その気になれば30時間でもゲーム制作はできちゃう!?

デジタルハリウッド大学は、2013年7月20日と21日の両日、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)の協力のもと、PlayStation Mobileのゲームコンテンツを2日間で制作するイベント“PSM GameJam 2013 Summer”を開催した。

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▲デジタルハリウッド大学内のホールで30時間ゲーム制作!

 本催しは、PlayStation Mobile向けコンテンツの開発を推進することを目的に、ゲーム専用機、モバイルデバイス向けのゲームやアプリケーションの開発の経験がある人であれば、その程度を問わず参加できたイベント。参加した人は、イベント時に発表された即席のチームに編成(1チームあたり3~5人程度で、A~Hまで8チームに編成)され、与えられたひとつのテーマ“Warm APP”(心あたたまるゲーム)に沿って、SCEJAの専任チームのサポートを受けながら、PS Mobile向けコンテンツを2日間(20日の10時から21日の16時まで。約30時間)にわたり制作し、完成を目指した。

※当日開発されたコンテンツは、イベント後も、そのままPlayStation Certifiedデバイスやプレイステーション Vita上にアセットとして引き継ぎ、PlayStation Store上での販売を前提に開発を進めることが可能となっている。

 “心あたたまるゲーム”をどうゲームとして表現するかについては、それぞれのチームのユニークな発想が表れていて、とてもおもしろかった部分。たとえば、あるチームは生き物の成長と周辺環境の変化で表現し、またあるチームは仔猫の物語、また別のチームでは、warmとwormの綴りと発音が似ていることから芋虫を操作し、火の手(あたたかい→物理的に燃やす)から逃し、美しい蝶へと変態させていく……、といった具合だ。

 イベント時に結成された即席チームで、30時間のあいだで企画をいちから練り、ゲームの完成目指すということ自体、ある意味無謀な試み、という印象もあるが、いろいろな問題を乗り越え、結果的には8チームのほとんどが、一部未完成の部分は当然あるものの、ゲームのコアの部分は完成させていた点は驚きだった(ほとんどの参加者は徹夜で作業し、完成を目指した)。

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▲決められた制作時間終了後は、各チームが審査員たちにゲームをプレゼンテーション。
▲各チームから作品のプレゼンテーションを受け、その内容を審査する上田文人氏(左)と多田浩二氏(右)。
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▲制作した成果を各チームがプレゼン。海外プレイヤーを意識したものや、アイテム課金を想定したものまで、いまの時代を反映したゲームデザインのものもちらほら。また、それぞれが発表した苦労した点や改善点などは、みんなで共有することで、今後のゲーム制作に活かされるはずだ。
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▲SCEチームも特別に参加し、『THE 指摘』という、どこかおかしいところを指摘するゲームを作成。

上田文人氏も審査員として参加

 イベントの締めくくりとして、SCEJA 戦略企画部 ジャパンビジネス企画課 課長の多田浩二氏を審査員長とし、特別審査員として上田文人氏(『ICO』や『ワンダと巨像』のゲームデザイン、ディレクターを担当)も参加して、とくに優れた3作品が表彰された。評価のポイントは、Warm APPというテーマに沿っているか、ゲームとしてオリジナリティがあるか、そして完成度という3つのポイントが重視された。

 まず、第3位として発表されたのは『席譲神(セキユズリノカミ)』という作品を作ったAチーム。次々と来る乗客に椅子を譲っていくというゲーム。乗客どうしには席を譲る、譲られる際の相性があり、たとえば、老人に席を譲った場合はExcellent、男性が女性に席を譲るとGoodとなる。その関係性を把握して、高得点を目指すといった内容だ。「世知辛いこの日本で、基本的なマナーとされる“席を譲る”という優しさ溢れる行為をゲームにしたらどうなるか?」というテーマで制作された。

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 第2位は『Grow』という作品を作ったFチーム。荒廃した大地に何かの種子が飛んできて、その種子を操作し、途中の障害の乗り越え、無事に土に着地させると芽が出て……。それをくり返すと、荒廃していた世界が豊かな大地になっていく、という作品。種子の操作はタッチ操作のみを使うシンプルで直感的な操作性が特徴だ。審査では、テーマ性とオリジナリティに加え、世界観や完成されたビジュアルがほかより優れていた、という評価。

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 そして1位に輝いたのは、チームDの『ESCAPE PENGUINS!(脱出ペンギン)』というマルチプレイ(1台のPS Vitaをふたりで操作する)パズルゲーム。Warm APPというテーマは、プレイヤーどうしが力を合わせてゲームを攻略するという部分で表現。「テーマ性と完成度の高さ(ゲーム本編のロジック部分)、続きを遊びたいと思わせるゲーム性。一台のPS Vitaを肩を寄せあってふたりで遊ぶというという点もテーマに合っていて、すごくよかったです」(SCEJA 多田)

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▲1位に輝いたDチームには、メンバーそれぞれにプレイステーション Vita 3G/Wi-Fiモデルなどが贈られた。
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▲上田文人氏

 特別審査員として参加した上田氏は、今回のGameJamについて、「30時間のイベントということを聞いて、ほとんどできていないんじゃないかと思っていました。ですが、程度の差はあれ、想像していたよりできていて、驚きました。30時間という限られた時間でゲームを作るというのは、今後、モノを作っていくうえですごく役に立つと思います」と感想の述べた。たしかに、参加者の感想として、企画を固め、実際にゲームを制作していく段階で、PlayStation MobileのSDK(開発キット)に不慣れだったことで効率よく開発できなかったり、環境の整備に手間取ったり、当初の計画が甘かったために方向転換をせざるを得なかったり、マシントラブルだったり、体調不良でメンバーが欠けたり……それらもろもろの問題のために、ゲームをおもしろくさせるための工夫まで手が回らなかったりと、通常のゲーム制作同様の困難があったようだ。だが、ゲーム制作にまつわるそれらの困難にどう対処していけばいいかを30時間という凝縮された時間で経験できたのは、今後の財産になるはずだ。「できればSCE社内でもやってほしいですね(笑)」(上田)

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▲審査委員長を務めたSCEJA 戦略企画部 ジャパンビジネス企画課 課長の多田浩二氏

 審査委員長であるSCEJAの多田氏は、今回のGameJamについて「皆さんのゲーム作りの思いが非常に伝わってきた2日間でとても感動しています。我々も皆さんがもっとゲームを作りやすい環境を提供していかなければ、と改めて思いました」と感想を述べた。また、多田氏は「私はSCEに入社して16年間、制作の仕事に携わってきました。ゲーム作りはひとりではできません。いろいろな作品や人と出会って、初めて作れるものです。今回もいろいろな出会いがあったと思いますが、その出会いを大切しながら、すばらしいゲームを作っていただければと思います」を参加者にエールを贈った。

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▲デジタルハリウッド大学の香田夏雄氏は、「何回もいろいろなGameJAMをやってきたんですけど、今回はそのなかでもトップクラスの“熱い”GameJamになったのではないかなと思います」と、今回のGameJamを振り返った。
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▲参加した方々。30時間お疲れ様でした!

 2013年9月2日まではPlayStation Mobileパブリッシャーライセンス(PSMアプリケーションをPlayStation Storeから配信するためのライセンス。ライセンス契約をするとSDKも無料で入手できる)は無料となっている。ゲーム制作に興味がある人は、30時間以上は時間的な余裕があるであろう夏休みを利用して、友だち数人とゲームを作ってみてはいかが?