プレイヤーの“選択”がカギとなる
2010年にリリースされた『スプリンターセル コンヴィクション』は、ステルスアクションでありながら、“マーク&アクション”と呼ばれるアグレッシブなシステムを搭載していたのが特徴だ。“マーク&アクション”とは、潜入のスペシャリストであるサム・フィッシャーを操り、敵に忍び寄ってステルスキルを行うことで、ゲージが上昇。ゲージをある程度溜めれば、複数の敵をまとめて素早く始末できるシステムだ。マーク&アクションを利用して敵をバンバン倒したいときは、ステルスキルを狙う必要がある。そのため、『コンヴィクション』は攻めとステルスが結びついた“攻撃的ステルスアクション”とも言える。
3年ぶりの新作『スプリンターセル ブラックリスト』では、3つのプレイスタイルが導入された。これは、敵を倒さずに回避して進む“ゴースト”、敵をすべて倒して進む“アサルト”、それらふたつの中間で、ジャマな敵だけを倒す“パンサー”。これにより、プレイヤーはそのときの気分や状況に合わせて3つのプレイスタイルを切り替えながら進むことになった。また、マーク&アクションのシステムにも若干手が入り、ステルスキルではなく、ふつうに敵を倒しても(少量ではあるが)ゲージが溜まるようになったのだ。これは、おそらくアサルトを好むプレイヤーでもマーク&アクションが使えるようにしたのだろう。ステルスキルという縛りが外れ、選択肢が大きく広がった『ブラックリスト』。プレイヤーがより能動的にゲームを楽しめるようになった本作の見どころを、クリエイティブディレクターに直撃した。さらに、前作から引き続き収録されるCo-op(協力)プレイを統括するディレクターに、Co-opプレイの魅力を聞いた。
クリエイティブディレクター
Maxime Beland
――前作『コンヴィクション』では、ステルスキルで敵を倒してゲージを溜めることで、ゲージと引き替えに一瞬のうちに敵をまとめて始末するマーク&アクションが使用できました。今回はそのシステムがさらにパワーアップしているようですね?
Maxime Beland(以下、Maxime) 前作はステルスキルでしかゲージが増えなかったのですが、今回はそのシステムを少し変更して、ステルスキル以外でも敵を倒せばゲージが増えるようにしました。ただし、倒しかたによってゲージの増えかたが変わり、ふつうに倒したら1ポイントのところを、ヘッドショットで倒せば2ポイントもらえる、といった形です。
――それは、“ゴースト”と“パンサー”と“アサルト”という3つのプレイスタイルを導入したからですね?
Maxime はい。プレイヤーが3つのプレイスタイルを使い分けて進むので、そこに合わせた形です。敵に見つからずに進むゴーストだけではなく、パンサーやアサルトでもマーク&アクションを使えるようにしました。状況に応じてプレイスタイルを使い分けることがこのゲームの美しさであって、ステルスを強制するシステムにはしたくなかったのです。プレイヤーに選択肢があって、いろんな可能性が広がっているのが理想ですね。
――話を聞くと、3つのプレイスタイルを許容するレベル(地形)デザインを構築するのがたいへんだったのではありませんか?
Maxime すごく難しそうですが、じつを言うとそうでもなかったです。最初に3つのプレイスタイルを導入したとき、スタイル別に行動パターンをシミュレートしてみたのです。たとえばゴーストの場合は、オブジェクトに隠れながら敵を避けていきます。パンサーの場合は、基本的にゴーストと同じ動きをしつつ、要所で敵を倒していく。そしてアサルトはただただ敵を始末する、という感じです。こうして考えると、ゴーストとアサルトのバランスを調整すればよかったので、ふだん通りのレベルデザインで進めることができました。
――『コンヴィクション』では、サムが闇に紛れると画面がモノクロになりましたが、今回はカラーのままのようです。この変更にはどんな狙いがあるのでしょうか?
Maxime 今回のサムは、複眼ゴーグルや時計といった光るものを着用しています。モノクロだとそれらを身につけていることがわからりづらくなるので、カラーを取り入れることにしました。あとは複眼ゴーグルのナイトビジョンやサーマルビジョンなど、視覚効果が大きく変わるガジェットを多用することになるので、モノクロにする意味がやや薄れたのもあります。
――たったいまガジェットの話が出ましたが、本作にはどんなガジェットが登場するのでしょうか?
Maxime 基本的に3つのプレイスタイルをサポートするガジェットを用意しています。アサルト向けの“インセンダリーグレネード”は威力が高いので、強敵に対して使うのが効果的です。また、“スティッキーノイズメーカー”を投げると大きな音が鳴り、敵がそちらに引きつけられます。ゴーストだったらそのあいだに逃げて、パンサーだったら敵の後ろに回って殺害することも可能です。あとおもしろいのが、“スティッキーカメラ”ですね。これは壁などにくっつけて使うのですが、催眠ガスが仕込まれているので、近づいてきた敵を眠らせることができます。
――ガジェットとはちょっと違いますが、サムはステルス戦闘機の“パラディン”に乗って任務に赴くそうですね。パラディンについて教えてください。
Maxime パラディンは、サムが所属するフォース・エシュロンの本部です。そこでいろいろなミッションを請け負うことができます。それと、パラディンをアップグレートすることでサムへの後方支援が厚くなり、マップの機能が便利になったりします。もうひとつの特徴が、パラディンには“SMI”というテーブルがあって、そこにはこのゲームの全体が見られるようなワールドマップが表示されています。そこでフレンドがシングルプレイをやっているとか、Co-opプレイををやっているとか、誰がどこで何をしているかがすべてわかるんです。だからフレンドといっしょに遊びやすくなりました。
――プレイスタイルの選択だったり、ミッションの選択だったりとか、もっとも能動的な『スプリンターセル』になりそうですね。
Maxime はい。私たちがいちばん大事に思っているのは、このゲームはプレイヤーのためのゲームだということです。買ってもらった方にぜひ楽しんでもらいたいと思います。プレイスタイルやミッション、ガジェットなどがいろいろと選べるので、好きなときに好きなように楽しんでもらえるとうれしいです。
Co-opプレイディレクター
Richard Carillo
――今回のCo-op(協力)プレイの新しいところは何ですか?
Richard Carillo氏(以下、Richard) 『コンヴィクション』のときから仲間とシンクロして射撃するアクションがありましたが、今回はさらにそれを進化させました。ヘルメットを被った敵に対しても、1発目でヘルメットを剥がして、2発目で仕留めるという芸当も可能になりました。それと、今回は敵のタイプが豊富で、敵集団もまた連繋を取りつつ襲ってきます。それに対して自分たちもどうやって協力して撃退するかが、いちばんのポイントになると思います。
――サムの相棒となるキャラクターについて教えてください。
Richard アイザック・ブリックスというキャラクターです。彼は元CIAのエージェントなのですが、じつはサムではなく、オペレーターのグリムが雇ったという設定です。サムとアイザックの関係にはいろいろなものが含まれており、ゲームが進むにつれてちょっとずつ変化していくところが見どころです。
――シングルプレイとCo-opプレイでは、シナリオが別なのでしょうか?
Richard はい、違いますね。シングルプレイは“エンジニア”というテロ組織との戦いが描かれますが、Co-opプレイは、どちらかというとサイドミッションのような扱いとなっていて、そのなかでいろんな手がかりが見つかります。それらがエンジニアの秘密につながっていたり、ほかの出来事につながったり、という形になります。基本的にパラディンがひとつのハブになっていて、パラディンの施設を通してリストから好きなミッションを選択し、そこからすべての物語が展開していきます。
――今度はゲームプレイについてお聞きします。3つのプレイスタイルがありますが、Co-opプレイでも使い分けが楽しめるのでしょうか?
Richard もちろん全部使えます。特定のミッションでは、ひとつのスタイルに的を絞ったようなものもありますが、基本的にはバラエティーを持たせています。プレイヤーどうしが完全に別々に行動できますし、たとえばひとりがアサルトで特攻しているあいだに、もうひとりはゴーストで潜入ことも可能です。
――ミッションの種類はどんなものがあるのでしょうか?
Richard サムといっしょに行動する4人主要キャラクターからミッションを請け負うような形です。それぞれにミッション内容やクリアー目標が異なります。
――シングルプレイでは、サムは装備をカスタマイズできますが、それをCo-opで使用することはできますか?
Richard あなたのサム・フィッシャーなので、完全にシームレスですシングルでもCo-opでも同じです。アイザックを操作するときもサムの装備ががそのまま使えます。
――知らない人とマッチングすることもできますか?
Richard もちろん。ネットワークに接続すればほかのプレイヤーとも遊べますよ。そのときは自分が選んだ難易度選択を基準にマッチングされます。
――難易度選択は何段階ですか?
Richard “ルーキー”と“リアリスティック”と“パーフェクショニスト”という3つがあります。リアリスティックあたりからかなり難しくなってきて、パーフェクショニストになるとゴーグルの機能が制限されたりします。そんな中、どうやって生き延びていくかチャレンジしてみてください。
――最後にひと言お願いします。
Richard 本作でもっともアピールしたい点は、多様性と選択肢の多さです。やりかたを変えれば、何回でも繰り返し遊ぶことができます。どういう戦略を選んでクリアーするかを、ぜひ楽しんでほしいですね。