E3 2013の最終日となった2013年6月13日(北米)、すべての発表を終えた『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、『新生FFXIV』)プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏を囲んでインタビューが催された。
直前の出張版プロデューサーレターLIVEを終え、インタビューの場に登場するなり、「今回の放送は檻の中のサルみたいで、恥ずかしかったですね(笑)。ようやくひととおりすべてのネタが今日までに出せたので、ちょっとはホッとしています」と漏らした吉田氏。人心地ついたところで、ときには勢いよく、ときには言葉を選んで数々の質問に答えていた。
E3での手応え
――E3で世界に向けて発信した手応え、海外の反応などは?
吉田 もともとMMORPGのフリー試遊には反対なのです。僕も数年来E3でMMORPGが出展され、試遊用に置かれているのを見ていますが、なかなか誰も触っていなくて。触れても、「走っているだけだなぁ」と首をひねりながら帰っていく。『旧FFXIV』の発売直前のE3でもキャラメイクを試遊していただいていましたが、やはりPRとしてはあまり効果的とは考えていません。今回のE3でも、ちゃんとお客さまに盛り上がってもらえる内容じゃないと試遊は難しい。しかも『FF』らしさや『XIV』らしさが出せるならというお題に対しての回答が、今回のイフリートとのバトルチャレンジというわけです。ギリギリのギリギリまで開発にも北米のコミュニティーチームにもムリを言い、がんばってもらって、なんとか8人で戦えるイフリート戦を急造し、結果的にはバグもない状態でやれたのがいちばんよかったのですね。
「PC版とPS3版が両方で比較できる状態で置いてあるのが潔いし、エキサイティングだった、アメージングだった、興奮した」と言ってくださる方がすごく多かったんです。スクウェア・エニックスってどうしても映像で魅せる会社と思われているところがあり、正統進化したイフリートの凄みを久々にリアルタイムで見て、体験していただけたと思うんですよ。「ゲーム体験としてすごいね、買おうと思う」といろいろな方に言ってもらえたんです。E3はユーザー向けのイベントではないのでおかしいんですけどね(笑)。皆さん業界の方で、本当はきびしいはずの方々から、絶対買うよといってもらえているのはストレートにうれしいですね。とくにウェスタンに受け入れてもらえているところが大きいと思います。昨日も閉場後スタッフと少し話していたのは、もしかしたら北米のプレイヤーが最大の勢力になるかも、ということ。それほど盛り上がっていただけたので、とてもよかったです。本当に。
――日本からの反響も届いているかと思いますが、そこについては?
吉田 ウェスタンマーケットのMMOプレイヤーの人口と、日本のMMOプレイヤー人口は尋常じゃないほど開きがあります。僕はプレイヤーの絶対数を見てしまうので、ある意味、ウェスタンマーケットにリーチできるゲーム性やグラフィクスを出せているかなという意味で、北米のプレイヤーが最大の勢力になるかもと話していたんです。『旧FFXIV』発売時のネガティブなインパクトがいちばん強いのもじつは日本で、様子を見る人もそれなりにいることを考えると、どちらがいい悪いではありませんが、初動はそうなるかもねと。海外の方はすごいと思ってくれたら、ストレートにすごいと返してくれる国民性。日本はネット文化の違いもあって、評価が下がっては上がり、上がって下がりの乱高下と、文化がいろいろ特殊です。日本でも盛り上がってくださっているのはもちろん知っていますが、ここからが正念場だと思っていますし、プレイされた方にとにかく「おもしろいからいっしょにやってみようぜ」と言ってもらえるゲームであり続けたいと思います。そうすることで、たくさんのプレイヤーにプレイしていただけると思いますし、じっくり、ゆっくり評価を浸透させていければと、決して楽観視はしてないですね。
――すでにゲームに対する好みで日本と海外では違いますよね。
吉田 僕は『新生FFXIV』をどちらの好みにも刺さるようにギリギリを狙ったつもりでいます。ウェスタンのマーケットだと近年の『FF』は、ちょっと幼いと言われたり、ゲームのなかに選択肢がない、あとはダークさが欲しいと。戦いの中で肌に傷ひとつつかないのは、いくらファンタジーでもどうか、などストレートに言われます。そのへんにこだわる反面、片やNew York Comic-Comだったり、Japan EXPOなどに行くと、やっぱりコスプレされているのは『FF』だったりするんです。日本もそうですが、海外でもいまのお客さんの嗜好ってすごく分かれているんです。だから、僕はクラッシックな『FF』で、ダークなところをつつけばいいと思っていて、僕自身が好きですし、日本でも確実にその路線が好きな人たちはいますし、海外でもそれが好きだという人たちがいるのでそこをまっすぐ狙ったつもりでいます。じつは『XIV』に対しての反応は、日本もウェスタンのもあまり変わりません。「ミコッテはいいキャラだな」というのは、とくに(笑)。
今回のトレーラーも、ビジュアルワークスの映像は『新生FFXIV』に関しては1回お休みしています。そうとう編集では手伝ってもらいましたが、インゲームにこだわったものを作りました。ウェスタンの人たちは、「映像がすごいのはわかったけど、このゲームではどんなゲーム体験できるんだ?」ということを知りたがります。どんなストーリーで、どんな敵と戦うのか? 召喚獣は? シドは? それを見せたかったのが今回のE3トレーラーです。英語版だと最初に「エオルゼア」という言葉から始まります。『新生FFXIV』は「エオルゼア」という名前の世界、クリスタルがあり、世界の危機に立ち向かうのはプレイヤー自身の分身となる冒険者。偽りの神、蛮神=召喚獣というものがあり、戦いがあり、ドラマがあり、最後さらなる悪役めいた人物が出てきて終わる。それをまっすぐ見せられ、アメージングと言ってもらえたので、とてもよかったです。そういう意味での反応は、日本もウェスタンのもあまり変わりません。
――E3で公開されたトレーラーは、大御所の声優さんがたくさん出演されていますが、どこかのタイミングでキャストやサンプルボイスは公表されるのでしょうか?
吉田 ロンチ直前になると思いますが、いわゆる“いつもの『FF』です”という、ストリーラインを強調したPRを展開します。いまは、声を聴いたらすぐにわかる人ばかりですが、この方たち以外にもまだまだ大御所が登場しますよ。βテストのフェーズ3で、またひとり大御所が判明すると思います(笑)。
プレイステーション4(以下、PS4)について
――今回のE3で、PS4版が2014年発売と発表されましたが、PS4というハードについてのご感想は?
吉田 メモリが多い! 速い!(笑)。もちろん、PS4にはソーシャルの機能強化であったり、さまざまなデバイスとの連動、タッチパッドを採用したデュアルショック4など、目を引くポイントはたくさんありますが、ゲームの開発においてはメモリが大容量で高速であることは欠かせません。家庭用ゲーム機のメモリの容量には、世界中の開発者が悩まされてきたと思います。『新生FFXIV』で考えれば、同時キャラクター表示体数にダイレクトに影響します。それぞれ別々の格好をしたキャラクターを数百体描画させるには、どうしてもメモリがボトルネックになりますからね。
――グラフィックもかなり向上しますよね。
吉田 はい。PC版に匹敵するようなグラフィックになると思いますが、逆にそれ以上にテクスチャー解像度を上げたところで、革新的なゲームになるかと言われたら、そうではないですよね。余裕のあるメモリをどう使うかが、重要になると思います。たとえばですが、ゲーム中に世界中のプレイヤーの情報をバックエンドのクラウドで集積して、計算した内容をメモリに吐き出して、そのデータを使って世界の地形が変わるとか、あるいはシミュレーションにも使ってもいいわけです。
――PS4版も発表されたなかで、PS3版を推している理由は?
吉田 ふたつ大きな理由があります。まず、PS3版を約束しながらずっと長い間プレイヤーの方々をお待たせしているのが大きな理由のひとつです。そもそも僕が引き継いだときに、PS3版は延期はしますが、必ず発売しますと約束しました。その約束をちゃんと守って前へ進みたいのです。それからもうひとつの理由は、僕らが作っているのは月額課金モデルのMMORPG。これは単純に100万本売れればいいというわけではなく、たくさんのプレイヤーに遊んでいただいて収益を上げ、ゲームのアップデートを楽しみにプレイしていただくビジネスモデルなので、とにかくひとりでも多くの方にプレイしていただく環境を作らないといけない。そう考えたときにPS3を取り止めにしてPS4に移行しても、PS4がいきなり発売初週で2000万台売れるとは思っていないわけです。とくにPS2からPS3への切り替えはそうとう長い時間がかかったのは、皆さんご存知だと思います。
ハードの性能が今回飛躍的に上がるので、かなりいろいろなことができるようになりますが、まだまだPS3で遊べるゲームはたくさんあり、現在のHDゲーム機の売れ行きってそこまでいいわけでもない。とくに日本国内を見ると、正直HDゲームを作ってもビジネス的なメリットがない状態。今回のE3を見ても、一般大多数の人から見るとキレイになったいままでのゲーム、というわりと無難な印象で、やっぱりハードが切り替わり、浸透していくのには、ある程度の時間がかかると思います。だからこそいまHD機の世代の代わり際ではありますが、即代わるわけではないので、たくさん普及しているハードでまずはプレイしていただきたいと。現世代機と言いながらPS3という7年前のハードで、MMORPGでここまでやれており、そのために僕らは2年半の間、心血を注いできたので、そのすごさをPS3で知っていただきたいです。
ただ、PC版との比較とか、より快適な環境とか、もっとキャラクター表示体数を増やしたいとかもっと高解像度でプレイしたいと思ったときに、PS4という選択肢があると提示したい。だからまずはPS3に全力で挑みました。クロスプラットフォームの同一サーバーなのでそのままキャラクターのアカウントをPS4に持ち越せます。いますぐPS3で冒険を始めていただき、PCのハードをアップグレードするように、自分が使っているマシンがPS4に変わったなら、そのままスイッチしてくださいというのが、今回発表させていただいた意図ですし、僕がPS3を推す理由です。買い控えしてもいいことないですよ(笑)。
――『新生FFXIV』は一般的な家庭用向けゲームと比べて、操作やシステムがどうしても複雑なMMORPGですが、『新生FFXIV』では家庭用のゲームユーザーにどのようなケアを行っていくのでしょうか?
吉田 操作やシステムについては、初めて何らかの操作を行うときに“How to”が表示されますし、その後でも任意でHow toが参照できるようにはなっています。しかしながら、その情報量は膨大です。でもこれは、MMORPGというジャンルの限界だと僕は思っていて、システムを簡略化してしまうと、10年続くゲームにはならない。ただ、情報の提示については細かくこだわっていて、“バーティリストをソロのときは非表示”というオプションをプレイステーション3版ではデフォルトにしていたりとか、ウィジェット(情報を個別に表示するウインドー)を1個でも少なくしておこうという工夫はしています。右上のミニマップを出しっぱなしにしておくかどうかも、ギリギリまで悩みましたね。
コラボ
――『新生FFXIV』と『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』(以下、『LRFFXIII』)のコラボが話題になっていますが、これについてのご感想は?
吉田 ウチの会社、ちょっと変わったなと思って(笑)。オンラインの『FF』って、ほかの『FF』シリーズとは毛色が違うってところがあったんですが、『旧FFXIV』がつまずいたことのショックが会社全体にあって、むしろ、だからこそ、みんなでいろいろなことをやろう、というノリが出てきた証拠かもしれませんね。
――それで、ライトニングにミコッテの衣装が(笑)。
吉田 「作ったので持ってきました」といきなり実機ベースの画像を見せられて、しかもクオリティーが高いという(笑)。『LRFFXIII』でミコッテを知って、『新生FFXIV』に興味を持ってもらうきっかけにもなると思うので、とてもいいことだと思っています。ただ、僕は投げられたボールは全力で打ち返す主義なので、こちらも何か考えたいですね。負けられないです(笑)。
シリーズの中の立ち位置
――吉田さんとしては、『新生FFXIV』はこれまでのシングルプレイ用の『FF』シリーズと同列に見てほしいというのが理想なのでしょうか?
吉田 僕の中では、『FF』は『FF』なんです。僕は今回ナンバーを背負っているので、そういう立場の人間が、オンラインだからいつもの『FF』と違っていていいやなんて思っていたら、ファンの方に失礼です。むしろ、プレイヤーの方に『FFXI』や『新生FFXIV』ってちょっと別だよね、って言われているほうが悲しいですね。『新生FFXIV』では、ひとりでも多くの方に「これは『FF』だ」と言ってもらいたいので、シリーズの要素の導入を始め、いろいろな工夫をしてきたつもりです。まだまだ『新生FFXIV』にはプレイヤーに認知されているNPCがいないので、今回でそのあたりを確立できたら、今後の『FF』派生作にも登場していくのではないでしょうか。そういった意味では、ファンのあいだに『FF』としての市民権をちゃんと獲得したいです。
巴術士、召喚士、学者
――先ほどのPVに登場した巴術士、召喚士、学者のジョブデザインの違いを教えてください。
吉田 もともと僕が『旧FFXIV』の作り直しを決めた要素のひとつに、サーバーでペットがコントロールできないためペットクラスが作れない、という状態がありました。クラスの役割のバランスもアタッカーがやたら多いのに、キャスターが少なく、ヒーラーもひとつしかない。キャスター、とくにデバッファーが足りないと戦術にも組み込みにくいし、今後、ダンジョンやエンドコンテンツを作っていくうえで、弱体という概念がないと、やっぱりおもしろさが一段欠けた状態になってしまうのでそれらを同時に達成したいために用意したのが巴術士です。
そもそも僕が引き継いだ時点で、クラスはないのにギルドはあった。それを巴術としたとき、ペットにはキャラクターを推していくうえでもカーバンクルがいいだろうとなったんです。さらにそこからの派生を考えるときに、ペットジョブといえば召喚士だよねと、そこまではあっさり決まりましたが、学者はもともと予定になかった。コンテンツファインダーを使ってマッチングするうえで、白魔道士=幻術士しかヒーラーがいない状態だと、パーティーが形成されにくくなるので、意地でもヒーラーが足りない問題を解消しないといけなかったんです。昨年9月~10月ごろ、残りの開発期間を考慮してもバトルチームから「イケるのでは?」という進言を貰って制作を決めました。『FF』らしく、ヒーラータイプでもおかしくなく、アタックのある程度できるジョブを考えたときに学者が浮上し、一気に仕上げました。最後までどんなペットを使うかいろいろな意見が出ました。シルフ案もありましたが、蛮神ラムウが喚べなくなる(笑)。ちょうど『ブレイブリーデフォルト』も発売されていましたし、かわいくてキャッチーだからフェアリーにしようかと。新しいジョブに関しては、いいジョブクエストや関連シナリオができました。ぜひクエスト内容も楽しみにしていただければと思います。
――それぞれペットを呼び出しますが、それぞれどんな能力を持つのでしょう?
吉田 アクションはそれぞれまったく異なるものを持っていて、僕はプロデューサーレターLIVEでバディチョコボ……倒されちゃいましたけど……基本、ペットたちはそれぞれ、自動で自分たちの持っているスキルやアビリティを発動します。プレイヤーは直接操作しません。ただ「アタックしろ」、「攻撃を中止しろ」、「一回帰れ」などのおおよその命令は出せます。あとはパッシブなのかガードなのかの設定はできて、ガードにしておくと、自分に敵対した敵には確実にカウンターに行きます。パッシブにしておくと命令しないかぎりはアタックしない。なぜなら、ヘイトが乗った瞬間に暴れ始めてしまうと、「俺は逃げる気だったのに、ペットが戦っている」という状況が起こるので、そういう切り替えは、専用のウィジェットとアクションが用意されます。
たとえばLIVEでも出ましたが、それぞれタイタン・エギだと、いわゆるタンク系のアビリティをAIの中に持っているので、モンスターの敵視を引き付けてくれます。自分は後ろから敵の弱体アビリティやDoT(毒など時間で進行する攻撃)を入れたりして敵を倒すということも可能ですね。フェアリーは、回復に寄ったモードと、強化に寄ったモードのふたつがあります。回復については、学者自身が持っているスペルもありますし、フェアリーが持っているスペルもあります。フェアリーが全員を回復したり強化したり。
――どのクラスも喚び出しているあいだに消費するものはあったりは?
吉田 呼び出す際にだけMPを消費します。
――カーバンクルはどうなりますか?
吉田 カーバンクルもじつはタイプがあり、タイプの違う複数の中からどのカーバンクルを喚び出すか決めることになります。
――PVの中では書物に書き込む動作でそれぞれのペットを喚び出していましたが、ほかにはどんなことができる?
吉田 βテストフェーズ4の前にはまた情報ラッシュを考えています。動画を公開するタイミングがありますので、そこで見ていただいたほうが伝わりやすいと思います。ただ、本で殴るのだけは確定しています(笑)。バトルチームが本を使ったウェポンスキルを作るかどうかで悩んでいましたね。プレイヤーからの要望は多いけど、一時の感情に流されてウェポンスキルにしていいものかどうか。そのためにはキャスターなのに近づかなければいけませんよね。本で殴りたいがために(笑)。かといって近づかれたとき用にしてしまうと、うまいプレイヤーほど必要ないのに、限られたスキルの枠が埋まってしまう。どうしようねと(笑)。
――召喚獣についてですが、イフリートやタイタンといったこれまでに紹介されているもの以外に、シリーズでおなじみの召喚獣は出るのでしょうか?
吉田 召喚士が召喚できる対象としては、レベルキャップが開放されない限りは、そんなに増えないと思います。ただ、蛮神バトルとして登場する召喚獣はもちろん増えていきます。それらを召喚士が喚べるかといったら、必ずしもイコールではないですね。
――召喚士と学者は、いずれも巴術士から派生することが今回明らかになりました。このように、既存のクラスも複数のジョブへ派生していくのでしょうか?
吉田 そのように考えていただいてかまいません。
――1クラス2ジョブみたいな関係になるのでしょうか?
吉田 将来的には、2ジョブにとどまらないクラスも出てくるかもしれませんね。でもそれらが、単純に並行な関係になるとも限りません。たとえばですが、剣術士からナイトと暗黒騎士に派生したとして、ナイトと暗黒騎士のジョブクエストを完璧にこなしたうえで特定の条件を満たすと、さらにもうひとつのジョブに派生する、みたいなイメージもありですよね。
――派生ジョブが実装される時期はいつごろでしょうか?
吉田 拡張ディスクの前に何かひとつは入れたいですね。とくに、『旧FFXIV』からプレイされている方はレベルキャップが当時から変わっていないので、キャラクターの成長を楽しみにされている方も多いと思うんです。なので、レベルキャップの開放のタイミングとかで追加できるといいですね。でも、本格的にジョブを増やすのは、拡張ディスクになると思います。興味を持ってもらうには、いちばんいいタイミングなので。
ギャザラーやクラフター
――クラスを育て派生させるのは、今後も含めバトルクラスだけ?
吉田 将来的にやらないとは言いませんが、ギャザラーやクラフターの上位職は、いまのところ予定はありません。さらにすごいものを作るために、たとえばわざわざ錬金術師と鍛冶師をレベル50にして、新しい上級職を作っても、けっきょく最初のふたつのジョブと違いがない。それよりも上級レシピを入れ、ほかのクラフターと協力してさらにすごいものを作るとか、バトルクラスが獲ってきたアイテムを使って家具や装飾を作るとか、LIVEでも話しましたが、チョコボのアーマーを作ったり、魔導アーマーのパーツを作ったりなど、そちらのほうがエオルゼアの世界で生きていく、経済を動かしていくというそもそものロールだと思います。それがエンドコンテンツだとも思っているので、そういう伸ばしかたをしていこうと思っています。
――漁師がほかのギャザラーやクラフターのように他のプレイヤーの役に立つ仕様は考えられているのでしょうか?
吉田 『旧FFXIV』ではレシピに入っていたんですよね。鎧の一部に魚の皮が必要だとか。ゲームには凹凸があっていいと思うんです。ゲームを作るときにどうしても陥りやいのが、「このクラスにこれができるのだから、このクラスにもできたほうがいいよね」、という“平均化”なんです。じつはそれは全部いっしょになってしまうとてもつまらないことなのに、それをやらせるために設定でいびつなことをしていたり、いびつなアイテム構造にすると、迷惑をこうむるのはけっきょくプレイヤーなんです。その不自然さをゲームの根幹にはしたくなくて、だからβテストフェーズ3でも、漁師を公開していないのは、あくまで釣りのロールプレイをしたい人が楽しめばいい職業で、平均化を求めているのなら、そういうクラスではないですと今回説明していくつもりです。エオルゼアの自然を楽しんでもらう職業。その代わり釣竿、エサ、仕掛けを選んだり、水質のタイプを考えたり。ギリギリまでオーケーするか迷っていましたが、雲海に釣り糸を垂らすと、雲に住んでいる魚が釣れます。あとは流砂で釣れたり。僕は最初NGだと言っていたのですが、どうしてもやらせてほしい、水だけだと狭くなるので、ファンタジーなのだからと強く推されました(笑)。説得力がちゃんと出せるならいいと、いま担当が必死にデータを作っているところです。がんばれ!という感じで生暖かく見ています。
βテストについて
――βテストフェーズ3での新規プレイヤーの比率は?
吉田 今回『旧FFXIV』のクライアントをお持ちの方は、ようやく全員参加可能になっています。それだけで約70万人。それが約5割。βテストの応募だけでも70万人を超えているので……という感じです。さらに『FFXIII』に同梱されていたβテスト参加優先券の方も今回全員当選させていただきましので、ようやくいろいろなお約束が守れるタイミングになったかとホッとはしています。今日(6月14日)は25ワールドでスタートします。レガシーキャラクターの引継ぎが始まる次回テストでは、10台増えて35ワールド。β中に50台まで開ける用意はありますので、あとは数字を見つつ。キャラクターデータがワイプされるというのも頻繁に言っているのでどのくらいのログイン率になるかはわかりませんが、まずは一度、多くの方に楽しんでいただこうかなと。
――βテストフェーズ3で初めてPS3版のサーバーが開きますが、家庭用ゲーム機ユーザーならではの意見によって改修するような事態が発生することは見積もっていますか?
吉田 もちろん工数には入れてありますが、そこを上回るようなサプライスがない限りは大丈夫です。以前からお伝えしていますが、PS3のお客さまはβと思っていないといいますか、βテストって? と思っているとおもうんです。そういう意味では、フェーズ2までに既に40万人のテストでフィードバックはいただいていて、今回、ほとんどゲームの根幹に関しては仕上げたつもりです。PS3のプレイヤーの皆さんに見ていただきたいのは、表示の優先順位など。なかなかNPCが表示されないとか、街中ではもっとプレイヤーキャラクターを出してほしいだとか、これくらいの人数が集まるとつらいなどのプレイ感です。もちろんそれ以外のフィードバックもいただきたいのですが、そのへんを重要視したいです。このβテストフェーズ3で僕の中に『新生FFXIV』の芯があり、納得いくまで調整しました。ここからは多少何かがあってもブレることのない、というものが多くなっている状態です。そんなに方向転換するような悩みがまだあるなら、それこそ発売日を告知したりしませんし(笑)。
気になるゲーム仕様
――E3でのプロデューサーレターライブの話題になっていた“トークン(※)”についておうかがいします。トークンにはヒエラルキー(階級)が設定されているとのことですが、下位のトークンで交換できる装備品はいずれ使わなくなってしまうことが想定されます。消費アイテムなどとも交換できるようになるのでしょうか?
吉田 消費アイテムは想定していません。ただ、交換できる装備品のラインナップが永久に変わらないわけではないです。MMORPGは、どうしても敵の強さがインフレーションしていくので、3年に1回とか、どこかのタイミングですべての価値を見直す時期がくると思います。『新生FFXIV』では、アイテムレベルできっちりデータ管理しているので、そこを崩さないようにしつつ、ラインナップの入れ替えを行う感じになるでしょうね。また、誰からも見向きもされなくなったアイテムや、古くなってしまったコンテンツなどは、定期的に調査してリニューアルをかける予定です。
※トークン……コンテンツをクリアーすることで入手できるポイントで、アイテムの交換に利用できる。
――コンテンツアタック中のロールの変更は、選択肢として仕様に盛り込んでいるのか、それともそれも想定してエンドコンテンツは成立しているのか。
吉田 ユーザーが取り得る選択肢でいいと思っています。僕の性格に由来しますが、ユーザーにチョイスをしてもらう部分と、開発がそもそもチョイスをしたうえで展開するものを明確に分けています。だからロールチェンジできないコンテンツはそれが前提に、できるコンテンツはロールチェンジを想定されていると考えてほしいです。開発に明確な意志がないと、バランスがとれませんし、どこまでケアしたらいいのか迷ってブレるんです。たとえば同じ例ですが、パブリックフィールドで魔導アーマーを使って戦えないんですか? チョコボで殴り合いたいです、というよく寄せられる質問に対しては、いまのところやる予定はない、とお答えしています。その代わり、専用のコンテンツや専用フィールドでやったほうが絶対におもしろく作れるので、そうします、と言っているのと同じです。何もかも自由にするのはゲームをおもしろくするのとは違う。制約あるからこそ、その中で考えて組み立てて、キッチリ戦って達成感を味わうという場合と、その選択肢にコンテンツ内でのロール変更があるから複雑に見えたとしても、そういうコンテンツは、わりとざっくりなバランスなので、みんなで楽しんでくださいね、というように明確に分けて制作します。
今後の予定
――日本の多くの方に『新生FFXIV』を知ってもらうために、発売までにどのようなプロモーションを計画されていますか?
吉田 極端な話、日本はCMかSNSしかないと思っているんです。CMが始まらないと、ゲームが発売される雰囲気がしない。なぜなら、いまの時代は情報量が多すぎなんです。日々の興味なんてすぐ薄れるので、βテストの期間はTwitterやFacebook、オンラインバナーあたりで展開しつつ、最後の最後に一気にプロモーションを打つ感じです。周知させた結果として、「おもしろいからやろうぜ!」という声が知人から知人へ発信されるのが、何よりも効果として大きいと思っています。
――サービス開始後、サーバー移転は気軽にできるようですが、引き継げるものを教えていただけますか?
吉田 1キャラクターを移動させる場合、アイテムやギルなどの個人財産は当然引き継ぎます。サーバーが変わりますから、フレンドリストはなくなりますし、所属していたリンクシェルやフリーカンパニーからも脱退になります。家と土地は権利書に戻りますから、建て直しになりますね。買い直す必要はありませんが、移転先で場所が埋まっていたら、別の場所で建てるしかないです。
――拡張パックのリリースなど、サービス開始後のロードマップについてお話いただけますか?
吉田 あくまでプロデューサーとしての発言ですが、ロンチ後のドタバタは必ずあるとは思うので、それによって、どれだけ計画がずれるか、ということは念頭に入れておく必要があります。僕としては、サービス開始から1年半で拡張パックは出したいです。ただ、そう言いつつ、2年近くになるのかなというのが、いまのざっくりとした感覚です。やはり1年は短すぎて、拡張パックと呼べるほどのボリュームにならないと思うんですよ。相当なフィールド数を作り込んで、コンテンツを盛り込んだ状態で拡張パックを出したいので、そのためには1年半は必要なのかなと。パッチのアップデートに関しては、2ヵ月半から3ヵ月に1回ぐらいのイメージで、スタッフにも「年に4回はやりたいね」みたいな感じで話してはいます。
まとめ
――2年半前に吉田さんが『旧FFXIV』を引き継いだときに思い描いたものが、どこまで実現できたかお聞かせください。
吉田 まだサービスを開始していないので何ともですが、少なくとも2年半前に“新生時ここまでは”と思っていたラインに対しては、140%ぐらい出来たと思っています。皆さんにとって2年半って、通常の時間としては長く感じられるかもしれませんが、『新生FFVIV』スタート時のボリューム、クオリティー、4言語対応、そしてPC版とプレイステーション3版をゼロから作り、さらには『旧FFXIV』の運営と改修を並行して進めてここまでこれたのは、当時想定していた以上ではあります。僕が言うのも変ですが、スクウェア・エニックスすげえなと。ただ、開発のメンバーには本当に恵まれたと思います。
――では、MMORPGとしての完成度についてはいかがでしょう?
吉田 『FF』を題材にしたMMORPGという意味では、思い描いた通りのロンチです。ここから製品までの期間で100点まで行けると思います。もし『FF』が題材でなかったとしたら、僕はコアなMMORPGプレイヤーでもあるので、『新生FFXIV』とは似ても似つかない、ニッチなゲームになっていたでしょうね(笑)。