5pb.からアドベンチャーゲームとなってリリースされることが発表された『解放少女』の新作『解放少女 SIN』。同作のキーマンである志倉千代丸氏、須田剛一氏、日野晃博氏のインタビューを全文掲載。

●誌面に載せられなかった部分も含めたインタビューの全文を掲載

 5pb.からアドベンチャーゲームとなってリリースされることが発表された『解放少女』の新作『解放少女 SIN』。プレイステーション3でリリースされる同作について、週刊ファミ通5月2日号(2013年4月18日発売)で志倉千代丸氏、須田剛一氏、日野晃博氏にインタビューを敢行。今回、ファミ通.comでは、誌面で載せきれなかった内容もすべて含めた全文インタビューを掲載する。

■日野晃博氏
レベルファイブ代表取締役社長であり、ゲームクリエイター。『GUILD01(ギルドゼロワン)』で須田氏に声をかける。『解放少女』エグゼクティブプロデューサー。
■須田剛一氏
グラスホッパー・マニファクチュアCEOであり、ゲームデザイナー。『解放少女』の企画・原作も務める。今回は一部シナリオも執筆している。
■志倉千代丸氏
MAGES.代表取締役社長にして、科学アドベンチャーシリーズの企画・原作を務めている。作詞・作曲なども手掛けるマルチクリエイターである。

――お三方は、この企画が出る前からお知り合いだったのでしょうか?
志倉千代丸氏(以下、志倉) 僕は以前に日野さんに福岡のイベントに呼んでいただいたことがありまして。そこが初めてでした(※1)。
日野晃博氏(以下、日野) かなり注目されているクリエイターさんでしたので、僕らもぜひイベントでしゃべっていただきたいということでお声掛けさせていただきました。でも、僕が初めて志倉さんを「あっ、あの人か!」と認識したのは、ファミ通AWARDでしたね。
須田剛一氏(以下、須田) ありましたね。あれだ、ベストドレッサー賞だ。
日野 そう! 名越さんを抑えてベストドレッサー賞になった男として認識しました(笑)。

※1:ゲームファン集まれ! GAME FUN in FUKUOKA 福岡・九州にあるゲーム関連企業団体GFFによるイベント。2012年3月に開催された同イベントに、志倉氏、須田氏がゲストとして登壇。

――志倉さんと須田さんは、ヒューマン時代からご存知の仲ですよね。
須田 もう古いです。ヒューマン時代ですから。
志倉 須田さんは、ヒューマンを卒業した、ヒューマン卒業組トップランナーなんです。須田 ヒューマンの残党ということですよね。ジオンの残党みたいな。ジオン・イズムに近い、ヒューマン・イズムみたいな。そういう意味ではがんばっているふたりではありますね。

――『解放少女』は、もともとはニンテンドー3DSの『GUILD01(ギルドゼロワン)』(※2)に収録されていた作品でした。『GUILD01』を立ち上げた際、なぜ須田さんに話を持っていかれたのですか?
日野 それはもう、ゲーム業界の中で何かやらかしそうな人ですから。そういう方は何人かいると思いますが、その中でもゲーム業界的には須田さんは筆頭株じゃないですか。だから、何かおもしろいことをしてくれるんじゃないかな、ということで声をかけさせていただきました。
志倉 たしかに、やらかしそう感はすごいですよね。
須田 任せてくださいっていう感じですね。また、日野さんがオシャレなのがですね、LAX(ロサンゼルス国際空港)で偶然お会いしたときに、「ちょっと時間いいですか?」と言ってお話していただいたのが、『GUILD01(ギルドゼロワン)』だったんです。だから、ロサンゼルスで交わした約束なんですよね。どうです? オシャレでしょ?
志倉 僕がすれ違っていたら、アドベンチャーゲームになっていたかもしれないですね。

――『GUILD』シリーズの次回作があるなら、志倉さんにオファーをする可能性も……?
日野 それはもう、ぜひともお願いしたいです。
志倉 ホントですか!? では、空港で会ったときにでもオファーをいただければ。
須田 ここでいいじゃない(笑)。

※2:レベルファイブよりリリースされたニンテンドー3DS用ソフト。『GUILD』シリーズとして日野氏が立ち上げたプロジェクトで、著名クリエイターたちがそれぞれに持ち寄ったゲームを1本にまとめ、レベルファイブでリリースするというもの。第1弾となる『GUILD01(ギルドゼロワン)』では、須田剛一氏、平井善之(アメリカザリガニ)氏、斎藤由多加氏、松野泰己氏が参加。現在、第二弾となる『GUILD02(ギルドゼロツー)』3作品『怪獣が出る金曜日』、『虫けら戦車』、『宇宙船ダムレイ号』をニンテンドーeショップにて配信中。

――須田さんは、日野さんから『GUILD01(ギルドゼロワン)』の話をうかがったとき、どのように感じられましたか?
須田 フラッシュアイデアでおもしろいなと思っても、1本のゲームとして作るのはちょっ
と……という企画って、いっぱいあるんですよ、僕らゲームを作っている人間には。いつ
か作れたらいいなというストックが山のようにあるんです。「そういうのをいっしょにやり
ましょうよ」と言ってくれたのが印象深かったですね。日野さんからは、「野球のキャッチャーが球を受けるだけのゲームでもいいんです」という例をいただいて、おもしろい!、と。そういう振り幅でゲームを作る機会はないですからね。
日野 須田さんクラスのクリエイターにお願いすると、かなり予算を積まないといけないというか(笑)。そういうことは僕らもわかっているのですが、やはりそうではないタイトルも見てみたい。ホントに、ちょっと実験してみましたという作品も作ってみたいなと思っていて。クリエイターも、みんなそれを求めているんじゃないかなとは思っていたんです。ですから、『GUILD』では、勇気を持って新しいことをやってみて、突拍子もない作品ができても、それはしかたないという気持ちで臨みました(笑)。

――そうして出来上がった『解放少女』ですが、作品の魅力はどこにあると感じられましたか?
日野 主人公の女の子のお尻じゃないですかね。
須田 あー、なるほど。
日野 こだわってますよね?(笑) あれを描きたかったがために、これだけのことをやってしまうのかって感じました(笑)。
須田 僕じゃないですよ(笑)? でも、あそこは、多くのスタッフの愛が込められていますね。
志倉 聞きかたによっては、ちょっとした変態発言ですけどね(笑)。でも、物語のちょっとしたバカらしい設定を、本気で作っている感がおもしろいんですよね。そこはこの作品の魅力だと思います。実際にゲームをプレイしてみたときに、どこまでマジメに詳細設定を詰めているのか気になったので、須田さんに聞いてみたんです。そうしたら、「じつは設定のテキストもいっぱいあるんだよ」とおっしゃられていて。ゲームの入り口から背景のところまで奥行きがあるというか、魅力のある作品だなと感じましたね。

――それだけの設定がある作品だから、今回はアドベンチャーゲームという手法を選ばれたということなのでしょうか?
志倉 つながっちゃいました? じつは、そうなんですよ。

――『解放少女』をアドベンチャーゲームにすると聞いて、日野さんはどう感じられましたか?
日野 アドベンチャーゲームに関してプロである志倉さんたちからお話をいただいたので、そういう風にやりたくなるんだな、と感じましたね。そこまで本気で世界観を作りたいと思われる作品になったんだ、ということがうれしかったです。
須田 もともと日野さんが『GUILD』からシングルカットの作品が出たらおもしろいと言ってくれたんです。僕も『解放少女』は『GUILD』の中から飛び出して、単体なり、他メディアなり、拡散する力があるのではないかなと思っていて。そこへ、志倉君が「『解放少女』おもしろいですね」と言ってくれたので、「じゃあ、やる?」と聞いてみたところ、「やりましょう」と即答してくれまして。「ホントに?」、「ホントです。」、「ホントにやるの?」、「ホントにやりましょうよ」って何度も確認してしまいました(笑)。そこからはトントン拍子で、アドベンチャーゲーム化が決まっていきましたね。

――ちなみに今回の作品には、お三方がどのように関わられているのでしょうか?
日野 僕自身はほとんど関わっていないのですが、後方支援として何らかのプロモーション的協力をしようと思っています。ぜひ成功できるように広報的に何かできれば。
須田 すごく贅沢な応援団ですよね。
日野 もともと僕らの『GUILD』から生まれたタイトルなので、ぜひこのシングルカットが成功して欲しいと思っていますからね。

――須田さんは、どんな役回りですか?
須田 今回は一部の設定まわり、テキストまわりを監修したり、書いたりしています。

――原作・監修といった感じなんですね。志倉さんは、どんなことをされているのですか?
志倉 僕はアドベンチャーゲームとしての作法というか、テキストの監修みたいなことをしています。アドベンチャーゲームって映画とは違って神様視点みたいなものではなくて、主人公視点で物語が進行していくので、その主人公視点に最適化された物語の見せかたがあるんです。アドベンチャーゲームの一人称視点で物語が進行していく感じは、ちょっと特殊なんですよね。アニメや小説とも違いますからね。

――前作とのつながりというか、ストーリー的には続きということになるのでしょうか?
志倉 前作がまた絶妙なタイミングで終わるんですよ。「ここで!?」っていう。その先ですね。

――では、前作をプレイされている方は、続きが気になっていた部分をついに見られると。
志倉 でも、前作云々というよりは、あそこから第1章が始まっている気がします。『GUILD01(ギルドゼロワン)』で描かれた物語というのは、0章だったのかなって。
須田 すごく大がかりな導入というか、プロローグ的なお話を『GUILD01(ギルドゼロワン)』でしっかりとやらせていただいたという感じです。

――今回は主人公が海堂清人という新たな男性キャラクターになっていますね。ほかにも美少女閣僚として新キャラクターが多数登場します。
志倉 そこは須田さんとミーティングを行いながら決めました。かわいこちゃん閣僚がいっぱいいたら、もっとバカだよねって。
須田 もう、それは必須ですね。
志倉 必須バカですよね。必要悪みたいな感じ。必要バカ。

――(笑)。前作では国土の解放がテーマにありましたが、今回は何を解放するのでしょうか?
須田 今回は、“解放”という意味が本来の“戦争で自分たちの国土を奪還する戦い”だけではないテーマになっています。もともと『解放少女』の設定を作ったときに用意していた設定を、しっかりと掘り下げた内容になっていますね。
志倉 それがタイトルの“SIN”につながるんです。“真”だったり、“心”だったり、“罪(英語でsin)”だったり、いろんな“SIN”がこの3文字のアルファベットに込められていて、そういうものを解放していくということです。

■主人公・海堂清人
■大統領・大空翔子
■法務大臣・弓波千流子
■官房長官・桜木芳乃
■総務大臣・環 小神子
■防衛大臣・明星かぐや
■外務大臣・不破 聖
■科学技術庁長官・安之雲ミブリ

――アドベンチャーゲームにするにあたって、こだわった部分や『解放少女』ならではの部分があれば教えてください。
志倉 ビジネス的なところで言うと、多少お客さんの種類が変わる部分があると思っています。変わるというか、広がるというほうが的確ですね。アドベンチャーゲームって、ゲームの中でもサブカルだと思うんですよ。そんなアドベンチャーゲーム好きな人たちにもちゃんと刺さるものであり、当然これまでの『解放少女』のファンだった人たちの期待を裏切らないという、両方を志して作っています。たとえば萌える要素みたいなものをあちこちにバランスよく散りばめていく感じですね。
須田 いろんな萌えですよね。世に言われている萌えだけではなくて、「バカだなぁ(笑)」と言ってもらえるような萌えも用意しています。設定まわりのネタ感というか。
志倉 いわゆる“萌え心”みたいなのは須田さんにはないですからね(笑)。アキバ系萌えというのを理解できていないんです。
須田 どうやら、よくわかっていないみたいなんですよね。
志倉 過去の作品などでも、萌え要素を入れてみようとしていらっしゃるんですけれど、
そこじゃないんだよなって(笑)。
須田 当たってないみたいなんですよね。どうやらハズれているみたいで。
志倉 やはりどこかが違う。須田さんなりのエッジが立っているんですよ。だからそこは、「須田さんそこは違うんじゃないですか?」と言いながら、いろいろ修正させてもらったりはしています。けっこうヘンテコなことを言うんですよね。須田さんは、「アキバの人たちもこれならいけると思うんだけど」と言うんですけれど、「ぜんぜん!」って(笑)。
須田 (笑)。
志倉 そんなのばかりなんですよ。でも、それがおもしろいんですよね。

――そういうエッジの効いた部分というのは、残っているんですか?
志倉 修正しつつも、残しています。だから、閣僚もやっぱり萌えますよ。萌えるんだけれど、そこまで媚びてはないです。須田さんが作りたいものというのがきちんとあるので、
萌え萌えーで、「こういうの好きなんでしょ?」ではなくて、「僕らはこういうの好きなんだけど、みんなはどう?」という提案的な感覚ですね。でも、意外と好きな人は多いと思いますよ。アドベンチャーゲームの中でも、かなりエッジ立っていますから。もともとの設定がこれだけエッジが立っていますからね

――須田さんならではの特徴的な世界設定などが用意されているということで、その中でも須田さんのオススメポイントというのは?
須田 解放機や戦艦ながたも出てくるんですけれど、その周辺の兵器まわりというのは自信を持ってオススメできます。完璧です。ハンパないですから。今回は、最近完成した電波塔を模したタワーが登場するんですよ。大江戸ツリーキャノンと言って、ながたにドッキングするんです。

――ドッキングするんですか!?
須田 そうなんです。超カッコイイんですよ。あとは、5pb.ファンの方には、科学系の部分も用意されているので、期待していただければ。今回は、自然科学というものも裏のテーマとして軸にありますので。えっと、アミ……アニミズム?
志倉 知らねーんじゃねぇかっていうね(笑)。
日野 (笑)。
志倉 想定科学や、拡張科学といったものをやっていますけれど、これは自然科学アドベンチャーだと、須田さんが勝手に言っているだけです。
須田 (笑)。スタッフは本気ですよ。自然科学アドベンチャーってつけてほしいって。
志倉 それはないと思います(笑)。

――ちなみに、今後メディア展開などは考えられているのでしょうか?
須田 社長のポロリがあるのかな?
志倉 よくぞ聞いてくれました! やはりアニメにしたいですよね。あくまで願望ですけれど。
須田 そこは3人とも実現したいと言いますか、見てみたいと思っているところです。
志倉 メディアミックスというのは、スタート地点は何でもいいと思うんです。ゲームでもいいし、小説でもいい。だから『GUILD』からメディアミックス作品が出てくるというのは、すごくおもしろいんじゃないかと感じています。できれば、ほかの『GUILD』作品よりも先に『解放少女』でやりたいなと思っていますね。
日野 まずは『解放少女』に、先駆者になってもらって、その道を切り拓いてほしいですね。

――それでは、最後におひとりずつファンに向けてメッセージをお願いいたします。
日野 須田さんというゲーム業界のひとつの才能に声を掛けさせてもらって『解放少女』が出来上がって。そこから始まったプロジェクトが、その道のプロである志倉さんたちの手でアドベンチャーゲーム化されるということで、非常に興味深いです。原作に関わった者としても、いちゲームユーザーとしても、すごく楽しみにしています。冗談ではなく、本当におふたりのお手なみを拝見して、勉強させていただこうかなと思っています。がんばってください!
志倉 僕は、作品ができた後はメディアミックスのかけ橋の役割ができればいいかなと思っています。ゲームから始まって、どこまで広げられるかというところにご期待ください。
須田 『解放少女』がレベルファイブさんの力によって産声を上げて、それを5pb.さんで大きくしてもらうという、すごく恵まれたプロジェクトだと思います。また、僕のことをこのふたりが応援してくれているというのは、すごくうれしいですね。年代も近くて、それぞれが会社の代表をやっているという立場の中で生まれた、近い境遇の3人だからこそできたプロジェクトなのではないかと感じています。本作では、僕も少しシナリオを書いているんですね。ひさびさにアドベンチャーゲームのシナリオを書くのですが、アドベンチャーゲームって物量書かないといけないんですよ。アクションゲームなら、だいたい2日か3日集中して書き終わるのですが、ぜんぜん終わらないんです(笑)。
志倉 とくに、今回はテキストアドベンチャーゲームですからね。
須田 『シルバー事件25区』以来ですから、7年ぶりぐらいなので、勘を取り戻しつつ慣らしている最中です。あと2週間くらい、シナリオを書く時間をくれる予定なのですが……。
志倉 そうなの?(笑)
須田 しっかり締め切りを2週間遅れで間に合わせたいなと思っています! 2週間遅れのフィニッシュになりますが、がんばります! 応援してください!


解放少女 SIN
メーカー 5pb.
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2013年発売予定
価格 価格未定
ジャンル アドベンチャー / 戦争・SF
備考 キャラクターデザイン:コザキユースケ、メカニックデザイン:コヤマシゲト、開発:5pb.、プラネットG