次世代機で実現する『FF』と『KH』の新たな可能性
E3開催に先立ち、2013年6月10日(現地時間)に行われたソニー・コンピュータエンタテインメント プレスカンファレンス及び11日(現地時間)のスクウェア・エニックスQ&Aセッションにて、『ファイナルファンタジー ヴェルサスXIII』が『ファイナルファンタジーXV』(以下、『FFXV』)にタイトルを変え、ハードをPS4とXbox Oneに移したことが明らかにされた。また、『キングダム ハーツIII』(以下、『KHIII』)の制作も、同時に発表されている。
『FFXV』へのタイトル変更の経緯や時期、DirectX11での開発のため、PS4とXbox Oneのどちらにもポーティング(移植)が可能な点などについては既報の通り。現在、『FFXV』についてもっとも謎なのは、“SQUARE ENIX -THE FUTURE-”の質疑応答にあった“『FFXIII』のようにシリーズ化される可能性はあるかどうか”、その答えだ。

一方、『KHIII』は、『KH バース バイ スリープ』を手掛けた大阪チームを中心に制作していることや、本作でゼアノートとの決着がつくことなどが判明している。公開されたトレーラーがティザー的な内容だっただけに、アクションがどのように進化していくのかなどの具体的な情報はまだまだ少ない。
ファミ通.comでは、海外メディアの取材に追われるディレクターの野村哲也氏を直撃し、両作品に関するインタビューを実施。ごく短い時間ながら、ファンへ向けてのコメントをいただいた。なお、週刊ファミ通2013年7月4日号(6月20日発売)にも、インタビューとともに画面写真などを掲載予定となっているので、そちらにも注目してほしい。
A World of the VERSUS Epic
――トレーラーでは、“15番目”という、『XV』に合わせたかのようなセリフがありましたが、ハードが現行機から次世代機になったことで、『ヴェルサス』からのストーリーの変更などはあるのでしょうか?
野村 あれは本編にはない、今回の発表のために用意したトレーラーだけのセリフです(笑)。本編のストーリーやキャラクターは、当初から変わっていません。
――そうなんですね。以前、“ナンバリングではない作品だから可能なストーリーになっている”、というお話をされていました。そこから方向性は変わっていないと。
野村 コマンドバトルではなく、アクションバトルであることも含め、ナンバリングタイトルではできないようなことをしようとしているけれど、それでもいいのか? ということは、『FFXV』へシフトする話が出たときに確認しました。問題ないということだったので、方針は何も変えてはいません。ただ、トレーラーで“A World of the VERSUS Epic”……叙事詩の一篇であることを示唆していた通り、『FFXV』はひとつのクライマックスを迎えますが、物語としては続いていく予定です。
――それは連作になる可能性がある、ということでしょうか。
野村 この密度で作っていると、途方もなく壮大なものになるんです。ボリュームや密度を落とすという案もありましたが、それでは、きっと望まれているものではなくなってしまう。そのため、『FFXV』は連作を念頭に完成させることを考えています。
――連作になる場合、ユーザーはそれぞれの作品が短いスパンでリリースされることを望むと思いますが、それについてはいかがですか?
野村 どういう形で出すかは追って発表しますが、つぎが出るまで長くお待たせしてしまうのは望むところではないので……これも、次世代機へハードを移行したときに決まったことですが、オンラインへの対応も検討しています。
――オンラインで、どのような仕掛けを?
野村 さまざまな可能性があります。次世代機で大きなタイトルを制作するのは、開発費も時間もかかり、非常にスケールが大きくなります。スタンドアローンだと、開発に数年かけたタイトルでも、短期間で遊び終えてしまう。長いスパンで遊んでいただくために、オンライン要素は必要だと思いますし、物語が続くならばなおさら、熱を保ったままお待ちいただくために、そういった仕掛けは取り入れるべきだということで、検討しているところです。
――PS Vitaを使うなど、他ハードとの連携などは考えられているのでしょうか。
野村 PS Vitaに限らず、スマホやタブレットへの対応も検討中で、これまでの『FF』にない、新たな展開を考えています。そういった発展性も、開発方法をPCベースに変えたことによる利点だと思います。
――かつてない進化を遂げる『FF』になりそうですね。最後に、『FFXV』に期待するユーザーへメッセージをお願いします。
野村 たいへんお待たせしてしまい、本当に申し訳ありません。今回の発表が、お待ちいただいた皆さんの期待に応えられるものになっているといいのですが。これから、クオリティーはまだまだ上がっていきます。今回の発表を機に、東京ゲームショウなどの大きなイベントなどの折には情報をお出ししていきたいと思っていますので、今後の『FFXV』の進化にご注目ください。現行機では、日本の開発が海外に遅れを取ったように言われている部分もあります。次世代機では、決してそうではないことを、この作品でお見せしたいと思います。
『KHIII』は敵のAIを高度なものに
――『KH 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』(以下、『KH3D』)や『KH -1.5 HD リミックス-』の余韻があるうちに『KHIII』の映像が公開されたので、意外と早く発表されるのだな、と驚きました。
野村 『KHII』以降、スピンオフ作品が続いてやきもきされているファンの方も多いと思いますので、『FFXV』と併せて公開させていただきました。開発状況からすると、発表は少し早いかと思うのですが。
――とはいえ、すでにビジュアルの方向性は固まっているようですね。
野村 開発内で“キングダムシェーダー”と呼ばれているビジュアルです。オリジナルのワールドでは、キャラクターがこの質感のままで動くようになります。シェーダーはワールドごとに調整するので、ディズニーのワールドでは、それぞれの世界観に合ったビジュアルになります。
――『FFXV』と同じく、『KHIII』の開発にも、Luminous Studio(ルミナススタジオ)を用いられているのでしょうか。
野村 、現状はルミナスをメインに使用して検証を行っています。オーバースペックで制作して、PS4とXbox One用にポーティング(移植)するのも同様です。なお、今回お見せしたトレーラーのバトル部分は、ツールの問題で実機映像の吐き出し準備が間に合わなかったので、リアルタイムでこういった表現が可能になる、ということをイメージ的にお見せしてしているムービーになっています。ですが、実際にリアルタイムで動いているところを見ても、大差のないものになっていますよ。
――『KHIII』のアクションが、どのように進化するのかお聞かせください。
野村 現在、実機で動かせるデモ版があるのですが……大暴れですね(笑)。“大胆なアクション”が、さらにすごいことになっています。『KHIII』のパーティーは3人なのですが、ワールドごとにNPCなどもバトルに参加し、とにかく派手なアクションが展開しますよ。着地もせずに空中戦をくり広げて、空を飛びまくっています。
――ソラだけに(笑)。
野村 そうですね(笑)。敵のAIも、かなり凝ったものになっていて、それと連携したアクションが敵味方ともにくり広げられるようになればと。たとえば、乗り物型の敵がいるのですが、ソラがバトル中にその敵に乗って飛び回ったりといったことは、すでにできています。
――それでは最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
野村 『FFXV』と『KHIII』の開発チームは、お互いを意識しながら切磋琢磨しつつ制作に臨んでいます。社内用の内覧会では、『KHIII』がトリを務めるなど、開発度はまだ低いながらもすでに手応えを感じています。『III』は、オンライン要素を含めた、これまでの『KH』にない展開も検討中ですので、今後の情報をお待ちいただければと。今年は東京ゲームショウのほか、10月にはディズニーのイベント“D23 Expo Japan”が国内で開催されますので、そういったタイミングでも情報をお出しできればと考えています。