ネタ一発かと思いきや、実はなかなか考えられたシステム

 brace yourself gamesが開発中の新作PCゲーム『Crypt of the NecroDancer』を紹介する。
 本作の特徴は『トルネコの大冒険』などのいわゆるローグライクなダンジョン探索ゲームに、リズムゲームを組み合わせていること。何を言っているのかまったくわからないと思うが、まずはティザー動画を見てほしい。

ローグライク・リズムゲーム!? ビートにノってダンジョン探索するインディーゲーム『Crypt of the NecroDancer』_01

 さて、いかにもなダンジョンの中で、主人公キャラクターが何かピョンピョン跳ねていたのがわかっただろうか?
 本作において、主人公はBGMのビート1拍に合わせたタイミングでしか動けない。つまりこれが1ターンであり、4分の4拍子なので1小節4マス(4ターン)のみの移動。移動時に武器の範囲内に敵がいれば、移動と同時に攻撃を行う。ビートごとで動くのはモンスターも同様だ。

 リズムゲームらしく、コンボもある。移動をミスらずにビートに合わせて動き続けている間は、モンスターを倒すたびに、倒した時に落とすお金が増えるボーナスが追加されていく。
 コンボを切らさないよう、すべての操作が移動キーに集約されており、アイテムを拾う際はアイテムがあるマスの上に乗ったら自動で拾得。装備アイテムの場合は自動で装備し、それまでの装備と置き換える。商店などでアイテムを購入する際も、置いてあるマスに乗ったら自動で購入だ。この間、移動以外のキーを押す必要はない。
 ちなみに貨幣となるものにはコインと宝石の2種類があり、一般的なアイテムはコイン、魔法や体力上限のアップなどの恒久的なものは宝石で購入するようになっている。

 brace yourself gamesを主催する本作のメインクリエイターのライアン・クラーク氏にα版を送ってもらって遊んだのだが、コレが中々面白い。
 基本的にライフは自分も敵も少なめで、一発のダメージがとても重要。それだけに、敵に囲まれたピンチを“テンポ良く”立ちまわってコンボを維持して切り抜けた時の快感は最高だ。
 しかし一方で、最初のウチは余裕でも、ダンジョンを潜ってBGMのテンポが早くなったり、段々と強力なモンスターが出てきたりすると、慌ててミスってタコ殴りにされたり、余裕で見えているトラップに引っ掛かって死亡というハメになる。
 リズムゲームとしても、ターンベースのダンジョン探索ゲームとしても非常にシンプルなゲームなのだが、両者の緊張感が高まってくると、ある瞬間から途端にハードルが上がってくるのだ。この絶妙な相互関係が素晴らしい。

 なお今後は、2013年内のリリースを目指して、さらなるゲームプレイ要素や、自分の持っている任意のMP3でプレイできる機能などを追加していくという。

まさかの東京ゲームショウ出展申請中!

 しかしそれにしても、何でこんなことを思いついたのだろうか? メールインタビューでライアン・クラーク氏に話を聞いた。

――どうやってリズム+ローグ系ゲームというコンセプトを思いついたんですか?
ライアン 当初の目的は、できるだけ“フェア”なローグライクゲームを作ろうということだったんです。私は子供の頃、オリジナルの『ローグ』を何時間も遊んでいて、とても好きでしたが、同時に「フェアではないな」とも思っていたんです。しばしば、プレイヤーのスキルがどれだけあっても詰むしかないこともあったし、ローグには幾つもの避けようがない死にパターンがありますよね! 他のローグライクゲーム、例えば『ネットハック』などはもうちょっとフェアだし勝機もありますけど、非常に修行する必要がある。
 昨今、『Spelunky』や『FTL』など、ローグライクなゲームが復活してきています。『Spelunky』はとてもフェアなゲームで、プレイヤーが死ぬ時は、大体プレイヤーが何か失敗してるんです。死はプレイヤーのスキル不足か(練習あるのみ!)、知識不足(敵の行動パターンを知らなかったんだろうけど、知っとくべき!)から起きる。そしてリアルタイムのスキルが物を言います。

 しかし私は、この新たなローグライクゲームの設計哲学を、もうちょっと本当にローグっぽいゲーム(死んだらやり直しな、マスで区切られたダンジョン探索ゲーム)に適用してみたくなったんです。リアルタイムなローグライクゲームを幾つか試してみたんですが、ちょっとそれはアクションRPGっぽくなりすぎちゃって合いませんでした。なんかこう私の感覚では、ターン制を完全に取り除いてしまうとちょっと違うなと。
 そこで「ターン制でありつつも、時間制限があるってのはどうだ?」と思ったんです。次第に短くなって、プレイヤーはより素早く考えなければならず、知識の応用が効かなくなるなら……。これはリアルタイムなスキルだし、イケてるんじゃないかってね!
 そしてすぐに、「サクッ、サクッ」と動いていくのはリズムに合わせているみたいだなと気が付きました。私はリズムゲームファンでもあるので、すぐに音楽ベースのリズム・ローグライクゲームを試作してみたら……コレが楽しかった! そして『Crypt of the NecroDancer』というタイトルを思いつくとともに、コレこそが作るべきゲームなんだと気がついたわけです。:)

――この前メールした時に東京ゲームショウに出たいって言ってましたけど、マジですか?
ライアン もちろん本当です! もうインディーゲームブースの選考に出しています。通してくれるのを祈ってますよ! もし通ったら、我々は9月に皆さんとお会いできるわけです!

――ちなみに、これまでのキャリアを教えてもらってもいいですか?
ライアン Grubby Gamesというインディースタジオを2004年に設立して、7本のゲームをリリースし、3本はIGF(インディーゲーム賞)に、1本がPAX10(ゲームイベントPAXの特集タイトル)にノミネートされました。その後2009年に会社をBig Fish Gamesに売却し、彼らの下でおよそ3年働いてさらに3本のゲームをリリースしています。そして2013年、またインディーに戻ることを決めたんです!
 よく知られているゲームは『Professor Fizzwizzle』、『FizzBall』、『IncrediBots』、『My Tribe』、『Life Quest』などです。

――本作に影響を与えたものをなんでも挙げてみてください。
ライアン 『ローグ』と『Spelunky』からの影響がもっとも大きいです。『ローグ』を子供の時とても楽しみましたので、同じような楽しみを現代のゲーマーにもたらすためにベストを尽くしたいと思っています。『Spelunky』はローグライクゲームの楽しみを、知識だけでなくリアルタイムのスキルも必要なチャレンジに仕立てあげることに成功しているからです。『FTL』も大好きですね。伝統的なダンジョン探索ゲームでなくとも永久死と自動生成された世界が楽しくなるという好例だと思います。ジャンルにひねりを加える挑戦をするための自信を与えてくれました。

 その他にはマイケル・ジャクソンの「スリラー」のビデオからの影響もあるかもしれませんね。みんなダンスするゾンビを見たいということを証明してくれましたから! それと私は『Dwarf Fortress』の大ファンでもあります。このゲームにはローグライクな資質がいろいろありますが、細部へのこだわりが最も気に入っています。『Crypt of the NecroDancer』においても本作のような楽しい細部へのこだわりをもたらしたいですね。

――コンソール(家庭用ゲーム機)移植の可能性はありますか?
ライアン それについてはいくらか話をし始めているところですが、今のところ発表できるものはありません。しかし、我々としてはそうなったら嬉しいですね! ソニーは今世代において、ゲーマーを喜ばせるとともに小規模なインディー開発者にとってもフレンドリーなシステムを作り上げていて、すばらしい仕事をしていると思います。

――どんな機能を追加していく予定ですか?
ライアン 計画はたくさんあります! もっとたくさんのダンジョン、武器、アイテム、隠し要素をもちろん入れたいですし、グラフィカルなイントロとストーリーカットシーンや声もあったほうがゲームの進行が楽しくなるでしょう。それにもっと多くのNPC(編注:ダンジョンで救うと後に商人になったりするキャラクターがいる)や魔法やアビリティもあるべきです。協力プレイや対戦モードの可能性も考えています。それと、自分の音楽ファイルでプレイできるようにするつもりです。自分の好きな曲でハイスコアを競う“サバイバルモード”はいかがでしょう。
 ……というように、たくさんの計画があり、たくさんやらなきゃいけない仕事があります。:)

――最後に読者や日本のインディーゲームファンにメッセージを!
ライアン 私は日本のゲーム、そしてアニメ(毎週「進撃の巨人」を観ています)、フード、文化の大ファンです。事実として、妻と私はハネムーンで日本に行きました! そして日本に移住しようか真剣に考えています。本当に好きだからです。東京ゲームショウの選考に通るよう本当に祈っています。日本にまた行って、みなさんに会場で会えますから!