PS3向けソフトのクオリティーとしては究極レベルのアドベンチャーゲーム
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアより、2013年10月17日に発売予定のプレイステーション3用ソフト『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』。開発を手掛けるのは、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』などで知られるフランスのQuantic Dream。今回、同スタジオのチーフプログラマーであるDamien Castelltort氏から『BEYOND: Two Souls』についてプレゼンテーションを受ける機会をいただいたので、その内容を紹介しよう。
『BEYOND: Two Souls』の概要
フランスのQuantic Dreamが開発中のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは、生まれたときから“霊体(エイデン)とコンタクトできる”という不思議な能力を持つ主人公ジョディ・ホームズとなり、さまざまなエピソードを体験することになる。なぜエイデンがそこにいるのか、なぜジョディだけがエイデンとコンタクトできるのか。自身の出生の真実までその多くが謎に包まれている。
プレイステーション3最高峰のグラフィックを実現
本作では、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』からゲームエンジンを一新。シェーディング(3DCGなどで明暗のコントラストで立体感を与える技法)技術は、プレイステーション4向けに研究開発していた中から生まれた技術も盛り込まれているという。たとえば、物質の反射や濡れた路面など、より現実味のあるテクスチャが実現されている。
※『BEYOND: Two Souls』のゲームエンジンのべースは、『KARA』というテクノロジーデモからの流れを汲むものだという。
また、奥のものがボケて見える表現(遠くの光ほどボカシを強くしたり)などで奥行き感を出したり、レンズフレア、ゴーストなどカメラで撮影したようなエフェクトを加えることで、映画のような空気感も実現している。制作チーム内には、ゲーム内でどのようにカメラを使うか、どのような効果を入れ込んだらいいかをアドバイスするカメラに特化したチームも存在するという。Damien氏自身も映画を見たり、映画の技法が解説された本を読んだり、日々、勉強しているとのこと。新世代機が登場すれば、さらに映画的な手法が追求できるため、今後はゲームクリエイターにもそういった知識も必要になりそうだ。
キャラクターのスキン(肌)のテクスチャーや瞳の輝きも実写並のリアルさ。新世代機向けのテクノロジーデモなどで、まるで本物の人間かのようなグラフィックはさまざまなところで公開されているが、プレイステーション3でも、それに近いリアルなキャラクターが作れるとは驚き。あくまで記者個人の主観だが、本作は現段階でプレイステーション3最高峰のグラフィックだと自信を持って断言できる。「本作では、プレイステーション3のすべての性能を引き出せたと思っています。プログラミングの技術の進化(とくにライティングが進化しているとのこと)で、ここまでのグラフィックが実現でき、我々としても驚いています」(Damien氏)
『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウル)』が目指す新たな感情体験
グラフィックだけではなく、キャラクターの演技も本作の見どころのひとつだ。本作ではキャラクターを演じる俳優陣の演技をハイレベルなパフォーマンスキャプチャー(身体の演技、顔面の表情、音声などのデータを同時に収録する技術)で取り込み、顔の細かな表情まで再現されている。主人公のジョディを演じるのはハリウッドの実力派俳優エレン・ペイジ。そのほかウィレム・デフォーなども参加している。「パフォーマンスキャプチャーは、たとえ、セリフのない人物であっても、すべてのキャラクターで行っています。そのおかげで、より密度の濃い演出が可能になりました」(Damien氏)。そこまでパフォーマンスキャプチャーにこだわったのは、リアリティを出すためはもちろん、グラフィックがリアルになればなるほど、説得力ある演技でなければ、不気味に感じてしまうからだという。ちなみに、パフォーマンスキャプチャの撮影作業は、「エレン・ペイジさん、ウィレム・デフォーさんそれぞれ3週間くらいかかったと思います。キャスト全員では8ヵ月くらいかかりました。そのあとのデータ処理もたいへんでしたね(笑)」(Damien氏)とのこと。
本作では、ドラマの妨げになるような複雑な操作は要求されない。たとえばジョディがドアの近くに立っていると、画面上に白い点が表示され、プレイヤーはその白い点の方向にコントローラーのスティックを倒すだけで、彼女はドアを開け、進んでいく。シンプルで直感的な操作方法により、これまでにない没入感を味わうことができるのだ。「本作では、できるだけ多くの人にプレイしてもらいたい、というコンセプトがありましたので、操作は限りなくシンプルなものにする努力をしてきました」(Damien氏)。
プレイヤーは状況に応じてジョディだけでなくエイデンも操作する。エイデンを操作することで、ジョディだけでは進めない場所も進めるようになるなど、パズル的な要素も含まれている。「エイデンは、障害物などもすり抜けられるのですが、ふつうそういった場合、エフェクトなどの処理が消えてしまいがちになります。そうならないような工夫もしています」(Damien氏)
また、本作では行動によって、その後の展開が変化していくという要素もある。たとえば、先日ドイツのケルンで開催されたgamescom 2013では、列車のシーンが公開され、シートに座ってジョディに警官が近づいてくる。そこで逃げるのか、そのまま座るかはプレイヤーの行動しだい。警官から逃げると追われ、座っていた場合は捕まってしまうが、そこから異なるストーリーが展開していくのだ。失敗したところからやり直し、ということも、ふだんゲームをプレイしない人にとって、うれしい要素かもしれない。
ふたりでプレイすることも可能、スマホやタブレットなどでも操作も実現
gamescom 2013では、ジョディとエイデンをそれぞれを別のプレイヤーで操作できることが明された。『ヘビーレイン -心の軋むとき-』はひとりプレイ用の作品だが、(プレイしていない)友だちや恋人などがアドバイザーとなり、いっしょにゲームを楽しんだというユーザーが多かったようで、『BEYOND: Two Souls』では、(ジョディとエイデンという操作できる存在が2体いるので)いっしょにプレイできる要素も盛り込みたかったのだそうだ。
しかも本作では、スマートフォンやタブレット端末に専用アプリをインストールすることで、それらをコントローラーとして使用することもできるため、パートナー用のDUALSHOCK 3を用意する必要なく、いっしょにプレイできるのだ。「DUALSHOCK 3をひとつしか持っていない方もいるでしょうし、ボタンがたくさん付いたゲームコントローラーが苦手な人もいるでしょう。そういう人たちにも、気軽に遊んでもらいたかったのです。DUALSHOCK 3とは、また違った操作感覚でプレイできると思います」(Damien氏)。
ちなみに、ジョディとエイデン両方をスマートフォンやタブレット端末で操作することもできるし、DUALSHOCK 3で操作することもできる。
もちろん、日本版『BEYOND: Two Souls』にもスマートフォンやタブレット端末操作は対応する。
最後にDamien氏は、「本作は3年半という長い期間をかけて全力で制作してきました。一度、最後までプレイしていただき、友だちなどと内容・体験の違いを話し合っていただければうれしいですね」と結び、今回のプレゼンテーションを終えた。
ちなみに、gamescom 2013では、音楽を『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち 』や『ダークナイト』など、多数の映画音楽を手掛けるハンス・ジマー氏が担当することも発表された。
Quantic Dreamのプレイステーション4での展開にも期待
Quantic Dreamは、プレイステーション4向けのテクノロジーデモ映像として『THE DARK SORCERER』を公開している。「『KARA』と『BEYOND: Two Souls』のクオリティーの違いを見れば感じていただけると思いますが、『The Dark Sorcerer』と比べると、次に作る作品はもっとハイレベルなものになると思います」(Damien氏)。