アメリカの資本で日本のスタジオが真のAAAを作るケースとしても注目
5月17日、カリフォルニア州サンタモニカで、ベセスダ・ソフトワークスのプレE3イベント“BFG”が行われた。
同社期待の新作3本が出展されたイベントに、日本からTango Gameworksのサバイバルホラー『サイコブレイク』も堂々出展。プロデューサーの木村雅人氏がデモを披露したほか、国内外各誌のインタビュー対応などを行った。
イベント中に披露されたのは本誌既報のデモリポートとほぼ同内容のものだったため詳細は割愛するが、改めて感じたのは本プロジェクトのユニークさだ。
Tango Gameworksはベセスダ・ソフトワークスやid Softwareなどと同じZenimax Mediaグループに属しており、本作のゲームエンジンもid Softwareのid Tech 5を使用。一方でゲームはディレクターを務める三上真司氏らしい、プレイヤーに与える恐怖と弾が少なめのサバイバルシューティングの両立を狙ったもの。
ここが本作の非常に興味深い点だ。日本の大手パブリッシャーが海外スタジオを使ってタイトル制作するケースが増えているのと同じように、アメリカの資本と技術のバックアップで、日本のトップクラスのクリエイターたちが真のAAAタイトル(※質や予算が最上級であること)を目指してその創造性を注ぎ込むケースが増えていくことだって、十分にありえることだ。これまでにないケースというわけではないが(例:ユークスのプロレス&格闘技タイトルなど)、そういった制作体制の点でも今後注目と言えるだろう。
ちなみにデモは、洗車機のブラシを刃物に換えたかのような凶悪マシーンが両脇から迫ってくるシーンでは、そのいい感じにやりすぎな表現に「オ~ゥ」と嬉しそうな声があがり、戦闘シーンになればそのメカニズムを読み解こうと集中。質疑応答にも多くの質問が寄せられ、ツカミはオーケーといった感じ。木村氏も海外メディアの反応に手応えを感じているようだった。
ゲームプレイ映像はもうちょっとしたら出るかも?
と、同じシーンを見たからって手抜きするわけにもいかないので、改めて気付いた部分や、木村氏への合同インタビューでわかったことなどもトピック別にお届けしよう。
ちなみに、記者はもう2回見ているそのナイスなゲームプレイの映像を早く皆さんにも見てほしいのだが、こちらはベセスダ・ソフトワークスの関係者に確認したところ、「E3の頃には映像を見られるかも……」とのことだった。
■粘着質なグラフィックがスゴい!
まずは、前回のデモリポートでも力を入れて書いたが、やっぱり不穏な感じがしまくるグラフィックが素晴らしいと思った。特に序盤の謎のチェーンソー野郎のパートの、人間解体場の汚れた感じ。血と脂が染み付いた場所でクラシックを聞きながら黙々と人間解体をし続ける巨漢の狂気が伝わってくるいい場面だと思う。
■頭を撃つか、それとも……。
今回のデモでもクリーチャーに対し、ヘッドショットと、脚を撃ってから焼き払うパターンの2種類を試みていた。アクションシューティングではヘッドショットを狙うのが常道だが、外すこともあるし、正確に狙いをつけるにはそれなりに時間もかかる。そこで、脚を撃ってダウンさせてから焼き払うという方法でも倒せるようにしてあるというワケ。これによって、頭は諦めてボディ狙いで大量に弾を消費するよりは弾を節約できるのだ。
■謎のアイコンは……スニーキング用
病院のシーンでベッドの下にアイコンが出ていたので木村氏に聞いてみたところ、そこに隠れられるということを意味するアイコンだという。デモにはロッカーに隠れることで難を逃れるシーンもあり、こういった“隠れる”というアクションも大事な要素のひとつになっている。
本作では恐怖を追求するという点でプレイヤーを謎めいた状況に叩き込むことも重要視しており、「え、今なにが起こってるの?」と思わされることもしばしば。そうした混乱した状況でも、危機は容赦せずにやってくる。そんな時、瞬時の判断で逃げ込めるかどうかも、この恐怖の世界から生還するためにはかかせない方法なのかもしれない。
■複数の選択肢を用意
デモの後半にある、小屋の中に入ってくる多数のクリーチャーとの戦闘になるシーン。ここではトラップや銃である程度倒したあと、やや劣勢と見るやプレイヤーがすぐに階下に降りて行ってしまったのだが(そして気がつくと別の空間にブッ飛ばされる)、ここでクリーチャーを倒し続けないのはなぜなのだろうか?
木村氏いわく、デモでの行動はあくまで複数ある選択のうちのひとつでしかないらしい。戦い続けることでのメリットもあるとのことなので、ひと安心。一本道のシーンも多いのだが、いかにして切り抜けるかという選択肢が複数用意されているのはありがたい。
■細長の画面!? UIは極力排除する方向。PC版は最適化も
デモプレイは16対9のディスプレイを使っていたのだが、上下に黒い線が入り、ゲームプレイ自体は実質かなり横長の画面になっていた。これは三上氏のこだわりだそうで、ホラーとしてのメリットとゲームとしてのメリットを両立するために選んだことだという。
また、現状では体力バーなどもかなりシンプルで、画面上の表示を極力減らしているのだが、これも意図的なもの。製品版ではもう少し入れざるをえなくなるかもとのことだったが、できるだけ画面で状況を伝えることを狙っているという。体力が少ない段階では身体を折り曲げて苦しそうにしていたのが、回復するとまっすぐに立つといった、キャラクターのモーションの違いで状態を伝えるシーンも見受けられた。
そのほか、PC版では操作やユーザーインターフェースについて、家庭用ゲーム機版とは異なる最適化を施す方向で開発する予定とのことだった。
■TGSの頃には何かいいことがあるかも?
発表以来、ゲームファンに大きな話題を呼んでいる本作。何か東京ゲームショウ近辺で日本のゲームファンに向けたいいことが起こらないか関係者に聞いてみたところ、まだまだ未定だが、何かあるかも……という回答。プレイアブル出展やイベントなどを期待したい!(編集部:ミル☆吉村)