カリフォルニアに処刑人現わる!

 『ロリポップチェーンソー』に続く、角川ゲームスとグラスホッパー・マニファクチュアの共同プロジェクト第2弾『KILLER IS DEAD(キラー イズ デッド)』(以下、『KID』)。国家が極秘裏に運営する“処刑事務所”に所属する主人公のモンド・ザッパを操って、世界の極悪犯罪人たちを処刑していくアクションゲームだ。本作の海外販売を担当するXSEED Gamesのブースで、クリエイティブディレクターの須田剛一氏とディレクターの新英幸氏を直撃。本作のアクションのポイントについて、たっぷり話をうかがった。

【E3 2013】開発のキーパーソンに聞く!『KILLER IS DEAD(キラーイズ デッド)』須田氏&新氏インタビュー_01
【E3 2013】開発のキーパーソンに聞く!『KILLER IS DEAD(キラーイズ デッド)』須田氏&新氏インタビュー_02
【E3 2013】開発のキーパーソンに聞く!『KILLER IS DEAD(キラーイズ デッド)』須田氏&新氏インタビュー_03
エグゼクティブディレクター 須田剛一氏(写真右)
ディレクター 新英幸氏(写真左)
※写真中央はイメージガールのジェシカ・ニグリさん
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▼海外における“SUDA51”の人気の高さはかなりのもの。この日もブースの前に須田氏らが登場すると、あっという間に人だかりができていた。
【E3 2013】開発のキーパーソンに聞く!『KILLER IS DEAD(キラーイズ デッド)』須田氏&新氏インタビュー_06

――『KID』のプロモーションでは、須田さんにお話をうかがう機会が多かったのですが、今回は初めて新さんにご登場いただくことになりました。まずは自己紹介をお願いします。

新英幸氏(以下、) 『KID』のディレクターを担当させていただきました、新です。須田からゲームのコンセプトや目指すべき方向性の指示を受け取って、それをゲームに落としこむ現場の作業を統括しています。ときには須田の意見を自分流にアレンジしたりして、須田と意見を戦わせながら、細かい部分を詰めています。

――須田さんからみて、新さんはどんなタイプのゲームデザイナーですか?

須田剛一氏(以下、須田)  新はもともとキャラクターのモーションにまつわるアニメーター出身だったのですが、彼は弊社に入ってきた当初から自分で作りたいゲームのイメージを明確に持っていたことを覚えています。長年ゲーム業界にいる僕の感覚としては、ゲームのディレクターは自分から手を上げる人間でないと務まらないものだと思っています。ですので、新が積極的に手を上げてアピールしてきたタイミングで『KID』の現場を任せることにしました。

――『KID』の原案とシナリオは須田さんが担当していますが、新さんはいわゆる“須田剛一テイスト”を意識して開発に臨んだのでしょうか?

 グラスホッパー・マニファクチュアのスタッフの中でも、それぞれが自分の“須田剛一像”みたいなものを持っている思います。それをひとつにまとめるのが僕の大きな仕事のひとつでした。ちょっと言いかたは悪いかも知れませんが、みんなが勝手な“須田剛一像”を持っているんです。……もちろん僕も持っていましたが(笑)。スタッフどうしの共通イメージが食い違うとゲームの方向性もぶれてしまうので、ちょっとずつ軌道修正しつつ、意思統一を図りました。

――たとえば、現場の皆さんが考える“須田剛一テイスト”とは、どんなものだったのでしょうか?

 “ぶっとんでる”だとか“ひと筋縄ではいかない”というイメージを持っているスタッフが多かったですね。みんな尋常じゃないストーリーラインを期待しているようです。

――最終的にはどのような方向に軌道修正したのですか?

 須田に対してファン意識みたいなものを持たずに、フラットな気持ちで向き合うことです。須田が頭の中で望んでいるものをそのまま作っても、たぶん本人は喜ばないと思います。須田から降りてきたコンセプトを自分たちの考えで解釈し、新しいものを作るように心掛けました。

――なるほど。その話を受けて、須田さんがゲーム作りで重視しているポイントは何ですか?

須田 僕が大事にしている部分は、ユーザーさんがゲームを通して遊んだときの“体験”です。やはりアクションゲームには、カットシーンからアクション、アクションからリザルト画面という流れにリズムがないといけません。シーンが切り替わる“つなぎの部分”がぎこちないと、ユーザーさんの気持ちが途切れてしまいます。ずっとその世界に滞在してるかのような“没入感”が、グラスホッパー・マニファクチュアのゲームにとって大事な要素だと思っています。現場のスタッフはつねに作品と向き合っているので、視野が狭くなりがちです。だから僕はなるべく引いた状態で遊ぶようにして細かいあらを消すようにしました。

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――新さんも“没入感”は意識されたのでしょうか?

 もちろんです。その部分に関しては須田から細かく指示があったので。僕たち現場の人間は毎日ゲームと向き合っているので、最初の方向性を見失いがちになってしまうこともあります。そんなとき須田が一歩引いた視点から指示を出してくれたので、いい開発の流れができていたと思います。

――そういったやり取りを経て、最終的に『KID』はどんな方向性のゲームになったのでしょうか?

 僕がこだわったところは、突拍子もないようなロジックのアクションや、これまでに見たことのないようなアップグレードのシステムだとか、そういった目新しさではありません。プレイするうちにプレイヤーの皆さんが「あ、そういうことか」と駆け引きのおもしろさに気づいて、さらなる爽快感を追求できるようなゲームを作ろうとしました。自分自身がアニメーター出身だったこともあり、キャラクターのモーションをフレーム単位で確認して、アニメーターやプログラマーと意見をぶつけあったりして試行錯誤を重ね、求める理想を追求した形です。

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――試遊機で『KID』に触れる機会があったのですが、まさに“やればやるほどめきめき上達するゲーム”ですよね。ゲームに慣れてくるとチャレンジ系のやり込み要素である“スカーレットチャレンジ”に夢中になってしまいました。

 まさに“スカーレットチャレンジ”は、アクションゲームファンのために用意しました。ゲームのアクションを極めて通常のミッションが物足りなくなったという人に遊んでほしいですね。難度がかなり高めに設定されていて、かなり手応えがありますから。

――ちなみに敵との戦闘は、剣戟アクションがメインというのは最初から決まっていたのですか?

 はい。ただ、モンドの左腕には銃の機能を持つ換装武器がくっついているので、剣戟アクションとシューティングとのバランス取りには苦心しました。ロジックで考えると、どう考えても飛び道具のほうが有利なんですよ。さらに見た目も派手でゴツイから、プレイヤーが換装武器の使い勝手に期待してしまうのです。そうなるとモンドが日本刀を持っている理由がどんどん薄くなっていく。だから比較的早い段階で剣戟アクション中心の味つけに振ることにしました。

――ゲーム性に関して大きく舵取りする際、須田さんと意見交換をしましたか?

 それはもちろんです。

須田 新は“刀と銃だったら、刀が主役”という意見を、わりと早いうちに主張していました。彼から強い意志が感じられたので、そこは託すことにしたんです。やっぱりディレクターの確固たる意思がそこにあって、現場のスタッフを引っ張ってくれるのがいちばんですから。

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――アクションの主軸は剣戟アクションですが、エピソードによっては特別なバトルも用意されていますよね。たとえば、エピソード“闇に消えた虎”では、虎にまたがったヤクザの親分・浜田山をバイクに乗って追跡するカーチェイス(!?)が登場します。

 浜田山とのカーチェイスですが、最初は広大なコースを用意して、プレイヤーが自由に移動できるようにしたんです。本当のレースゲームのようなクオリティーで遊べるものを目指していて、ほとんど完成していたのですが、けっきょくある程度決められたコースを駆け抜けるタイプに変更しました。

――それはなぜですか?

 プレイヤーの立場から考えると、ここではバイクの運転よりも浜田山との対決に集中したいだろうと思ったからです。

須田 ゲームが複雑になるのを避けるため、要素を絞り込んだ形です。このシーンはモンドと浜田山の対決だから、運転は同僚のヴィヴィアンにまかせようぜ、と(笑)。

――(笑)。カーチェイスが終わると浜田山との戦いに突入します。浜田山戦では、体力をある程度減らすと相手の攻撃パターンが切り替わったりして、これまでのグラスホッパー・マニファクチュア作品と共通した匂いを感じました。やはりボス戦にはかなりのこだわりがあるのでしょうか?

須田 じつはボス戦は僕のコントロールを離れているんです。現場のスタッフに「ボス戦はワンフェイズでも、そこをしっかり作り込めばユーザーさんは満足してくれるもの」だと伝えても、気づいたらフェイズが増えていたりして……(笑)。今回、スタッフはいつも以上にボス戦に情熱を注いでいるようです。皆、『ロリポップチェーンソー』のアクションを越えたいという気持ちがあるからでしょうね。

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――なるほど。ボス戦に乞うご期待、と。それでは最後に『KID』を楽しみにしているファンに対してメッセージをお願いします。

 まずはストーリーやビジュアル面など、プレイヤーの皆さんが目で楽しむ部分は絶対に裏切らないので、そこは期待してください。ゲームプレイに関しても、ライトな方から生粋のアクションゲーム好きまで、幅広く楽しめるようにバランスを取っています。購入してくださった方には、とことん遊び尽くしてほしいですね。

須田 僕は、角川ゲームスさんがつけてくれた“21世紀の大人たちに送る愛と処刑(コロシ)のファンタジー”という、このゲームのキャッチフレーズが大好きなんです。最近は大人たちが遊ぶゲームが減っていて、新規IPが生まれづらい時代だったりしますよね。そんな中、完全新規の作品として『KID』をドンと胸を張って作り上げることができました。グラスホッパー・マニファクチュアは新規IPを作ることが使命だと思っているので、これからも新しいゲームを作っていきたいと思います。大人のゲームファンの皆さんには、『KID』という新しいゲームに触れてもらいたいです。ぜひ買ってください!

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