな設定があるにはあるんですが、それを元に、藤坂さんに自由にラフを描いていただき、そのラフからヨコオさんがキャラクター設定や、世界観、シナリオを膨らませていく、という流れです。その過程でディテイルを詰めていき、追加してほしいキャラクターが出てくれば、追加でオーダーしたりといった感じですね。
藤坂 今回の場合、決まっていたことと言えば、女の子を主人公にしよう、という程度だったと思います。
柴 主人公の女の子がいて、ドラゴンがいて……、というくらいでしたね。主人公は妹と敵対している、ということくらいは決まってたかな?
藤坂 そこでまずはゼロのラフを描いて、それに合わせて、「こんなキャラクターがいてもおもしろいかな」と思った女の子を何人か描いて。ですので、何気なく描いたキャラクターが、あとからけっこう重要なキャラクターに決まっていたりして、驚くこともありました。たとえばワンは、ひとりくらい『DoD』シリーズっぽいキャラクターがいてもいいかな、と思って描いたんですけど。
――それが、ウタウタイの頂点に立つ存在になっていたと。
藤坂 はい。
――イラスト先行だったわけですね。
藤坂 絵を見ながらのほうが「このキャラクターならお話はこういう方向だよね」とか、「こういう遊びがしたいよね」といったふうに話が広がりやすいんですよね。
――そういった流れでの制作となると、描いたキャラクターたちの性格が、あんなに特殊なものになるとは、当初はわからないですよね?
藤坂 そうです。情報が公開されたあと、初めて知ったくらいです(笑)。ただ、使徒のオクタに関しては「アレをデカくして」ということはヨコオさんからは言われてましたけど(笑)。キャラクター全般に性的な設定が強調されるとは思いませんでしたね。
柴 いつの間にかにああなってましたね。僕も意外なんですけど。
藤坂 あえて、ああいった設定やキーワードを使っているってことは、何かしら意味や勝算があるんだろうなとは思いますけど。
――実際、新キャラクターが公開される度に、性格的なことに関してもかなり注目されていますし、反響も大きいです。
藤坂 そうですか。時代は変わりましたね(笑)。
ゼロの花のモチーフ、それは……
――ゼロは、完成形に至るまで、いろいろ変遷はあったのですか?
藤坂 もっと野暮ったかったよね?
柴 うん(笑)。
藤坂 最初は主人公らしく、もっとゴテゴテしたものを身に纏ったデザインでラフは描きました。そこから僕の中では女神というイメージで、いまのものに近づけていきました。
柴 当初、花もなかったしね。
――以前のインタビューで、ヨコオさんから、花を付け足したのは藤坂さんのアイデアとうかがいました。
藤坂 はい。何かしら特徴を付けたいと思っていたんですが、花って女の子らしいじゃないですか。ただ、衣装などに花を使ってもふつうですし、ただのイメージや演出になります。いっそのこと、顔に付けちゃえばどうかな、と。片目にだけ花があると意味深っぽいですし(笑)。また、僕が知る限り、片目に花を付けているキャラクターというのは、これまでいなかったので新しいかなと。隙間産業的な発想です(笑)。ただ、描いてみると「キャッチーなキャラクターになったかな」という手応えはありました。
柴 ヨコオさんは一発で「いいね!」って言ってましたよね。プロデューサーの立場としては……。
藤坂 主人公として嫌悪感を持たれるとマズイ、というのはわかります。
柴 ただ、ヨコオさんが「シナリオに活かすから」ということでオーケーを出しました。ファンの方の反応を見る限り、結果的には、よかったと思いますね。
――ゼロの花は何かモチーフがあるのですか?
藤坂 モチーフはあるんですけれど、『NieR Replicant/Gestalt(ニーア レプリカント/ゲシュタルト)』に登場するカイネが付けている花([1])に似ていませんか?
――えっ!? 何か関連が?
藤坂 ご想像にお任せします(笑)。
――ほかにも、花があしらわれているキャラクターがいますが……。
藤坂 ご想像にお任せします(笑)。
妹たち、使徒の意外なヒミツ
――では、妹たちについてうかがいます。それぞれ、デザイン上で何かコンセプトはあったのでしょうか。
藤坂 実際にどう言われたかは詳細は覚えてないのですが、最初に僕が受けた印象は、ウタヒメ的な女の子がいっぱい出てくる。あと、ヨコオさんからは「『魔法少女まどか☆マギカ』だ」というのは聞いた気がします(笑)。
柴 女の子を色によって識別したい、という意味だったんだと思います(笑)。
藤坂 『魔法少女まどか☆マギカ』というキーワードは僕にとって強烈というか、どう捉えていいかわからなくて(笑)。魔法少女モノを観たりしました。それで改めて気づいたんですけど、単純にもっとわかりやすい色使いなのかなと思っていたんですけど、意外と中間色を使った繊細な色使いの作品が多くて「なるほど」と唸りましたね。
柴 わかりやすさと奥深さの両方があるんですよね。
藤坂 僕は色みを地味にしちゃうんですけど、今回は意図的にわかりやすく、緑なら緑でわかりやすく、というのは序盤に言われましたね。
柴 そうだ! いつもの藤坂さんのイメージと違うと思ったのはそこだ! 茶色の成分が少ない(笑)。
藤坂 放っておくと(使徒4人のイラストを指して)こっち寄りなので(笑)。発色のいい色はポイントでしか使えないタイプで(笑)。
――そのほかに、全体的な共通点などは。
藤坂 ラフ画のときは設定は決まってなかったんですが、教会というものがあるっぽい、ということは聞いていたので、教会のマークを入れています。
――キャラクター個別では、それぞれ何かコンセプトはありましたか?
藤坂 すべてのキャラクターにあるわけではないのですが、ワンは僕の中ではメーテルをイメージしてデザインしました。
――ああ! なるほど。
藤坂 トウは、ほぼ下着姿にロリっぽい顔。スリイは、ふだんは前髪で顔が見えないけれど、たまに前髪をピンで止めるとイラストのように見える、というようにしたかったんですけれど、その設定はゲーム中では活かされなかったですね(笑)。フォウは女船長。
柴 適当だなあ(笑)。
藤坂 ファイブは裸にニット。
――エロい!
藤坂 最終的には、下着らしく見えるものとか描いちゃったんですけど。
――使徒の4人は?
藤坂 使徒は具体的なオーダーがあったので、それに従ってデザインしていきました。たぶん、みんな興味がなかったからだと思うんですけど、すぐにオーケーが出ましたね。
柴 イケメンがいて、少年がいて、おっさんがいて……というオーダー通りに描いてもらいましたから、こちらからは言うことはなかっただけですよ。まずは、セントがあがってきたんだっけ? いまの設定では違いますけれど、当初は血を見るのが大好きで鼻血を出しながら戦っているというセント。
藤坂 そう! 血を出しつつ戦っているはずだったんですよ。ゼロが血を浴びながら強くなる、という設定が決まったときに、だったら血を与えるキャラクターがいれば、いいサポート役になるなと思って。その名残で、セントの身体には傷があるんですけど。
――ああ、そういうところから、あの傷があるのですね。ディトのマスコット的なキャラクターは?
柴 いつの間にかに描いてあって、知らぬ間に決まってました(笑)。
藤坂 あ、そうなの?(笑)
――武器のデザインや設定なども藤坂さんからアイデアを出されたりすることも?
藤坂 明確に決まってないときは、アイデアレベルで思いついたものを描いたりはしますね。今回は、イラストに合わせて武器を決めていただきました。本来なら、企画段階でプレイヤーに楽しませるための武器を決めてから、最終的なデザインに取り掛かれればよかったんでしょうけれど、タイミングが難しくてこちらに合わせていただきました。
――剣、槍、格闘装具、戦輪ですね。
柴 でも、実際にプレイすると、すごくそれらの武器が本作のシステムにマッチしていて、すごく気持ちがいいんですよ。
――スリイの武器は、カテゴリ的には何になるんですか?
藤坂 これは格闘でも剣でもいけるようにデザインしました。実際は……
柴 何でしょうね?(笑) ご想像にお任せします。
――あえて聞きますが、妹たちの額や武器、使徒などにローマ数字が付いていますが……。
柴 公式サイトの“NOVELS”やイラストを細かく見ている人には想像がつくと思います。
藤坂 オクタは紛らわしいですよね。
――“X”かと思いました。
藤坂 ある組織に所属している人は刺青のようなものを入れなければいけない、という設定を勝手に考えて、入れました。僕は、そういう設定を考えないと描けないんですよ。最初はシルエットで描くんですけど、このあたりに膨らみが欲しいから、カバンもしくは盾を持たせようとか。このキャラクターどうしは関係性があるから、お揃いのアイテムを持たせようとか。そういったことを考えると描くのが楽になりますし、方向性が固まるんです。とは言え、まるで意味のないものもあったりするんですけど(笑)。
――イラストのある部分に、光を放っているかのような箇所がありますが、これはどんな意味が?
藤坂 そのキャラクターの象徴的なポイントに入れました。
――藤坂さんご自身のお気に入りのキャラクターは?
藤坂 トロルが気に入っています。
柴 人じゃないんだ(笑)。
藤坂 今回、モンスターのデザインも一部やっているのですが、森のステージにトロルというモンスターがいるんですけど、それがお気に入りです。ユルキャラ的で(笑)。
過去のデザインは見るだけで恥ずかしい
――『DoD』シリーズは10周年を迎えます。10周年記念イラストをお描きになった感想は?
藤坂 イラストに描くキャラクターに関してはオーダーがあったので、そのキャラクターたちをどう配置するかを試行錯誤しましたね。
柴 悩むだろうなと思いつつも、こうまとめてくるとは、意外でしたね。
藤坂 人とドラゴンをまとめるのは大きさが違うだけに同じ位置に描けないですし、たいへんでした。しかも3体もいますし。これまで、ドラゴンが飛んでいるところしか描いたことがなかったんですが……。ドラゴンを座らせてみたら、あまり見ないドラゴンの佇まいだなと。
柴 このドラゴンのまとめかたは発明だよね。
藤坂 そう?(笑) あと、これ(背景に描かれているタワー)は東京タワーなんですけど。わかりづらかったかな(笑)。
柴 大丈夫!(笑)
藤坂 あと、ちょっと抵抗があったのは、ニーアと白の書を描くときですね。僕がデザインしたキャラクターではないですし、開発にも関わっていないので、描いていいのかな、と。『ロード オブ ヴァーミリオンRe:2 ~慟哭~』でも『NieR』のキャラクターを描かせていただいたんですが、そのときはDKさん(『NieR』のキャラクターデザイン担当)の絵をコピーするつもりで描いたので、さほど罪悪感はなかったんですけれど。今回のキービジュアルは、これまでの『ドラッグ オン ドラグーン』のキャラクターといっしょなので……。
柴 ほかとテイストを合わせるために、どうしても藤坂アレンジが入るからね。ただ、ファンの方はすごく喜んでくれているみたいなので、よかった。
藤坂 ただ、もう一枚あるんですけど、そっちはノリノリで描けました(笑)。
――ある意味吹っ切れたと(笑)。いま、『DoD』と『DoD2』のイラストをご覧になって、どうですか?
藤坂 いま過去のデザインを見ると、野暮ったいというか……何でこんなデザインを考えたんだろうと思いますね。とくにカイム(笑)。
柴 『ロード オブ ヴァーミリオン』のカイムは衣装を変えてきたよね(笑)。
藤坂 『DoD』のころは、どちらかと言うとモデリングしやすい衣装を意識していたというのもあって、カッコよくないですよね。
――『DoD』と『DoD2』ではモデリングも担当されていたんですね?
藤坂 はい。とはいえ、『DoD』のデザインはヒドイよね(笑)。見ているとしんどい、ツライ(笑)。10周年記念に同梱する資料集で、「このイラストありませんか?」って聞かれるんだけど、「ゲッ」って思う(笑)。ただ、当時を思い起こすと、『DoD』のころは、キャビアに入る前の職場には僕と同じように絵を描いている人がいなかったですし、キャビアでも長谷川さんだけでしたし。ですので、ほかの絵描きの方がどう描いているのかもわからなかったですし。本当に手探りでしたね。10年くらい経って、「こういうことかな?」、「こう描けばこう感じてもらえるかな?」という意識はできるようになりましたので、多少なりとも進歩しているのかなとも思いますけれど。
――『DoD3』は、自分の成長も表われている、みたいな気持ちも?
藤坂 そんな大げさではないです(笑)。『DoD3』のイラストでも、すでに手直ししたいものもあるし(笑)。
柴 ええ!? もう!?(笑) でも、女の子はかわいくなったよ!
藤坂 キャッチーさはアップしたよね!? 女の子を描くのは得意ではないので、苦行だったんですけど(笑)。
――そんなふうにはイラストからは感じられませんけど(笑)。ところで、柴さんから見た藤坂さんのイラストの魅力というのはどこだとお感じですか?
柴 そうですね……。デザイン設計がしっかりしていて、ひとつひとつ理詰めで絵を描いていくところですかね。お客さんの好み、開発の意図も汲み取れる。いい意味で人の顔色を見れるけれど、しっかりと藤坂節も頑固に入っている。失礼な話、『DoD3』のイラストで「ひと皮剥けてくれるかな?」と思っていたんですけど、ちゃんとブレイクしてくるところはさすがだなと思いました。
藤坂 何言ってるのかサッパリわからない(笑)。
一同 爆笑。
柴 わかんないの?(笑)
――『2』からしばらく時間が開いてますけど、その間の柴さんと藤坂さんの距離感はどうだったんですか?
柴 『ロード・オブ・ヴァーミリオン』でカードイラストをお願いしたり、藤坂さんが関わったタイトルをプレイしたりはしていました。「やっぱオレがいなきゃ、ダメかな?」とか(笑)。悩んでるときって絵に出るよね?
藤坂 何言ってるのかサッパリわからない(笑)。
一同 爆笑。
――『DoD』や『DoD2』ではやっていない、『DoD3』からの新たなチャレンジした部分はありましたか?
藤坂 そうですね……。アニメ塗りというところですかね。じつは今回、グラデーションは入れていますが、基本はアニメ的なイラストに仕上げています。イラストのラフ段階では、もっとわかりやすいアニメ塗りだったので、柴さんは心配されていましたね。
柴 そうですね。「イメージが変わりすぎじゃない?」と。
藤坂 でも今回、女の子がたくさん出てくるということで、若い女の子をいま風にかわいく見せる事を第一に考えてイラストを描くようにしました。ただ、こういったテイストは好き嫌いがはっきり分かれる可能性があるので、そこは過剰にはならないように気をつけました。
柴 ディテイルを細かく描くという藤坂イズムとアニメ塗りのミックスで、すごくよくなったと思う。
藤坂 時代が変わってきて、こういうのもアリなのかな、というのを感じつつなんですけど。
柴 新しい領域に入られましたな(ニヤリ)、という感じです(笑)
藤坂 何言ってるのかサッパリわからない(笑)。
――(笑)。では、最後に『DoD3』の発売に向けて、ひと言いただけますか。
藤坂 昨今は基本無料のゲームもある中、高価なパッケージソフトを買ってくださいとは言いづらいですけど、「やってみたいな」とさえ思ってくれれば。最悪、ムリして買わなくてもいいです(笑)。公式サイトとか見て楽しんでいただくだけでも。
柴 まったく同意です! まずゲームを知ってもらって、何か響くものがあれば買ってもらいたいというのが本音ですけど!
●『DoD』シリーズ10周年! イラスト大募集
『DoD』シリーズ10周年を記念し、また、『DoD3』のメインキャラクターが公開されたこの機会に、読者の方からのイラストを募集します。『DoD』シリーズにまつわるオリジナルのイラストなら何でもオーケー!
締切は9月13日。投稿していただいたイラストは、週刊ファミ通、もしくはファミ通.comの『DoD3』記事で紹介させていただきます。また、編集部で選定のうえ、開発スタッフの方々にご覧いただき、その中から3名に藤坂氏のイラスト入りサイン色紙をプレゼントいたします!
10周年のお祝いコメントを添えて、狂気なイラストをふるってご応募ください!
ちなみに、コメントのみでも投稿可です。10周年お祝いコメントや『DoD』に対するアナタの思いなどを投稿してください。ただし、コメントのみの場合は、藤坂氏のイラスト入りサイン色紙のプレゼント対象からは除外させていただきますので、その点はご了承ください。
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