セガから、プレイステーションネットワークとXbox LIVE アーケードで、2012年11月28日からダウンロード配信がはじまった“MODEL2 COLLECTION”シリーズのなかから、格闘ゲームの進化を語る上でも欠かすことのできない名作『バーチャファイター2』をプレイインプレッション。

●いまをさかのぼること18年――セガが生んだ時代の寵児

 『バーチャファイター2』(以下、『VF2』)は、1994年の末にセガから発売された3D格闘ゲーム。一大ムーブメントを巻き起こし、ゲームセンターに過剰な熱気を呼び込んだ。『ストリートファイターII』と双璧をなす、対戦格闘ゲームの金字塔と言っても過言ではないだろう。ここでは、単なるソフトの紹介に留まらず、当時の時代背景なども交えて『VF2』の魅力をお伝えしていきたい。しばしのあいだ、お付き合いいただければ幸いである。

●ポスト『ストII』という流れ

 1991年2月に登場したカプコンの『ストリートファイターII』(以下、『ストII』)は巨大な旋風を巻き起こし、以降のアーケードでは“対戦”というプレイスタイルが20年来のスタンダードとなっている。もっとも『ストII』以前にも対戦プレイが可能なタイトルはもちろんあったし、レースゲームなどでは通信対戦も可能だった。その点で正確に言うならば、『ストII』はプレイヤーどうしが向かい合って座る“対戦台”の爆発的な普及に一役買ったタイトルである。それでも発売から半年以上はCPU戦がメインの遊ばれかたであり、対戦台が広く置かれるようになったのは、1991年末から1992年頭にかけてバージョンアップ版(という概念自体が珍しかった)の『ストIIダッシュ』の噂が流れ始めていたころだったと記憶している。
 格闘ゲームの対戦は、1プレイの時間が非常に短いうえ、人気タイトルであれば客足は途絶えず、腕さえあれば1コインでずっと遊び続けられる。こうした要因がうまくかみ合い、メーカー、オペレーター、ユーザーの三者すべてがハッピーになれる理想のゲームとして、市場を席巻していくことになる。『スペースインベーダー』の再来とでも言うかのように、店内の筐体がすべて『ストII』一色という店舗まで見受けられたほどだ。そんな時代背景であることを含み置けば、“対戦の強さ”がゲーマーのあいだで強烈なステータスとなっていくことは想像に難くないだろう。もちろん例外はあるだろうが、当時は“総ゲーマー『ストII』勢”と言ってもいいほどに、多くのゲーマーが対戦格闘という新たな遊びに熱を上げ、心酔し、幾千もの闘いが行われた。そうなれば新たな“金脈”を掘り起こそうと、他社からも『ストII』を追随するように対戦格闘ゲームが続々と発売されることになるのは自然な流れであった。中心的存在だったカプコンとSNKを筆頭に、大手から中小に至るまで、アーケード向けのゲームメーカーのほとんどは対戦格闘ゲームをリリースしているのではないだろうか。もちろん、そこにはセガも含まれていた。
 セガは1950年代から業界を牽引してきた老舗であり、高い技術力を持つハードメーカーとしていま以上の存在感を放っていた。『ハングオン』から始まる体感ゲームシリーズ、ロングヒットの名作落ちモノパズル『(セガ)テトリス』などで過去にもムーブメントを築いている。かんがみるに、セガが本領を発揮してきたのは高い技術力を生かした独立独歩なタイトルが中心であった。そんなセガも流行を追従し、1993年には『ストII』タイプの2D格闘『バーニングライバル』をリリース。モーションの滑らかさなどに見るべき点はあったが、商業的には成功とは言えない結果に終わっている。
 一方、当時のセガは“バーチャルリアリティ(VR)構想”というキーワードを掲げ、自社開発の3DCG基板MODEL1で従来のあらゆるジャンルのゲームを3D化していく意向を表明していた。1992年に登場したレースゲームの『バーチャレーシング』に始まり、1993年末にはついに人体の動きを忠実に再現した『バーチャファイター』(以下、『VF』)が登場することになる。

▲キャラクターとの一体感は、格闘ゲームの魅力のひとつ。それがより顕著に感じられる3D格闘ゲームは、やり込むほどにキャラクターへの愛着がわいてくる。

●“ポリゴン格闘”の衝撃

 『VF』が我々の前に初めて姿を現したのは、1993年8月26日~28日に幕張メッセで開催された第31回アミューズメントマシンショー。このときのタイトルは『バーチャファイター(仮称)』で、2D格闘は『スーパーストII』、『餓狼伝説スペシャル』、『豪血寺一族』、ポリゴンゲームは『リッジレーサー』、『サイバースレッド』、『ポリネットウォーリアーズ』といった作品も出展されていた。当時は、対戦格闘ゲームとポリゴンゲームというふたつの軸が急進していた時期であり、それらが融合したポリゴン格闘が登場するのは時間の問題とも言えた。セガはそれをどこにもマネできないほどのスピードとクオリティーで、いち早くやってのけた。そこにセガの偉大さがあるし、同時にそれはじつにセガらしい姿でもあると感じる。
 かくして、世界初となる3D格闘ゲーム『VF』がリリース。ひたすらに鮮烈だった。キャラクターの第一印象こそ最先端のイメージからはかけ離れていたが、その挙動はそれまでのビデオゲームでは見たことがないほどのリアルさで、本当の人間が画面に入って闘っているかのように感じられた。ただし、このショーの時点では「ゲームとして本当におもしろいのか?」という懐疑的な目を向けるゲームマニアは決して少なくなかった。なぜならば、これまでに慣れ親しんだ格闘ゲームとは何もかもが違っており、あまりにも異質なものに見えたことがまずひとつ。そして、基本技の多くが全キャラ共通のモーションであり、キャラクターの個性が薄く感じられた。また、動きは非常に滑らかだったが、2D格闘のようにデフォルメされたわかりやすさと派手さはない。このあたりに敬遠された理由があったと思う。次第におもしろさは理解されていくものの、2D格闘ゲームほどの大衆性、メジャー感を得るまでには至らなかった印象だ。
 筆者の場合、『VF』は対戦ではなくタイムアタックというアプローチからプレイを続けた。ひたすら電源を切ってはパターンを実行し、すべてがきれいにつながるのを待つ。そんな苦行のようなプレイスタイルだが、タイムの早さ、安定性、失敗のリスクのバランスを考慮しながらパターンを組み立てる過程。パターンが崩れた際の迅速なフォロー。パターンがつながっているときの高揚感と緊張感。そして、最後までつながったときの大きな達成感。何度もダブルKOをくり返して地道に稼ぐ、2D格闘のスタイルとは一線を画するタイムアタックの仕組みはとっても新鮮で、インカム面でも利に適っていた。そのせいか、3D格闘ゲームのスコアシステムは『VF』式のタイムアタックがデフォルトになっている。

●そして時代はMODEL2へ。『VF2』の登場

 『VF』から4ヵ月後の1994年3月には、MODEL2基板を使った第1作『デイトナUSA』が早くも登場。MODEL1との大きな違いは、ポリゴンの表面に画像を張りつける“テクスチャーマッピング”が可能になったことだ。この後もMODEL1はしばらく使われるが、グラフィックが圧倒的に美しいMODEL2がVR構想の中心になっていく。そして、第2弾の『バーチャコップ』に続いて、1994年11月に『VF2』が登場した。前年と同様に、第32回のAMショーに出展されていたが、筆者としては新宿や横浜で開催されたロケテスト(※発売前のゲームを稼動させ、お客の反応やインカム、動作等さまざまなチェックを行うこと)のほうが思い出深い。『VF』自体の注目度も高まっていた時期であり、その続編ということで人の集まりかたは尋常ではなかった。筆者が行ったのは新宿某店だったが、設置場所の2階には幾層もの人垣。そこから1階に続く階段、さらには店外まで溢れんばかりにまで長蛇の列が連なっていた。遠巻きには体力ゲージしか見えず、列が流れて筐体の近くに行くまでは、キャラクターの掛け声から状況を連想するしかなかったのだ。
 多くのプレイヤーがそうであったように、筆者も『VF2』にひと目でほれ込んでしまい、一気に引き込まれた。『VF2』の特徴は、テクスチャーマッピングされたキャラクターの造形、そして60フレーム(※正確には57.5フレーム)の動きである。そのどちらも『VF』が持たざるもので、ふたつの組み合わせがもたらすビジュアルは、物事が変化する渦中にいること、劇的な進化に立ち会っているという確たる実感をもたらした。これまでにゲームから受けたインパクトに順位をつけるとしたら、間違いなくベスト3に入ってくる。個人的には、ビデオゲームの進化を象徴する作品でもある。
 そして正式に発売されるや否や、『VF2』は対戦ゲーマー層以外の一般層も巻き込み、凄まじい勢いで市場を席巻していく。当初はプレイ料金が200円の店も多かったが、やはり人が集まったのは思い切って100円で稼動させていた店舗が中心。稼動直後から皆が積極的にプレイしたがったことが、『VF』のときと大きく違っていた。ちなみに、『VF2』の稼動はセガサターン版『VF』の発売から約1ヵ月後のこと。筆者が通っていた店舗では、ちょうど『VF』のプレイ料金が50円に下げられたタイミングでもある。このダブル効果の恩恵か、『VF2』だけでなく『VF』にも急に多くの人がつくようになった覚えがある。

▲地平線が見えるほどの、広大な平面世界にポツンと置かれた闘技場。『VF』のバトルフィールドは非常にシュールだった。『VF2』になると賑やかになるが、改めてみると背景オブジェクトはそこまで多くはない。

 改めて本作について解説しておくと、収録されているのは元祖『VF2』および、不具合修正やバランス調整が施された『VF2.1』の2タイトル。ゲームモードはアーケード版の移植“ARCADE”、オフライン対戦専用モードの“OFFLINE VERSUS”、オンライン対戦専用の“Xbox LIVE BATTLE”(Xbox 360版の場合)の3つ。SELECTボタンまたはBACKボタンでいつでもメニューを呼び出すことができる。
 ゲームに限らず、昔の話をする際には“思い出補正”という言葉がよく登場する。記憶が脳内で美化されすぎているあまり、かつて熱中したタイトルを改めて遊んでみると、落胆してしまうことも少なくない。今回の『VF2』でもけっこう覚悟はしていたのだが、MODEL2 COLLECTIONの告知動画を事前に見ていたせいもあってか、存外にイメージどおりだった。しかしながら、当時は見えた(と思っていた)起き上がり蹴りやモーションの大きい下段攻撃が全然見えなかったり、コンボや追撃がスムーズに決められなかったりと、自分自身の衰えを切実に感じてしまった(苦笑)。また、コマンド入力も意外にシビアで、例えば“66K”というコマンドであればちょっと気を抜くと“6K”や“K”に化けたりする。プレイを続けるうちに少しずつ当時の感覚を取り戻すことはできたが、相対的に最近の格闘ゲームは見えにくい部分も親切に作られていることを改めて実感した次第。格闘ゲームのブランクが長かったこともあり、それと同時に初心者がつまづきやすい部分も何となく見えた気がする。
 いまさらながら驚かされたのは、投げのボタンがP+Gで固定されてはおらず、PだったりP+Kだったりと技によってまったく異なることだ。そこで反射的に“自動二択”という概念が思い浮かんだ。たとえば、投げのコマンドが“66P”だった場合、相手が立っていれば投げが決まり、しゃがんでいれば中段打撃技(“66P”の固有技がない場合は“6P”)が出てヒットする、というものだ。しかし、投げと打撃では発生に差があるため、厳密にフレームを分解すると自動にはなっていない。そこで、投げのみをピンポイントで回避する“ファジーガード”が生まれた。さらにプレイするうちに、千本パンチやら、Kキャンセル当て身やら、無敵起き上がりやら、鉄山投げやら、さまざまなテクニックや現象の思い出が目まぐるしく去来した。これが走馬灯が流れるという感覚なのかもしれない。

▲『VF2.1』であえて残された『VF2』の不具合もある。これは、トレーラーにも収録されている座盤鉄投げ。舜帝の座盤鉄中は間合いに関係なくジェフリーのパワーボムで投げられる現象。
▲同じくアキラの鉄山靠も、出掛かりに間合いに関係なく立ち投げを決められる瞬間がある。ただしタイミングは一瞬だけなので、実戦で決めることは困難。
▲『VF2.1』で修正された不具合としては、KキャンセルのタイミングやPKのダメージなどがある。また、ラウ(とジェフリー)の1Pと2Pで浮きの高さが違ったことも修正されている。

 オンライン対戦について書いておくと、筆者がプレイしたのはXbox 360版で、ラグは体感としてはほとんど感じられず非常に快適だった。ただ、集中してプレイしようとすると、同じ相手とばかり何度も連続マッチングしたことが少し気になった。平日の昼間だったとはいえ、発売直後のタイミングとしては少し寂しい。だが、すでに数百試合をこなしているプレイヤーも少なからずいたし、ランクマッチで夜遅く、あるいは週末に試してみればまた結果は変わってくるかもしれない。

▲オンライン対戦は、ランクマッチかプレイヤーマッチかを選択し、部屋を作ってマッチングの成立を待つ仕組み。Xbox 360の場合、ラグはほとんど感じられず快適に遊べた。
▲実績は全部で12種類。オンライン系や通算○○勝といった累積系はなく、簡単に400ポイントを獲得できる。

 現在では直近作の『VF5 ファイナルショーダウン』が遊べるし、『デッド オア アライブ5』には一部の『VF』キャラクターが登場している。さらに2D格闘も含めれば、数多くの対戦格闘ゲームがPS3とXbox 360にラインアップされている。2013年といういまの時代に、そのなかからあえて『VF2』を選ぶ理由はあまりないかもしれない。しかし、かつて何十万円もした『VF2』を数百円で購入でき、家にいながら対戦できるというのは、当時を思えば破格を通り越してちょっと信じがたい事実だ。かつて『VF2』に熱狂した世代は当時を追体験できるツールとして、そうでない若い世代もいま見ると荒削りではあるが、多くのプレイヤーを虜にした不朽の名作を味わってみてほしい。余談だが、実績およびトロフィーの取得が非常に簡単で、1時間もかからずにコンプリート可能なことも追記しておきたい。

 初代『VF』から『VF2』までのあいだは1年足らずで、『VF2』から『VF2.1』までの間は半年強、『VF2.1』から『VF3』のあいだも1年強しかない。体感時間としては、もっともっと長い時間が流れていたように感じていたが、意外なまでに短いことに気づいた。しかし、当時の思い出はいまも克明に脳裏に焼きついており、17年も前の出来事ながら昨日のことのように思い出せる。体験版なら無料なので、まずはダウンロードをしてみてほしい。

■著者紹介:バロンマサール
古の時代から活動するゲームライター。セガと言えば、個人的には『VF』時代やカードゲーム全盛時代よりも、体感ゲーム時代が黄金期。“セガ・ゲーム・ミュージックVOL.1”のジャケットにある『アウトラン』の青空と入道雲、あるいは青と白のストライプで描かれた社名ロゴ……そんな垢抜けていて、夏らしいクールなイメージが、いまなお心に宿っている。


バーチャファイター2
メーカー セガ
対応機種 PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360
発売日 2012年11月28日配信
価格 PSN版:800円[税込]/XBLA版:400MSP
ジャンル 3D対戦格闘