Take-Two Interactive Japanから2013年4月25日に発売予定の『Bioshock Infinite(バイオショック インフィニット)』。日本語音声入りの最新版を試遊してきたので、プレイ・インプレッションをお届けする。


空中都市“コロンビア”と初代『バイオショック』

▲Irrational Gamesから届いたエリザベスちゃんのバレンタインカード。

 本作を開発しているのは、Irrational Games。今世代最高のタイトルのひとつに挙げられることも多い初代『バイオショック』を手掛けたクリエイターたちだ。

 では『バイオショック』を知っている必要があるのか? そんなことはない。
 なぜならば、『バイオショック』が成功した後に、単なる続編を作ることを嫌い、『バイオショック』で実現したような濃密なプレイ体験を再び創りあげることこそが『バイオショック』の名にふさわしいと取り掛かったのが本作なのだから。

 だから初代『バイオショック』は1960年の話だが、今回は1912年、メイン州の海外沖から始まる。これは架空のアメリカで描かれる、まったく別の、めくるめくような冒険のお話なのだ。

▲初代『バイオショック』の導入シーン。灯台からゴボゴボ水中エレベーターで潜って夢のような海底都市へ。今回は逆です、逆。

 とはいえ、シリーズファンならニヤッとする仕掛けもされている。『バイオショック』では、ある男が乗った飛行機が墜落し、大西洋上のとある灯台にたどり着き、そこからかつてユートピアとして建造された海底都市“ラプチャー”へといざなわれていった。
 今回も主人公“ブッカー”はオープニングで灯台へと辿り着く。ただし命からがら漂着するのではなく、明確な目的を持って。それは、ピンカートン探偵社の元エージェントとして、エリザベスという女の子を奪還すること。灯台を登り、依頼人からのメモの通りにすると、出てきた椅子がロケットとなり、空中都市コロンビアへとカッ飛んでいく……。
 冒頭シーンは映像で公開されているので、あらゆるネタバレを断つ人でなければ(この記事を読んでないと思うが)、チェックしてみてほしい。

▲ブッカーはコロンビア内部に入る前に“洗礼”を受けさせられる。

まずは基本システム

▲銃&能力で戦うのが基本。ライフは体力+シールド制だ(シールドがなくなると体力が減り始め、ゼロになるとマップ内の装置からリスタート)。

 ゲームの基本は“特殊能力が使用可能なアクション・シューティング”といったところ。戦闘は以下のような要素で構成されている。

武器
・おもに銃で戦う。武器は4種類のアップグレードが適用可能。後述するスカイフックは近接攻撃に使える。
スカイフック
・コロンビア内を張り巡らされたレールを滑ったり、フックに引っ掛けて高所に掴まったりすることができる。
ビガー
・特殊能力を宿した薬。“ソルト”を消費して、敵を仲間にしたり、獰猛なカラスをけしかけたりといった特殊能力を放てる。
・習得後、2段階の追加アップグレード版を買うこともできる。例えば初期状態では機械を一定時間味方にできる“ポゼッション”が、自販機で買える強化版“ポゼッション LV2”では人間にも効果が及ぶようになる。
エリザベス
・エリザベスは無力な存在というよりも大切なパートナー。戦闘中に弾や回復アイテムなどを見つけて投げて寄越し、ブッカーを援助してくれる。
・後述する“ティア”を発動できる
ティア
・異次元の扉のようなものを開き、別世界のものを取り出す。
・同時に複数は使用できない。例えばとあるステージに“高所のフック”、“タレット(自動機銃)”、“弾薬補給箱”と用意されていて、その中からひとつを選んで戦闘に突入するといった感じ。

▲ティアーから貨車を呼びだそうとしている様子。

強化要素
【インフュージョン】
特定の場所に置いてあるアイテムで、ステータスの容量を増やす。ライフ、シールド、ソルトから選択可能。
【ギア】
“スカイフックで降下した際に周囲を吹き飛ばす”、“近接攻撃時に70%の確率で燃やす”といったような追加効果をもたらす装備。最大4つ装備可能。ただし部位の違いもあり、頭用のギアを装備しているとほかの頭用のギアは装備できない。
【その他】
・目的地への方向などは、十字キーの↑で確認可能
・武器のアップグレード、ビガーなどは自販機で購入可能(ビガーはそこら辺に置いてあることもある)
・お金や弾薬やライフパックなどは倒した敵だけじゃなく、そこら辺の棚などからも回収できる。
・ロックピックを持っているとエリザベスに閉まった扉を開けてもらえる。中には大体いい感じにビガーなどのアイテムが置いてある。

▲後半になるとそれぞれ特徴的な連中が出てくるのだが、今回は出会えずじまい。

FPSとしての『バイオショック インフィニット』

▲空中から襲撃! この攻撃時に作用するギアもある。

 基本的には銃をブッぱなし、ビガーの特殊能力を織り交ぜながら、エリザベスの弾の補給を受けつつ戦うといった感じで、そこにティアが使える時があったり、スカイラインから降下してアタックを仕掛けたりといったシチュエーションもあるというところ。

 スカイラインの使い勝手は非常によく、高速でレールをかっ飛びながら発見した敵にダイブして空襲するといったことが簡単にできる(視点が降下可能な地面や空襲可能な敵に合わさっていると、着地・襲撃が実行可能であることがアイコンでわかるようになっている)。

 プレイした範囲ではスカイラインで移動できる場所はある程度制限されており、浮いている島から島へ思うがままに移動するというほどではなく、途中で降りてみると敵とアイテムがある(スルーして目的地まで直行もできる)という程度だった。もっともこれはステージが後半に進むと違ってくるのかもしれない。

 また、ステージはオープンワールドタイプではなく、エリアで分かれていた。ステージを進んでいくと終点に扉などがあり、次に進むよう選択するとロード画面に入ってエリアが移動するといった体だ。

▲スカイフックを使うか、赤く光るアイツにポゼッションをかけて乗っ取るか、対岸の撃たれてるヤローに追い討ちかけるか……。

 ビガーの能力は、敵対する機械や人間を一時的に仲間にする“ポゼッション”、敵を燃やす“デビルズ・キス”、カラスをけしかける“マーダー・オブ・クロウ”などを使うことができた。
 ほとんどのビガーはサブ攻撃で地雷型の能力を発動することもでき、周囲から大量の敵に襲撃されるようなシーンで役に立った。

 プレイした範囲では銃は2種類しか持てなかったが、エリザベスがいい具合に補給してくれるので、特にストレスやを感じなかったのも逆に印象的だ。

 プレイ感覚は、上記の各要素のどれを伸ばし、使うかによって変わってくると思う。個人的にはインフュージョンはひたすらシールドの成長に使い、敵の攻撃を気にせずバリバリ撃ちまくり、シールドが減ったらビガーを活用して切り抜け、シールドの自動回復を待つというスタイルでとても楽しめた。

▲よーく見ると軒先にフックがある。スカイフックを使ってここをぴょんぴょん伝っていくのだ。

ヒロインと冒険する探索ゲームとしての『バイオショック インフィニット』

 と、ひとまずはFPSとしての本作を解説したのだが、もちろん『バイオショック』最大の魅力はソコではない。探索ゲームとしての本作の魅力は……最高だ!
 変な方向に異常進化した技術によって実現されたレトロフューチャーな、狂ったユートピア世界。狂気と大空の解放感が同居していて、コロンビアは本当に夢の様な空間だ。空の上の都市だというのに、ビーチすらある!

▲空中都市なのにビーチ。エリザベスとひと時のデート(?)を楽しもう。

▲“リベンジ・オブ・ザ・ジェダイ”上映中だってさ。こういうフェイクネタ大好き。キネトスコープ(小型映写機)で見られる映像ネタもオススメ。

 あちらこちらで見られるいちいち細かい広告・看板、オブジェクトやアイテム配置から推測される小ネタ、住人たちの何気ないセリフに仕込まれた、張り巡らされた裏設定を感じさせる政治・差別ネタ、そして実在の事象を巧妙に取り込んだ歴史ネタ(おまけとして本記事末尾で後述)……。
 ゲーム内に出てくる架空のゲーム「フローレス・フリントロック」について「3度延期されたって聞いた」と通行人が語る自虐的なギャグ(もちろん『バイオショック インフィニット』自身の度重なる延期を指している)も出てきたが、すみずみまで漁りたくなるこんな世界を作ってたら当たり前だよ!

▲最初は思いっきり警戒されます。

 そして何より、エリザベスが最高だ。「洋ゲーの女性キャラクターは……」なんて言う人には、大人の笑顔でスカイフックを振り上げたい。そもそも『The Last of Us』のエリーちゃんとか、『トゥームレイダー』の若いララとかが出るっていうこの2013年にだなぁ……。
 と豪快に脱線すると2K GAMESの広報氏の顔が渋くなるのでエリザベス(CV:沢城みゆき)の話に戻ろう。彼女はブッカーの動機であり、世界の謎を解く鍵であり、最高のパートナーだ。

 戦闘で守らなければいけないか弱い存在ではなく、とはいえ男顔負けで敵をなぎ倒していくような存在でもなく、彼女なりの協力でともに戦い、冒険してくれる存在。
 お姫様というには勝ち気で自分の思ったことをストレートに言い、独立した成熟した女性というには初めて見たビーチに感動して踊りまわってしまう少女のようなかわいらしさを持ち、自分に秘められた巨大な力への不安感が揺れ動く女の子。

▲探索中には頻繁にエリザベスとの会話が起こる。

 この魅力的な世界で展開される、騎士物語でもラブストーリーでもない微妙な関係に、すっかりノックアウトされてしまった。気づけば時間はあっという間に終了。特殊能力を持つ敵たちと遭遇できなかったのは残念だがIrrational Gamesは、とても奥行きある世界とキャラクターの創造に成功していると思う。

とっとと金もってけ! というわけでおまけ:歴史モノSFとしての『バイオショック』

 というわけでボンクラ洋ゲー野郎用語で言う所の「とっとと俺の金もってけ(Take My Money)」状態だったテストプレイだが、最後に、1912年とはどんな年だったか振り返っておこう。初代『バイオショック』の中身よりも、こっちの方がよっぽど重要だ。
 だって本作には、初代『バイオショック』同様、歴史ネタ、政治ネタが山ほど突っ込まれているのだから。『バイオショック』は、歴史モノSFでもあるのだ。
 あ、ちなみに「歴史の話とかそういうのファ●ク!」っていう人はスルーしてももう結論は出しているのでオーケー! 発売日を待て!

▲いかにもアメリカーンな生活(左)と、いかにも蟹工船な感じの生活(右)。

 さて、1912年といえば明治最後の年で、日韓併合の2年後。大陸では、1900年の義和団事件で威信を失墜させた清朝が、辛亥革命によって終焉を迎えた年でもある。世界的には、第一次世界大戦の直前で、さらにはロシア革命も目前に控えているという時期にあたる。

 本作の舞台となるアメリカでは、ニューメキシコとアリゾナが州となった年。労働運動ではフランスのアナルコ・サンディカリズムの影響を受け、急進的な労働組合(世界産業労働組合)が成長している時期にあたり、1912年には繊維労働者による大型ストライキを成功させている。一方ではアメリカ社会党が大統領選挙で6%の得票率を獲得していたりもする。
 そして南北戦争よりは後の時期で、奴隷解放は行われているが、州法による白人と有色人種の人種分離が行われていた時代だ。白人と黒人の結婚の禁止などの州法も、合法的に認められていた。クー・クラックス・クランの再結成が行われるのは3年後のこと。
 対外的には、スペインとの米西戦争後にキューバ、プエルトリコ、フィリピン、グアムなどを獲得した後の帝国主義の時代で、革命のまっただ中のメキシコに干渉している頃。フィリピンとは米比戦争の決着がつき、抵抗するモロ族の残党掃討もほぼ片が付きかけている。単なる新大陸の大きな国家から、真の大国へと成長していく過程にある。

 本作でのテーマは、少なくとも序盤を見る限り、労働運動や人種差別問題などと関係しているのは明確だ。
 コロンビアを支配するカムストックの勢力は“ファウンダーズ”(創設者たち)と呼ばれているのだが、コロンビアに入ってブッカーが目にするのは、まさに本当のアメリカ建国の父たち、フランクリン、ワシントン、ジェファーソンの像だ。そしてブッカーは、独立戦争にまつわるデラウェア川の渡河の話なども耳にする。恐らくコロンビアは、超科学によってカムストックの考える理想のアメリカを実現したものなのだろう。

 しかしプレイヤーは、それが偏った理想であることにすぐに気がつくことになる。
 夢の様なコロンビア市街を巡っていき、ブッカーがやがて目にするのは、白人の夫と黒人の嫁の公開リンチだ(ブッカーは彼らに物を投げつけるか、それとも反抗して司会者に投げつけるか迫られる)。

 カムストックに抵抗する勢力として出てくるヴォックス・ポピュライ(ラテン語で“人民の声”の意)は、対照的に明らかにアナーキズムを意識している(イメージカラーも赤)。
 公開リンチに対して、記者は(一応黄色人種なもので)司会者に物を投げつけ、銃を取り出して大立ち回りをするハメになったのだが、コロンビアの裏側を逃走する過程で、処刑される中国人、愚痴をコボしまくる労働者(白人であるブッカーがいるとわかった途端に無能のフリをするのが細かい)などを目にすることになる。

 カムストックが実現した豊かな白人のための理想のアメリカと、それを支える労働者や有色人種たちの抵抗運動。これは現実のアメリカが抱える問題と関係がないわけがない。そう、『バイオショック インフィニット』は、映画「リンカーン」や「ジャンゴ 繋がれざる者」とも繋がる、過去のお話を通じて現代の問題を描く作品なのである。コムストックが抱いたアメリカの理想を実現した空中都市コロンビアはどこに行くのか? 発売日を待て!(今日2回目)

■著者紹介 ミル☆吉村
ファミ通.comの洋ゲー脳編集者。たまーに紙の仕事もしたりしなかったり。基本的には、アメリカ各地、カナダ、アイスランド、シンガポール、中国、韓国と、世界中を飛ばされまくる人。蛇足部分の執筆に時間がかかりすぎ、締め切りを大幅にぶっちぎったりする人。ちょっとアメリカに飛ばされてきますわ。