『PsychoBreak(サイコブレイク)』三上真司氏インタビュー 完全版

三上真司氏が手掛ける新作、『PsychoBreak(サイコブレイク)』 。プレイステーション4をはじめとした次世代機にも対応する、このこの“純粋なるサバイバルホラー”ゲームに込めた思いと決意を、三上氏にうかがった。

●かつてない恐怖を描く最高のホラーエンターテインメント!

 『バイオハザード』を世に送り出し、“サバイバルホラー”というジャンルを確立した三上真司氏。恐怖と、その恐怖をブチ壊す快感をゲームで表現する手段を知り尽くした三上氏は、本作で“純粋なるサバイバルホラー”を描くと言う。では、この『PsychoBreak(サイコブレイク)』で描かれる“純粋なるサバイバルホラー”とは、いったいどのようなものなのか? 本作のディレクターである三上真司氏にうかがった。
(聞き手:本誌発行人 浜村弘一)

※本インタビューは、週刊ファミ通5月9・16日合併号(4月25日発売)に掲載したものに加筆したものです。

▲三上真司氏:『PsychoBreak(サイコブレイク)』ディレクター。ゼニマックス・グループの開発スタジオ、Tango Gameworksを率いるゲームデザイナー。『バイオハザード』のディレクションを手掛け、数々のヒット作を輩出。

■得体の知れないものへの怖さを描く“ホラー”表現に重心を置いた作品
――2012年4月26日発売の週刊ファミ通で発表されたプロジェクト“Zwei(ツヴァイ)”が、今回の『PsychoBreak(サイコブレイク)』になったということですか?
三上真司氏(以下、三上) そうです。やっと、正式に発表できる形となりました。

――なるほど。では、『PsychoBreak(サイコブレイク)』というタイトルの意味は?
三上 本作は、単純に現代を舞台にした、リアルな世界観を持つ作品ではなく、そこにひねりを加えたゲームになります。どこか壊れている、狂ったような世界をイメージしてタイトルをつけました。

――資料を見て、いままでのゲームとは異なる“怖さ”を強く感じました。三上さんは『バイオハザード』で、サバイバルホラーゲームというジャンルを作り出しましたが、このゲームはそれともだいぶ印象が違いますね。
三上 本作では、純粋な“サバイバルホラー”を目指しています。時代に合わせて、サバイバルホラーというジャンルのゲーム性も変わっていますよね。いまはアクションに寄っていくものだと思いますが、そこは避けました。正直に言うと、サバイバルホラーはゲームとして成立させにくい。エンターテインメントを重視して、敵を倒す爽快感を優先するのか。それとも、じわりとくるような怖さを優先するのか。そのバランスが難しいジャンルですが、今回はとくに“ホラー”の部分に重心を置いた表現を意識して、制作しています。

――三上さんが考えるサバイバルホラーの、原点に帰ったイメージなんですね。怖さと言えば、本作に漂う得体のしれない雰囲気は恐ろしいと感じました。敵の正体もわからないし。
三上 本作ではプレイヤーに、得体のしれないものと出会ったときに感じる「なんだ、こいつらは?」といった不安や恐怖を味わってもらいたい。ですので、いまは敵の正体を明かせないんですよ。

――そうなんですね。そこは、ぜひとも詳しくお聞きしたいところなんですが。
三上 これは絶対に言えません!(笑)。

■生き延びるための手段とは? プレイヤーが戦略を考えるゲーム
――この悪夢のような世界に飛び込む主人公は、刑事なんですね。なぜ、刑事を今回の作品の主人公に選んだのでしょうか?
三上 主人公のセバスチャンはもともと、猟奇殺人事件の犯人を追っていた刑事です。しかし、ある精神病院で起きた事件の捜査に向かったところで、偶発的に悪夢のような世界に入り込んでしまいます。偶発的にした理由は、目的を持って謎を追い詰めていく形にすると、事実が明るみになった途端に怖くなくなるからです。たまたま現場に駆け付けた刑事が、謎に巻き込まれてしまうほうがおもしろいし、怖いでしょう。犯人を追いかけるというよりも、追いかけられながらも、生き延びるためにどうしていくかを描くゲームになっています。銃をゲーム性に取り入れたかったというのも、刑事を選んだ理由ではありますが、銃はそこまで大きな存在ではないんです。

――銃で敵に立ち向かうというよりは、敵から逃げながらも生き抜く方法を模索するというゲームなのでしょうか?
三上 さまざまな場所にトラップが用意されているので、そのトラップを使って敵を倒すゲームになります。もちろん銃も使えますが、ちょっとだけ弾数を少なめに設定しているんですよ。銃ばかりの一辺倒で戦うのではなく、トラップや周囲の状況をうまく使って、戦略的に生き残る方法を考えてほしいんです。

――マシンガンやランチャーで敵を一気に倒すという爽快感も捨てがたいとは思うけれど、そこはあえて選ばなかった、ということですか。
三上 それも確かに気持ちはいいのですが、怖さが薄れてしまうんですよ。『バイオハザード』の主人公は特殊部隊の所属なのに、ハンドガンを撃つ速度が遅いんですよね。「訓練されていて、扱いにも慣れているはずなのに、遅すぎません?」と当時のスタッフからも言われましたが、そこには理由がありました。一発撃っても、ゾンビは倒れずに近づいてきますよね。つぎの弾を撃つあいだに、噛まれてしまうかもしれない。その怖さをプレイヤーに感じてほしかったんです。本作でも、その間合いは大事にしたい。ちょっとやそっとじゃ倒れない敵もいますから、そんな敵と対峙したときにどうすればいいのか、そこをプレイヤーには考えてもらいたいと思っています。

――追い詰められる絶望感にさいなまれながら、頭を使って生き残る道を探すというゲーム性は、いままでになかったかもしれません。
三上 とはいえ、やられてばっかりというのもしんどいでしょう。恐怖に立ち向えば、困難を乗り越えられる道は必ず見つかるようにしています。そこに、本作のアクション性があると言えます。

■生き残る道をあがいてでも探す、それが“サバイバルホラー”の魅力
――このゲームで描かれる世界は、いわゆる洋館や街のような、プレイヤーの想像がつきやすい舞台設定ではありませんね。
三上 現実に即した世界ではあるのですが、どこかがおかしい、時代もよくわからない世界が舞台となります。

――アサイラム(精神病院)が舞台ではない?
三上 物語がアサイラムから始まる、ということです。気がついたら、「ここはどこだ?」と思うような状況に陥っていますよ。その先は、プレイヤー自身の手で解き明かしていく流れになります。病院で使われていた器具をイメージしたデザインを、本作のロゴに取り入れているので、アサイラムは重要です。

――どこなのかもわからない世界で、正体不明の敵に襲われるというシチュエーションは、確かに怖いものがありますね。
三上 そんな世界を“探索する”という楽しさも、本作にはあります。もともとはただの廊下だった場所が、気がつくと別の世界に迷い込んでいるような状況もありますし。リアルタイムに変化する世界が、プレイヤーをどんどん追い詰めていくことになりますね。

――ますます絶望的な状況になる、と。
三上 でも、生き残る可能性は必ずあります。退路もない状況で敵と対峙したとき、無理をしてでも戦うのか、すり抜けられる道を探すのか。あがいてでも生き残る道を探すことこそ、サバイバルホラーの魅力です。生か死かという天秤を、本作では表現したいんですよ。

――徹底的に、怖さを追求していることがよくわかります。本当の意味でのサバイバルホラーを描くという点で、まさに『PsychoBreak(サイコブレイク)』は、三上さんにとって原点回帰を目指す作品と言えると思います。
三上 そうですね。本作では、本物の怖さをプレイヤーに味わってほしいです。

■次世代機にも対応! 開発は順調に進行中です!
――Tango Gameworksとして初の作品となりますが、制作状況はいかがですか?
三上 完全オリジナルの新作ということで、やはり制作は大変ですが、やりがいはありますよ。毎日起こる問題も楽しんでいます。いや、苦しんでいるのかな(笑)。シナリオにも、力を入れていますよ。いままでは、あくまでゲームであることに比重を置いて、シナリオを考えていました。たとえば、シナリオに絡むとはいえ、じつはアイテムを渡すためだけのキャラクターを用意するなど、単純なアプローチで物語を構成しなければならないこともありました。でも、本作は違います。実際に構築しているゲームとシナリオの距離が近い、より親和性が高いというイメージですね。シナリオのほうが、ゲーム性より優先順位が上だということではありません。あくまで、サバイバルホラーというエンターテインメントをいかにおもしろく表現するかということを考えています。物語を描くイベントシーンもプレイヤーに飛ばされないようにしたいので、テンポを崩さないようゲームの中に深く組み込んでいく形を考えています。

――テンポをよくするという意味で、QTE(※)のようなシステムを採用することは?
三上 ほとんど考えていませんね。プレイヤーの視点から見ると、QTEのようなシステムは、制作側が用意したバリエーションから選ぶだけの“予定調和”だと思います。そんな予定調和を崩す、システムやイベントシーンだけに頼らないゲームにしようと思います。

――では、最後に。ズバリ、『PsychoBreak(サイコブレイク)』をユーザーが遊べるのは、いつごろになりそうでしょうか?
三上 すいません、これもいまはお答えできません!(笑)。準備期間は試行錯誤のくり返しでたいへんでしたが、現在は順調に進んでいますよ。基本的なゲームシステムはできているので、完成を目指してがんばっているところです。純粋なサバイバルホラーを期待している方には、その期待には十分に応えられる作品になっています。次世代機にも対応する予定なので、詳細は続報をお待ちください。

(※)QTE:“Quick Time Event(クイック・タイム・イベント)”のこと。イベントシーンで、画面上に表示されるアイコンに合わせてコマンドを入力すると、キャラクターがアクションを起こしてイベントが進行するシステム。


PsychoBreak(サイコブレイク)
メーカー ベセスダ・ソフトワークス
対応機種 PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360 / PCWindows
発売日 2014年発売予定
価格 未定
ジャンル アクション・アドベンチャー / サバイバル・ホラー
備考 上記以外の次世代機にも対応予定、開発:Tango Gameworks、ディレクター:三上真司、プロデューサー:木村雅人

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※画面は開発中のものです。